IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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最終話 エピローグ

私たち、人間の勝ちだ。

 

『そうだな。お前達の勝ちだ。

だがそれは同時に、リントは我々よりも強大な存在ということになる。

いずれ後悔する。ここで死んでおけばよかったと』

 

常に何かに後悔するのが人間さ。

 

そしてその後悔をバネにして強くなるのも人間だ。

 

それが出来ている限り、我々は人間であり、グロンギでは無い。

 

それが出来ている限り、我々は負けないよ。

 

『………リントは強大になりすぎた。そうは思わないか壇黎斗』

 

私もそう思うよ、バルバ。

 

 

2027年3月20日(土)PM02:00

 

「それじゃあ行ってくるね!みんなも今日は早く帰るんだよー!」

 

幻夢コーポレーションの社長室から出た私は社員にそう伝えながら会社を後にし、とある公園を目指す。

 

「みんな元気かな…」

 

あの戦いから10年。高校生だった彼らは今や成人……って成人は5年前か。成人してからというものみんな仕事や家事にと忙しく中々会う機会に恵まれなかった。

 

そして今日、なんとかみんなの予定が合い花見をすることになった。開花情報見てないけど大丈夫だろうか。

 

「……そういえば…3月20日って始まった日なんだ」

 

10年前の3月20日。私は社長からの指示でIS学園にゲーマドライバーを届ける最中に桐也くんと出会い、彼は仮面ライダーとなった。そこから未確認生命体とバグスターの戦いが始まった。

 

件の社長は戦いが終わった10年前の12月を最後に私を新社長に任命し社長自体は会長という立場になった。いや、会長とは名ばかりで結局は隠居を決め込んでいる様なものだ。

 

「確かあの時渋滞に巻き込まれたのよね……今日は違うといいけど」

 

若干の不安を抱きながら私はタクシーに乗り込んだ。

 

 

「車進みませんね〜」

 

『タドルレガシー』を遊んでいた私に運転手が話しかけてくる。ゲームに集中していたとはいえ流石に渋滞が起きていたのは分かっていた。

 

「今日は急いでるのになぁ…間に合うかな」

 

「最悪、ここらで降りて電車に乗るのも手だと思いますよ〜」

 

確かに電車に乗れば少し場所が遠くなるが公園近くの駅には着くだろう。

荷物をまとめてお金を払おうとした時、

 

「へい彼女、乗ってかない?」

 

「え"桐也くん!?あ、すいませんここで降ります!」

 

窓をノックして手をヒラヒラさせているのは九条桐也くん。10年前の戦いで意識不明になったけどなんとか回復、リハビリ生活も長かったけど今はこうして聖都大学附属病院で監察医として働いている。

 

私は急いでタクシーから降り、彼を追いかける形でコンビニに止めているバイク…レーザーレベル2の元まで歩いていった。

 

「ビックリしたぁ。誰かと思ったよ」

 

「ちょっと今週の週刊誌が出てたから、時間もあるし立ち読みしてたんだよ。コンビニから出たらタクシーに木綿季さんが乗ってるのが見えてね」

 

「でも正直助かったよ。バイクなら間すり抜けれるもんね。あと今は楯無よ私は」

 

「いいじゃんそこら辺はさ。それに合間すり抜けるなんてトロい事するわけないじゃん。近道使うよ」

 

近道などあっただろうか。少し考える間にレーザーレベル2は消滅した。そしてゲーマドライバーを装着して爆走バイクを装填する。

 

「変身」

 

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!』

 

「ほい、んじゃ失礼っと」

 

「え、嘘、まってまってまってえぇぇぇぇぇ!!!!」

 

桐也くんはレーザーレベル0に変身すると私をお姫様抱っこで抱えそのまま一気に跳躍。ビルの上を高速で跳び駆けていく。軽い絶叫マシンだ。

 

「確かに近道だけどぉぉぉ!!!?」

 

「舌噛むぜ!口閉じてな!!」

 

「はじめてのお姫様抱っこがコレなのは嫌ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その後も桐也くんの爆走は止まらず、あっという間に目的地に着いた。

 

 

「ううっ…酔ったわ……」

 

「みんな来てるみたいだな」

 

スタスタと歩いて行く桐也くんをなんとか追いかける。確かに花見席には今日参加するメンバーがほとんど揃っていた。

 

「あら、キリヤんさんと木綿季さんが来られましたわよ」

 

「遅いわよクジョキリ!木綿季さんとゲーセン行ってたんじゃないでしょうね?」

 

「いや…流石に社長は今日出勤日だったから……」

 

セシリア・オルコットさん。オルコット家の当主として様々な事業に取り組んでいる。料理はまだ苦手らしい。

 

凰鈴音さん。中国でアクションスターとして活躍中。映画も沢山出てるし、私もファンの1人だ。

 

更織簪ちゃん。私の大事な妹であり幻夢コーポレーションのチーフポジション。出来る妹がいるのはとても嬉しい。

 

この3人には今日のお弁当を任せていた。というかセシリアさんが任せてほしいと頼み込んできたのだ。

 

「大丈夫?ちゃんと料理出来たのそっちは?」

 

「食べれない事はないわ。安心しなさい」

 

「ちょっと失礼ではありません!?」

 

「でも…高校の時の見た目も悪い料理じゃなくなってるよ…」

 

「揃いも揃って私の傷口を抉るのはやめてください!!」

 

見た目は多少変わっても中身はほとんど変わらないなぁこの3人。

 

「あ、2人とも来たみたい」

 

「おい、ジッとしていろ。写真が上手く撮れん」

 

桜の木の下でシャルロット・デュノアさんとラウラ・ボーデヴィッヒさんが写真を撮っていた。

今では花家シャルロットと、花家先生と結婚し放射線科医師として働いている。

一本ラウラさんはドイツで黒ウサギ隊の隊長として相変わらず世界各地を飛び回っているらしい。よく休み取れたね。

 

「花家先生へのお土産ってところかな?」

 

「提案してくれたのはラウラなんです」

 

「へぇ、隊長さんがねぇ?昔はこーんなことなんて自分からしなかったくせに」

 

「クジョー、お前からも言ってやってくれ。私とシャルロット、立場が逆転するのはお前のこれからを思うと良くないとな」

 

「ラウラは心配症なんだよ〜」

 

「ええい!引っ付くな鬱陶しい!」

 

ベタベタ甘えるシャルロットさん。結婚してから甘え上手が天元突破したのかな?逆にラウラさんは面倒見が良くなったかな。

 

「あ!揃ったよちーちゃん!ほら飲んでないで!」

 

「うるさいなぁ…昼間ぐらい飲ませてくれ…」

 

「正直お昼から飲むのは早いかなぁ!」

 

既に出来上がっていたのは織斑千冬。それを引っ張るのが篠ノ之束。千冬は別の高校の教師を続けて、束は箒ちゃんに『道場を引き継いでくれる都合のいい人』としてしごかれているらしい。

2人とももうすぐ40なのに元気だなぁ。いやそんなこと言ったら私もだけど。

 

「悪い大人の見本」

 

「それ私も巻き込まれてる!?ねぇえぇちーちゃん!?ちーちゃんのせいで私までダメ大人だよ!?」

 

「違うだろ九条!ダメ大人は束だけだ!」

 

「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

激しく抗議する束に振り回す千冬。ここも立場が逆転したなぁ。昔は束が破天荒で千冬がそれを抑える役割だったけど。

 

「キリヤん、久しいな」

 

「よお箒。相変わらず目つき悪いな」

 

「余計なお世話だ」

 

「やっほ〜桐也〜お家ぶり〜」

 

「なんだよお家ぶりって。ちゃんと手伝いしてたのか?」

 

「してるよもぉ」

 

次に顔を見せたのは篠ノ之箒さんと旧姓布仏の九条本音ちゃん。それぞれ仮面ライダーを彼氏にしたが故か今でも仲が良いみたい。

 

「コレで全員かしら?」

 

「いやいや、まだアンタの妹とお姉様来てないでしょ」

 

「2人とも遅いねぇ」

 

「ごめーん!遅れた!!」

 

「噂をすれば、だな」

 

箒さんが見つめる先にいるのは更織刀奈ちゃんと布仏虚ちゃん。2人とも聖都大学附属病院の医師を務めている。刀奈ちゃんも私が楯無を襲名したからこうして医者の夢を叶えることができた。

 

「結構急いでいたんだけどなぁ。ヒイロくん説得してたら時間かかっちゃって」

 

「結局は鏡さんは来ませんでしたが。その後に彼を迎えに行っていたので遅れました」

 

「ちょっとぉ!荷物少しくらい持ってくださいよ!」

 

刀奈ちゃんと虚ちゃんを追いかける形で最後の花見メンバーが到着した。

 

「遅いぞ一夏」

 

「ったく、何やってんだ名人」

 

「ええぇ?俺だって仕事で北海道から帰ってきたばっかだぞ?飛行機が遅れたんだから仕方ないだろ」

 

織斑一夏。10年前の戦いに決着をつけた仮面ライダー。IS学園跡地にてダグバを撃破するも瀕死の状態で発見。これで2回目だよ死ぬの。

 

でも今はこうして生きている。当時の聖都大学附属病院のドクターの腕と彼自身の、クウガの治癒能力のおかげでなんとか存命出来たのだろう。

 

「これでみんな揃ったわね」

 

「主役は遅れてやってくる…お前これで2回目だぞ名人」

 

「んなこと言ったってよ…それを言うならお前だって卒業式の時に俺と一緒に遅刻しただろ!」

 

「アレはお前がトイレに籠城してるからだろ。お前のクソが長くなけりゃ俺だって遅刻しなかったんだよ!」

 

「おい2人とも」

 

「花見の席だよ桐也」

 

お互いの彼女さんに止められる2人の仮面ライダー。この2人の関係性は10年経っても…これから更に10年経っても変わらないだろう。

 

「おら、さっさと乾杯の挨拶しろよ一夏」

 

「え、俺がするのか!?……っと、まあ……みなさん飲み物持って!えーー………とりあえず、乾杯!!」

 

『乾杯!!!』

 

ぐだぐたな挨拶だけど、これも一夏くんらしい。周りのみんなからも笑みが溢れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いから10年。

 

今は桜舞う季節。

 

彼もこうして帰ってきた。

 

ならばみんなで少し思い出に浸るのも悪くないかもしれない。

 

 

 

 

せっかくなら、10年前のあの出会いの日から………ね!

 




これにてバイク名人完結でございます!!

いや長かった。初投稿が2016年の11月20日です。これはレーザーレベル3が初めて登場した回なんです。それから約5年。今ここに桐也と一夏の物語は終わりを迎えました。

今まで書いた小説で1番の長丁場になりました。中々原作の最終巻が出ないなか、まさかコッチが先に終わるとは思ってもみませんでしたよええ!!

何はともあれ、これにて彼らのSchool Lifeは終わりです。
ご愛読と応援ありがとうございました!!!


桐也「また機会があったら会おうぜ」
一夏「じゃあな!!」

◆ーーーーー◆

IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜    

           The game is over

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