ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

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練習なんだから文字数とか気にしなくていいじゃんとなった



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 姉様の入学から数日が経ちましたが、あれから二度とご友人を連れてくる気配がありません。新学期で皆、慣れるまで忙しいのかと思いましたが、姉様が時折り学校の出来事を思い出しては色気か恥じらいを隠しきれない素振りから、もしや男が出来たのか!とあれだけ身を尽くした私が捨てられるのではないかと戦々恐々したものです。私とお姉様の愛の巣が、見知らぬ間男に奪われて追い出されることになろうとは、あのお優しいお姉様には予想もつかなかったのでしょう。ああ、なんて優しいお姉様、それが残酷な結果を齎すとは悲しいです……なんて。半分冗談ですが。

 しかし姉様に男が出来たような素振りがあるのは事実。男勝りの姉様ですが、お優しいところがありますのでそこへ付け込んで恋人まがいの振る舞いを強要する不埒な男子が現れたのではないかと心配になって、今日姉様が登校した時からずっと念視(スクライイング)の呪文で見張っておりました。すると朝礼の間際に登校してきたある男子を目に留めた途端、食って掛かるように戦いを申し込む姉様の振る舞いに、心配は無用だったかと呆れ果てました。どうやら姉様、学校の演習か何かの練習試合である男子に負けたことを気にしているようです。

 その男子はまあ、呪剣士(ヘクスブレード)と呼ばれる……言ってはなんですが聖騎士(パラディン)の姉様と比べると非常にマイナーな職業(クラス)能力の訓練を積んだ人間のようで、そんな得体の知れぬ職業に敗北を喫した姉様は己の誇りある聖騎士がマイナー職業に劣っているのではないかと思い込み、そんなことはないだろうと自らの疑念を晴らすべく敗北の汚名を返上するために相手が嫌がるにも関わらずしきりに再戦を申し込んでいるのが、姉様が時折り見せる恥じらいの真実だったようです。なんともまあ純粋な姉様らしい、色気もない話です。

 実際に切り結んだ経験はありませんが、私の知る限り呪剣士とは戦士(ファイター)から防御力を数段落とし、わずかな非戦闘用秘術呪文(アルカナ・スペル)と“呪い”と呼ばれる幾つかの敵弱体化(デバフ)能力を付け足しただけの、聖騎士や騎士(ナイト)といった頼れる前衛とは比べ物にならない、前衛というには心許無い弱小デバッファークラスです。呪文使いとしては当然ながら魔術師(ウィザード)神官(クレリック)といった定番職業には汎用性も実用性も及ぶべくなく、かといって魔法戦士としては秘術剣士(ダスクブレード)複合型秘術戦士(エルドリッチ・ナイト)(戦士職業と魔術師職業の両方を修めた複数職業(マルチ・クラス)能力者)にも火力・防御力・状況対応能力等、魔法が絡んだ全てに置いて上位互換が存在するのが一線級になれない理由です。

 唯一、敵弱体化能力では目を見張るところはありますが、それにしたって他職業の呪文で補えない範疇ではありませんし、二つある敵弱体化能力のうち片方は便利ですがもう片方は数を打てない癖にまともにかかるような相手は普通に殴り勝てる格下だけという、以上いずれの能力にしても中途半端が否めない理由から弱小職業と断じます。

 それが何故姉様に勝てたかといえば、装備の差、特技の差、あとは……相性差でしょうか。聖騎士は性格・性傾が悪に偏ったキャラクターを打ち倒すことが得意なものの、悪でない相手との戦闘では本気を出せず一段性能が落ちる、実用性を重視したクラスなので模擬試合の場で負けるのも仕方ないかもしれません。一方で、なんだかんだ呪剣士の敵弱体化は相手を選ばずに使えますし、使えない方の敵弱体化能力も同格相手なら5割くらいで通せば途端に有利となります。それに口周りの輪郭をよく見ればわかりますが、歯茎や幾つかの骨格に純人間ではありえない、人を傷つけるような鋭い骨格をしていることから恐らく先祖に他の惑星からやってきた悪の来訪者(イーヴル・アウトサイダー)を持つ、それも悪魔(デヴィル)の血が混じった家系だと伺えます。混血なだけあって肉体的に純人間より頑強で力強く、その補正があれば呪剣士でも聖騎士に並ぶ前衛能力は身につけられるでしょう。あとは、装備の差ですね。身に纏う装備が放つ魔法のオーラを識別すると、身の丈よりも二回り強力な魔法の装備(マジック・アイテム)を身につけていますね。傷つき具合から察するに、呪剣士などというマイナー職業を修めていることも含め、彼のお家に先祖代々伝わるものなのでしょう。姉様の努力や才能を俺TUEEEで一蹴するとはなんとも気に入らない。同族嫌悪?あーあー聞こえない聞こえない。

 昔の私であれば親しい者の心を害したと制裁に赴くところですが、今の私は派手に立ち回らないと決めています。それに強情な姉様は他人の手を借りて報復したり、無理矢理強いマジックアイテムを渡されて力の差を埋めることも喜ばないと、二年の関係で性格はよく知っております。かといって露骨な手助けも好まないでしょうし、姉様を言いくるめるのも、まるで私の意のままに操ってるようで気が引けます。

 どうしたものかと少し考え、マジックアイテム分のアドバンテージを失わせれば姉様と彼の資産・種族的な差は埋まると考え、次に姉様が試合を取り付けた日に手を貸そうと思いました。解呪(ディスペル・マジック)系列の呪文には効果が続いている魔法を即座に終了させる以外にも、魔法のアイテムを一時的に機能を抑止する効果がありますので、行使可能な距離が短いのは難点ですが身を隠しながら呪文をかけるくらいはお茶の子さいさいです。バレれば姉様の仕置き不可避ですが……男にうつつを抜かし、私を心配させた姉様が悪いのですよ、ええ。

 

 

 


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