IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
〜淑女と龍と特撮女子〜
「だぁかぁらぁ!!ちゃんとレシピ見なさいっての!」
「見てますわよ!ここに適量と書いてあるではありませんか!!」
「だからってドバドバ入れるのは適量じゃないっての!!」
セシリアと鈴の大声が部屋に響き渡る。ここは私が一人暮らしで使っているマンションの一室。幸い左右上下に住人はいないけどその隣から苦情が来る可能性はゼロじゃない。
「2人とも…うるさい」
「うっ…と、とにかく!曖昧なヤツはコッチに回しなさい!」
「鈴さんが作りますと濃い目の味になるではありませんか」
「アンタのゲテモノよりよっぽどマシでしょうが!」
それは同感である。セシリアは10年前から何も変わっていない……ある意味良いことだし悪いことでもある。せめて料理の腕前は変わってほしかった。
鈴はなんか面倒見が良くなった気がする。あと体格も。今ではアクションスターとして大ヒット映画に何本も出演しているほどだ。
そして私はと言うとそこまで変わったことはなかったり。幻夢コーポレーションに就職して25歳でそれなりの立場にはなったけど、恋人が出来たとかは無い。本音の話をよく聞く身としては羨ましいし欲しいとは思ってる。
「うー、これでは花見に間に合いませんわ!」
「大丈夫…いざとなったら出前頼む」
「いや正直ナイス判断よ簪…でもせっかくセシリアがやりたいって言ってんだから、もう少し任せて貰えないかしら」
「それはいいけど…時間あんまり無いよ?」
「うわあっ!?もうすぐシャルロットとラウラ来るじゃない!!ほらテキパキやる!」
「ううっ…こんなことならシャルロットさん早く来て手伝ってくださいましー!!」
セシリアの叫びがこだまする。お願いだからもう少し静かにして……
トゥルーエンディング 〜セシリア・オルコット、凰鈴音、更織簪〜
◆ーーーーー◆
〜侍ガールとのほほん少女〜
「にやぁぁぁ!?箒ちゃんタンマタンマ!」
「…またですか?剣道に待ったは無しだと何度言えば」
「でもでもでもだよ!?剣道初心者に本気で打ち込むのはどうかと思うなぁ!」
「初心者ではありませんよね?あと人間をやめかけた身体能力のくせに何言ってるんですか」
叫びながら逃げる姉さんを捕まえる。この道場を引き継ぐのならばもう少ししっかりして欲しいものだ。
「あ!そう言えばぁ!もうすぐ迎えが来るんじゃなぁい!?」
「そのくらい分かってます。本音が来るまでしっかり鍛えますので」
「鬼!悪魔!」
ジタバタ暴れる姉さん。元気になったなとは思う。
10年前の戦いが終わってから目を覚ました姉さんはあの戦いをほとんど覚えていなかった。当然と言えば当然だ。ずっとゲンムに操られていたのだから。
でも私としては姉さんと今こうして一緒に過ごせていることが嬉しい。たとえあの時のことを覚えていなくても。
「やっほ〜来たぞよ〜」
なおジタバタする姉さんを押さえつける中本音が道場にやってきた。桐也と結婚してはや三年。子供の予定はまだ無いらしいが桐也とはまだまだラブラブらしい。1週間おきに連絡してくるのは嬉しいがやめて欲しい。
「いらっしゃい本音」
「いらっしゃい本音ちゃん!出来れば助けてほしいなぁ!!」
「やらなくていいぞ」
「うん、やらないよ」
「酷い!!」
すぐに立ち上がった姉さんはダッシュで道場を後にした。追いつけなくもないが、まあ姉さんも花見に行くのだから今か後かの問題だろう。
「う〜ん」
「ん?どうした本音」
「いやぁ、またおっぱい大きくなった?」
「なっていない」
「えぇ?嘘だぁ」
「確かめなくていい揉まなくていい!」
胸から本音の手を剥がす。女同士だからといってセクハラは辞めてほしい。更織家と布仏家はダイレクトにセクハラをしてくる人がいるのは何故なのだろう。
「好きな人に揉まれると大きくなるって言わない?」
「言わな……まさかキリヤんに?」
「それはご想像にお任せするよ〜」
キリヤんのことだ、絶対に揉んでる。いや私は何を考えているんだ。
「それはそうと、早くいい人見つけなよ?」
「それについては問題ない。既に解決済みだ」
へぇ〜とニヤニヤする本音。本当の事を言えば一夏が良かったさ。でもアイツは……
「おーい!みんな来てるよー!」
「あ、束さん呼んでるね。みんな来たみたい」
「着替えるのが早いなぁ姉さん……はーい!今行きます!」
思考を切り替える。今は仲間達と花見を楽しみに行こう。
あの戦いから10年。
今は桜舞う季節。
彼はまだ…………
トゥルーエンディング 〜篠ノ之箒と九条本音〜