「来年度から新入生の募集を止め…廃校とします」
理事長室から聞こえた無慈悲な声。それと同時に高坂が理事長室に飛び込んだ。
「そんな!廃校なんて…後1週間…いや、2日待って下さい!そしたら何とか…」
「2日はいくらなんでも無理だ。それに落ち着け高坂、オープンキャンパスの結果を待たずに廃校は無いだろう。ですよね理事長?」
慌てる高坂を宥める俺。絵里さんも驚いて言葉を失ってる。
「え、えぇ。オープンキャンパスでのアンケートの結果次第で廃校が決定します…ノックくらいはしてくださいね?」
「あっ、すみません…あんまりにもびっくりしちゃって。あはは…」
「もう…ですが理事長室に来たと言う事は生徒会長の出した条件はクリアしたと言う事ですね?」
「はい!赤点は回避出来ました!」
自信満々に答える高坂。お前点数ギリギリだったじゃねぇか。
「なら、ラブライブのエントリーは認める事とします。それで良いですね?生徒会長?」
呆然としていた絵里さんは理事長の声を聞いてハッとした様な表情を見せてから頷いた。
「は、はい。勉強を疎かにしている訳では無いみたいですので…」
「計算が外れた見たいね?」
「そ、そう言う訳では…いえ、予想外ではありました。高坂さんと矢澤さんは確実に無理だと思ってましたから」
「高坂は兎も角流石は矢澤先輩。バカ認定はされてたか。ある意味期待は裏切らないな」
「…何かバカにされた気がする」
「気のせいでしょ?」
「オープンキャンパスのイベント内容は生徒会で決めさせて頂けませんか?」
絵里さんが理事長に詰め寄る。
「……止めても聞きそうに無いわね」
結局理事長が折れる形で決着が着いた。
「ツカサ、行くわよ」
「珍しく今日は役員が全員居る日ですからね…つー訳で今日は生徒会の方で仕事があるから」
「あ、うん。頑張ってね」
高坂達に別れを告げて生徒会室に向かった。
☆☆☆☆
「これから生徒会は独自に動きます。何か良い案は有りますか?」
「絵里さん」
「何かしら?」
「これだけ人が居るのは珍しいし目安箱を「却下」デスヨネー」
オープンキャンパスに向けての作戦会議が生徒会室にて行われている訳だが…誰も意見を言わないな…
「絵里さん」
「……何よ」
「ここの学校の制服って人気なんですよ、知ってました?」
「あっ、私知ってる!可愛いって評判なんだよね!」
「そうなんだよ、でも逆に男子が着るには少し派手でな。たまに不良に絡まれるんだよ」
俺の話しに書記が食い付く。やはり今時の奴は制服の見た目も気にするらしい。
「男子の制服派手…かな?私にはそうは見えないけど…」
「…じゃあ何で俺は不良に絡まれるんだ?」
「それはツカサ君本人の問題やない?」
希さんからの意外な一言だった。俺って不良ホイホイだったのか…
「話が逸れてるわね…他には?」
絵里さんからの質問に会計が答える。
「強いて言うなら…アルパカですかね?」
☆☆☆☆
「これ…ですか?」
俺達は今アルパカ小屋の前に居る。そして絵里さんがアルパカを見て固まっている。
「絵里さんは見るの初めてでしたね。目安箱の投書に書いてあった通り、白い方がオスで茶色い方がメスです…………見るな…そんな純粋な目で俺を見ないでくれ……!!」
「何してるん?」
「いや、なんとなく」
「……これはあまり魅力的には…」
絵里さんの言葉に怒ったのかアルパカが絵里さんに唾を吐きかけた。そう言えば唾を吐くんだっけ。
役員達が必死に絵里さんを拭いていると、飼育係の小泉とその付き添いの星空がやって来た。
「せ…生徒会長さん?」
「…貴女達…」
「あっ!μ'sの子達だよね!今度のオープンキャンパスでライブとか…」
「部活の活動紹介でライブの場はあるから態々言わなくても良いわ。それにまだ何も決まってないわよ…行きましょう」
その日は結局何も決まらずに終わった。
☆☆☆☆
「この様に音ノ木坂の伝統は古く…」
今俺は絵里さんの家でオープンキャンパスの時に行うスピーチの練習を聞いているんだが…
「………」
「………」
「………すぅ…すぅ…」
1人寝てるな。高坂の妹だったか?だが眠くなるのも分かる。超つまんねぇもん。
「……どうだった?」
「す、凄く良かったです!後半引き込まれました!」
「夢の世界にな」
「うっ…綺羅さん…」
必死にフォローする高坂(妹)を弄るとやっぱり高坂の妹だと分かる。
「…ツカサはどうだった?」
「正直凄くつまらなかったです。一体何がしたいのか、何を伝えたいのか、誰に伝えたいのか、全部が分かりませんよ」
「亜里沙もそう思う。お姉ちゃんのやりたい事って何?亜里沙には分からないよ…」
「……私のやりたい事…」
こんな言い方は酷だったかもしれないが、今言わなければ多分気が付かないだろう。自分のやりたいことに。
☆☆☆☆
「私にダンスを教わりたい?」
生徒会室に来たのは高坂と園田と南の3人だった。絵里さんにダンスの特訓をして欲しいらしい。本当にタイミングが良いな。頼むなら今だと思っていたんだが。
「お願いします!私達、上手くなりたいんです!」
高坂達が頭を下げる。絵里さんは少し悩む様な仕草をしながらも、それを了承した。
「…でも、やるからには私の水準に合わせて貰うわよ!」
絵里さんの水準に合わせてか。これはまた大変そうだな。
☆☆☆☆
「痛いにゃ~!」
絵里さんが練習を見てから数分後、いきなり問題点が浮上した。
「こんな柔軟性とバランス感覚で良くここまで来れたわね!」
そう、柔軟性とバランス感覚が特に無いのだ。軽い柔軟体操等はしていたがやはり足りない。これから殆どはその練習に時間を使うそうだ。
そしてそれから1時間程経った時だろうか。小泉がバランスを崩して倒れた。
「かよちん大丈夫!?」
「う、うん。大丈夫…!」
「そこまでよ。今日はこれで終わり。自分達の実力が分かったでしょ?」
そう言って絵里さんは屋上を出て行こうとした。しかしそれを高坂が止めた。
「ありがとうございました!また明日も宜しくお願いします!」
「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」
「ッ!」
絵里さんはお礼を言われるとは思って無かったんだろう。少し驚いた顔をしてから屋上を出て行った。
「「あっ」」
翌日の放課後、教師の頼みで雑用を片付けていた為、少し遅れて屋上に向かっていたら、絵里さんが教室で泣いて居るのを見た。そして絵里さんも俺を見付けた。あれ?凄いタイミングで鉢合わせしちゃったのか俺って。
オリ主はコミュ障特有のタイミングの悪さ。