私は今、ちょっとパニックになってる。μ'sのメンバーが5人以上になったから部活の申請が出来る!って思って生徒会室に行ったら、ツカサ君が生徒会長に怒られてるんだもん。普段誰かに怒られてるイメージが無いツカサ君の意外な一面が見れたけど、なんでそんなに怒られてるのかさっぱりだよ!
「大体なんで年下なのよ!」
「別に年下が好きって訳じゃないですって!何より恋愛なんてしたこと無いですよ!?」
恋愛?もしかしてツカサ君の好きな人の話?……ちょっと興味あるなぁ。そう思って盗み聞きしようとしたら、副会長さんに声をかけられた。
「えっと、高坂さん。ゴメンな?少し立て込んでて…部活の申請で来たんよね?」
「あっ、はい!部員が5人以上になったので…」
「残念やけど、5人になっても活動は認められへんのよ」
「えっ!?何でですか!?」
確か生徒会長に出された条件は部員が5人以上居ることだったよね?何でだろう?
「あっ、別に意地悪で言っとるんや無いで?実はね?この学校には“アイドル研究部”って部活が既にあるんよ。似たような活動の部活を認めると、部費や何やらが大変なんよ。廃校の話がある音ノ木坂なら尚更やね。だから活動は認められへんのよ」
「事情は分かりましたけど…」
それは仕方無い理由だとは思うけど、納得は出来ないよ…このまま諦めるなんて!
「勿論方法が無い訳やない。似たような部活が1つになって活動するなら問題は無いで?言ってる意味は分かるよね?高坂さん、案外賢いから」
優しい笑顔で打開策を教えてくれた副会長さん。そっか!2つ部活が1つになるなら部費とかの問題も無い!それにそのアイドル研究部の人達もμ'sメンバーに…
「あっ、アイドル研究部の部員は部長1人だけなんよ。部活申請時に5人以上居れば、その後何人になっても問題ないんよ。因みにアイドル研究部の部長は結構な曲者やから…覚悟した方がええよ?」
「大丈夫です!早速アイドル研究部の部長さんと話して来ます!ありがとうございました!」
そうと決まれば早速行動だ!
「頑張ってね?こっちはまだかかりそうやから…終わったらツカサ君にも伝えとくよ」
「そう言えば、何でツカサ君は怒られてるんですか?」
私がそう聞くと、副会長さんはちょっぴり困った様な、それでいて嬉しそうな顔をして答えてくれた。
「ちょっとすれ違ったコミュニケーションの結果…かな?」
「えぇ…?良く分からない…でも、喧嘩じゃ無いなら大丈夫ですよね!じゃあ失礼します!」
よーっし!早速アイドル研究部の部室に行くぞーっ!
☆☆☆☆
高坂が生徒会室を出ていった。どうやら副会長が上手くやってくれたみたいだな。しかし会長は今のにすら気が付かないとは。一体何をそこまで怒っているのか。
「ツカサ!聞いてるの!?」
「聞いてますよ。てか、会長って俺の姉がスクールアイドルやってるの知ってたんですか?」
「μ'sだけじゃなく他のスクールアイドルについても、この前調べたのよ。でも驚いたわ、ツカサのお姉さんってA-RISEのセンターの人だったのね」
「名前も1文字違いなだけですしね。なお高坂達は未だに気付いてない模様」
「それはそれで凄いわね。学校の名前を背負う以前に色々と大丈夫なのかしら」
恐らく大丈夫じゃないだろう。それにしても、小泉は高坂達に俺の姉がツバサだって言ってないのだろうか?いや、もう既に高坂達も知ってる物だと思ってるか。
「で?年下のどこが良いの?」
「話を戻すんですか」
「当たり前じゃない。小学生はダメよ流石に」
「実際、手を出す訳でも無いですよ!?何より、子供には好かれやすい体質なんですよ。女の子、男の子問わず」
「ロリコンでショタコンなの!?」
「会長、流石にキレますよ?」
「えっ、だって…」
あっ、会長これ本気で言ってるのか。少し一般的な感性とは違うと思ってたが…思い込むと思考が一方にしか向かわなくなるのか。
「まず、会長の中で俺の性癖がどうなってるんですか?」
「……ロリコンショタコンの小さい生き物しか愛せない変態」
「分かりました。1つ1つ行きましょう。まず、俺は別に年下好きじゃありません。少なくとも、小学生に恋はしないと言い切れます」
こういう事は1つ1つ誤解を解くのが正解だよな。
「分かったわ。でも、μ'sの後輩には優しいのよね?」
「それに関しては何とも言えませんね。会長だってμ'sとの蟠りを抜きにすれば、アイツ等に優しくすると思いますけど?」
「……そうね。あの子達に悪気が無いのは分かってるわ。分かっているつもりよ」
「別に責めてる訳じゃないですよ。感性の違いというか、やり方の違いはどうしてもありますし。ただ、どちらも間違ってないってだけですよ」
そう、結局は目指している結果は同じ廃校の阻止なんだよな。……ここで上手くやれば会長をμ's側に引き込めるかもしれないな。
「それで…年下と年上、どっちが好みなの?」
「おおぅ…そう来ますか…身近な年下は西木野や小泉、星空辺りか…逆に年上は会長、副会長、ツバサ…英玲奈さん、あんじゅさんって所か。好みって言われると困るな…」
「ちょっと、A-RISEのメンバーは名前で呼んでるの?私達は基本的に役職呼びなのに?どう思う?希?」
「えっウチに振るん?完全にスルーしようとしてたウチに?」
副会長が巻き込まれた。明らかに面倒事だと思って様子見をしてたのだろう。可哀想に。
「ウチは…ツカサ君が嫌じゃ無ければ名前で呼んで欲しいかな?もう1年も一緒に生徒会しとるんやし」
「私もそう思うわ。何かツカサには壁を感じてたのよ…嫌かしら?」
名前で呼ぶ…か。何時からだったか?人を無意識に名字で呼ぶようになったのは。あんじゅさんと英玲奈さんはツバサに言われて名前で呼ぶ事になった筈。だとしたら今回は?自分の意思で人に近付くのか。でも、この人達なら…俺は信じたい。
「分かりました。“絵里さん”“希さん”改めて宜しくお願いします」
名前で2人を呼ぶと、2人はとても嬉しそうな顔をして…
「ハラショー!」
「えいっ♪」
“抱き付いてきた”すんません。キャパオーバーです。
「やっと名前で呼んでくれたわ!ふふふ…このまま年上の魅力を教えてあげるわ!」
会長…絵里さんが何か言ってるが、良く聞こえない。正直に言って、慣れない名前呼びをして、更に女性2人から抱き付かれたらもうね。西木野に壁ドンした時よりも辛いね。つまり…コミュ障には無理だったよ。
俺は意識を手放した。
穂乃果って勉強は苦手で、間が抜けてる所はあるけど、発想の良さとか、頭の回転は良いよね。