放課後にμ'sの練習を見に行く為に屋上へ行くと、園田が騒いでいた。今日一日教室でも変だった気がするが何があったんだろうか。
「人前で踊るなんて無理です!」
「まだ言ってたのか園田は」
「まだ言ってるんだよツカサ君…」
高坂が呆れた様に口にする。高坂に呆れられるとか色々と大丈夫か園田よ。
「どうしよう穂乃果ちゃん…ライブは明日なのに…」
「そうだよね…って、そう言えばツカサ君生徒会は?」
「出禁になった。生徒会室の扉に“綺羅ツカサの出入りを禁ずる”って貼り紙されててな?それでも生徒会室に入ったら会長にゴミを見る様な目で見られた。死にたくなった」
実際あれはかなり辛かった。クラスに“絢瀬会長にゴミを見る様な目で見られながら罵られたい!”とか言ってた馬鹿が居たが洒落にならんぞあれは。
「もしかして私達のせいで生徒会長と喧嘩しちゃったの?」
南が心配そうに俺を見てくる。
「別にお前達のせいじゃ無い。元々廃校を阻止する為に動くなら絢瀬会長には話すべき事も含まれてたしな。つーか最終的な原因はそっちだろうし」
「でも…」
それでも南は申し訳なさそうにする。癒し系動物だなコイツは。
「それよりも今は園田だな。スクールアイドルが踊れないとか話にならないぞ」
「海未ちゃん!そんな時はお客さんは野菜だと思えば良いってお母さんが言ってたよ!」
「野菜…?」
園田が考える様な素振りを見せる。
☆☆☆☆
※海未の脳内
「皆さん~!私の歌!聞いてくださーい!」
瞬間、海未の後方で大爆発が起きる。爆煙の中から髪の毛が逆立った金髪の二人が現れる。
「キャキャロット!今日こそ貴様を越えてやるぞ!」
「ベタージ!おめぇと本気で闘うのも久し振りだなぁ!オラ、ワクテカすっぞ!」
爆煙から現れた二人は周りに構う海未に構う事無く闘いを始める。その攻撃が海未を巻き込み…
☆☆☆☆
「私に死ねと言うんですか穂乃果は!?」
「一体何を想像したの海未ちゃん!?」
園田が屋上の隅へと逃げる。マジで何を想像したんだ。
「そこまで言うなら強行手段だ!」
高坂が立ち上がり何かを決意した様に声をあげた。その後に高坂に連れて行かれたのは秋葉原だった。
「こ、ここは…」
園田は顔を真っ青にする。手にはライブのチラシがある。今から何をやるかの想像がついたみたいだな。
「ここでライブのチラシを配ろう!人がいっぱい通るし、大きな声を出せばその内大丈夫になるよ!」
「確かに理論としては間違ってないが…」
肝心の園田は念仏を唱えるかの様に自己暗示をかけていた。
「お客さんは野菜お客さんは野菜お客さんは野菜お客さんは野菜…」
「おいバカやめろ。野菜だと想像してさっきも駄目だっただろう」
「うっ…」
言うのが遅かったのか園田がふらついた。
☆☆☆☆
※再び海未の脳内
街を歩く人々が屈強な戦闘民族に見える。
「キャキャロット、まずお前から血祭りにあげてやる…」
「もう許さないぞ!お前達!」
「戦闘民族の王子はこの俺だ!」
街が壊れていく。そしてまたもや攻撃が海未を巻き込み…
☆☆☆☆
「あ、レアなのが出たみたいです。伝説のブロッコリーさんですってツカサ…さっき街を歩いてる人に似たような方が居ましたよ…」
「そう、だな。うん」
見ていられなかった。園田はふらついた後に虚ろな目でガチャガチャコーナーへ向かいガチャガチャを回していた。
「海未ちゃん!?現実逃避しないで!?ツカサ君も諦めないで!?」
「穂乃果ちゃん…いきなりここは難しかったんじゃないかなぁ?学校の校門にしよう?」
「正直それが良いと思います高坂さんそれでお願いしますこんな園田を見てられません」
南の提案に全力で同意する。このままじゃ確実に園田が壊れる。
「そ、そうだね…じゃあ学校に戻ろうか…」
「あ、今度はアスパラさんですよ…ブロッコリーさんのおとうさんですって…ツカサにあげますよ…?」
オッサンのキーホルダーを笑顔で渡してくる園田。これは本格的にヤバイ。
「お、おう…ありがとうな園田……………早くしろ高坂!間に合わなくなっても知らんぞーっ!」
全力で学校へ戻った。
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所変わって音ノ木坂の校門。流石に落ち着いたのか園田は元に戻った。あのままだったらどうしようかと思ったぞ。
「ここなら大丈夫だよね海未ちゃん?」
「ま、まぁここなら…」
そう言いながらも園田が通る生徒に掛ける声は小さい。
「恐らく全部配らないと帰れないぞ」
「そ、そんな!無理です!」
園田の発言を聞き高坂が寄ってきた。
「海未ちゃん私が階段を5往復出来ないって言ったらなんて言ったっけ?」
「……分かりました!やれば良いんですよね!」
そう言って園田は生徒達にチラシを配る。高坂の発破のかけ方は見事な物だ。
「流石は幼馴染だな。扱いを心得てる」
「逆もまた然りだけどね?でも、やっぱり海未ちゃんと一緒に居ないと駄目なんだなって思うよ。ことりちゃんともそうだし…勿論ツカサ君とも。この4人でライブを成功させたいって思うもん!」
高坂は笑顔で語った。そしてその笑顔にツバサと同じ物を感じた。
「あ、あの!ライブ見に行きます!」
チラシを配る園田に声を掛けたのは1年生の子の様だ。眼鏡をかけて大人しい印象を受ける。
「本当に来てくれるの!?ありがとう!」
「では、1枚や2枚と言わずにこれを全部…」
「悪いが不正はNGだ」
☆☆☆☆
更に所変わって高坂の自宅だ。
高坂の自宅でA-RISEの動画を見ていた。因みに未だにコイツらは俺がツバサの弟だとは知らない。何故に気付かないのか。名字は同じだし名前なんか一文字違いなだけだぞ?
「やっぱり動きのキレが違うなぁ…こう?それともこう?」
高坂がツバサの動きを真似るが全く合わない。そんな中でパソコンからお知らせ音が鳴る。ランクが上がったのだ。
「ランクが上がった!きっとチラシを見てくれた人が投票してくれたんだ!」
「嬉しいものですね!」
高坂と園田が画面を見て顔を綻ばせる。すると部屋に南が紙袋を下げて入ってくる。そして高坂が紙袋を見て声を弾ませた。
「それってライブの衣装!?」
「そうだよ!じゃーん!」
南が紙袋から衣装を取り出す。若干シンプルなデザインではあるが見栄えも良く、とても手作りとは思えない代物だった。
「へぇ…凄いな中々の完成度だな。南は才能あるな」
「本当に!?嬉しいよ!」
「うん!まるで本物のアイドルが着る衣装みたいだよ!」
俺と高坂が高評価を出す中、園田は慌てていた。
「何ですかそのスカート丈は!?言った筈です!スカート丈は膝下よりも短いのは履かないと!」
園田が南の肩をガッ!っと掴む。顔が怖い。
「だってアイドルが着る衣装だし…」
「アイドルだからと言ってスカートが短い決まりは無い筈です!」
高坂の持論を即座に切り捨てる園田。必死過ぎるだろう。
「ツカサはこの衣装の事は知っていたんですか!?」
「神田明神でスカート丈の話をした時に察した」
「あの時の哀れみの目はそれだったんですか!?」
その場に座り込む園田。相当ショックだったらしく泣きそうになっていた。
「3人が結託するなら私一人だけでも制服で踊ります!」
「だって…ライブを成功させたいんだもん…」
高坂の言葉で、部屋を出て行こうとした園田の足が止まる。
「この4人で頑張ってきたって思いたいの!」
高坂が窓を開けて叫ぶ。気持ちは分かるが近所迷惑だからやめろ。
「それは私も同じかな。ここまで頑張ってきたんだよ?」
「ことり…」
観念した様に園田が溜め息を吐いた。
「ズルいですよ…分かりました!やるなら徹底的に、絶対に成功させましょう!」
その言葉を聞いた瞬間に高坂が園田に抱きついた。後は明日に向けて出来る事をするだけだな。
「なら最後に神頼みでもしておくか?」
俺の提案に3人は頷いてくれた。
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またもや所変わって今度は神田明神だ。明日のライブの成功祈願に来た。
「明日のライブが成功…いや、大成功しますように!」
「皆が楽しんでくれますように…」
「緊張しませんように…」
「廃校を阻止出来るように…」
全員が願いを言い終わり空を見上げた。見上げた夜空は綺麗な星空だった。
「明日、楽しみだね」
高坂が呟くと園田と南が頷く。最初はライブが失敗すると思っていた俺も、らしくない期待をしていた。
穂乃果はやっぱり主人公
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