主人公は「本当は姉より強いけど重い背景を持つ故に実力を発揮できない」的なサブヒロインポジション、……的なキャラクターをイメージして書いてます。
いわゆるラノベテンプレの一つをなぞる形。
姉様の戦いを見届けた私は、学校見学もほどほどにお家へ帰りました。しかし、なんということでしょう。私が手を貸したのに姉様は負けてしまいました。
一対一の戦いに消耗品を持ち込むなんて無粋とも言えますが、同じく姉様も私製
ともあれ姉様本人らの実力でやれるだけのことはしたでしょうが、相手はそれよりも上の実力を……もとい、アイテムを携えていたのが敗因ですね。今日は帰ってくる姉様を慰めましょう。
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三日前に敗れてからというものの、姉様は(私は何があったか知らないと思っているので)元気に取り繕っていますが、すっかり牙が抜けてしまっております。そんなに二度の敗北が応えたのでしょうか、対人戦の向き不向きはあるものですからそう落ち込むこともないと思いますがね。仕方ありませんから、今度の休みに少々お出かけに付き合ってもらいましょう。
最近、このあたりに“新大陸”(いわゆるアメリカ大陸)から逃げ込んできた
事前に幾つかの調査を済ませ、私たちの手が届く場所にマフィアが潜んでいることを確認後、腑抜けたままの姉様に声をかけ、聖騎士の義心をそそのかす形で発奮させます。私も支援についていくと言えば、か弱い妹を後衛に守りながら戦うことへ更に意欲を燃やし始めたようです。後衛だからと守られる必要はないのですが……いつもの調子を取り戻しつつあるのは、良いことです。
翌日、“
飛んで火に入る夏の虫と言わんばかりに正面に立つ姉様へ、空を裂き飛んでくる多数の
初撃を凌ぎ、矢の飛んできた方向から階段の上にいるバグベアの姿を発見し、勇ましい声を上げて階段を躍り上がり乱戦に突入しました。そんな姉様に私は後ろから
盗賊系は
2階に潜むマフィアを倒したところでまだ上に残っていた多数のマフィアたちが窓から飛び降り、外に逃げました。それを見て姉様は急いで追いかけようとしますが、足止めのつもりか3階から降りてきた別のバグベアたちが攻撃を仕掛けてまいりました。最早姿を隠す必要もないと言わんばかりに、銃弾の雨が降り注ぎます。弩よりも高い攻撃力と精度の前に、幾つかの銃弾が数重の防御を貫いて姉様に当たりました。姉様の唇から僅かに呻きが漏れますが、未だ銃撃が続く中、治癒呪文をかけるために姉様へ近づくわけにはいきません。それに銃撃をかいくぐった姉様がバグベアたちに接敵しました。剣の届く距離なら、バグベアたちが銃や弩の狙いをつけるより姉様が切る方が早いのです。散開しようにも廃ビル内の狭所では距離を離すことも出来ず、ナイフを取り出すも時既に遅し、バグベアたちは切られ昏倒しました。
しかし最後のバグベアは切られる前に棒のようなものがついた楕円体のものを取り出し、足元に転がしました。あれは……
丈夫なバグベアたちは手榴弾一発で倒れるほど柔な身体ではありませんが、バグベアたちに散々撃たれて傷を負っていた姉様は違います。幾ら鎧や皮で身を包んでいても、手榴弾の爆発の衝撃はそれらを貫いてダメージを与えました。爆発物への対策は一切取っていなかったため、瀕死に陥っていやしないかと心配になって姉様の元へ駆けつけますが、幸いにして怪我でフラフラになりつつも意識は残っておりました。
復活した姉様は、回復を施した私に礼を言いつつ、マフィアたちの気配を探ります。殆どのバグベアはビルの外へ逃げてしまいましたが、まだ上にも気配が残っております。そのことを姉様に伝えると、逃げたマフィアの追撃は諦めて上に残る連中の片を付けると決めました。
3階に上がる姉様に追随しますが、その途中大型機械の駆動音らしき鉄が軋む音が聞こえてきたのを警戒して呼び止めます。
なんだと尋ねる姉様をひとまず制して、音から上で動く謎の機械の正体を探ります……バグベアたち7人分の足音に紛れ、油圧で動く音が聞こえる。サイズは人間の倍以上……
機械外骨格はロボットと同じく、近代機械技術の著しい発達により完成した戦闘兵器です。操縦には特別な時間と訓練、職業が必要となることから冒険者間では流行りませんが、魔法飛び交う現代の戦争を一変した機械外骨格はとても危険なものです。近接戦闘では
機械に気をつけて、と姉様に忠告しその後ろ姿を見送ります。私はせめて間に合えばと、昇り階段の途中で追加の魔法を準備し始めました。暫くして姉様と機械外骨格が派手に動く戦闘音が聞こえ出しましたが、まだ準備は終わっていません。完成まで数十秒……といったところで、階段の下に気配。まさかマフィアたちが挟み撃ちにするつもりで戻ってきたのでしょうか?
今準備を中断すれば折角費やした時間もふいになり、姉様の戦いに間に合わないと心配しましたが、現れたのはバグベアではなく、それも私が一方的に見知っている相手でした。しかし何故ここを
なんにせよ彼もマフィアに用のある人間らしく、人間である私の姿を見てマフィアではないと判断したのか魔法を準備し続ける私に警告を発しました。幸いなことに今準備している魔法に詠唱は必要でなく、余裕があることから準備しながらも彼に、今も上階で戦っている姉様の援護に向かってほしいと手早く伝えました。僅かな言葉でしたが無事意図は伝わったようで、彼は私を通り越して早急に上階へ向かってくれました。私が準備するまでの時間稼ぎにはなってくれるでしょうから、そこは安心ですが……そもそも先日から姉様の気落ちする原因を作った人物である以上、別の問題が発生しないとは思えません。丁度今、ようやく完成した魔法を携えて急ぎ姉様の援護に向かいます。無事でいてくれれば良いのですが。
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二脚、あるいは四脚の人型をした乗り込み型機械、というよりも強化スーツに近い。機械外骨格を纏った状態でも人型生物の体と同様の動きを取れるよう、搭乗者の技術をなるべくそのまま活かせるように設計されている。が、それでも幾つか不都合があるため高レベルの戦士なら素で戦った方が強いという話。
冒険者的な話はさておいても、多少の操縦技術の訓練を取るだけでオーガやトロル以上の戦闘力を発揮できること、そして全身鎧よりも遥かに攻撃から身を守る性能が高いことから、折角訓練を受けさせた兵士が即死する危険を防げることから国軍や企業の私設軍隊、そして悪の組織などでも採用されている。