ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

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8/25に、前話(14話)へ文章追加しました。(最後の段落のあたり)


15_大会1試合から前半にかけての話

 普段は神官たちの訓練場に使われている、火の大神殿・闘技場(コロシアム)

 しかし今日から数日かけて、東方の様々な部族の戦士や、世界各地から力自慢に訪れた英傑たちが集う火の神の御前試合が開催される。

 例年この大会では参加者、観客ともに大半は東方の人間で占められるが、今年は世界各地から訪れた客が数多く観客席を埋めている。何故なら今年は世界が誇る勇者がその武勇を示すために参加しているからだ。

 観客のみならず、参加者も従来の2倍近い数だ。火の神の御前で繰り広げられるこの大会では、勇者といえど一人の戦士。この大会に限って勇者を下すことも許されるため、勇者を倒して名を上げようと思った戦士は少なくない。尤も参加者の一人である俺はそれを狙って参加したわけではないのだが……。

 

 総勢100名弱が大会期間中、一対一を最後の一人になるまで勝ち上がる。組み合わせは前日までに公正なクジで決められるので、場合によっては勇者同士で当たることもありうるだろう。しかし脅威は勇者だけではない。勇者でなければ恐れるに足らず、と思っていると思わぬ足元をすくわれる。

 その最たる例が、俺の初日の対戦相手となった雲の巨人(クラウド・ジャイアント)である。

 

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――万年雪が降り積もる、冷たき山脈からやってきた最大級巨人の戦士に挑むのは、ワイヴァーン狩りで名をあげた冒険者だ!

――しかし敵はワイヴァーンよりも遥かに巨大!果たして冒険者は潰されずに“巨人殺し(ジャイアントキリング)”を果たせるのか!

 

 司会でかつ進行役の火の神殿の詩人が、俺たちの戦いを煽る。相手のクラウド・ジャイアントは俺をくみしやすしと甘く見ているが、しかし俺の身に纏う沢山の魔法のアイテムには警戒を払っているようだ。魔力は目に見えずとも、大半の魔法のアイテムは独特の形状や色をしているものだから。

 実際その通り、彼が思っているほど俺は容易く倒せる相手ではない。だが逆に俺も、クラウド・ジャイアントは容易く倒せる相手ではなかった。この大会では己の武器と技の使用のみ、それにごく少数の魔法を組み合わせた戦い方だけが許され、魔法に頼り、相手を封殺する戦いは許されない。身につけた魔法で己を強化することは許されても、俺のようにアイテム頼りのドーピングじみた行いは反則に当たる。ごく真正面からの殴り合いだけがこの大会では可能なのだ。なので巨人のように巨大で、タフで、攻撃力の高い相手ほどこのルールは優位に働く。なので例年の大会では、巨人系の戦士がしばしば優勝しているそうな。

 

 お互いに相手を見定めていると、試合開始のドラムが鳴り響く。俺が相手の出だしを見極めていると、雲の巨人が先手を取って近づいてきた。

 

――おおっとー、先に巨人が動いた!冒険者は動けない!動かない!機会を伺っているのか?しかし巨人の間合い(リーチ)は、人間やワイヴァーンのものとは全然違うぞ!

 

 もっともその体格差によるリーチ差から、巨人の戦いの間合いは俺の十歩先の間合いだ。まるで振り払われる竜の尾のように、横薙ぎの棘棍棒(モーニングスター)が俺をジャストミートしようと一瞬で迫ってきた。だが、それを遮るように自立機動(アニメイテッド)する重盾(ヘヴィ・シールド)が勢いを削ぎ、かざした赤竜の腕甲(ブレーサー)が衝撃を和らげる。そして肉体を突き破ろうとするモーニングスターの棘たちは、俺のミスラル製の鎖帷子(チェイン・シャツ)により完全に防がれ、(ダメージ)を与えることは叶わない。

 目算を誤ったことを、静かに動揺する雲の巨人。その隙を逃さず俺はかかとを打ち合わせ、加速の靴(ブーツ・オヴ・スピード)を起動。風に乗るような速度で一気に近づく。巨人は俺の接近を止めようとモーニングスターを叩きつけるも少しの進路修正で直撃を避け、威力はやはり盾と腕甲と鎧で遮りつつ素早くあと三歩の間合いに至る。

 そして移動中に引き抜いた、光り輝く(ブリリアント)巨人特化(ジャイアント・ベイン)がかかった双剣で邪魔な足を二撃。刀身が光るエネルギーで出来た魔法の剣たちは、巨人の身を守る鎧帷子(チェイン・シャツ)に遮られることなくその中身を傷つける。御前試合のルールでダメージは生命に直接の害を及ぼさない非殺傷のものに変換されるが、それでも非致傷的なダメージは極度の疲労となる。切りつけられた片足で立っていられなくなり、巨人が片膝をついた。

 しかし流石は巨人の戦士、ダメージやプライドを傷つけられたことで戦意を失うことなく俺を討ち果たそうと、モーニングスターを持たぬ逆手で俺を捉えようとする。攻撃の威力を緩衝する数々の防具たちも組みつきを妨げるには至らないが、しかしその弱点は俺も承知の事実。その手に握られた瞬間、普段から着けっぱなしな自由移動の指輪(リング・オヴ・フリーダム・ムーヴメント)によってするりと抜け出し、追撃を許す間もなくお返しにその逆腕を切りつけた。下半身に続いて上半身を傷つけられて、バランスが不安定になった巨人は態勢を崩し、頭と胴体を低い場所に下げる。……すなわち絶好の急所を俺の前に差し出した。

 ダメージにふらつき、防御を取れぬ巨人に炎を纏った全力の二刀乱舞をかまし、たちまち巨人は打撲傷、火傷まみれになる。先々のダメージの積み重ねもあって雲の巨人は接近から僅か20秒も経たずに痛みに耐えきれず、気を失って地に伏せた。

 一方の俺は多少触れられはしたものの、全くの無傷。不本意ながら、闘技場中にその実力―――主に装備によるものとはいえ、皆に知らしめることになった。

 

――なんと冒険者、あっという間に雲の巨人を雲上から引きずり下ろしたー!これは番狂わせが起こった!

 

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 テレビもカメラもないこの世界でも、詩人がマスメディアを代替している。相手に合わせてアイテムを用意することは出来ても、戦況を一瞬で覆せるほどの切り札を持たない俺はアイテム以外の戦法が致命的なまでに陳腐な戦法しか持たない。東方のおエライ方に名を覚えてもらうなら早いうちから目立った方がいいが、しかし上位十数名に残るまではなるべくマスコミを避けるべく、控室以外では姿を消したり、魔法での変装を行って移動している。

 一回戦でさっそく大会の有力者と当たり、勝ち上がった俺は二回戦、三回戦では半竜(ハーフドラゴン)の重装戦士やホブゴブリンの軽戦士と対決する。どちらも通常の人間の戦士より腕力や敏捷力が高く、あるいはブレスや急所打ち(スニーク・アタック)など特殊な攻撃手段に長けていたが、彼らでは年経た竜の鱗並の装甲を持つ俺の防御を抜くことは叶わない。そもそも正攻法では雲の巨人以上に俺に勝ち目がないと気づいた彼ら、特に三回戦に当たったホブゴブリンの軽戦士は、その急所打ちを極めた先、俺の鎧と防具の隙間を通す技法とヒット・アンド・アウェイの組み合わせにより、観客からのブーイングにも負けず的確な戦術で一方的にダメージを与えてこようとしたが、急所を狙うために近寄らなければならないタイミングに合わせて接近し、切り捨てられる結果となった。

 そして全ての三回戦が終わり、残り32人のうちの一人に残った俺は、張り出された四回戦の組み合わせを確認する。お相手は……ここまで参加者三人中、一人も欠けずに勝ち上がってきた勇者の一角、風の勇者だった。

 ハーフエルフの彼女について俺も多くは知らないが、勇者パーティの中で技能役を担う風の勇者は探索・冒険において知覚などの重要なポジションを占めると共に、攻撃手(アタッカー)としても最上位に入るそうな。特に神器“風の魔弓(ボウ・オヴ・エア)”から放たれる疾風や雷の矢は、皮や鱗、鎧すらも貫くらしい。……俺の苦手とする装備の防護を無視した攻撃を行ってくる相手だ。

 射手系の技能役という面からして、野伏(レンジャー)盗賊(ローグ)、あるいは斥候(スカウト)といった職業(クラス)を身につけていることも考えられる。三回戦で当たったホブゴブリンの軽戦士同様の急所打ちを持ち、鎧を貫く魔法の矢弾と組み合わせれば、途端に防御を無視した致命の連射を放つ遠距離アタッカーの完成だ。それで魔法使いや光の勇者を押しのけて攻撃力で上位に食い込むのだろう。

 ともあれ、それなら対策の目処は立った。完璧にダメージを防ぐことは出来なくとも、火力の一端を担う能力を潰せば削り合いで勝ち目が産まれる。あとは遠距離の優位で押し負けるか、ダメージ量で上回るこちらが押し勝つかのどちらかに結果が別れるだけだ。無様な敗北を見せることはあるまい。

 さしあたって装備の組み換えを行おうと防具を外し始めていたその時、脳裏に魔法の伝言が届く。“送信(センディング)”の魔法だ。

 

『お兄様と闇の勇者との関係がバレました。お話のために今夜領事館へ来ていただけますか?』

 

 遠距離でメッセージを送る魔法はかなり高度で、それを贅沢に扱えるのは高レベルの魔術師か神官でなければならない。俺と面識があって該当する人物は闇の神殿長か、もしくは闇の勇者だけだ。内容から闇の勇者に違いない。

 センディングは、一度の魔法で互いに限られた字数で一往復のやりとりをすることが出来る。俺は妹からの呼び出しに応じるメリットとデメリットを少し考えてから、返信した。

 

『光と土、特に風の勇者以外との話には応じる。領事館の門衛には神殿騎士の名義でそちらが話を通すように』

 

 一度外したいつもの鎧を再び着なおして、俺は外出の用意をし始めた。

 

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 妹――闇の勇者の呼び出しに応じた俺は、三回戦と同じ装備で勇者たちが滞在する領事館を訪れた。以前と違って勇者フルメンバーが勢揃いするこの館は、彼らの従者が熱心に見張りを務めていたため、すんなりと通るわけにはいかなかった。

魔法感知(ディテクト・マジック)”で念入りにチェックを行われ、交渉用強化魔法の強力なオーラを感知した彼らが通行を不許可し、俺から魔法で連絡を受けた闇の勇者が直接許可を与えようとしてまた一悶着……といったいざこざで小一時間を費やした後に、勇者は従者同席で面会することに。

 俺としては腹を割って話す必要がなくなり助かる一方で、公衆で関係をバラすわけにもいかず闇の勇者を味方につけられないまま、貴族と別の意味で偉い人と話すのはホライゾン伯爵の件から続いて精神的な疲れが溜まり続けている。特に今回は闇の勇者、火の勇者の二人に加え、次の対戦相手である風の勇者が同席だ。地力と才能の差ではとても勇者には叶わないため、それを覆す手の内をバラさないよう慎重になる必要があった。

 

「初めまして、風の勇者様、そして火の勇者様、闇の勇者様、今晩はお元気でしょうか。今日はお呼び出しに応じて参りました―――」

「いいのよいいのよ、従者たちが申し訳ない態度を取ったけれど、わたしはそこまで気にしない。

 火と、闇の勇者とは既に知り合いなんだってね。こちらこそ初めまして、わたしは風の女神に選ばれて祝福を受けた、風の勇者。

 君の次の対戦相手でもあるから、そこのところよろしくね」

 

 俺の挨拶に真っ先に返したのは、火や闇の勇者とはまた別の魅力を感じる、女性のハーフエルフだ。魔法と弓に長けるエルフと、満遍ない才能を秘める人間の間に生まれたハーフエルフは、人間ほどではないが器用性とエルフの魔法の血を継承し、そして二種族の間に生まれたことによる社交性を新たに生まれ持ったある意味また別の種族である。そして風の女神の祝福を受け、風の神器を得たことで彼女、風の勇者は本元のエルフよりも強力な弓の使い手となった。

 火と闇の女勇者に風の女勇者が加わったことで、ここに勇者パーティの女性陣が勢揃いしている状況だ。未だ魔王を倒しておらず、役目を持った勇者に色目など向けられたものでないし、また親しくもない女性との距離感は難しいし、話の取っ掛かりも掴みづらいので正直女勇者に囲まれたところで嬉しくはない。欲情は完全に理性に押さえつけられている。

 

「しかし如何に対戦相手とはいえ、無名の私ごときを勇者様がお呼びしたのは何故でしょうか?」

「もっと気軽に話してくれても……呼んだのはわたしじゃないよ」

「申し訳ありません、あなたを呼んだのは私です。私たちの間で次の相手を話題にしたことで、顔見知りだとバレてしまいました。

 とはいえ情報を渡すのも渡さないのも、どちらかへの肩入れとなりかねず、それならば直接面識を持たせた方がよいと呼びました」

 

 中立を誓った闇の勇者がわざわざ口にするとは思えない。恐らく、以前顔と名前を見ていた火の勇者がバラしたのだ。

 てっきり風の勇者の指示で呼ばれたものと思っていたのでそっけない対応の予定だったが、闇の勇者の顔を潰すわけにはいかない。しかし、問題はどこまで関係がバレたのだろうか。俺は探りを入れつつ、話しても問題ない程度の事情を喋る。

 

「なるほど。それならば仕方ありませんね、改めて自己紹介を行います。

 私は闇の大神殿で、勇者になる前の闇の勇者様と共に育った人間です。

 闇の勇者様とは古くから面識があり、また聖域に向かい、神器を手に入れるまでの道中を護衛した経緯もあります。

 その後は私も独立して身を立てようと、神殿を離れて冒険者になり、現在に至ります」

 

 兄妹であるとまでは話さないし、嘘も言っていない。社交性に長けるハーフエルフで、かつ技能役なこともありこの手の交渉事には敏感そうな風の勇者だが、魔法で強化されたステータスは一部勇者すら上回る俺のはったりを見抜くほどの差ではない。

 闇の勇者本人や、また以前に同席した火の勇者は真実を語ってないことを知っているが、風の勇者は俺の表情に注意しておりそちらに目を向ける様子はなかった。俺でない者の不手際でバレる様子はなさそうで、安心した。

 

「ふうん。年齢から、大雑把に言って幼馴染なんだね。どうせ身を立てるなら、勇者の従者になろうと思わなかったの?」

「いえ、どうせ身を立てるなら一から自分の手でやりたかったのです。

 それに勇者の知古というだけで優遇されるなど、私より優れた従者様方に顔が立ちません」

「現実的なんだね。好ましいけど、現に大会で勝ち上がるだけの力があるんだから、近道を選んでも良かったんじゃないかな。

 ……うーん。君、それだけの才能はともかく、装備品はどこで手に入れたのかな」

 

 風の勇者は俺に対する簡単な質問から、続けて俺の力に関する質問をぶつけてきた。

 彼女は俺の装備品が実力の割に過剰だと既に気づいているらしい。材質はミスラルを除けば普遍的な鋼鉄製ながらも、巨人を軽々と傷つける攻撃力や打撃を凌ぐ防御力は流石に魔法のものと気づかれる。そもそも目に見えて自立浮遊(アニメイテッド)する盾は高レベル戦士の必需品とも言うべき、中位の魔法のアイテムだ。駆け出しに買えるものではないと気づかれているだろう。

 

「……冒険に行った時の戦利品ですよ。巷ではワイヴァーン狩りの冒険者と有名になったようですが、何も亜竜しか狩ってないわけではありません。大会でも使っている防具は若い真竜の巣を荒らした時に得たもので、武器は元から持っていたものと手に入れたものの半々を相手ごとに使い分けています」

 

 だが、この質問はあからさまにこちらの手札を探る質問だ。出所たる闇の女神から貰った祝福(チート)のことを公然で、しかも他所の神の使徒に伝えるなんて社会的および宗教的自殺行為だ、語れるわけがない。次の対戦相手というだけで十分断る理由になるが、話の序盤でぶった切るのは関係が気まずくなる。闇の勇者経由で何度か接点を持ちそうな相手にそれは望ましくないため、ここだけ嘘を語った。

 

「そっか。あ、いや。

 これから対戦するのに手の内を聞いちゃうのは自分でもちょっと酷かったね、ごめんごめん。

 そりゃ話しにくいよね」

 

 とはいえ、俺が語ったのは単に運が良かったようですという何の根拠もない偶然である話だ。今話相手になっている風の勇者は、ある意味でこれ以上ない勇者という幸運に恵まれた人間たちだけに、それを素直に信じる様子はなかった。とはいえ真実が分かるわけでもなく、せいぜい口に出せぬ出所であると察した程度であろう。

 

「どうせ試合を目にした人間の口から伝わるものですから。

 参加者は試合を観戦することは出来なくても、従者や他の勇者から情報を得ることは出来るのでしょう?

 どこの選手もそれくらいはやっているそうですからね、悪質な妨害を受けるよりはまだマシです」

「わたしはそんなこと、絶対にやんないけど。

 でも、そうだね。聞いてしまった分は……なら、わたしの使うこの魔弓について語ることでお返しとしましょう」

「喋ってしまったのはこちらの責任なので、無理に話さず聞き逃げしても構いませんよ」

「何それ。それじゃ、わたしが悪人みたいじゃない。

 そんな提案は風の勇者としても、善の使徒としても受け入れられません」

 

 チートによるその場のアイテム調達や、アイテムの魔法を抜けば単なる立派な装備を揃えた戦士に過ぎない俺は、目に見えるものが力の全てだ。切り札はなく、レベルは彼女より下回る俺の脅威といえば見たままの装備品だけにすぎないが、その魔法の装備品のアドバンテージが勇者たる彼女でも容易に覆せないからこそ、優勢はこちらにある。

 ただし問題は、風の勇者の唯一の品“風の魔弓(ボウ・オヴ・エア)”の存在だ。あれは防御力を無視した擬似的な魔法を放つ伝承があり、ものによってはそれで敗北を喫しうる可能性が高い。それだけに尤も聞き出したかった情報だが、それを彼女から語ってくれるというなら思ってもみないことだ。

 表面上では遠慮する俺だが、彼女がそれを断って情報を喋り始めたことに内心しめしめと思う。

 

「私の“風の魔弓(ボウ・オヴ・エア)”は、風の女神様からいただいたこの世唯一の神器です。

 世に謳われる通り、武器としても十分に強力な魔法の弓ですが、他にない特徴として矢を番えずに弓を引くことで電撃、もしくは疾風の魔法の弾を放つことが出来ます。

 それらは鎧を貫通し、あるいは隙間を容易く潜りぬけ、あなたを直接傷つけるでしょう……つまりその鎧だけでは私の攻撃を止めることは出来ないよ」

「さて、どうでしょうか」

 

 俺の強みが活かせないと告げた風の勇者に、俺は強く言葉を返す。そを受けて、ピクリと眉をひそめ、一瞬不愉快な表情を見せた風の勇者。確かに実際、鎧を貫通する矢弾は防げないし、そこに彼女の斥候たる目利きで急所を穿たれれば、無様な敗北もありうる。だが完全には防げないにしても、ダメージレースで勝つために被害を防ぐ手段は幾らでもある。そして彼女の説明には、魔弓にそれを克服する手段があると語らなかった。

 

「そっか。ここで負けを認められると、わたしが君を負けさせたみたいで困ったけれど。

 勇者のお覚えがめでたいだけあって、やる気も実力も十分な対戦相手で安心したよ。

 ……これで思う存分、やりあえるね!幼馴染くん!」

 

 風の勇者は俺のそれを強がりと認識したようで、それに強気な言葉で返す。

 彼女とその従者たち、そして祝福を授けた風の女神には悪いが勝算はこちらにある。

 闇の女神からいただいたこの祝福(チート)、勇者にすら立ち向かえることを披露しよう。

 

 




“風の魔弓”/Bow of Air:この+3ショッキングバースト・ロングボウは、通常の矢を用いる代わりに1d6点の刺突ダメージを与える風の矢、または1d4[電気]を与える雷の矢を放つことが出来る。それぞれは遠隔接触攻撃として命中判定を行うが、ただし射程はこのロングボウの最初の射程単位以内(《遠射》などの修正がなければ基本110ft)とする。
 また風雷の矢による遠隔接触攻撃を行う時、ロングボウから打ち出したアローとして扱い、それに対する《武器熟練》や《武器開眼》などは適用されるが、その他は疑似武器呪文に基づく。(よって風雷の矢にはこのアーティファクトに付与されているショッキングバースト能力の追加ダメージや、強化ボーナス分の追加ダメージも乗らない)

元にしたD&Dには存在しない、オリジナル・データなのでここに掲載。
こういう日本のRPGっぽさがあり、かつ独特の活用法がある武器アーティファクトはロマン。

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