捻くれ少年のラブコメディ   作:リヨ

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29話

「あれ?八幡、小野寺は?」

とある平日。いつものように学校へ行くと、小咲の姿がなかった。

「そういや来てないな…」

「ホームルーム始めるぞー!今日小野寺は熱で休みだそうだ。お前らも風邪ひかないようにな」

あいつ風邪ひいたのか。メールの一つでもくれればいいのに…

「…学校終わったら見舞い行くか」

 

 

 

 

 

 

「すみませーん」

「はーい…ってお兄ちゃん!」

「おう。小咲が熱出したって聞いたからな…見舞いに来た」

「…そっか~」ニヤニヤ

「…なんだよ」

「いやー?付き合う前なら、俺なんかが行ってもうれしくないだろ、とか言いそうだったのに今じゃこれですからねー」

「…帰る」

「あー!待って待って!お姉ちゃんもきっと喜ぶから!ほら!」

「…お邪魔します」

そんなに俺が見舞いに来るのが珍しいか?珍しいな。

「お姉ちゃん?起きてる?入るよ?」

「春?うん…って八幡くん!?」

「よう。大丈夫か?」

「ど、どうして」

「彼氏として彼女が熱出したのに見舞いに行かないわけないじゃん!ね?」

「…まぁ」

「か、風邪うつしたら悪いよ」

「大丈夫だ。俺には比企谷菌という最強の味方がいるからな」

「…何言ってるのお兄ちゃん」

「…忘れろ。とにかく俺のことは気にするな。ほらリンゴ持ってきたんだ。食うか?」

「あ、ありがと」

「…ちょっと待ってろ。おい春ちょっとこい」

「な、なに?」

 

「どうしたの?」

「…ちょいと失礼」

「え?ひゃあ!?」

俺は自分の手を春の額にあてる。…あっつ。やっぱりこいつも熱あるな

「熱あるな。来た時顔赤かったから疑ってたんだ」

「だ、大丈夫だよ私は!」

「だめだ。寝てろ」

「でもそしたらお姉ちゃんの看病が」

「それは俺がやるから気にすんな。というかこれでさらに春の風邪がひどくなったら悲しむのは小咲だぞ」

「うぅ…わかったよ」

「ほら、じゃあ乗れ」

「え?」

「そんな熱あったら歩くのもやっとだろ。おんぶしてやるから早く乗れ」

「…こういう時だけお兄ちゃんぶるんだから」

「俺は普段からお兄ちゃんだろ。よっと…」

「…なんかあったかい」

「冷たかったら死んでるってことだからな。あったかいに決まってる」

「そういうことじゃないよ…ばーか」

「…」

 

「小咲、待たせたな」

「どうしたの?」

「いや、春も熱出してな、寝かせてきた」

「だ、大丈夫!?」

「あぁ。少ししたら良くなるだろ。それよりお前だって熱あるんだからあんま興奮するな」

「うん…ごめんね」

「…恋人ならこれぐらい当然だろ」

「…ありがと」

その後俺は春と小咲を交互に看病した。小町が熱出した時とかよく看病したからその知識が役に立ったな。

「…八幡くん?」

「ん?起きたのか。どうした?」

「えっとね…汗かいたから体拭きたいなって…」

「お、おう。じゃあ外出るから終わったら呼んでくれ」

「う、うん」

…だめだ妄想しては。一瞬「私の体拭いてくれない…?」とか言われるかと思ったがさすがにそれはないか。

「は、八幡くんいいよ」

「おう…ってまだ着替えてねぇじゃねぇか!」

「ま、待って!その…背中拭いてほしいの」

「…ワンモアプリーズ」

「せ、背中拭いてほしいの」

「…いや、いいの?」

「うん…恥ずかしいけど」

「…ほんとに?」

「で、でも前とかは見ちゃダメだよ?」

「み、見ないです。見たいけど見ないです」

「…」

…ごめんなさい。本音が出ました。いや、男の子なら仕方ないでしょ?ねぇ?そこの君!

「…えっと、お願いしていい?」

「わ、わかった………じゃあやるぞ?」

「うん…優しくしてね?」

その言い方だと他のことが始まりそう。

「んっ……冷たい…」

「…あ、あまり変な声出さないんで欲しいんですけど…」

「だ、だって…ンンッ!」

「お兄ちゃん?お母さんが」

「どわぁぁぁ!!?」

「え?きゃっ!」

俺が背中ふきに精神を研ぎ澄ましていると、突然ドアがあき、春が入ってきた。それに驚いた俺は前に倒れ込んでしまう。

「……お、おおお兄ちゃん」

「…ま、まま待て。これはごか」

「なにしてるのー!!!」

「誤解だー!?」

「……は、早く八幡くんどいてぇ」

 

 

 

 


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