私の宝物   作:御都合主義の狂信者

3 / 6
節約生活で本買う余裕が無い御都合主義の狂信者です。
 気が付いたらUAが2,000人超えしていた。雪ノ下さん並にキツイ感想で正直めげそうですが、材木座さんの気持ちが少し理解出来た気がします。だから今後も感想を書いていただけると嬉しいです。
 他にもお気に入りに登録してくれた方も、評価してくれた方もありがとうございます。


第3話 キャラメルとクッキー炭

 現在、私達は家庭科室に来ている。あの後、彼女の依頼を聞いた。それによるとどうやら前に助けて貰った子にお礼がしたいらしい。

 そこでどうしようかと考えた結果、クッキーを作ろうと思いいたったが、自身が無いとの事だった。

 友人に聞けばどうだとも聞いたが、友人には無理との事。まあ中には、恋人的に茶化す子もいるからな。彼女の反応を見るに、その手の子が多いのだろう。

 

「でっ、俺は何をしたら良いんだ? 」

 

「貴方には作ったものを味見して、感想を言ってもらえればいいわ」

 

 そしていよいよ、彼女のクッキー作りが開始されたのだった。

 

「・・・・・・なあ俺は、クッキーを味見するだったよな」

 

 今私達の前には、彼女が作った、木炭としか思え無い、黒い塊が置かれていた。

 

「動すればあれだけのミスが出来るのか、私もわからないわ」

 

 雪乃も頭を抱えている。確かに私も見ていたが、途中止めたくなったからな。

 

「これもう毒味じゃね? 」

 

「毒じゃないし!?」

 

 八幡は、クッキー炭を指差してそう言う。彼女は何とか反論を言うと、そのまま天パで銀髪の木刀を持った主人公の話しに出てきそうな、卵焼きの様な物を摘み上げる。

 

「やっぱ毒かなぁ~〜」

 

 いや反論はしたまではいいが説得力の無いこれのせいで、彼女は自身の言葉に、自信をなくす。

 

「でももしかしたら、食べたら美味しいかも知れないじゃん」

 

 食うことは確定なのか? もはやその可能性は皆無だと思う・・・仕方が無い腹を括るか。

 

「分かった。ちょっとまて」

 

 私はそう言うと、自分の荷物からある物をあらかじめ取り出す。

 

「んっキャラメルか? 」

 

「そうだ本来は糖分補給の為に、作って持ち歩いてるのだがな。どうせだからクッキーを食うついでに、食べると良いだろう」

 

 まあ万が一の事もあるとは、さすがに彼女には失礼だから、口にはしないがようは口直しだ。そしていよいよ、私達は未知なる黒い塊を口にする。

 ハッキリ言おう苦い。そして塩辛い。これがクッキーと言われたら、クッキーが可愛そうな味だ。

 私は食べ終えた後、急いでキャラメルを口に放り込む。口の中にキャラメル独特の甘さが広がる。先程の炭の事もあり、何時もより甘く感じる。

 

「折本・・・・・・サンキュー」

 

「何・・・気にするな・・・・・・・・・」

 

 そして私達は、先程の黒い塊によるダメージが酷かったので、一先ず休息を取る。

 

「反省会だが、さてどうしたものか」

 

「由比ヶ浜が、今後料理を作らなければいい」

 

「それで解決しちゃうんだ!?」

 

 まあ結論的にはそうだろう。だがそれは最終手段だ。まだ改善の可能性もある。いやあれを見るとあるのかなぁ・・・自信が無くなっきた。恐るべし黒い塊。

 

「やっぱ向いてないのかなー? ほら、あたしって才能てっいうかそういうのないし」

 

 彼女は1人そうつぶやく。むしろ逆に不味い料理を作る才能があると、私は思うが。

 

「由比ヶ浜さん、改善の方法は分かったわ。努力あるのみよ」

 

 その瞬間私の思考は一瞬だが停止する。これって努力でどうにか出来るものなのか? 思わずそんな疑問が頭を過ぎる。

 

「でもさ、こういうの最近みんなやってないって言うじゃん・・・・・・やっぱりこういうの向いてないんだよ、きっと」

 

 うわぁそれを彼女前で言うかぁ。私は心の中で、雪乃の逆鱗に無自覚に触れてしまった彼女に対して、合掌をする。

 

「まずはその認識を改めなさい、最低限の努力もしていない人に才能を語る資格なんてないわ。悪いけど才能無いとか言い訳にして、諦めようと言うのその考え、私は嫌いだわ」

 

 彼女は予想外の説辣な言葉に、俯いてエプロンを握りしめる。まあ今回は雪乃の逆鱗に触れてしまったんだ、だから哀れみはするが同情はしない。

 

「カッカコイイ! 」

 

 まさかのドMなの? 私はそんな風に目の前で起きた事を一時的に逃避する。

 

「私、結構キツイ事言ったと思うのだけれど」

 

「ううん・・・・・・確かに聞いた時は流石に引いたよ、でもなんていうのかなぁ? ほら建前とか全然言わなくて、自分の本音を人にちゃんと伝えられるのって、あたしはすごいと思う。あたし何時も人に合わせてばっかだったから」

 

 雪乃は呆気に取られてそう言うと、彼女は首を横に振ってそう言った。あぁ何となくだが、彼女のその言葉から、彼女の周囲の人間関係が、何となく分かった気がする。

 

「ごめん、今度はちゃんとやる。だから2人とも手伝ってください」

 

 そして彼女は頭を下げてそう言った。

 

「・・・・・・はぁ雪乃。仕方が無い、試しにお前が作ってやれ」

 

 まあこうなったら仕方が無い。雪乃が言い出したのだ。言い出しっぺには、それなりに働いて貰おう。

 

「うまっ! 何お前パティシエなの?」

 

「本当に美味しい……雪ノ下さんすごい」

 

 雪乃が作ったクッキーは、店に出せるレベルだった。と言うよりこれは不味い。いや美味いけど不味い。市販のが食えなくなりそうだ。

 

「フフッそう。でもね由比ヶ浜さん。これはレシピに忠実に作っただけで、特別なことは何もしてないの。だから由比ヶ浜さんにもきっと作れるわ」

 

 ハア水を指すように悪いが、雪乃・・・自分のレベルで、自己完結は辞しているな。

 まあ彼女のヤル気を削ぐ訳にもいかん。私はそう思い黙っておく事にした。そしていよいよ、彼女のクッキー作りが再開された。

 

「由比ヶ浜さん、そうじゃなくて粉をふるうときはもっと円を描くように。円よ円。わかる?ちゃんと小学校で習った?」

 

「かき混ぜるときにちゃんとボウルを押さえろ! ボウルごと回転させてどうする! イヤイヤ全然混ざってないからな。そこ回すんじゃなくて切るように動かす」

 

「違うの、違うのよ。隠し味はいいの、桃缶とかは今度にしましょう。そんなもの入れたらクッキーの生地が死ぬわ。死地になるわ」

 

 もはやあれは、死闘と言うべきだろう。私も心配で一緒に協力していたのだから。

 そして、無事に生地も焼きあがった。僅かに焦げているが、食べられるレベルにはなったな。

 

「なんか違う」

 

「どうしたら伝わるのかしら・・・・・・」

 

 だがどうも、お2人方は満足してないらしい。やばいな、このままだと目的が変わってしまう。

 

「いや私はこれで充分な出来だと思うが」

 

「でも、雪ノ下さんのと違うし・・・・・・」

 

 あっこれは、目的を完全に忘れられている、仕方が無い、思い出させるために言うしかないだろう。

 

「どうすれば上手くいくんだろう」

 

「あのさ、お前らなんでうまいクッキー作ろうとしてんの? 」

 

 だが私が言う前に、先に八幡が答えた。不服ではあるが、新入部員が動き出したのだ。仕方が無いので、私は八幡のやり方を見物する事にする。

 

「しばらく外で待っててくれ。俺が本物の手作りクッキーってやつを食わせてやるよ」

 

 あっ察し。なるほどな。私は八幡がやろうとしている事をいち早く理解する。

 

「なるほどね。そんじゃ遠慮なく待たせて貰うとしよう」

 

 私は一先ず家庭科室を出て、しばらく待つ事にした。そして私達が帰って来たら、案の定八幡が出したクッキーは、彼女が先程作ったクッキーだった。

 

「うん何か余り美味しくない」

 

「確かに・・・でもこれって・・・・・・・・・」

 

 彼女は自分が作った奴と気付かないまま、感想を言う。だがどうやら雪乃は気づかないまでも、違和感には気付いた様だ。

 

「そうか頑張って作ったんだが・・・・・・悪いやっぱ捨てるわ」

 

 八幡は技とそう言いクッキーの皿を持って、ゴミ馬に捨てようとする。

 

「待って! 」

 

 だが彼女は面白いくらいに八幡の演技に乗せられて、思わず八幡の手を掴む。

 

「べっ別に捨てなくても良いじゃん。確かにちょっと焦げてたりとか、形が不格好だけど。美味しいし・・・・・・」

 

 やばい吹きそう。私は必死で笑うのを堪える。雪乃はそんな私を見て、怪訝そうな顔をする。そして頃合いだろう、八幡がネタバレに入る。

 

「まあ、これ、お前のクッキーだけどな」

 

「ブハッ!?」

 彼女はそれを聞いて、呆気に取られる、私はついに笑いを堪えきれず、ついに吹いてしまった。

 

「アハハハハハすっすまない。最初から気づいていただけについな」

 

 そして私は弁解をする。だが私に注目が行ってしまったので、仕方ないため少し手助けしてやろう。

 

「話しがそれたな。八幡説明してやれ」

 

「はぁ・・・これは俺の友達の友達から聞いた話しだがな。そいつにある時優しくしてくれる女子がいてな。その子があんまし優しくしてくれるもんだから、あれ? もしかして、こいつ俺に惚れてね? そう思って好きな人は誰か、聞いたわけよ。そしたらえぇどうしよう見たいに、もったいぶって言うもんだからな。仕方ないので、イニシャルを聞いたらHと答えてきた。そしたらもしかして俺か? なんて思わず口に出した訳よ。そしたらはぁ何言ってるのキモイって、言われて翌日にはクラス全員に、そいつはキモガヤって呼ばれましたとさ」

 

 八幡よ・・・友達の友達の時点で可笑しいからな。後、最後のキモガヤって、もう隠す気ないだろ。私はそう思いながら前かがみの体制で額に手を当てる。

 

「それで、その話しがこれとどう繋がるのかしら。キモガヤくん」

 

「おいキモガヤ言うな、まあよおするにだな。男ってのはちょっと優しくされただけで、勘違いしちゃう訳だ。それもお前見たいな美人がクッキー出せば、例え不味かろうが気持ちは揺れるだろうよ」

 

 八幡はそう締めくくる。なるほどなまあほぼ及第点と言った所か。

 

「ヒッキーも揺れるの?」

 

「あぁ揺れる揺れる。思わず飛び上がっちゃう位に喜んじゃうね」

 

 ふむ頃合いだなさてと八幡よこれで終わりではないぞ。

 

「そっか・・・・・・それじゃあ皆あRi「さて、では再開するか」」

 

 八幡よ今回のやり方はなかなかのものだった。だがな最後の詰めが甘かった。故にこればかりはやって置かなければな。私はそう思うと八幡の手からクッキーの皿を取り上げる。

 

「確かに、八幡の意見は正しい。だが少なくとも単独で、このレベルを作れ無いと問題だ。故に単独でも、このレベルに作れるまでは練習するぞ」

 

 流石の私の意見に八幡も雪乃も反論は出来ない。何故なら普通に考えればただ当たり前の事を言っただけだからな。そしてその日は遅くまでひたすらクッキーの練習を続けたのだった。

 

「はぁ全く・・・いきなり言うとか、あのままでも終われたのに」

 

 八幡はそう言うと、ため息をこぼしながらジト目で睨んで来る。

 

「ハハハ悪かったなほらキャラメル」

 

 私は苦笑いを浮かべ、八幡にキャラメルを差し出す。

 

「おっサンキュー」

 

 八幡は私のキャラメルを貰うと、すぐさま口に入れる。

 

「なぁこれ、俺が良く飲んでるマッカンに似てうめぇな」

 

「今日は少し、コーヒパウダーを加えて作ったからな」

 

 私はそう言うと、ラノベをカバンから取り出し、そのまま読書を始める。

 

 隣では八幡は鳩が、豆鉄砲を食らった様に固まってるが無視する。

 その後はお礼に由比ヶ浜の奴が来て、あれだけ練習させたのにすっかり元の黒い塊となった。クッキー炭を試食したのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。