最後の部分以外の時系列は穂乃果達が1年生の時です。
私、園田海未には親友と言える人間が2人居ます。それは幼馴染の高坂穂乃果と南ことりです。穂乃果とことりは引っ込み思案だった私を引っ張り出してくれた恩人でした。私はそんな2人に恩返しをしたいと常々思っていました。そして音ノ木坂に入学して少し経った頃、穂乃果から頼まれた事がありました。それが元でツカサと交流を持つ事になったんです。
「海未ちゃん!本格的に剣道教えて!!」
「どうしたんですか急に」
「穂乃果ちゃん、廃校を阻止する為に剣道の大会で優勝して注目を集めたいんだって」
「剣道の大会で優勝ですか?穂乃果の腕では無理かと思いますが」
「うっ、新人の大会なら行けるもん!」
穂乃果はこの頃は剣道部員でした。私も弓道部と掛け持ちでやっていましたが、穂乃果の剣道の腕前は可も無く不可も無く、と言った感じで優勝出来るとはとても思えませんでした。ですが穂乃果が簡単に諦めるとは思えなかったので、ある条件を出す事にしました。
「穂乃果の熱意は分かりました、ですが優勝となると並大抵の事では実現は不可能です。なので1つ試練を与えます。それを達成できたら穂乃果に協力しましょう」
「試練?どんな内容?」
「試練の内容ですが、最近音ノ木坂も共学になり、剣道経験者の男子生徒もごく僅かですが居るらしいです。なのでその経験者の男子生徒から一本取れたら協力しましょう」
私の話しを聞いて、穂乃果は考える素振りを見せました。そして少し考えた後に穂乃果は私に質問してきました。
「らしいって事は海未ちゃんは誰が経験者の男子かは知らないの?」
「……先輩から聞いただけですので」
「そっか、相変わらず海未ちゃんは男の子が苦手だねぇ……うーん。どうせなら同じ1年生が相手の方が良いよね?このクラスに居たかな?」
そう言うと穂乃果はクラスに居る数少ない男子生徒達に声を掛けに行きました。
「ねぇ?ちょっと良いかな?」
「ファッ!?こ、高坂さん!?な、何かな?」
「そ、そんなに動揺しなくても……私何かしたかなぁ?」
穂乃果に声を掛けられた男子生徒は見るからに動揺してました。そしてその反応を見た穂乃果はきょとんとしています。穂乃果は自分が男子生徒から人気を集めているという自覚が無いのですよね。
「相変わらずだね穂乃果ちゃん。まぁ告白を素で友達宣言として受け取るから当たり前なのかな?」
「そうですね。でもことり?貴女も人の事は言えないのでは?」
ことりも男子から呼び出される事があった気がしますが……
「ことりはちゃんとゴメンナサイしてるもん。それに……」
「何ですか?」
「ことりは出会い方を重視したいんだよね。白馬に乗った王子様みたいな出会いでも良いし、一目惚れでも良いけど、兎に角キュンと来る何かが欲しいかなぁって」
「そ、そうですか」
「でも穂乃果ちゃんと海未ちゃん、2人と一緒に居られるよりも楽しい事があるとは思えないけどなぁ」
友情と恋愛は別だと思いますけど……この時のことりの瞳が妙に熱っぽく見えるのは流しておきましょう。
「海未ちゃん……大好きだよ」
「ッ!?ことり!?」
ことりが私の耳元で囁いてきました。それに驚いた私は教室の角に逃げましたが、ことりも私にジリジリと近付いて来ます。どうすれば、と考えていたら穂乃果が戻って来ました。
「あれ?海未ちゃん、ことりちゃん、何やってるの?」
「何でもないよ?それより穂乃果ちゃん、経験者の男の子は見付かった?」
「うん!隣のクラスに1人居るみたい!一緒に行こう!ほら海未ちゃんも!」
「は、はい」
この時私が穂乃果に助けられて無ければどうなっていたんでしょうか?もしや私はことりのおやつに……
☆☆☆☆
「すみませーん!このクラスに剣道経験者の男の子って居ますかー?」
「ほ、穂乃果!声が大きいです!」
隣のクラスを訪れた私達でしたが、穂乃果が大声を出したせいで変に注目を集めてしまいました。
「剣道経験者の男子?ツカサの事じゃないかな?」
剣道経験者の男の子と聞いて生徒の1人が、ある人物の名前を挙げました。それが綺羅ツカサ……彼の名前だったのです。
「やっぱりこのクラスに居たんだ!そのツカサ君?だったかな、何処に居るの?」
「ツカサなら生徒会に行ったよ。何か入学早々生徒会役員の人に気に入られたみたいで、引っ張られて連れて行かれてたな。ツカサは凄く嫌そうな顔してたけどね」
この時既にツカサは生徒会に気に入られたみたいでした。因みに音ノ木坂の生徒会長選挙は10月で、生徒会に入る事自体に時期は問われていません。“生徒会執行部”なので、部活と同じ扱いです。選挙があるのは会長選のみなんです。
「だぁー!空振りかぁ……」
「いや、無理矢理連れて行かれたせいで荷物を忘れてるから待ってれば戻って来ると思うよ。どうする?待ってみるかい?」
落ち込む穂乃果に生徒は優しく声を掛けました。この方は男性の中でも紳士的な方かも知れないと……思っていました。
「あの、貴方の名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「ああ、すまない自己紹介をしていなかったね。“ワタシ”の名前は相川涼(あいかわ りょう)だ。宜しく」
この時私は違和感を覚えました。何故男性なのに自分の事を“ワタシ”と言ったのか。ですが男性でもそう言う人も居るのかと思い、言及はしませんでした。
「私は園田海未と申します。宜しくお願い致します」
「私は高坂穂乃果!宜しくね!」
「南ことりです!」
その後、相川君……と談笑をしていると、ツカサが荷物を取りに戻って来ました。
「やぁツカサ、お客様だよ」
「げっ、相川“先輩”。また“男装”してるんですか?何故2年生の先輩が1年生の教室に居るのか、何故周りの生徒がそれに突っ込まないのか、それは置いておきます。ですけど男装は止めた方が良いと思いますけどね。態々男子の制服まで発注して……」
「良いじゃないか。理事長や教員の許可を得てこの制服を着ているんだ。何ならツカサ、女装してみないかい?」
私達とツカサの初めての出会いは、別の意味で衝撃的な出会いでした。
「さて、ワタシは邪魔だろうから失礼するよ。何の用事でツカサに会いに来たかは知らないが、上手く行く事を祈ってるよ」
「あっ、えっと、ありがとうございました?」
未だに相川先輩に対して理解が追い付いていない穂乃果は間の抜けた返答しか出来ませんでした。私とことりも理解出来てはいないんですけどね。
「で、俺に用事があるのか?」
「あ、うん。えっと剣道やった事ってある?」
「あの人を見て動揺するのは分かるが落ち着け。先ずは剣道をやっていたかって質問に対しての解答は肯定だ」
「すみません。穂乃果は今混乱しているので私がお話をさせて頂きます。私は園田海未と申します」
相川先輩の事で混乱している穂乃果はツカサに対して若干気後れしていました。なので代わりに私が話をする事にしました。
「綺羅ツカサだ、手短に頼む。生徒会に行かなきゃならないんでな。剣道部の勧誘だったら断るぞ?」
「あ、違います。何と言いますか、穂乃果と試合をして欲しいんです」
「面倒くさそうだな。理由を聞いても良いか?」
私は穂乃果の計画、私の出した条件について話しました。するとツカサは大きな溜息を吐きました。
「俺完全に無関係じゃん。面倒くさいからパスで」
「廃校阻止の為だよ!?無関係じゃないよ!!一緒に頑張ろうよ!!」
「急に元気になるなよ。しかも何で俺もお前と一緒に頑張る事になってるんだよ」
この時のツカサは本当に無関心なリアクションでした。しかしその程度では退かないのが穂乃果でした。
「この学校が大好きだから!少しだけで良いから……私の我が儘に付き合って!!」
「穂乃果ちゃん、あんまり無理に言ったらダメだよ……」
「お友だちにもこう言われてるぞ。とりあえず時間切れだ。じゃあな」
そう言ってツカサは教室を出ていきました。
「他の生徒にも頼んでみましょうか?別に彼だけが剣道経験者と言う訳では……」
「うん……でも、ツカサ君じゃないと駄目な気がする」
今思えば穂乃果は本能的に分かっていたんだと思います。生徒1人の協力も得られなければ廃校阻止なんて夢物語なのだと。
☆☆☆☆
私はノートを閉じて一息つく。
「ツカサとの出会いをノートに書き出しましたけど、作詞には使えそうもありませんね。しかし改めて書いてみると、穂乃果の行動力には驚かされます」
やはり穂乃果の魅力はその皆を引っ張っていける力と太陽の様な暖かさなのでしょう。
「さて、そろそろ皆がやってくる時間ですね」
時計を見ると午後7時。今日、皆が私の誕生日を祝ってくれるらしいので正直ワクワク、ソワソワしています。
「しかしこんな大切な時期に大丈夫でしょうか……“特別なライブ”もあると言うのに」
私の誕生日を祝ってくれるのは嬉しいのですが、やはり気になってしまうのは私の悪い癖です。そんな事を考えていると、玄関の呼び鈴が鳴りました。
「全く、穂乃果の計画性の無さにはやはりお説教が必要ですね!」
ですがやはり、私が玄関へ向かう足取りはさっきまでの不安を感じさせない程軽い物だった。
相川先輩はスクフェスのキャラ。ちょくちょく絡ませていく予定。その他のキャラも出てくるかもしれない。
園田さんのガチャも回したいけど、西木野さんの誕生日の為にラブカを貯めないといけないから断念。西木野さんガチャ、10連を10回やるんだ(フラグ)
そして園田さんの誕生日って劇場版の時期に直撃している事実。卒業式が3月1日と考えるならの話ではありますが。