IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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お待たせして申し訳ございません!入院とかしてバタバタしてました!あとサボってました!ごめんなさい!


第77話 古都 〜そうだ、KYOTOに行こう〜

11月18日(金)AM11時26分

 

「さて、君たち2人に新しい任務を与えるわ」

 

木綿季さんに幻夢コーポレーションへ呼び出された俺と一夏。新たな任務とか嫌な予感がするんだけど。

 

「次の任務は……休む事よ!」

 

「よし、帰るぞ名人」

 

「そうだな」

 

「いやちょっと待ってちょっと待って!」

 

「休む事だろ?なら帰っても問題ないでしょ」

 

慌てて引き止める木綿季さん。休む事なら任せてほしいのに何を引き止める必要があるのか。

 

「コレを渡しておきたかったの!みんなで遊んできなさい」

 

「これ…旅行券?」

 

「京都への二泊三日!!やったなキリヤん!IS学園の修学旅行も京都行く予定だったんだぜ!」

 

「学園吹き飛んだのお前が原因だけどな」

 

「はい…スミマセン」

 

「でもまあ、ありがたく受け取るけど…いいの?俺らがこぞって出て行っても」

 

「休める時に休むのも任務よ。みんなでまあ楽しんできなさい」

 

太っ腹と言うべきか危機感が少し薄れてると言うべきか。でも休める時に休むのは大事なことだ。

 

「分かったよ。お土産買ってくる」

 

「期待して待ってるわよ」

 

こうして俺たちの京都旅行が決定したのであった。

 

 

「おーい」

 

11月20日(日)AM10時16分

 

場所は東京駅、今まさに京都へ向けて新幹線が出発しようって時に売店に食いついている隊長さんがそこにはいた。

 

「すまん。この駅弁というやつをくれ。なるべく栄養価が高くて食べやすくて安い……ん?なんだこのひよこは」

 

駅弁を頼む隊長さんの視線の先には薄茶色の東京駅名物のひよこが鎮座していた。

 

「か、かわいい……こ、これを!あ、あ、あああるだけ売ってくれ!!」

 

「くらぁ!もう出発でしょ!ほらキビキビ歩く!」

 

「ま、まてクジョー!私にはあのひよこを救い出すという使命が!」

 

「救い出して自分の胃の中に監禁するんでしょ?隊長さん鬼だねー。本音も富山のますのすし我慢したんだから、アンタの方が大人なんだから少しは我慢しろってーの!」

 

「なあ!?わ、私はそんなこと……そんなことぉ!!!!??」

 

隊長さんを座席に座らせると俺も席に着く。窓に顔を押し付け名残惜しそうに売店を見つめる隊長さん。無情にもひよこは後から来た人に買われていた。

 

「だ、大丈夫だよラウラ。京都にもひよこあるよきっと…多分……うん」

 

「せめて自信を持って発言をしてくれシャルロット!」

 

「ラウラさん、余程楽しみでしたのね…」

 

ラウラの向かい側に座るシャルちゃんとセシリー改めリアちゃん。パッとみ誰か分からない?知らない、良いと思ったから使うだけじゃい。

 

「京都かー。アタシ京都って中学の修学旅行ででしか行ったことないのよ。箒は?」

 

「何度かあるな。それこそ家族や中学の修学旅行でもな。その時はキリヤんもいたな」

 

「そっか〜。しののんとキリヤんって同じ中学だもんね〜」

 

「そうだったんだ……昔からあんな感じなの?」

 

「そうだな。変わってない……気がする」

 

本音、箒、リンリン、簪ちゃんの4人が仲良く会話をしている。ほのぼのとしたひととき。こういうの大事だと思うのよ俺はね?

 

「なにが悲しくてお前の隣なんだよ」

 

「はー?別にいいだろたまには男2人でもさー!」

 

俺の隣には名人がいる。まあ確かに積もる話もあるとは思う。でもさ?せっかくの旅行でそんなしみったれた話してられっかよ。

 

「京都行ったらやりたいこと沢山あんだよ!楽しみだな!」

 

「はいはい。あんまはしゃぐなよ」

 

子供みたいにはしゃぐ名人。余程帰って来れたのが嬉しかったのだろう。ガドルを倒したあの日から謎に中身ゼロの会話をすることが多くなってきた。

 

まあ、そういうのも悪くはないけどな。

 

◇ーーーーー◇

 

『まもなく京都、京都です』

 

もうすぐ京都に着くアナウンスを聞き各人荷物の準備をしだす。かくいう俺も準備してるんだけど……あったあった。

 

「なにそれ。カメラ?」

 

「あんた、まだそれ持ってたのね」

 

キリヤんと鈴が横から覗き込む。俺が取り出したのはふr……いや年季の入ったアナログカメラだ。最近のスマホにすら高画質カメラが搭載されてるこの時代でコイツは古めかしいものに見えてしまう。

 

「うん、まあコイツは俺と千冬姉にとって大事なものだからな」

 

「そーね。あんたそれ使ってる時、すっごく楽しそうだもの」

 

コイツは千冬姉が初めて俺に買ってくれた大事なものだ。季節の節目節目にコイツで写真撮影をするのが、俺と千冬姉の間の取り決めになっていた。

 

「リンリン、オカンみたいな顔になってるぞ」

 

「う、うっさいわね!誰がオカンよ!」

 

鈴は照れながら座席に戻る。今回の旅行は沢山撮れそうだな………沢山撮らないとな。俺が今後、生きてるか分からないんだし………

 

 

そんなこんなで12時28分。新幹線は京都に到着した。

ぞろぞろと電車内から降りると京都駅名物の長い階段が姿を現した。いや長いところじゃねぇなこれ。デカくね????

 

「ここで写真撮ったら映えそうだな」

 

「いいじゃん、撮ろうぜ」

 

「え?いいのか?」

 

「周りの邪魔にならなきゃ良いだろ。ほらさっさと並べー」

 

キリヤんが女子ズを整列させる。なんかこういう時要領いいよなキリヤん。

 

「じゃあ撮るぞー!」

 

「何やってんだバカ。お前が写らなくてどーすんだよ。あ、すみませんカメラお願いしてもいいっすか?」

 

シャッターを切ろうとしたらキリヤんがカメラを奪い取り同じく階段を歩いていた俺たちと同じくらいの男性に手渡した。

 

「ああ、構わないが」

 

「いやー、どうもすいません。ほら早く入れよ名人」

 

「分かった!分かったから引っ張んなって」

 

前例左からのほほんさん、キリヤん、俺、箒。後列はラウラ、シャル、セシリア、鈴、簪の順で並ぶ。

 

「それじゃあ撮るぞ」

 

はいチーズとシャッターを切る音が聞こえる。なんで写真撮る時チーズって言うか、前気になって調べたんだよ。なんでもチーズって言う時の顔が口角が上がって笑顔に見えるかららしいぞ。

 

ズの時だと口角上がらなくない?

 

「………」

 

「どうしたんだよ。さっきの写真撮ってくれた人みて」

 

「ああ、いや。なんかな……また会いそうな気がする」

 

「……そうか?」

 

「うーん、次会った時用にあだ名考えるか………髪が白いしイナバのホワイトラビットくんだな」

 

「てっきとうな名前つけて…怒られても知らないからな?」

 

「あとあのお医者さんとか、白髪の女子高生とか………そこら辺も会いそうだ」

 

「……やめろよ、なんか怖くなってきた」

 

笑いながらキリヤんは階段を降りて行く。うーん、もしかしたら俺も会ったりすんのかな……?

 

 

「さてこっからどうすっか?」

 

旅館に荷物を置きこれからは自由時間。回りたいところは沢山あるし早いところ決めてしまいたい。

 

「どうする?2人組作っても1人余るよな」

 

「キリヤんはのほほんさんと回るだろ?」

 

「……いや、今回はお前についた方が面白そうだ。それに明日もあるんだしな」

 

「そ、そうか?電車の中じゃ嫌がってたくせに」

 

気にすんなとキリヤんは手をヒラヒラさせる。

そして各々チームを決めていく。箒と鈴、セシリアとラウラ、シャルと簪とのほほんさんのチームに分かれた。

 

「それじゃあ観光スポットの相談してから出発するから一夏達は先に行ってて」

 

「おう。それじゃあまたな」

 

こうして二泊三日の京都旅行が始まったのであった。

 

 

「あ、一夏!桐也!こっちこっちー!」

 

「わーいキリヤんだ〜」

 

「は、早いね……」

 

2人でぶらぶらしていたらシャルからメールが来たのだ。どうもお菓子屋さんを見つけたから来て欲しいとのこと。

 

そして現在そのお菓子屋さんに到着。手を振っていたのはシャルとのほほんさん。その隣では控えめに簪が手をあげていた。

 

「お、着物か!似合ってるな3人とも」

 

「本音は可愛さに磨きがかかったな」

 

隙あらば彼女を褒めるキリヤん。いいことなんだけどこの時だけ妙に顔が険しくなるから何事かと思う。

 

「えへへ、このお菓子屋さんで着物体験サービスやってたんだ!」

 

「かんちゃん凄いんだよ〜?私とデュッチーの着物選んでくれて〜、髪もセットしてくれたんだ〜」

 

「べ、べつに…これくらいは……」

 

「ていうかのほほんさん、簪のお付きの人とかじゃなかった?立場逆になってない?」

 

あはは〜と笑うのほほんさん。キリヤんは既に携帯で3人を撮影している。仕事が早いねーこの人は!

 

「あ、俺も撮らせてもらっていいか?」

 

「うん!あ、その写真今度現像してもらえる?」

 

「ん?……あー、りょーかい。なるべく早く渡すな」

 

恐らく…いや十中八九タイガ先生に見せる用だろう。明日は箒を連れてここに来てみよう。

 

「よし、撮るぞー。はいバター」

 

「バター?チーズじゃないの?」

 

「まあ、どっちでもいいだろ。とりあえず和菓子でも食おうぜ」

 

「私お腹ぺこぺこ〜」

 

「電車の中で食ってたろ本音」

 

「それとこれとは別腹だよ〜」

 

「どうして太らないのか……不思議……」

 

俺たちは赤い布を敷いた腰掛けに座る。流石に5人だと狭いな。

 

「せっかくだし、団子食べてるところ撮影するか」

 

「えぇ?そこも撮るの?」

 

「いいじゃん。撮ってタイガ先生に見せびらかそうぜ。うまくいけば将来2人で京都旅行行けるかもよ〜?」

 

「そ、そうかな……そうだよね!うん!撮ろう!!」

 

拝啓タイガ先生。シャルは上手いことキリヤんにノせられました。

 

「うまうま〜」

 

「本音…口にタレがついてる……」

 

「ん〜ありがとかんちゃん」

 

「そんな簪ちゃんもタレ付いてるよ」

 

「え……そうn「ペロりんこ」ちょ、本音!?」

 

「ん〜かんちゃんの味〜。大変美味ですな〜」

 

タレが付いた簪の口元をのほほんさんが舐めた。

俺とキリヤんはお互い無言でサムズアップする。この光景は心のカメラに収めておこう。てか撮ったら千冬姉に殺される。

 

「一夏〜桐也〜」

 

「見ろ、舐めてもらえなくてご立腹だぞシャルちゃん」

 

「えー、でもそこはタイガ先生の役目だよなキリヤん」

 

「ハハハ。俺、そこまで言ってないから」

 

「え?」

 

オホホホ、と笑うキリヤん。ノせられてたのは俺の方か畜生この野郎!!

 

 

次に合流したのは箒と鈴。俺の隣に箒、キリヤんの隣に鈴。両手に花とはいかないがそれなりに目立つな。

 

「で、俺たちは今どこに向かってんだ?」

 

「京都といえば!」

 

「鴨川だ!」

 

「………そうなの?」

 

「いや、分かんない」

 

キリヤんが俺に聞いてくるけど俺に分かるわけがなかった。片手間にスマホで鴨川について調べてみる。

 

鴨川は、京都府京都市を流れる淀川水系の一級河川らしい。てか鴨川だけ調べたらなんかたくさん出てきたんだけど!富山とか埼玉にもあんのかよ!

 

「なーんかカップル多くね?」

 

「京都の鴨川の河原ってカップル河原って呼ばれてるみたいなのよ。だから昼間っからカップルであふれてるわけ」

 

「箒、ここに来たかったのか?」

 

「た、たまにはこういうことも…な?」

 

「今日もウチの嫁が可愛いです」

 

「わーった、わーった。2人で行ってこいよ」

 

キリヤんと鈴がニヤニヤしながら手をヒラヒラさせてくる。俺と箒はちょうど空いてたところを見つけて腰を下ろす。

 

勿論ハンカチを箒の下に敷いてな!ここ大事だぞ!!

 

「…………」

 

「…………」

 

川のせせらぎに耳を傾ける。うん、なんかいいなこれ。

 

「って!なんか話題ふりなさいよアンタ!!」

 

「せっかくのデートなのに話題を提供しないあたり名人らしいよな」

 

なんだかんだキリヤんと鈴も近くに座ってるんだよな。距離的にいえばコンビニの揚げ物コーナーとレジぐらい。

 

「あー、秋といえば……昔落ち葉で焼き芋したよは」

 

「一夏、それは……」

 

「ハハハ……まあ、あんまり思い出したくはないよな…」

 

その昔、篠ノ之神社で落ち葉を集めて焼き芋を作ろうとしたのだ。俺、箒、千冬姉、束さんの4人で。

 

『火が足りん…もっとだ……もっとだぁ!!』

 

ここで、暴走したのが千冬姉。火力を更に求めてあれよこれよと。

結果千冬姉はさんざん怒られ、巻き込まれた俺たちもついでに軽く怒られた。

 

「2人して乾いた笑いしてるわよ…」

 

「これがデートとは思えないぞ」

 

良い子の皆さんは保護者と一緒に焚き火をしような!近くに水の入ったバケツを用意しておこうな!仮面ライダークウガとの約束だ!

 

「にしても、この季節の河原は冷えるな…箒、寒くないか?」

 

「う、うむ。問題ない。一夏こそ大丈夫なのか?」

 

「まあ、俺クウガだし」

 

これは答えになってるのだろうか。いやでも少し冷えるのは事実だ。

 

「少し移動するか。体冷やして体調悪くなったら元も子もないしな」

 

「そうだな。キリヤん、鈴!そろそろ行こう!」

 

「ういー。デートはもうお終い?」

 

「明日があるからな。今はみんなで楽しもうぜ」

 

カメラを構え3人を撮る。鴨川をバックにしたその写真は3人の笑顔がバッチリ写っていた。

 

 

「次はセシリアとラウラだけど……ここでいいんだよな?」

 

「待ってろって……いったいなん……おいアレ」

 

俺とキリヤんはセシリアとラウラを待っていたのだが、目の前に高速でやってきたのは人力車だった。

 

「一夏さん!キリヤんさん!お出迎えに参りましたわ!」

 

「さあ一夏、クジョー、乗り込むがいい」

 

人力車の客席に座っていのはセシリアとラウラだった。しかもお姫様ドレス。京都でドレスってのもなかなかアリだな。

 

「ぜーはー……ううっ……」

 

「おい名人。あの赤い髪」

 

「え?あああっ!?弾!何やってんだよお前!」

 

「よ、よお……桐也も久しぶりだな……」

 

セシリアとラウラを乗せた人力車の運転手は五反田弾だった。てか2人とも知り合いだったのか。学園祭の時に話でもしたのかな。

 

「京都にバイトに来たら、なんか巻き込まれたっつーか……ほら、学園祭で一応顔は合わせたんだよ俺たち。だから身元バレしてな……」

 

「なんか…ドンマイ」

 

「強く生きろファイブマン」

 

「何をしている五反田弾!さあ!お前の目的のためにキビキビ働くがよい!」

 

「い、イエスマム!!」

 

ラウラが客席でなんな長い銃を構えている。なんだよアレ。ちゃんとおもちゃなんだろうな…?

 

「メーターモーゼルか?珍しいね隊長さんがそんなアンティークを持つなんて」

 

「良い品ですわ。歴史を感じます」

 

「お前らな……まあ褒め言葉として受け取っておこう」

 

セシリアとラウラはともかくキリヤんまで銃の話についていけるのか。そういえばキリヤんってなんか銃のゲームでえらい有名になったとか言ってたな。

 

「よっしゃあ!そんじゃ行きますか!あ、これ3人乗りだからどっちかは走ってくれよな!」

 

「お前が乗れカメラマン」

 

「え?いいのか?キリヤんはどうすんだよ」

 

「俺は俺でここら辺ブラブラしてるよ。行ってこい」

 

「分かった。また後でな」

 

人力車に乗り込む。今度はセシリアとラウラという両手に花状態だ。

 

「さあ、お願いしますわ五反田さん!京都の街を案内してくださいまし」

 

「お任せあれぇ!!では出発ッ!!」

 

人力車をグッと持ち上げゆっくりと歩き始めた。しっかし高校生なのに人力車のバイトなんて大変だろうに。よくやる奴だよお前は。

 

「とりあえず、3人で自撮りするか」

 

「うむ、頼むぞキャメラマン」

 

「綺麗に撮ってくださいね♪」

 

揺れる人力車の上でなんのか写真を撮った。何枚かはブレてしまったけど、綺麗に撮れた一枚は3人とも楽しそうな笑顔だった。

 

 

11月20日(日)PM03時46分

 

紫雲山 頂法寺

 

「ふぅ〜動いた動いた」

 

「どいつもこいつも元気なこった」

 

ここは生花発祥の地とも言われるお寺で、聖徳太子が健立したとも言われている。なんで俺とキリヤんがここにいるかというと、特に理由はない。

 

「なーんか久々に肩が軽い気がするぜ」

 

「ああ?いっつも軽そうな頭ぐらぐらさせてるくせによく言うぜ」

 

「えぇー?俺そんなにぐらぐらしてたか?」

 

「もう少し落ち着くことを覚えろ」

 

「………」

 

「何ニヤニヤしてんだよ気持ち悪い」

 

「え?あー、うん。こうしてキリヤんとサシで話すの久しぶりだなって」

 

学園祭の時から一度も話す事なくガドルとの決着まで時が過ぎていた。簡単な挨拶くらいあると思ったけどそれすら無かったんだからな。

 

「まあ、それに関しては俺も失敗だったと思うよ。お前と協力してりゃ、学園は吹き飛ぶことはなかっただろうからな」

 

「ああ……そうだな。でもあれは結局のところ俺がクウガの力を抑えきれなかったのが原因だし」

 

「それでもだろ。お前をぼっちにさせた俺にも原因があるんだ。悪かったな」

 

面と向かって謝ることはないキリヤん。今もキリヤんは前を見ながらそう言ってきた。そうそうコイツはこういう奴だ。なんだか少し安心したよ。

 

「ま、これからは頼れる奴らが沢山いるからな。お前も一人でメソメソ泣かなくてすむな」

 

「泣いてねぇつーの!」

 

「は、どーだか」

 

意地悪な笑みを浮かべるキリヤん。この感じも久々だけど、久しぶりに食らったらちょっとムカつく!

 

「にしても修学旅行で京都なんてベタベタすぎてつまんねぇって思ってたけど、来てみりゃそれなりに……」

 

「って!?いきなり止まんなよ……なんか焦げ臭いな…」

 

「鼻は詰まってねぇみたいだな。コッチだ」

 

何かが燃える匂いがする。ここまで来て火事案件とか正直やめてほしいんだけど……

 

「うおっ!?」「うわあっ!!」

 

俺たちの目の前にビームが着弾する。地面が爆発して俺たちは吹っ飛ばされるがすぐに体制を整えベルトを装着する。

 

「アイツッ!?」

 

「オータム!?」

 

「なっ!?このガキども、なんでここにいやがる!!」

 

ビームを撃ってきた張本人。それは学園祭を襲撃してきた亡国企業のオータムだった。でも既にアラクネを展開し、誰かと戦っている。

 

「仮面ライダーが3人たぁ、めんどくせぇなぁ!」

 

「3人?あと1人何処に」

 

「あそこだ……なんで京都にいるんですかねぇ…」

 

アラクネが戦っていたのは黒い仮面ライダー。俺たちもよく知っているゲンムだった…………いや、違う。ゲンムは体のラインが紫だ。アイツは白いラインだ。

 

「その節はどーも黒いエグゼイド」

 

「味方で…いいのか?」

 

「ま、敵だったらあの時俺にドクターマイティは渡してこねぇだろ」

 

ドクターマイティ。俺も話でしか聞いてないけどコレのおかげで一時的にパンデミックを防いだらしい。

 

「いくぞ名人。敵の敵が味方のうちにオータムを倒す」

『爆走バイク!』

 

「おう!」

 

「ゼロ速、「変身!」!」

 

俺はマイティフォームに、キリヤんはレーザーターボに変身してオータムへ挑む。

 

アラクネとの戦いはキリヤんたちが戦ったあの時と同じように立ち回ればいけるはずだ。つまるところまずは部位破壊!狩ゲーでも基本だよな!

 

「このガキ共、前よりもっ!?」

 

「あの時よりレベルダウンするわけないでしょ、ってね!」

 

アラクネの脚から放たれるビームを自慢のスピードで避けながら発射口を破壊し、アラクネの脚そのものもへし折ってしまう。

 

確かに、キリヤんのスピードは学園祭の時より遥かに上がっている。仮面ライダーのレベルだけではなくキリヤん自身のレベルも確実に上がっている。

 

「俺も負けてらんない、なッ!!」

 

「チッ!このクソガキがぁ!!」

 

俺だって負けてない。究極の闇に一度到達して、更にアメイジングマイティへと進化できた俺の力は普通のマイティキックでもかなりの破壊力を出せるようになった。

 

「あと6本!」

 

「一気に叩きおっとっ!?」

 

キリヤんの横を黒いエグゼイドが駆ける。オータムはアラクネの脚を使い黒いエグゼイドへ刺突を繰り出す。

それを紙一重で避ける黒いエグゼイド。あの身のこなし、ゲンムと同等……てかあの動きどっかで。

 

「ッ!!危ねぇ!!」

 

アラクネの脚から放たれたのはさっきまで直線型のビームとは違い拡散型のビーム。その数本が黒いエグゼイドの進路を阻み、別の数本が黒いエグゼイドを直接狙っている。

 

しかし黒いエグゼイドはそれを全て右手で防ぎ再びオータムへの攻撃を再開する。

 

「今の…」

 

「右手には何も展開してなかった。防御力もレーザーとそんなに変わらないだろうにな。ったく無茶な戦い方しやがる」

 

自らへのダメージなどお構いなしに挑む黒いエグゼイド。良く言えば勇敢、悪く言えば無謀。これだとどっちが先に倒れるかのチキンレースだぞ!?

 

「援護する。突っ込め一夏!」『ギリギリ!クリティカルフィニッシュ!!』

 

「頼むぜ桐也!」

 

ライジングマイティの一撃ならオータムを簡単に倒せるだろうけど、黒いエグゼイドを巻き込みかねないし、何より観光客を巻き込んでしまう。

ここは一点集中の一撃だ。俺はその辺にあった木の枝を足で蹴り上げ掴む。

 

「超変身!」

 

「今だ!行け!!」

 

ドラゴンフォームになると同時にガシャコンスパローから矢が大量に放たれる。俺はドラゴンロッドで矢を束ね纏わせる。即席キメワザドラゴンロッドの完成だ!

 

「避けろ!!」

 

黒いエグゼイドもこちらに気が付いてアラクネの脚を一本へし折ることでオータムのバランスを崩させる。

 

「うおおおっ!!!」

 

スプラッシュクリティカルフィニッシュをオータムのボディに叩き込む。キメワザのエネルギーと封印エネルギーが同時にアラクネのボディを駆け巡る。

 

「あああっ!!?」

 

「おおおおっ!!!だあっ!!」

 

オータムを吹っ飛ばした俺は更に跳躍、ドラゴンロッドを吹っ飛ぶオータムに叩きつけ地面にバウンドさせる。

 

「桐也!」

 

「合わせろよ」『爆走!クリティカルストライク!!』

 

「………」『マイティ!クリティカルストライク!!』

 

レーザーと黒いエグゼイドの息ピッタリのダブルキメワザがオータムに炸裂。そのまま木々を薙ぎ倒しながら吹き飛び壁に激突し、アラクネは解除されオータムは気を失った。

 

 

11月20日(日)PM21時13分

 

温泉旅館 露天風呂 男湯

 

オータムを倒した俺たちはすぐに楯無さん達に連絡し、黒服の人達がオータムを回収していった。

一応そのことを箒たちにも伝えたらなんか怒られた。無茶してだのなんだの。

 

箒たちは箒たちでシャル達が迷子になったと大慌てだったらしい。

 

「にしても、黒いエグゼイド…何者なんだろうな?」

 

「さあな……まあ目星はついてるがな」

 

「マジかよ!?」

 

「アイツが使ってるのはプロトマイティアクションだった。つまりまずはプロトガシャットのゲーマドライバーを手に入れられる人物が怪しいってわけだ」

 

そうなると必然的に幻夢コーポレーションの人間が怪しい。そして幻夢コーポレーションの怪しい人物といえば社長の檀黎斗だ。

 

「まあ思いつくのは社長だよな?でも違うんだよな〜」

 

「なんで言い切れるんだよ」

 

「社長にドクターマイティを見せたら『知らない』って言われた」

 

「つまり……幻夢コーポレーション製のガシャットじゃない?」

 

「ここまで来れば大体分かるだろ。ようはドライバーとガシャットを手に入れられ、尚且つガシャットを作れる人間だ」

 

「そんな人間……」

 

「いるさ。あとコレもヒントかな。何故プロトマイティなのか……だな。プロトタドルクエストでもプロトバンバンシューティングでも、プロト爆走バイクでもなくプロトマイティアクション」

 

「マイティアクションに拘ってるのか?」

 

ゲーマドライバーとプロトガシャットを手に入れられ、ガシャットを作れて、プロトマイティアクションを好んで使う?………まさか、

 

「桐也、お前どうすんだよ」

 

「まあ、全ては明日だな。今日はもう考えねー」

 

ぷー、っと息を吐く桐也。温泉に入ってるってのに、俺の体はなんだか冷たく感じた。

 




京都旅行2日目

桐也は疑問を解決する為に1人行動する。

そして『黒いエグゼイド』と向き合うこととなる。

心のモヤが晴れる時、桐也の口から放たれた言葉は……

see you next game!

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