ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

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※原作「ダンジョンズ&ドラゴンズ」および「d20モダン」シリーズ他、d20システムはアメリカ製のテーブルトークRPGです。
 ただし呪文名や魔法のアイテム名の幾つかは英語原文から私家訳しています。原作をご存知の方で、和訳書籍と一致せず、翻訳がおかしいと感じたものは作者に突っ込むするなり、ルビの原文カタカナ読みから判断するなりしてください。

(レギュレーション:所持するD&D3.5e・3e系列の全サプリ。d20モダン。一部のみD&Dパスファインダーより流用)

-まえがき-
ドラゴンとロボが戦うような近未来ファンタジー世界に転生した主人公がチートして調子に乗ったらやんちゃして、しばらくほとぼりが冷めるまで姿を変えひっそりと過ごしながら隠居先の女の子を見守ってる話。一応TSだったのでタグの原因。
一からの成長を踏まえずに最初から強い主人公を動かす練習作。


お姉ちゃんぶる話(飽きた)
1


 私が千歳天華になってからはや2年が経ちます。

 千歳家の勝手に慣れ、血の繋がらない姉様とも随分仲良くなりましたが、時折り家族愛を超えた愛情を向けられそうになってはヒヤッとすることが絶えません。人間の最大値を超えない程度の【魅力】能力値に抑えたはずですが、人外のインフレ環境で調整してしまったためか、周囲にはあたかも天性の女優であるかのように扱われております。どこからどう話が伝わったのか、顔を合わせてもいないプロデューサーからアイドルグループへのスカウトまで来たこともあります。その時は姉を通じて丁重に断らせて頂きましたが……そも、今の私は家族のためにアイテムを作る魔道具技士(アーティフィサー)であり、アイドルとかヒーローとかその手の活動はもう前世でお腹いっぱいまで経験積みです。引退がてら前世の取り巻きを振りきって、千歳家へ落ち延びたのに再びアイドルになっては姿を変えてまで逃げ込んだ意味がありません。

 表に姿を現さず家の中で引きこもりながらも常々水薬(ポーション)を製作しては売りさばいているため親のすねはかじっておりませんし、またチートでドラゴン以上に頑強な私の身体は運動不足で衰えることもありません。悠々自適のフリーター生活を送らせていただいています。

 

 私の話はさておいて、今日は姉様が高校に入学する日です。千歳家は両親が優秀な秘術剣士(ダスクブレード)であり、時には地方新聞の一面に載る活躍を見せることすらあります。そんな両親に幼い頃から憧れた姉様は、「私もなる」と言って聞かず、現代の冒険者学校とも言うべき国立竜洞学園へと進学を決めてしまいました。両親や私としては、命を危険に晒す必要のない堅実な仕事に就ける魔術師(ウィザード)を志していただきたかったのですが、神格の召命の声を聞き聖騎士(パラディン)になってしまわれては最早止める声が上げられませんでした。成り立てとはいえ、善と秩序の道を歩む聖騎士の行く手を阻めば世間体が悪くなりますし、罷り間違って悪と断定されても困ります。両親は説得を諦め、一般入試で合格することを条件に冒険者の道を出しました。それが半年前の出来事で、二、三ヶ月前に入学試験を受けた結果、姉様は成績トップ10の高評価で合格を果たしてしまいました。

 こうまで見事に入学を決められたなら清々しいほど諦めがつくと、両親は説得を止め、逆に先人として姉様に独自の教育を行うようになりました。私も何か姉様に手助けをしたいと思いましたが、表向き13歳の少女が人生の経験談を口にするのはおかしいので、専用の魔法の(マジック)アイテムを作るだけで我慢しました。それにしても身の丈を超えるアイテムを与えては姉様が装備頼りの戦闘スタイルになると為にならないと思い、ほどほどの物しか作れませんでしたが……いつか立派な聖騎士になると信じて、聖剣(ホーリー・アヴェンジャー)の製作にとりかかっています。例え死んでも蘇生しますから神話に語られるレベルを目指して頑張っていただきたいものです……とまでいくと高望みしすぎでしょうか?

 

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 どうやら姉様が学園の友達を二人ほど連れて帰ってきたようです。流石は姉様、早くも人間関係を構築するとは私がメロメロになる【魅力】を持つだけはありますね、なんつって。

 私の耳は壁を隔てた100メートル先でも姉さまの話す声を聞き分けますから、物を片付けたり迎える準備をする間があるのは幸いです。特に、私の身に付ける魔法のアイテムは強力な魔法のオーラを放ちますから、万が一友人に魔術師が混ざっていて遊び半分で“魔力感知(ディテクト・マジック)をされると驚かせてしまいますもの。

 急いで部屋から持ちだした魔法の杖(スタッフ)で、目につく魔法のアイテムのオーラを“偽装(ミス・ディレクション)しました。幾つかの魔法的な家具は両親が買ったものであるため、偽装は不要とは思いますが、何かの拍子に姉様が私のことを友人に話したりすることがなければ良いのですが。いえ、話のネタにする分には構わないのですけど、私に興味の矛先が向くほうが厄介といいますか。……一応、私の部屋の方にある魔法のアイテムのオーラも偽装しておきましょう。本来なら50発も撃てば魔力(チャージ)がスッカラカンになる杖ですが、数値であれば弄くり放題なのは我がチートの良いところです。

 処置を終えたら、姉さまの新たなお友達が帰るまで部屋に篭もってロボットの製作に取り掛かります。北方、ドワーフ連邦で発展した機械技術は才能あるものの魔術でしか成せなかった人造クリーチャー製作、宇宙間渡航、メカ装着による人間の単身飛行等を魔力無き非才の人の身にも可能としました。その一つがこのロボット技術です。この世界のロボットはあたかも人間のように学習し、働き、中には魔術を修得し、あるいはその魂無き身に信仰を宿し呪文を唱えるものまでいるといいます。そんなドワーフ連邦で産まれ知性を持ったロボットたちは、使われるだけの身から叛逆し、西欧に人造の独立国家を打ち建てて世界にロボットの人権を認めさせるほどですから、AI製作で四苦八苦している現実のロボット工学を知る身としては驚きというか都合がいいというか……。さておいて、私が作ろうとしているロボットは機械の体をベースに魔術で知性を目覚めさせたハイブリッド型ロボットなので、尊敬すべき純粋な叡智の極みを真似たものではありませんが、純粋な機械工学で作られた平凡なロボットよりも高い知性を得る点が優れています。いずれは姉様の仲間として、表に出られない私の代わりとして役立ててもらおうと思っての製作ですが、果たして使われる時は来るのでしょうか……?

 

 ロボット製作工程の8分の1くらい手がけたところで、私の部屋を訪れようとする気配を感じ取り、部屋の中を覗かれる前に急いで扉から外を覗きます。

 足音から察していましたが、部屋を訪れようとしていたのは姉様でした。お友達に私のことを紹介したいとおっしゃいますが、例え紹介されても私は姉様と両親のため以外にアイテムを作ってあげるつもりはありません。そして金を払って魔法のアイテムを注文するなら、もっと大手の企業の方が豊富なサービスや保証も受けられるでしょう。それに魔法のアイテムを作ってもらったお友達たちだって、口止めを頼んでもどこで手に入れたアイテムなのかを別の友達に問われれば答えてしまうことがあるでしょう。……とはいえ私も、姉様にそこまで徹底的な緘口令を敷いてほしいわけではありませんが、わざわざ私の名を触れ回ることはしないでほしいのです。特に、学園に入ったばかりの新人冒険者なら自分の魔法のアイテムを手に入れることに憧れる時期でしょうし……

 え、もう話した?手持ちの魔法のアイテムをどこで得たのか聞かれた時に「妹に作ってもらった」と答えたら、家にお邪魔する流れになったと。そうですか、そうでしたか、はぁ。そういう話の流れなら顔を見せないのは逆に姉様の迷惑になりますね、仕方ないです。でも今後はこのようなことがないように気をつけてください。

 仕方ないと製作の手を休め、私はリビングにいる姉様の新たなお友達二人に挨拶へ伺いました。といっても魔法のアイテムに釣られてやってきた友人とやらは、本当にお友達になる気があるのか甚だ怪しいものですが……実際にお二人に対面すると、一目で欲望が駄々漏れなのが見てとれました。

 まず小柄な女性―――ハーフリングの盗賊(ローグ)志望のご友人は、見るからに魔法のアイテムに興味津々といった欲望を隠しきれないといった様子で、私がどのように姉様のアイテムを手がけたのか聞きただして参りました。細かい解答は置いといて、注文は受けるがタダでは受注せず、しっかり正当な代金を戴くと伝えるとギラギラとした目つきを引っ込めて、今度は我が家にくすねられるアイテムがないかと手癖の悪さを見せつけられました。勿論、我が目と耳の届く限り窃盗を許すことはありませんがこの御方と姉様の先の関係が心配でなりません。

 もう一人の女性は人間の神官(クレリック)で、いかにも裕福な良いとこに生まれ育ったお嬢様でした。私が手がけたアイテムに身を包む姉様よりも、数々のド派手なオーラを放つ魔法のアイテムを身を着けており、自らの纏うアイテムを誇示し、姉様とその専属の製作者である私を貶めるために訪れた、といった感じでしょう。逐一アイテムの性能やら何やらを見ぬいて、適当に褒めてやれば勝手に舞い上がってくれたのでもう一人の方よりは相手が楽ですが、とても良いご友人には見えませんね。聖騎士の名に相応しく義務感や正義感が強い姉様とは、ちょっと合わない気もします。

 どちらにせよ、姉様が友人とおっしゃる方々はとても良い志を持っているようには見えず、姉様の学園ライフが心配で心配でなりません。なるべく姉様の印象が良くなるような言葉使いに気を払い、雰囲気の良い場を作った後に退散しましたが、この場の印象なんてその後の生活で簡単に移り変わるでしょう。特に、神官の方は一度気を損ねると財に靡かない姉様のことを冷遇しそうに思えます。もしそうなったなら、姉様のより良い学園生活のために私が手を出すことも考慮せねばなりませんが……“交神(コミューン)の呪文で神様に質問をするだけで、陰謀を明らかにしてしまえる神官の方に手を出すのは最終手段でしょう。例え唯一の証人を殺したところで、蘇生出来るどころか死んでも口封じにならない呪文(スピーク・ウィズ・デッド)があるのがこの世界ですから。

 邪魔しないように部屋へ戻り、ロボットの製作に戻りましたが姉さまのことが心配であまり作業は進みませんでした。

 

 

 





魔道具技士(アーティフィサー)
 技能系職業(クラス)の1つ。元はエベロンという魔法が発達した世界において独自に芽生えた職業で、各魔法のアイテム作成やその管理、使用を行える。また冒険では盗賊のように魔法的な罠を発見することも可能。アイテムさえあれば強力だが、アイテムを介しない直接戦闘能力は殆ど持たず、そのため何かと非常に金がかかる。


水薬(ポーション)
 呪文効果をアイテムに込めたことで、いつでも誰でも呪文の恩恵を受けられるようにした消耗品。ただし込められる呪文は低レベルに限定されている。一般的に液体に呪文を込め、仕様時にそれを飲むものをポーションと呼ぶが、武器や物体などに塗布する(オイル)も対象が異なるだけでポーションと同じものである。また、世界や地方によっては食物やルーンなど別の形で魔法を込めたものもあり、それも広義のポーションである。


秘術剣士(ダスクブレード)
 近接戦闘能力と秘術呪文(アルカナ・スペル)を高水準で融合した、戦士系職業。専業の魔術師ほど呪文のレパートリーを持たないが、最前列で戦いながら簡単な攻撃・防御呪文を発動することが出来る関係で瞬間攻撃力が非常に高い。


魔術師(ウィザード)
 代表的な秘術呪文――世界の理とも言うべき隠された神秘の法則から魔法を発動する呪文系統――を操る術者職業。一日の初めにその日に使う呪文を「準備」しなければならず、また呪文の使用可能回数も他の術者職業に比べると少なめだが、レパートリーは呪文を自分の呪文書に書き写す限り無限に広げられるのが最大の特徴。あえて召喚術や死霊術など、得意な呪文系統・苦手な系統を得た専門家(スペシャリスト)と呼ばれる魔術師もいる。


聖騎士(パラディン)
 善き神の召命を受け、目覚める戦士系職業。規律(コード)と呼ばれる様々なルールを守らなければ職業で得た能力を失うなど厳しいが、悪しき者に追加のダメージを与える近接攻撃“悪を討つ一撃(スマイト・イーヴル)”、神官のように幾つかの信仰呪文(ディヴァイン・スペル)、またアンデッドを退散させる能力を獲得し、更に様々な呪文への抵抗が強化され、幾つか聖騎士専用の魔法のアイテムが存在するなど厳しい義務に見合った強い能力を獲得する。


魔法の(マジック)アイテム
 半永続的な魔法効果を持つアイテム。魔法のアイテムごとのレシピに定められた呪文が使用可能な術者でなければ製作できず、また製作には金と、生命力の一部(経験点)、そして日数を消費しなければならない。ちなみに製作工程で魔法を込めることが重要であり、単に魔法を併用して作成しただけでは「魔法のアイテム」にはならない。
 またアーティファクトと呼ばれる、定命の者には作れない神々の手によってのみ作られる魔法のアイテムもある。アーティファクトは通常の手段ではどれだけ傷つけても破壊することが出来ず、儀式的な手法か非常に強力な呪文が必要になる。


聖剣(ホーリー・アヴェンジャー)
 上述の聖騎士専用の魔法の武器。冷たい鉄(コールド・アイアン)という他世界のクリーチャーを傷つける素材で出来ており、武器自体も優秀だが聖騎士が持つと更に強力な武器となり、強力な上位解呪(グレーター・ディスペル・マジック)呪文を放ち、かかって(かけられて)いる魔法効果を中断することが出来るようになる。


魔力感知(ディテクト・マジック)
 魔法のアイテムが常に放っていたり、その場で使用された魔法の残滓が宿すオーラ――通常の目には見えない漂うモヤのようなもの――を感知するための占術(ディヴィネーション)呪文。一般に高度な呪文や、難しい工程を必要とするものほどより強いオーラを放つ。
 感知(ディテクト)系には他にも悪属性感知(ディテクト・イーヴル)植物感知(ディテクト・プラント)など様々なものが存在するが、呪文によっては自身の技量より強すぎるオーラを感知すると朦朧としてしまうことがある。


魔法の杖(スタッフ)
 複数回分の魔力を込めておき、杖に登録してある呪文を(将来的にその登録した呪文を使用可能な術者職業に就いているなら)いつでも使えるようにした魔法のアイテム。込められる呪文レベル、呪文の種類に限度はないが登録された呪文で杖から消費する魔力残量は共通で、同様のアイテムながら比較的低レベルの1種類しか込められない魔法棒(ワンド)よりも製作コストが非常に高額である。


偽装(ミス・ディレクション)
 感知系呪文によりアイテム1つが放つオーラを、別の物体一つと誤情報を認識させる幻術(イリュージョン)呪文。ただし幻術は、感覚が鋭い者には容易に見抜かれる恐れがある。


盗賊(ローグ)
 代表的な技能役――冒険において敵の先行偵察から待ち伏せの看破、罠の発見・解除まで様々な下働きを行う役割の者――の職業。戦闘では、生物の弱点を見抜き大ダメージを与える急所攻撃(スニーク・アタック)能力を持つことから、第二の前衛や敵後衛を潰す役割を担うことも多い。また、本来魔法を修めなければ使用不可能な魔法のアイテムを使用する魔法装置使用(Use Magicitem Device)技能を習得し、アイテムで攻撃呪文を駆使する盗賊もいる。


神官(クレリック)
 代表的な信仰呪文――神格や、あるいは大自然や哲学・倫理的な概念をパワーソースとして他者から与えられる呪文系統――を発動する術者。多少重い武器防具も難なく装備可能で近接戦闘をこなせる、アンデッドに対して生命的なエネルギー又は反生命的なエネルギーを放射することで退散または威伏しアンデッドを克服することが可能、など多数の能力を獲得する。
 一般に信仰に関わる職業は、その他の術者クラスよりも強力な傾向がある。


交神(コミューン)
 術者が崇める神格(または術者の理念に近い存在・神格)に幾つか質問を問いかける占術呪文。ただし質問時間は短く、質問文・返答ともに手短に済ませねばならないので気軽に使えない呪文。


・スピーク・ウィズ・デッド
 死んでからさほど時間が経っておらず、損傷も少ない死体にかけることで、死体に幾つかの質問を問いかけることが出来る死霊術(ネクロマンシー)呪文。同じ死体には1度しか使用できない。



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