IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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フルボッコタイム、始動


第76話 死闘 〜黒の金のAMAZINGなヤツ〜

11月09日(水)PM10時09分

 

「くっ……のわっ!?」

 

ガドルのパンチを受け切れず幻夢コーポレーションの壁に叩きつけられる。

 

「九条!この野郎ッ!」

 

「遅いッ!」

 

「なっ!コイツ、ガッ!?」

 

タイガ先生の腹に肘打ちを決め、怯んだタイガ先生の頭を掴みビル目掛けて投げつけた。地に伏せたタイガ先生は変身が解除されてしまっている。

 

セシリアや鈴、シャルロットにラウラも応戦したが圧倒的な力の前に地に伏せた。

 

さっきまでとは大違いだ。これが本気なのか?こんなの…ノインシュヴァンツのゲージ全部使っても勝てねぇ。そもそも現在使えるゲージは6本。5時間で1本回復するブーストゲージ。5本でも怪しかったのに6本とか無理だろ。

 

「この…野郎…!」

 

「無理に動けば貴様の骨や肉が使い物にならなくなるぞ」

 

「テメェを倒せるなら、問題ねえ!!」

 

なんとか立ち上がる俺。俺が負けるにしても、女の子達は逃さないと。

 

「ここで貴様らは死ぬ。俺をここまで追い詰めたことを誇りに思いながら死ね」

 

「死ぬならテメェを倒してからだ!」

 

「その通りよ!!」

 

ガドルの眼前に白い剣が複数落ちてくる。それから遅れて降りてきたのは白い騎士。燃え盛る剣を構えガドルの前に立ち塞がる。

 

「会長さん!」

 

「仮面ライダーブレイブ レガシークエストゲーマー Lv100!遅れてごめんなさいね」

 

「みんなーッ!!」

 

遅れて紅椿を纏った箒が降りてくる。これで国外にいた奴は全員帰ってきたってことだ。頼んだ俺が言うのもなんだけど、よく集めてこれたな箒。

 

「大丈夫かキリヤん!」

 

「まあ、見ての通りってとこ」

 

「状況はあまりよろしくはないわね」

 

会長さんが手をかざすと光を俺に放ち、ライダーゲージを回復させてくれた。でもまあ、俺自身は回復してない。仮面ライダーとして戦える時間が増えただけ。

 

「2人増えたところで変わりはしないぞ」

 

「あら?それはどうかしら、ね!」

 

一瞬で距離を詰め炎を纏ったガシャコンソードを振るう。ガドルがそれを腕でガードするがお構いなしに何度も何度も斬りつける。

 

「確かに頑丈ね」

 

「頑丈だけが俺ではないと知れ!」

 

ガドルが反撃のパンチを繰り出す。

 

しかし会長さんはそれを片手で止めた。

 

「なっ!?会長さん、実はゴリラかなんか!?」

 

「ちょっと失礼ね!タネも仕掛けもあるわよ!」

 

「バカな!俺の拳をいとも簡単に!?」

 

「あら、それ以上はやめておきなさい」

 

ガドルがもう一度拳を振るうと、ガドルの右腕が切り離された。

 

「ぐおっ!?これは!」

 

「ガシャコンソードの炎はただのあつ〜い炎じゃないわよ。オシャレに言うなら聖なる炎。これで焼き切っただけよ」

 

「焼き切った!?んなこと」

 

「出来るわ。一応《学園最強》の称号を貰ってたのだから、ね!!」

 

「ぬうっ!?」

 

俺たちがここまで苦戦したガドルの腕をこうも簡単に焼き切り、更に氷漬けにするなんて……学園最強はやっぱ伊達じゃないってことか。

 

「さ、一気に決めましょうか」

 

「待ってください!!」

 

会長さんがガシャットをソードに装填しようとしたその時、聞き覚えのある声が響いた。

 

「はぁ……はぁ……あとは、俺たちがやります」

 

そんなバカな発言をしたのは、今頃病院で寝ている筈であろう一夏であった。

 

◇ーーーーー◇

 

何とか間に合った……のだろうか。多分俺がここにいることに驚いているのだろう、箒たちの顔が驚きに染まっている。

 

キリヤんと楯無さんは分からないけど。

 

「一夏さん!お怪我の方は!?」

 

「完全には治ってない!」

 

「治ってないって…アンタバカなの!?」

 

「だろうな!」

 

「無理しちゃダメだよ!」

 

「無理しなくちゃ倒せないからな!」

 

「お前という奴は……」

 

「そう呆れてくれるなよ。俺たちで倒すんだから」

 

「一夏!!」

 

「おお簪、走ってきたのか。お疲れ」

 

とにかく、これで全員揃った。この人数…いや俺たちなら!!

 

「………ッ!」

 

「いってぇ!!?何でケツ蹴るんだよ!」

 

「うっせぇ、オメェが来ねえからコッチはバカみたいに苦労してんだぞ分かってんのか!?」

 

「はあ!?元はと言えばお前が別行動しようって言ったからこうなったんだろ!」

 

「いつ暴走するかわかんねぇ奴を側に置いとけるかよ!俺は自分の身の安全を優先してんの!」

 

「嘘ばっか!誰よりも前に突っ込んでる奴がどの口で言ってんだバーカ!!」

 

「お前よりかはマシなんだよバーカ!!」

 

「………」

 

「………フッ、悪かったな」

 

「コッチこそ」

 

言いたいことを言えた気がする。あの時からずっと話してなかったもんな。文句とか溜まりに溜まってたし、一緒に戦ってもいなかった。

 

でも俺と桐也が最強のコンビなのは間違いない!

 

「いくか」

 

「ここで変身すんのか?」

 

「……ああ………みんな、今まで黙っててごめん。この事知ったらみんなに拒絶されるんじゃないかって思ってて…ずっと話せなかった」

 

「一夏…?」

 

「特に箒……ホントごめん!1番箒に話すのが怖かった。箒に嫌われるのが1番辛いから…」

 

「私がお前を嫌うなど…そんな事など無い!!」

 

「そう言ってくれて嬉しいぜ。ありがとうな………じゃあみんな、見ていてくれ!」

 

俺はアークルを呼び出し構えをとる。

 

これがみんなと最後の共闘になるかもしれない。だからこそ知っていて欲しかった。織斑一夏が仮面ライダーだったことを!

 

「俺の!変身ッ!!」

 

体が熱くなると同時に何だか少し軽くなった気がする。吹っ切れたって感じか……

 

「一夏さんが……未確認…」

 

「アンタ…嘘でしょ?」

 

「一夏がクウガ……」

 

「お前….こんなことを隠していたのか」

 

予想通りの反応だ。そりゃそうだよな。今まで一緒にいた人間が実は化け物でしたって言われたら驚くよな。

 

「って、言うと思ったわけ?」

 

「………え?」

 

「なんとなく…そうではないかと思っていましたわ」

 

「……ええ?」

 

「一夏とクウガ…なんだか雰囲気が似てるんだよね」

 

「いや…ちょっとまって??」

 

「隠し事が下手なんだお前は。それでは潜入捜査など無理だぞ?」

 

「まさか……喋ったのかキリヤん!?それとも簪!?」

 

「喋ってねーよ。簪ちゃんもな」

 

嘘!?みんなにバレてる!?まさか箒にも…!?

 

「一夏」

 

「箒!まさかお前まで!?」

 

「わ、私は……今知ったぞ!うん!」

 

「バカ言ってんじゃないわよ。1番最初に言い出したのアンタじゃない」

 

「り、鈴!!」

 

この瞬間魂が抜けそうになった。俺が必死に隠してきた事をみんなは『ああ、どうせ一夏がクウガなんだな』って思ってたわけ!?

 

「名人」

 

「キ、キリヤん…」

 

「これで分かったろ?お前がクウガなんじゃないかって、みんな思ってても誰もお前との接し方を変えなかった。お前がクウガだったところで俺たちの関係は変わらないってこった」

 

「……泣きそう」

 

「泣くなら後でな。向こうもそろそろお目覚めみたいだぜ」

 

氷漬けにされたガドル。その氷にもだんだんと亀裂が入っていき、遂には砕けた。

 

「この程度で…俺を倒せると思うな!仮面ライダー!!」

 

「さーて、それじゃあ行きますか」

 

「おう!ウイニングランを決めるのは」

 

「「俺たちだ!!」」

 

◇ーーーーー◇

 

戦いの火蓋を切ったのはセシリアのライフル。真っ直ぐ放たれたビームはガドルに命中する。氷漬けにされたことで動きがまだ少し鈍っているのか、直撃すると少しよろめいた。

 

「畳み掛けろ!!」

 

「一気に行くぜ!!」

 

片腕だけのガドル。流石に桐也と一夏の連携を完全には捌き切れていない。

 

「一夏!」

 

「サンキュー簪!」

 

簪から夢現を受け取る一夏。それからドラゴンフォームに……いや金の力が加わったライジングドラゴンフォームへと変化した。

 

「いけるよな!」

 

「ったりまえ!」

 

ライジングドラゴンロッドを構え跳躍する一夏。桐也はガシャコンスパロー、ラウラはレールカノンで攻撃する。

 

遠距離からの攻撃に苦戦するガドル。そこへ一夏の渾身の一突きが炸裂する。

 

「ぬうっ!この程度!!」

 

「だったらコレなら…どうだ!!」

 

ライジングドラゴンからライジングタイタンへ姿を変え、武器もライジングタイタンソードへ変化した。

 

「うおおおっ!!!」

 

タイタンソードを深く突き刺す。片腕なら引き抜かれていただろうが、今のアイツでは無理だ。

 

「おのれッ!」

 

「!?ぐあっ!!」

 

しかしガドルもやられっぱなしじゃない。雷を纏った拳を一夏に叩き込む。いくら強化されたタイタンフォームの鎧でも簡単に砕けてしまい、そのまま壁に叩きつけられた。

 

「一夏ッ!!」

 

「俺に構うな!今が攻め時だろ鈴!!」

 

「くっ……分かってるわよ!シャルロット!」

 

「オッケー!援護よろしく簪さん!」

 

「分かった…!」

 

タイタンソードを引き抜いたガドル目掛けて最大出力で突撃する鈴とシャルロット。青龍刀をすれ違いざまに振るい、パイルバンカーを傷口に叩き込む。

 

「やああっ!!」

 

「今よ簪!!」

 

「いっけぇ!!山嵐!!」

 

シャルロットが離脱した瞬間に叩き込まれるミサイルの嵐。避ける間もなく全弾直撃する。本来ならこの程度のミサイル群では怯みはしないが、数発が傷口に直撃しガドルをさらに追い詰めた。

 

「……これが…リントの力か…!」

 

「そうだ。これが俺たちの力だ!」

 

蹌踉めくガドルの肩をライジングペガサスの一撃が射抜いた。

 

「ここまで追い詰められるのも初めてかアンタ?」

 

「これで終わらせる!」

 

「いくぞ2人とも!」

 

ライジングマイティに姿を変えるとボウガンはガシャコンスパローへと戻った。

桐也はガシャコンスパローを受け取りギリギリチャンバラガシャットを装填する。

 

「突っ込め!!」

 

「おう!」「ああ!」

 

キメワザを発動させたタイミングで突撃する一夏と箒。繰り出された矢は一夏と放棄を追い越してガドルへと命中、すかさず抜刀した箒が追撃を仕掛ける。

 

「はあっ!!」

 

「おりやぁ!!」

 

「ぐぬぅ!?この俺が…負けるものかぁ!!」

 

箒の刀を掴むガドル。箒も離すまいと抵抗するがガドルはそのまま箒ごと投げ飛ばしてしまう。

 

「箒ッ!!」

 

「前を見ろ一夏!次が来るぞ!」

 

「備えろ一夏!!」

 

壁に叩きつけられる箒。それとほぼ同時にガドルの全身から雷が放たれる。誰かを狙うわけでもなくただ無差別に放たれる。

 

桐也たちはなんとか避けるが、そのうちの一撃がまだダメージが抜けきっていない箒へと迫る。

 

「やらせるかよ!!」

 

「一夏ッ!?」

 

箒の前に立ち自分の体を盾とし雷を防ぐ一夏。いくらクウガとはいえ気を失いそうになる威力。それでも一夏は耐え続けた。

 

「俺の目の前で…俺の仲間は……誰1人…!」

 

やがてクウガの体が黒く染まってくる。それは究極の闇などではなく、誰かを守りたいと戦い続ける一夏の想いに霊石が応えた姿。

 

「絶対に死なせねえぇ!!!」

 

黒の金のクウガ。桐也は少し身構えるがそれもすぐに喜憂に終わる。

 

一夏の目は闇に染まっていなかったのだから。

 

「アメイジングだな…一夏……」

 

「これで…終わりだ!」

 

「しゃーねぇ、一気に決めるぞ!花は持たせてやる!」

 

一夏の目が赤く発光する。それと同時に両足にエネルギーが溜まる。

 

『ガシャット!キメワザ!!』

 

先行する桐也。なお放たれ続ける雷を掻い潜りながらガドルを目指す。

 

「歯ァ食いしばれよカブトムシ野郎!!」

 

桐也が飛び上がった瞬間ガドルは雷を放つことをやめすぐに左腕で防御体制に入る。

 

『爆走!クリティカルストライク!!』

 

桐也の蹴りはガドルの左腕で防がれてしまった。

しかし防がれたのはエネルギーの溜まっていない左足での蹴り。桐也の狙いは一夏の攻撃を確実に当てること。

 

「オラァ!!」

 

着地からの右足での回し蹴りで左腕を払い退ける。ガラ空きになったボディ。声に出さずとも今がチャンスだと一夏には伝わったようだ。

 

「おりゃあぁぁ!!!!」

 

いつもの片足のライダーキックとは違う、両足でのキック。それが今までのクウガとは違うことをガドルに最後に分からせたことだった。

 

「ぐっ!がああっ!!?」

 

「はあぁぁっ!!だあっ!!」

 

ガドルのボディに刻まれた2つの封印マーク。そこからベルトへとエネルギーが流れ込んでいく。

 

「…はぁ……はぁ…」

 

「……強くなった…いや、お前達リントは強くなりすぎた…」

 

「この野郎…まだ生きて」

 

「強すぎる力はいずれ自ら滅びを招くことになるぞ……」

 

「だとしても、だ。俺たちは1人じゃない。支え合って……なんとかするさ」

 

「……この状況で笑うか……成る程、それがお前達…人間の強さ……」

 

ガドルのベルトが割れた。それと同時にガドルを巨大な火柱が包み込む。

 

ガドルとの死闘はこうして幕を下ろしたのだ。

 

◇ーーーーー◇

 

11月09日(水)PM11時30分

 

「あー、身体バッキバキ……クッソ痛えんだけど!」

 

「痛いなら大人しくしろよ!俺のケツを蹴るな!」

 

戦いが終わって緊張の糸が切れたのか全員座り込んでいる。

 

「しかし、一夏さんが本当に未確認……いえクウガだったとは……私知らぬ間にフラれてます!?」

 

「いやいや、アンタの場合最初から無理だから」

 

「な!?失礼ではありません鈴さん!?」

 

「彼氏作るならまず料理をなんとかしなさいよアンタ!今度教えてあげるから!」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます鈴さん!!」

 

「いや抱きつくな!痛いからー!!」

 

相変わらず元気な2人だ。見ててホッとするっていうかなんていうか。

 

「一夏、あの時はごめんね。もし一夏って分かってたらあんな事態は防げたかもしれないのに…」

 

「いやいや、それこそ俺がちゃんと伝えなかったせいだろ?なら俺の責任だって」

 

「で、でも…」

 

「シャルロット。お前は先に一夏に伝えることがあるだろう?」

 

「ラウラ……うん、あの時は助けてくれてありがとう一夏」

 

あの時のこと、まだ少し気にしてたんだな。こんな時にもお礼を言ってくれるなんてシャルは優しいなぁ。

 

「悪かったな。こういう時、大人が率先して前に出るべきなのによ」

 

「ホントだよタイガ先生?先にダウンしてくれちゃってさ〜。この埋め合わせはキチンとしてもらうからね〜」

 

「相変わらずだな九条。だがまあ、お前に変に気を遣われるよりはマシだな」

 

少し…というよりだいぶ疲れてるけどタイガ先生もなんとか元気そう…いやダメそうだな。

 

「あぁ〜!私の最強フォームのお披露目でカッコよく終わる予定だったのに〜!全部持っていったな一夏くん!」

 

「仕方ないよ……一夏も新フォームみたいだったし……」

 

「これも若さかぁ!!くぅ〜!若さが欲しい!」

 

「お姉ちゃんは…主人公というより……面白ヒロイン…」

 

「か、簪ちゃん!?お願いだから面白とか言わないで〜!」

 

珍しく楯無さんが簪に振り回されている。あの姉妹がこれからも仲良くしてくれるとあの時頑張ったかいがあるってもんだ。

 

「何ニヤついてんだ変態名人」

 

「変態は要らないだろ!」

 

「確かに強敵はこれで一体減ったけどな。まだ控えてる奴はいるんだぞ」

 

「分かってるって……でもさ、俺たちなら」

 

「なんとかなるって?はぁ……ま、そうかもな」

 

1つの節目を迎えた。この戦いは俺たちを新しいステージに導いてくれた……なんてな。

 

「桐也……ただいま」

 

「……バーカ。言う相手間違ってんだよ」

 

桐也の目線の先には箒がいた。そうだよな。まず言うべき相手がいるよな。

 

「箒……ただいま」

 

「ああ……おかえり、一夏」

 

俺は今帰ってこれた。みんなが待っていてくれたこの場所に。

 

 

俺はそれがただ嬉しかった。

 




激しい戦いを終えた桐也たち。

そんな彼らに与えられた次のミッションは『休む』こと。

しかしそれでもトラブルに巻き込まれるのは彼らの運命。

桐也たちは貴重な休みを守れるのか?

see you next game!

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