IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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桐也、最後の戦い


第81話 桐也 〜雪降る日のFINAL LAP〜

12月24日(土)PM02時40分

 

「元気ぃ?メリクリメリクリ〜」

 

「元気に見えるかしら?」

 

「勿論!!」

 

「動けるなら貴方をぶん殴りたいわ」

 

聖都大学附属病院 虚の病室

 

あの日から……ああ、ゲンムを倒した日から随分日が経った。だいたい1ヶ月。それまで特に大きなニュースはない。

強いて言うなら織斑先生と篠ノ之束の意識が戻ったこと、セシリアの誕生日パーリーが今日行われること。あと先輩が無事に一命を取り留めたこと……

 

 

11月22日(火)AM10時32分

 

「テメェ!!」

 

「動くなよ一夏。今ここで動けば俺はコイツの体から腕を引き抜く」

 

「さっさと引き抜きやが「落ち着け名人」

 

今にも飛びかかろうとする一夏をなんとか押さえる。ここで腕を引き抜けば出血が抑えきれなくなる。

 

「何が目的だお前」

 

「別に。ただ一夏とタイマンがしたいだけ。これが正真正銘最後のゲームだ。受けてくれるよな一夏?」

 

「当たり前だ!お前を倒してこの戦いを終わらせる!」

 

「ハハッ、心が躍るな。お前とはさいっこうでエキサイティングなゲームを楽しめるって信じてるぜ。その為にも」

 

ダグバは自分の腕を引きちぎり、俺の方へと歩いてくる。

 

「邪魔な奴は退けないとな?」

 

「その邪魔者に消される時のお前の顔が今から楽しみだぜ」

 

 

それから虚先輩を病院へ運び込み数時間に及ぶオペの結果なんとか、一命を取り止めることに成功した。

 

ダグバは去り際に

 

「1ヶ月は楽しい生活を送らせてやるよ」

 

と言った。

そして1ヶ月はもう過ぎた。そろそろ奴が動き出す頃だ。どう見てもあの時喧嘩を売られたのは俺だ。ということで会長さん達からいくつかガシャットを借りた。準備万端ではある。

 

「んじゃ、パーティーの買い出し頼まれてるんでね。ここいらで失礼しますよっと」

 

「そういえば今日が誕生日ねオルコットさん。おめでとうと伝えておいてくれる?」

 

「お姉さまに頼まれちゃあねぇ?」

 

「きーりーやー」

 

「ハハッ、冗談冗談。ちゃんと伝えるって。そんじゃね。年末前にはみんなで顔出すよ」

 

俺は病室を後にした。

 

 

果たして、全員で顔出しは出来るのだろうか……

 

 

◇ーーーーー◇

 

織斑家 リビング

 

「こーらー!なぁに暗い顔してんのよ一夏」

 

「うぇ!?俺そんな暗い顔してたか?」

 

今俺の家を使ってセシリアの誕生日パーティーの準備をしている。本来ならセシリアの家……ってか写真見せてもらったけどお城?でパーティーをするんだが、まあ時期が時期で状況が状況だから今年は俺の家でやることになった。

 

溜まり場になってない?

 

「友達の誕生日なんだから笑ってなさいよ笑って!」

 

「わはっはわはっは、わはっははらほほをひっはるはぁ!」

 

「おい鈴、この皿はどこに置けばいい」

 

「ああ、もうそんなに沢山一度に運ぼうとしないでよ!人の家なんだから落としたら大変でしょー!」

 

なんだかんだ面倒見がいい鈴。助けられてばっかだな。

 

「一夏」

 

「箒……なんかみんなに迷惑かけちまったな」

 

「そんなことはない。正直私も不安だ。敵がお前と一対一を望んでいることも怖い。だからこそこの瞬間を楽しもうじゃないか。いつ壊れるか分からないんだからな」

 

「……壊させないよ。俺が…絶対守ってみせる」

 

そんな時リビングのドアが開いてセシリアとシャルと簪が帰ってくる。

 

「ただいま〜、雪積もってきたね。車渋滞してたよ」

 

「まったくもう、パーティーの主役がケーキの買い出しだなんて!」

 

「セシリア…ジャンケン弱い……」

 

「皆さんが強すぎるのです!」

 

頬を膨らませながらケーキを机の上に置くセシリア。あとは桐也が買い出し、のほほんさんと楯無さんがそれぞれ実家から荷物を取ってくれば準備完了だ。桐也は虚さんのお見舞い行ってから取りに行くって言ってたからもう少し時間かかるかな。

 

◇ーーーーー◇

 

「うぅ〜さみぃ〜」

 

雪のせいかクリスマスのせいか渋滞に巻き込まれた。買い出し終わらせて帰るだけなのにここまで渋滞されちゃあ体の芯から冷えちまうぜ。

 

「にしてもぜんっぜん動かなねぇな……」

 

そうボヤいた瞬間前方で爆発が起きた。熱気がここまで伝わってくる。いよいよ動き出したってわけか……よりによって今日。

 

俺はバイクを降り逃げ惑う人達をかき分けて爆発現場へと向かう。そこには案の定ダグバがいた。

 

「よお、メリークリスマス&死ね」

 

「なんだよ、これが最後だってのにツレないな」

 

「……そうだな、どの道コイツで終わるんだ」

 

ゲーマドライバーを取り出すとダグバもゲーマドライバーを取り出した。あの野郎いつの間にゲーマドライバーを。

 

「何処ぞの病原菌から貰ったか、それとも本社から奪ったか、今はそんなことどーでもいい」

 

「なんだ、ゲームの楽しみ方を分かってるじゃないか。そうだよ、そんな些細なことはゲームには関係ない」

 

ダグバはゲーマドライバーを装着しガシャットギアデュアルを装填する。

 

『デュアルガシャット!』

『The stongest fist!What's the next stage?』

 

「マックス大変身」

 

『ガッチャーン!マザルアーップ!!』

『赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!!』

 

「仮面ライダーパラドクス、レベル99だ」

 

ダグバの姿が新しいパラドクスへと変化した。見た目からしてパズルとファイターが一緒になってやがるのか。

 

「……はぁ…」

 

「?どうしたスマホなんか取り出して。助けを呼んでも死体が増えるだけだぞ?」

 

「遺言ぐらい残させろって。まあ、こういうのって変に生き残った時恥ずかしくなるよな」

 

「安心しろって。どうせここで死ぬんだ。無駄にはならないだろ?」

 

「……そう面と向かって正直に言われると腹が立つな」

 

『爆走バイク!』『ノインシュヴァンツ!』

 

「変身」

 

『繋がれ!永遠の絆!最速のキツネゲーマー!ノインシュヴァンツレーザー!!』

 

最初から全力を出すために本音にノインシュヴァンツを少し弄ってもらい、初めから尻尾3本で始められるようになった。

 

「さっさと始めようか。これがラストレースだ」

 

「いいぜ、心が躍るなぁ!!」

 

◇ーーーーー◇

 

「………」

 

テレビに流れる緊急速報。そこにはレーザーとパラドクスが戦っている姿が映っていた。

 

「よりによって今日なの……」

 

「空気の読めん奴め」

 

「助けに…行かないとッ」

 

そんな時俺の携帯が震えた。桐也からのメールだった。

 

メールには一言、

 

『お前と過ごした毎日、楽しかったよ。ありがとな一夏』

 

とだけ書かれていた。

 

「ッ!!」

 

「一夏、待て!!」

 

俺は家を飛び出して走り出した。

 

◇ーーーーー◇

 

『タドル!クリティカルフィニッシュ!!』

 

『バンバン!クリティカルフィニッシュ!!』

 

タドルレガシーを装填したガシャコンスパローから炎と氷の矢を連射し、バンバンタンクを装填したガシャコンマグナムの砲撃を放つ桐也。

 

「ハアッ!!」

 

「チッ!こんのやろッ!」

 

遠距離攻撃をエナジーアイテムを使いながら避けていくダグバ。振りかぶったガシャコンパラブレイガンの一撃が地面を砕きながら桐也へと迫る。

 

(エナジーアイテムで強化されてるとはいえ、ここまで厄介なのは初めてだ。1発1発があん時の一夏みたいだ)

 

地面から跳躍、ビルの壁面を走りながらダグバを攻撃する。ダグバもパラブレイガンをガンモードに切り替え連射してくる。

 

「流石に早いな。ならコイツは避けられるかな?」

 

『高速化!鋼鉄化!』

 

『パーフェクト!クリティカルフィニッシュ!!』

 

パーフェクトパズルに切り替えたギアデュアルをパラブレイガンに装填して放つエネルギー弾。しかもそれは超高速の硬質化させたもの。当たれば致命傷は避けられないものだ。

 

「ッ!!」

 

息つく間もなく桐也に迫るエネルギー弾。今まで培ってきた動きで何とか避けるが1発がガシャコンマグナムに被弾、爆発、衝撃で桐也は地面に降り立つことに。

 

「隙だらけ」

 

「わーってんだよ!」

 

今度はガシャコンソードとガシャコンブレイカーを構えダグバへと向かっていく桐也。ダグバもパラブレイガンをアックスモードに変形、ギアデュアルをノックアウトファイターに切り替え再び装填。

 

『マッスル化!マッスル化!マッスル化!』

 

『ノックアウト!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「来いよ」

 

「言われなくてもなぁ!」

 

『ゲキトツ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

ダグバ目掛けてガシャコンソードを投げつける。当然ダグバによって破壊されるが、

 

「!?凍結…」

 

破壊されたガシャコンソードは氷剣モード。破壊された影響で中に蓄積されていたエネルギーが解放されダグバの動きを凍結で封じたのだ。

 

「舐めすぎッ!」

 

クリティカルフィニッシュを発動したガシャコンブレイカーを頭に叩きつける桐也。衝撃でダグバを覆っていた氷は砕けるが間髪入れずにダグバの頭に蹴りを叩き込む。

 

「そうッ…こなくっちゃなぁ!!」

 

『ノックアウト!クリティカルスマッシュ!!』

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「らああっ!!」

 

ウラワザを発動したダグバの右ストレート、キメワザを発動した桐也のハイキック。激突した衝撃で周りの雪やビルのガラスが吹き飛び降り注ぐ。

 

「いいねこの感じッ!心が激るッ!」

 

「ッ…!!」

 

ダグバは拳を開き桐也の脚を掴む。そのままビルへ放り投げ桐也の体は残った窓ガラスを突き破りオフィスの中へと転がり込んだ。

 

「あんのやろ……なんてパワーだ…」

 

今までのダグバとは違うことを改めて実感した桐也。力の差はある。しかしその差を埋めることなら今の桐也なら可能だ。

 

「休憩は終わりだぜ。さあ、ゲーム再開といこうか」

 

「こんなのは休憩って言わねぇんだよマヌケ」

 

オフィス内に現れるダグバを見てフラフラと立ち上がる桐也。その体は次第に稲妻を纏い目が光り輝く。

 

「最速で決めるぜ」

 

拳の叩き込まれる音が響いた。桐也のボディブローがダグバに叩き込まれていたのだ。

 

「ハハッ…心が……踊るなァ!!」

 

「悪いけど、自分負ける気ないんで」

 

 

 

 

 

 

布仏家

 

「桐也……」

 

テレビで放送されているのは遠方から撮影されたレーザーとパラドクスの戦い。激しい戦いが行われている様子を本音は見ていることしかできなかった。

 

自分が行っても足手まといになるだけだと分かっているから。

 

そんな本音の手にはスマホが握られていた。画面には桐也からのメッセージが来ていた。

 

『愛してる』

 

の一言、ただそれだけが来ていた。

 

「お願い……生きて帰ってきて…」

 

彼女の頬を大粒の涙が流れた。

 

 

 

◇ーーーーー◇

 

外へ飛び出したダグバを追ってビルの側面を走る。ノインシュヴァンツ9本ゲージを発動した最強最速の力。全力で駆け抜けるとビルの側面が粉々に破壊された。

 

「ッらあっ!!」

 

「ぐうっ!!?」

 

俺の踵落としを両腕でガードするダグバ。間髪入れずに脚技を繰り出し続ける。この状態を維持し続けるのはかなり厳しい。しかも空中戦、難しいに難しいをかけあわせ面倒なことになったなと自分でも感じる。

 

この状況だからこそ燃えるものがある、なんて熱血少年漫画みたいなことは言わない。楽出来るなら楽するし、サボれるならサボる。痛いことはしたくないし、正直もう帰りたい。

 

俺はそんな人間だ。でも今こうして痛い思いして戦っている。まったくどうしてこーなったのやら。それもこれもアイツに影響されたからかな。ホント……

 

「いい迷惑だこった!!」

 

「ッ!!」

 

回転しながら3本の尻尾を連続でダグバに叩きつけ、トドメに蹴りをお見舞いする。直撃を喰らったダグバはそのまま地面に叩きつけられコンクリート片が宙を舞った。

 

「はぁ……はぁ……ッ…テメェらのせいでずっと痛い思いしたんだクソッタレ。でもな、テメェらがいなかったら俺は一夏とは会えてなかった。そこだけは感謝しといてやるよ」

 

「お前も…一夏がいなかったらここまで来なかったか」

 

「当たり前だろ。わざわざ痛い思いしたい奴が何処にいやがるってんだ」

 

ダグバが起き上がる。多少はダメージを与えられたはずだ。だからってこのまま戦い続けれるほど俺は頑丈じゃない。

 

「早いとこケリつけよーや」

 

『キメワザ!』

 

「ゲームセットってか…ハハ、いいぜ」

 

『ウラワザ!』

 

『ノイン!クリティカルストライク!!』

 

『パーフェクトノックアウト!クリティカルボンバー!!』

 

尻尾を全て切り離し真の最速の姿へ変わる。ダグバの両足には青と赤の炎が燃え盛っている。辺りの残った雪を溶かしながらゆっくりと歩いてくるダグバ。

 

「終わりだ」「終わりだぜ」

 

先に動いたのは俺、いや動いたのは同時か。でも俺の足の方が早く届く。当然ですとも最速なんですから。俺の回し蹴りがダグバの頭を捉えた、そう思った瞬間

 

「そう来るって分かってたぜ!」

 

ダグバの左腕に防がれた。防いだ瞬間勝ち誇ったようにお返しの回し蹴りが俺の頭目掛けて放たれた。

 

「分かってるならッ!」

 

俺はそれを全エネルギーを回した頭突きで受け止めた。さっきまでの比にならない衝撃が襲ってくる。当然仮面は割れて外の冷たい空気が直で伝わる。

 

「っああぁ……こぉなることも…分かってたんだろ…?」

 

「お前…それは無茶苦茶だぞ!」

 

「無茶しねぇと……勝てねぇからなぁ!!」

 

ノインシュヴァンツのブーストは終わっている。だからって止まらねぇ、止まれねぇ。終わらねぇ、終わらせねぇ、終わりたくねぇ!!アイツらとの毎日を!思い出を!

 

「こんな、ところでッ!!!」

 

「ハアァァァァッ!!!」

 

「ウオォォォォッ!!!」

 

俺とダグバの拳、先に顔面に当たったのは俺の拳だった。

 

「アアアァァッ!!!!」

 

ノインシュヴァンツガシャットが赤く輝き、俺の拳に力が宿る。なるほど、幻の10本目はこのガシャットそのものだったか。

 

そして俺はそのままダグバを殴り飛ばした。

 

 

綺麗に吹っ飛んだな……最後の最後できめてやったぜ。

 

 

 

ただまあ、こんなダッセェ終わりかたじゃなくてさ、

 

 

 

 

もっとスマートにさ、かちたかった……

 

 

 

 

 

あんなメッセおくってなんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

いきてかえるつもり、だったんだぜ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ーーーーー◆

 

「はぁ…はぁ……桐也!!」

 

俺が来た時には桐也は血塗れで倒れていた。周りを見るとダグバとの戦闘がどれほど激しかったかよく分かる。

そしてそのダグバの姿は……

 

「いない…?何処行った!?」

 

「ここだよ、こ〜こ〜だ〜よ〜」

 

俺の背後から声が聞こえる。間延びした声で呼びかけてくるが間違いなくダグバの声だ。

 

「ここで決着をつけよう」

 

「おいおい俺の顔くらい見てくれよ。まあいいや……決着はまた今度だ。今はお互い万全じゃないだろ?」

 

確かに、今の俺は冷静に物事を判断できる余裕が無いとも思う。ダグバも平静を装っているがここまでの戦闘だ、奴も余裕が無いはず。

 

「3日後だ。IS学園で待ってるぜ」

 

「………分かった…」

 

ダグバは消えた。俺が振り返ることはなかった。

 

 

俺は膝から崩れ落ちて、拳を地面に打ちつけた。







「……いってくる」

「……いってらっしゃい」



see you final game!

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