ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

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ゲーム内1gp(金貨1枚)=1千円とした。
最低レベルの死者蘇生呪文に必要な触媒が500万円と考えると安く聞こえるが、これ以上桁を増やしたら軽々と億単位の買い物が飛び交うので自重。



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 拝啓、新大陸で活動中の父様、母様へ。姉様は学園に入学して友だちと仲間を作り、最近は木星への冒険やその他些細な出来事で経験を積んでまた少しレベルが上がり、元気にしています。私は魔法のアイテムを作っては姉様へ渡したり、バイヤーの方へ売っぱらって生活費につぎ込んだりと、いつも通りやっております。

 さて、最近は悪鬼(デーモン)のヴィランどもが騒ぎを起こしておりまして、私たちへの直接的な実害はありませんが、懇意にしているバイヤーの方が被害を受けました。普段お世話になっている借りを返す形で、保護者がデーモンたちのテロに巻き込まれ、身寄りもなくなり寂しい女の子を一人、我が家で預かることになりました。火星からやってきたエラドリンたちのお姫様で、ローラちゃんと申します。アレス神が居られる火星の住人らしく、住み慣れない環境に文句を言うことも多い子ですが、私たちには仲良くしてくれる良い子です。父様たちが心配するような出来事はありませんからご安心ください。

 心配といえば、姉様も学園に入学し、無事パーティを組むことが出来たようですが、専門の支援家がおらず戦闘の消耗で度々苦労しているそうです。回復呪文の魔法棒(ワンド)で粘っていますが、今後を考えると専門の神官(クレリック)、または癒し手(ヒーラー)を五人目に招きたいものの、入学直後の期間が終わった今や殆どの学生は既にパーティを組んでいるために、新たな仲間探しは難行しております。今は一学年上の学園から、パーティを組んでいない目当ての学生がいないか探そうと先生方に当たっているようですが、まあ最悪の場合は私がなんとかするので父様母様は心配しないでください。

 そんなわけで、私たちの近況だけでもお伝えしたいと手紙をお送りしました。お二人は最近どうでしょうか?良ければ返信くださいな。

 敬具。

 

  追伸:最近ロボットを作りました。人造(コンストラクト)クリーチャーは回復が難儀ですが、毒や多くの状態異常が効かないので、真っ先に危険へ直面する斥候への用途に向いてますね。今度姉様のパーティに同行させて、どれだけ活躍出来るか確かめる予定です。良い成果を出せたなら、いずれお二人の方にも遣わしますね。

 

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 この世界では新世界と呼ばれる、アメリカ大陸に出征中の両親へ送る手紙をささっと書き上げました。21世紀であるにも関わらず、未だ人の手が及ばない地域が残るあの大陸にはドラゴンと数々の来訪者がわんさかしており、数日前まであった村が今日には壊滅するなど手紙を交わすことも難しい地方ですが、一月に一度は手紙を送るようにしています。

 今月は姉様の高校入学を始めとして何人かの知人が増えました。中には我が家に居ついたお姫様もおりますが……あと、姉様の気にあるお相手が出来たことも忘れてません。尤も関係は進展しておりませんが、どちらも単純な性格してませんのでこんなものだと思います。そういった話題から幾つか抜粋し、手紙に記載しました。特に我が家の同居人が増えたお姫様の件は、急に帰ってきた時に両親を驚かせることになりかねませんから、なるべく早めに伝えたいところです。

 以上、手紙の話題は終わりまして、最近の話に移ります。お姫様というのは、一週間ちょい前のパーティの件で我が家にいついた、エラドリンの姫様のことです。お名前はローラ・ジョイちゃん、日本人とエラドリンの貴い方の間に生まれたハーフだそうです。先日のパーティには社会経験のために同行し、それでテロに遭遇したのですから生まれの割に不運なのかもしれません。あまり詳しい身の上は聞いておりません、深く知りすぎたことを口実にエラドリン勢力へ取り込まれても困りますから。どうやらテロの影響が他惑星での関係に糸を引いているようで、暗雲立ち込める故郷より安全だとお姫様には表向き、ホームステイという形でまだまだ預かることになりました。

 今も我が家でぐうたら良い身分を満喫してくれてますが、金銭はともかく養う手間がかかるだけ良い迷惑なのでそろそろ何か仕事をしていただきます。これでも一端の貴族なだけに交渉力があるので、魔法のアイテム売り込みの手伝いをさせるのが妥当なところでしょうか。細かいところはマーケインの方に売りさばくアイテムごと全部投げつけます。

 

 

 その関係で私は暫くアイテム作成に専念する日々でしたが、日を置かずまた厄介な相談が舞い込みました。相談主はまたもやノームの方。しかも相談内容がよりによって、学園で催される西欧エルフのエルフ・パーティに参加するドレスコードの相談でした。エルフ・パーティの参加要項に「杖を持参すること」とあったため、彼女はその作成(あるいは借用)の相談に来たようなのですがそこに問題はありません。本当の問題を伝えるにはまずエルフ・パーティの内容を説明しなければなりませんでした。

 エルフ・パーティの面倒臭さを説明するには、まずこの世界におけるエルフの性質から説明しなければなりません。この世界のエルフは、人間と比して身体がやや虚弱ですが、優れた魔術の才能を持ち、また敏捷性も高く弓が得意。睡眠が不要で、魔法などの睡眠効果に耐性を持ち、月明かりの下など光の弱いところでも人間より先を見通すことが出来る、というのが身体的特徴。精神的にはプライドが高く、外部に誇示することなく森奥に築いた国の中でただただ同族と力の研鑽に努め続ける性格をしております。

 ここまでは一般的に有名なエルフと同じですが、現代におけるエルフは全ての物事を数値化して見ようとする……わかりやすくいうなら「ゲーム脳」な文化を築いているのです。それはエルフ学とも呼ばれ、例えば今の姉様を西欧エルフが見れば、

「彼女は4レベルのパラディンです。2レベル相当の信仰術者を嗜みますが、特に筋力に優れる戦士のようです。敏捷性、および知力は並、あとはやや高めでバランス型の優秀な能力値を持っています。特技も《強打》に《迎え討ち》と戦士特技で取り揃え、アクセントには《善への献身》により自分と周囲の仲間にダメージ減少能力を持たせる特技を得ているようです」

とまあこんな風に、人物を含めた物事をゲームデータで測ろうとする文化が発展しているのです。ある意味分かりやすいのですが、他者を細かく数値化し、誰より優れている、誰は劣っているなどとプライドを刺激するのは私も流石にどうかと思う方々です。

 そして西欧といえばエルフたちの本場です。数値が絶対のエルフ社会において高い数値を持つエルフは優れたエルフであり、能力値を強化できるスペルキャスター、特に数多くの能力値強化手段を蓄える高レベル術者はそれだけで貴族や政治家の絶対条件です。そんな貴族と魔術が混在したエルフたちが開催するパーティのドレスコードとなると、単なる服装の見た目が問題ではなく、身に纏う魔法のアイテムの数値に注意を払わねばならないのです。

 

 ノームの方は今の説明で理解しきれなかったようですが、もう一度説明するのも手間なので、エルフ・パーティに参加するにあたって具体的な注意事項から伝えました。

 エルフ・パーティのエルフたちは、普通の目に見える姿ではなく魔力的な視界で他の参加者を捉え、評価します。そのため特に注意すべきは魔術の視覚(アーケイン・サイト)で視認できる、その人物が持つ呪文発動能力を持つ術者のレベル、装備する魔法のアイテムが放つオーラの強度や系統、そしてそれらレベルやオーラのスタイルです。エルフによって、弱い魔法使いが身の丈に合わないオーラを放つアイテムを装備しているのは(そのアイテムの実際の効果によらず)「アイテム頼りの恥さらし」と見なされ、逆に本人の術者レベルは高いものの、身につけるアイテムが放つオーラが全て弱いものだったならば「貧乏人」と見なされるなど、両方のバランスが取れてないと貶されます。また、身につける魔法のアイテムが放つオーラの種類にしても、占術と死霊術、力術などとにかくチグハグな系統のオーラを放つアイテムを身に着けているようではセンスがないと評されるので、なるべく1~2系統に絞らなければなりません。曰く、「赤のジャケットに青のシャツ、緑のスカートを着てるようなもの」だそうです。

 そういった一般的なドレスコードと異なる規定があるとノームの方に伝えると、彼女は頭を抱えました。面倒臭いでしょう?と暗に出席の取りやめを推奨すると、「そんなに魔法のアイテムを買うお金はないよ」とどこかズレた返答に私の気が抜けました。混沌な気質のノームの方が真面目に考えるなんて言葉とは無縁なんて分かってたろうにのう、私。

 思ってたほど服装の内容自体を気にしてないようでしたから、私も細かく考えないことにしました。彼女が最も気にしている金の問題は私から各アイテムをレンタルという形で、本来の価格の1割で貸し出すことで安く解決。オーラのスタイルは、彼女が習得し主に使用する力術&召喚術系統を基準に、杖には火の矢(ファイアー・ボルト)の魔法棒、打撃強化(マイティ・フィスツ)お守り(アミュレット)に、下級・呪文貯蔵(マイナー・スペルストアリング)の指輪と自活(サステナンス)の指輪をセット、の装いを提供することに決めました。全てのアイテムが私の家にあるわけではない(そして製作もパーティ当日に間に合いそうにない)ので後日取り寄せることになりますが、いずれも彼女自身の力量を示す微弱なオーラが放つ強度に揃えており、エルフ・パーティにおいてあからさまな恥をかくことはないでしょう。当人は魔術師らしい長い(スタッフ)を所望したのに短い魔法棒が渡されたことに不満を述べてきますが、魔法の杖というものは最低でも中程度のオーラを放つために彼女の力量には合わないと断言し、拒否します。

 ちなみにこれらのアイテムの総額3100万円也。そう伝えると「魔法の杖が買えるじゃないのよ!」と涙目に訴えてきたので、レンタル料は1%に負けてあげました。魔法のアイテムだけに、並のパーティよりも高い装いになるのがこれまた嫌なんですよねエルフ・パーティ。

 

 




魔法棒(ワンド)(魔法の)杖(スタッフ)、ロッド
いずれも短かったり長かったりする杖型の魔法のアイテムだが、効果は異なる。
ワンドとスタッフは共に、複数回分の呪文のパワーを蓄え、発動する。
ワンドには低級の呪文しか込められないが、回数に対する価格が安い。
スタッフに込められる呪文には制限が無く、スタッフのパワーより術者が強ければスタッフから発動する呪文の力も増す。その代わり複数種類の呪文を込めなければならないし、そして最低価格が決まっておりとにかく高額である。
ロッドは前者二つのように呪文効果を発動したりせず、特殊な恩恵を与えるもの。所有者の様々な能力を増強するものから、戦闘とは無関係の効果をもたらすもの、単に強力な武器として扱えるものなど、様々。再使用に決められた休息期間を要するものも多いが、使用回数は無制限であるものが多い。

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