ダンジョンズ&ドラゴンズもの練習   作:tbc

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RPGな展開が終わり、ようやくイチャイチャしたえっちな話が挟めました。
もう少し量を書いたら、このシリーズを単体の小説として分離する予定です。


英雄になる話とこれからの進展した話

―――嵐と共に船に襲いかかった恐るべき死した竜が、再び雷撃の吐息をぶつけようとしたその時!

 雷雨の彼方より青銅竜がドラコリッチの体に爪をつきたてたのだ!

 

 たまらずドラコリッチは逃げ出し、雷雨の中に紛れ込む。

 それを見届けた青銅竜は、恐れおののく船員たちにこう告げた。

「同胞を助けるべく勇気を振り絞った人間たちよ、神は汝らに報いるべく一人の英雄を遣わした。

 見よ、今まさに神の加護ぞある!」

 

 ドラゴンの声かけに応じて、唯一ドラコリッチに恐れなかった一人の少女が進み出た。

 少女がドラゴンの目の前で懐刀を抜き放つと、小さなダガーは光の柱を立ち上らせた!

 すると突如嵐が止み、雲が吹き散らされ晴れ間が広がり、豪雨に紛れるドラコリッチの姿が照らし出された!

 

 そう、風の神は信者たちの勇気ある行いを見て、善なる竜騎士の少女を遺わしていたのだ!

 

---

 

「という英雄譚が、とうに巷で口々に語り継がれております。

 特に人気のある説話では、竜騎士の少女は勇者を導く竜の巫女であり、空飛ぶ邪龍である魔王オーカスを倒すために神が遺わした説が付け足されておりますね。巫女がドラコリッチを討伐せしめたのは、数ある竜の中で我こそ勇者にふさわしいとブロンズ・ドラゴンが名乗り出るために功績を立てたのだと。あるいは、巫女はブロンズ・ドラゴンの化身そのものだったという説もありました。

 いずれにしても人々の間では当人、当竜たちをさしおいて巫女は勇者を引き立てるために竜を連れてきた説話が意図的に流行されておりますわ。流石は世界を縦横無尽に駆ける風の神殿、二日三日で(うた)を広めるのもお手の物」

「うう、勇者様の口からそれを語られると、恥ずかしいです……私は勇者様ほど立派な英雄でもなく、ただご主人様のお役に立ちたいだけのメイドですから」

 

 死竜ドラコリッチを滅ぼす功績を成し遂げた翌日、俺はキャラヴェル船の彼らが戻ってくるよりもずっと早く、闇の神殿にマーミアという正義の心を宿した勇敢な少女が死竜討伐を成し遂げた、その功績は神殿騎士たる俺が見届けたと伝え、彼女の功績を神殿内に広める。彼女を後押しする時に神殿騎士名義を使ったので、俺はかつてこの名誉をくださった闇の大神殿の神殿長に連絡を取り、書状をしたためてもらうなど相談して、決して他の誰かに偽られたり栄誉を奪われることがないよう彼女の功績をより確かに保証してもらった。後は噂が広まり切るのを時間を待つだけ、と。

 そう思っていたが、周りの動きは予想以上に早かった。ドラコリッチ討伐から三日後、闇の勇者―――でなく今日はプライベートの我が血を分けた妹が料亭の我が家にやってきて、前述の詩を語ったのだ。風の神殿は盗賊(ローグ)吟遊詩人(バード)など技術技能に長ける信者の多い宗派だけに、キャラヴェル船の仲間が本殿に速達を送り、それを信者たちが詩に仕上げて一晩で広めたのだろう。もう少し遅れれば、耳の早いどこぞの誰かに功績を奪われる可能性は十分にあった。

 

「私の存じている『メイド』とはいささか役目が異なりますが、マーミア様が英雄になられたのはお兄様の願いに叶っておりますよ。私人としての言葉になりますが、あなたは英雄として勇者に負けずとも劣らない見事な功績を成し遂げたとお兄様の妹たるこの私が保証します」

「私は勇者様に様付けされるような偉い人じゃないので勘弁してくださいます!」

「いいえ、巨大な竜のドラコリッチを倒したことは勇者でも難しいことと断言出来ます。

 それを成し遂げた貴方が英雄を否定するのは、英雄の格を下げることになります。それはつまり貴方を英雄にした、影の英雄たるあなたの主人、私のお兄様を貶めることに連なり、よろしくありません。

 今日はプライベートではありますが、私はこの道の先達として貴方の態度に口出し、指導させていただきます」

 

 さて、妹はドラコリッチが倒されたことを詩で耳にして、俺たちがお願いを果たしたと察しやってきたようだ。彼女はお願いを遂げてくれたお礼から、ドラコリッチ討伐の英雄となったうちのメイドをより英雄らしく矯正を手伝ってくれている。マーミアは大半が俺の力で英雄となったから謙遜する気持ちを持っているが、その心が顔に現れてとても竜騎士や英雄には見えなくなっている。しかし南の大陸で土の聖域を占領していた数々のデーモンたちを退けた功績を持つ闇の勇者は、口だけの俺より実感を持って英雄らしさを教えるだろう。

 

「多くの英雄は生まれた時から英雄ではありません。人ならば、どんな英雄にも育ち、力を鍛える時間がありました。

 祝福を受けた勇者でさえ、旅立ちを始めた時はとても魔王に叶う実力は持ちません。大陸を巡り、試練を経て更なる祝福を受けることでようやく倒せるだけの実力が身につくのです。

 そしてまた英雄や勇者と語られる者たちも、全員が全員戦うことで栄誉を得たわけではないのです……闇の神器の恩恵はご存知ですね。そう、剣、槍、杖、弓、斧と六人の勇者が武器を携える中で唯一武器ではありません。無害ではありませんが、これで凶悪なモンスターを討ち果たすことは決して出来ません。しかし代々これを用いる闇の勇者が偉大に語られるのは何故か。それは恐ろしいモンスターを討ち果たす勇者と共に脅威の前に立ちはだかり、目覚ましい助力を果たすだけで十分賞賛に値すると人々が認めた結果なのです。

 それを思えば、たとえアイテム頼りであろうと、ドラコリッチに怯えず善竜と共に彼を退け、その核たる経箱を破壊して完全に滅ぼしてのけた。マーミア様が何と思おうと、それは人々にとって英雄に値する行いなのです。民衆は、巨大なドラコリッチを前にして怯えずにはいられません。また善のドラゴンにたやすく背を許されることもありません。何より、その他の多くの人々が生きる街中でお兄様に出会い、助力を得た時の運もまた、他の人々に与えられなかったものの一つです」

 

 しかし、熱が入ると説教じみて話が長くなるのが彼女の欠点だ。うんざりする話の長さを、そのペースの上手さで補っているものの、まともに頭に入る内容ではない。それ故、マーミアの心にその言葉は完全には届いていないのだった。

 

「死を撒き散らすドラコリッチを避けなかった戦いへの姿勢、英雄と賞賛する人の声、善竜に背を許された誇り、お兄様の助けを得た幸運。それらを英雄でなければ持たず、得られぬものでしょう。マーミア様はその幸せと栄誉を受け入れてください」

「でも、私はご主人様の助力があってそれらを得たと思っています。ドラコリッチを倒す方法も、ブロンズ・ドラゴンとの交渉だって全て……」

「いや、それは違うなマーミア。確かに倒す方法を提案したし、青銅竜と交渉したのは俺だ。だが結局、ブロンズ・ドラゴンに背を許されなかった俺ではドラコリッチを倒すことはできなかっただろう。そして例えお前以外の誰かにそれらの役目を託そうとして、それが勇者たちが試練より戻り、ドラコリッチを倒すまでに間に合ったかは確実ではないだろう。だから背を許されたお前だけが、あの時 海域で確実にドラコリッチを倒し得たんだ。

 先の闇の勇者の例で言えば、確かに英雄を手助けした俺もまた英雄と語られるのかもしれないが、逆に言えばその助けを受けてドラコリッチを直接打倒したお前が英雄と語られずして、誰がドラコリッチ討伐の英雄となるんだ?」

「ドラコリッチを滅ぼしたのはご主人様でした。経箱を壊したご主人様がドラコリッチを倒した英雄となるのではありませんか」

「だってその瞬間は、第三者は誰も見なかったから語る奴がいないんだもの。そもそも、ドラコリッチを退けなければ、ドラコリッチを滅ぼすことはできなかった。それはそれでドラコリッチを討伐し退けた英雄とは別に、ドラコリッチを滅ぼした英雄が存在するだけじゃないか。見てないので語られないけれど」

「でも、俗世を広く神様は監視しておられます。神様は借り物の力で為した私のことを英雄と認めないでしょう」

 

 だんだん俺をあげたいがために躍起になりつつあるうちのメイドだが、とうとう感情に任せて自爆する言葉を放った。

 

「いや、ここにはプライベート中とはいえ歴とした女神に認められ、祝福を受けた闇の勇者がいるわけだが」

「私事中ながら闇の女神の地上の代弁者たる私が貴方をドラコリッチ討伐の功績者に認めます。これで晴れてマーミア様は神公認の英雄となりました、おめでとうございます」

 

 それはプライベート中の勇者で言って良い言葉ではなかった。この上なく綺麗に返されて逆に凹まされるマーミア。

 

「うう、勇者様が私をいじめます……」

「いえ、思うに、マーミア様は英雄という名前に清き印象を抱きすぎでないかと。

 英雄だってパンを食べれば酒を飲み、金を持ち運ぶ人間です。貴方が英雄と仰りたいお兄様だって、臆病ですが欲張りな心を持つ人間。

 それに比べて、愛に生き、ちょっとの贅沢を知るマーミア様が力を偽ったくらいで、英雄でなくなることはありえないかと」

 

 神の祝福を受けし天然の英雄たる闇の勇者(プライベート)が、英雄について語る。神も他の英雄も彼女を英雄と認め、民衆と神殿たちも詩を通じて彼女が英雄と語っている。あと認めていないのは彼女自身くらいでは?

 

「と、いいますか。マーミア様に英雄になってもらいたいのは、お兄様の意思ですよね?

 あまり上下関係を強いるのは好ましくありませんが、お兄様をご主人様と仰ぐマーミア様がその意思に逆らうほど英雄になるのは嫌なのですか?」

「……そういうわけではありません。私はただ、ご主人様を差し置いて英雄になるのがすごく気まずいんです」

「それは確かにお兄様の悪いところなので、強く批難してあげましょう」

 

 うおい。ツッコミを入れたくもなるが、妹は俺の気持ちを知った上での発言なので怒ることは出来ない。

 

「でも、残念ながらお兄様のことを英雄にするには、お兄様を英雄と協賛する人、あるいは功績の目撃者が足りません。今回は諦めて、マーミア様が英雄になった後で次回こそ先に根回しを済ませ、お兄様が栄誉を成し遂げたと民衆に語られるよう努力しましょうね。

 そうですよね、闇の神殿にすぐさま話をつけたり神殿長様に連絡するなど抜かりない手回しをなさったお兄様?」

 

 なんだかんだ色々あったが、度重なる俺のチキンハートに怒気を含んだ声で呼びかけてくる我が妹のおかげで、マーミアには自らが英雄であるという自覚を持たせることが出来た。これで近々どこぞの風の神殿か貴族か、ドラコリッチに被害を被っていた箇所からお呼ばれしても、彼女が謙遜して断ることはなくなったろう。

 

「ところで、あの、さっきから何度も私のことを様を付けて呼ぶのはやめていただけませんか」

「そうですね。マーミア様は今の時代に勇者よりも早くドラコリッチほどの脅威を倒して英雄となった方。功を比べるつもりはありませんが、勇者に負けず劣らずの賞賛を受ける相手と言えるでしょう。

 ですから今や勇者と並ぶ御方として、これからお互い、様を付ける代わりに名前で呼びあいたいのですがいかがでしょう」

「ええっ!?そんな、恐れ多い……」

「国を治める王様と魔王を倒す勇者、どちらが立派か比べられないように、民衆の剣である英雄と魔王を刺す矢の勇者の間で上下関係があるなんておかしな話でしょう?

 それに私、これまで勇者以外に公私ともに心を許せる相手が少なくて寂しいんです。だからどうか、気軽に話せるお友達になれませんか?」

 

 ただしこの後 うちのメイドとやりとりするもう一つの話次第では、違う流れを辿ることになりかねないけども。

 そうなると、お礼は返したと俺に言い残して、希少な友人が出来たことを喜びつつ帰った妹には申し訳ない結果になるかもしれない。

 

---

 

 マーミア手製の夕飯を二人で食べた後、俺は昼間の件に続いて大事な話があると切り出す。

 

「マーミア、俺とお前は今まで主と従の関係にあったけど、これを解消する。

 ドラコリッチを倒した英雄のお前は、金貨数百枚で買われ続ける存在じゃなくなってしまった」

「え……」

 

 突然、切り出す形になってしまった。初めは冗談ですよね?といった顔をしていたマーミアも、俺の真面目な顔を見つめるうちに本気だと悟って、非常に動揺する。

 

「何故ですか、ご主人様。私、そうするために英雄になったんじゃないんですよ?

 私はご主人様が喜ぶから、望まれるように頑張って、望まれてなると決めたんです。

 力も運もご主人様にもらったものなのに、それを失った本当に薄っぺらいだけの英雄に、私はなりたくありません!」

「落ち着け。主従はやめると言ったが、繋がりを切るとは言ってない。

 ただ今の俺では、英雄の忠誠を受けるにはあまりに存在が軽すぎるんだ。

 名誉神殿騎士という位も闇の勇者の護衛の便宜、そのために兄妹だという理由で選ばれ戴いたものだから、位を獲得した経緯を軽々しく口にすることは出来ない。それだけで闇の神殿騎士の権威が下がるからな。

 というか、公的にはこれから俺とマーミアの関係は逆転する。英雄と、力ばかりの無名冒険者だ。

 だからこそ、俺とお前が関係を続けるには、一度ぶち壊して新しい関係を作らなくちゃならないんだ」

「やります。ご主人様が私のことを好きでいて、私がご主人のことを好きになっていられるならなんだっていいです」

 

「いいのか、まだ内容すら話していないんだぞ。

 それに、俺のことをご主人と呼ぶことは出来ないぞ。なんたって、これからは主従関係を逆転するんだからな」

「え?逆転……とは?まさか私が、ご主人をお金で買い取るのですか」

「まさか。俺は元より金はいらないが、力を託せ、信頼出来る……お互いに信頼しあう相手が欲しかった。

 マーミア、俺のことは信頼出来るだろうか」

「憎らしいあんちくしょうと思うこともありますが、私はご主人のことを愛してます」

「それは俺がお金で買われた主人だから、忠義を捧げてるつもりの言葉か」

「いいえ、お金のことは殆ど関係ありませんでした。いつでもお金は返せるけど、それでさよならされると私も悲しくなるからです。本心からの気持ちでした」

「その気持ちはこれから、お前が主人で、俺がその従者になっても変わらない?」

「……どうして私がご主人の主人になるのですか?」

「先も言ったが、今や無名の俺より英雄のお前が公的には偉く見える。

 でも実際は、その力は俺に借りた装備のおかげだし、それがなければ英雄にはなれないとお前は思っている。

 なら普通は忠義と微力を捧げ、御恩をもたらす主従関係の代わりに、英雄となる力を与え、信頼と庇護をもたらす主従関係になることで今後の全ては解決出来る」

「私は、例え名義だけでもご主人様の主人になることは出来ません。それほどのものを私は持っていません……」

「いいや、英雄となったお前は、俺のほしいものを全て手に入れているんだよ。

 俺がほしいのは贅沢とちょっとした名誉を果たしても、臆病な俺が目立つことないよう風除けになってくれ、信頼できる相手。

 それがあれば、相手が奴隷だろうと貴族だろうと王様だろうとエルフであっても、誰でもかまわない。

 要するにマーミア、お前が英雄で俺の主人となることで、それら小さな欲を全て満たしてくれるのよ。それにこれには別のメリットがある」

「な、なるほど……メリットってなんですか」

「金で買われて始まった、今までの関係は不純だった。

 しかしこれからはその不純な関係を改めて、お互いがお互いを共に支え合い、助け合って生きていく健全な関係を作りたい。

 だからマーミア、次の言葉をよく考えて答えてほしい。

 どうか俺に生涯を支えられる騎士になってくれませんか?」

 

 これが、俺がこれから生きる上で考えに考え、決めたプロポーズの言葉である。

 少し男らしさに欠ける、格好のつかない台詞になったが告白の意味が伝わるだけの体裁は整えた。

 彼女は少しキョトンとして、俺の言葉を何度か反芻してようやく告白に気づいたのか、顔を赤らめながら、ゆっくりと頷いた。

 

「驚きました。ご主人……いえ、あなたからこんなに積極的な言葉をかけてくれたのは初めてですね」

「性的な意味での積極性なら、前にも言ったことはあるが」

「あの時は恋人らしさの欠片もありません。発情した兎のごとき発言です。

 しかし今の言葉は、ごしゅ……私から求めないで、あなたから愛を語りかけてくれました。そういうことですよね」

「そういうことになる」

「では、あなたの告白にお答えします。

 喜んで、私はあなたの騎士になりましょう。

 あなたを愛し、守ることを誓います。だからあなたも、私のことを一生支えてください」

 

 マーミアは俺の両手を取り、二人の顔の前で手を握りしめ合うようにして俺の言葉を了承してくれた。

 告白は成立した。これより俺と彼女は生涯のパートナーであり、また騎士と従者の関係になった。

 臆病な従者は騎士に彼を脅かすものたちから守り、ハリボテの騎士は従者の力を借りて英雄たらんとする。互いに打ち解けあった二人の前に、恐れるものはもはや何も無い。

 俺たち二人が揃えば、もう何も怖くないのだ。これから二人で生み出す未来の可能性は考えきれず、その情熱が体にこもって熱くなる。

 

「なんか、今になってドキドキしてきました。ごしゅ……あなたも熱いです。恥ずかしいんですか?」

「うん、ちょっと俺も自分の言葉が恥ずかしくなっている。あまりにもベタすぎた、あれはないな」

「いえ、女の子は格好良い男性に可愛くされるのが大好きです。騎士様みたいで」

「これからの騎士はお前だろう」

「むう、そういうのは格好悪いです。私が騎士になっても、私にとってのあなたは私だけのご主人様で、騎士様ですよ。

 今までもこれからも、ずっとそうしていてください」

 

 今後の大事なお話を始めた当初の冷めた空気はどこへ行ったのかとばかりにお熱い関係となった俺と彼女。

 この熱はお互いを見てるだけで思い出して恥ずかしくなり、暫く冷めることがなく今日は二人で一緒のベッドに寝た。

 よくよく考えれば寝床を共にするなんてエッチだな、とベッドに入り込んだ後で気づいたけど、こうして手を握り合って向かい合っているとむしろそうしなきゃ逆に恥ずかしいように思えて、つい腕を寄せて抱きしめあうまでになってしまう。

 マーミアが俺に覆いかぶさるように、早い心臓の鼓動が伝わってくるまで密着した。でも、これでようやく顔が見えなくなったので、心が落ち着いて代わりに眠気が押し寄せてくる。潰されて寝苦しい感じはあったはずだけど、高揚感が麻酔となり、そういうのを全然感じないままいつの間にか眠ってしまっていた。

 

 

 翌朝、寝相を悪くした体の痛みで二人して冷静に戻り、恥ずかしさでほぼ無言のまま神殿からの知らせが来るまで半日を過ごした。

 

 


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