IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜   作:無限の槍製

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かーなーり時間が空いて申し訳ないでございます。今後のバイク名人の展開とかその他のこととか次回作の事とか色々と立て込んでました!

今回で遂に桐也が最強フォームに!


第67話 九条桐也の章 最強最速のGAMER

10月11日(水)PM05時17分

 

「………………」

 

重い空気が生徒会室を包み込む。桐也、虚、楯無の3人は一向に口を開こうとしない。

先の戦いで犠牲者が一気に14人も殺されてしまったのだ。まだ1人残っているとはいえ、この時点で桐也達は負けているといっても過言ではない。

 

「………………はぁ…」

 

沈黙を破ったのは桐也のため息だった。そのまま立ち上がり生徒会室を出て行く桐也。その後ろ姿を2人は追いかけられなかった。

 

「…………桐也くん、大丈夫かしら……」

 

「こちらで調べはつきましたが……そういう事だったとは……」

 

桐也と最後のターゲット、藍原奈津子の関係について調べた虚。

 

桐也と奈津子は幼馴染だ。5年前とある事故をきっかけに疎遠となっていたらしい。そして虚と楯無には5年前の事故……もとい事件には心当たりがあった。

 

 

5年前

 

とあるショッピングモールで起きた大規模火災。奇跡的に犠牲者は出なかったものの、負傷者はその年で最大数だった。

火災の原因は料理店の火の不始末とされているが、一部の人間は本当の原因を知っている。

 

バグスターウイルス。

 

2000年問題のコンピューターの僅かな誤作動で生まれたコンピューターウイルス……とされているが詳細は不明。今現在分かっていることはコンピュータのみならず、人にまで感染すること、感染した人の一部の記憶を消すこと。そして怪物として実体化すること。

 

バグスターウイルスは一部の人間の間で噂されており、檀黎斗もバグスターウイルスについて調べていた。その後微量のバグスターウイルスが感染したコンピュータを調べた結果、バグスターウイルスに対抗するシステムを作ることとなった。

 

それがゲーマドライバーを用いた仮面ライダーだ。

 

5年前の大規模火災の際に実体化したバグスターウイルスを討伐するため、当時放射線医だった花家タイガと助手の鏡ヒイロがスナイプとブレイブとして事に当たった。

 

しかし初めての実戦での仮面ライダー運用もあり、タイガとヒイロは苦戦を強いられ、最終的にそのバグスターは世界中にバグスターウイルスを撒き散らしそのまま行方をくらませたのだ。

 

その後世界中で軽微な記憶障害を引き起こす事件が発生、これをバグスターウイルスの仕業とし、あの日の事件を『ゼロデイ』として一部の人間は呼んでいる。

 

 

「まさかゼロデイの被害者だったとは……」

 

「桐也くん自身は軽傷だったみたいだけど、幼馴染の子は重傷だったみたいね……」

 

再び生徒会室に重い空気が漂い始める。いつも飄々としている桐也も過去には辛い思いをしたのだろうと。

 

◇ーーーーーーー◇

 

10月11日(水)PM06時35分

 

学園の屋上。雨が降る中桐也は1人手すりにもたれかかっていた。

 

「風邪ひくよ〜」

 

そんな桐也に傘を差し出したのは本音だった。

 

「…………本音はさ、俺が死にそうな時に逃げろって言われたら逃げる?」

 

「死にそうなキリヤんを置いていけないよ。私も残るよ」

 

「………………あの時の俺はそれが出来なかった……」

 

悔しそうに唇を噛み締め、拳を握る桐也。桐也の過去について虚から少しは聞いていた本音。何のことかはすぐに把握出来た。

 

「5年前のあの日、俺となっちゃんはショッピングモールに遊びに行ったんだ。ゲームの発売日で親の仕事の都合で夜に行ったんだ。そこであの事件だ……」

 

「大規模火災……でも、キリヤんの場合は」

 

「目の前に見たことのないバケモノがいたよ。黒くて、怖くて………すぐになっちゃんと逃げたよ。でもなっちゃんは落ちてきた瓦礫の下敷きになって動けなくなった」

 

本音は想像する。もし自分が同じ状況になっても今の桐也なら変身してでも助けてくれるだろうと。

でも昔の、変身ができない桐也は助けてくれるのだろうかと。

 

「なっちゃんを連れて逃げたくても瓦礫は重くてどかせなかった。そしてバケモノが迫ってきてた……」

 

桐也の声がだんだん震えてきた。顔を流れる雫は雨か涙か分からなかった。

 

「なっちゃんは逃げろって言った。ドラマとかアニメなら逃げないって言ってバケモノにでも立ち向かうんだろうな。でも俺は一目散に逃げた。バケモノに対する恐怖心が勝ったんだよ」

 

今の桐也からは想像もつかない行動。今の桐也ならそれこそ立ち向かうだろう。でも昔の桐也はそれを拒み、一目散に逃げたという。

 

「事が収まったとき、俺は…………忘れてたんだ。なっちゃんのことを。逃げるのに精一杯だったからじゃない。綺麗さっぱり、幼馴染がいたことを忘れていたんだ」

 

「バグスターウイルスの……記憶消去……」

 

「思い出したのは俺が中学2年の時だ。何の前触れもなく思い出した。そして思い出した俺はすぐに引っ越ししてなっちゃんが入院していた聖都大学付属病院に向かった」

 

本音は最悪の展開を予想してしまった。

 

「なっちゃんも、俺のことを忘れてたんだ。俺は当然だよなって思った。大事な幼馴染をほったらかしにしたんだ。これくらいの罰で済んだのが運が良かったのか悪かったのか」

 

バグスターウイルスでの記憶消去は全人類に起きているらしい。それは本音も例外ではない。ただ些細なことを忘れても人は気がつかない。記憶を無くしたことすら分からないのだ。

 

「だから俺は二度となっちゃんを忘れないために…………色々真似してるんだ……自分って一人称とか…アロハシャツとかな……」

 

「キリヤん……」

 

「おかげで二度と忘れることはなかった。それからその後俺は仮面ライダーになった…………だからもうあの日の出来事は繰り返させない。俺はもう二度と逃げない」

 

逃げないと言った桐也の表情はさっきまでと違い、決意に満ち溢れた顔をしている。

 

「今度は絶対守らないとね…………はいこれ」

 

「え……これガシャット?…………ノイン……シュヴァンツ……?」

 

本音が桐也に渡したのは銀色のガシャット。名前はノインシュヴァンツ。ドイツ語で九尾だった。

 

「私も元々代表候補生だったんだよ〜IS学園代表〜」

 

「は?マジで?」

 

「だから専用機も用意されてたんだけどね〜結局ボツになっちゃったから〜。でもでもデータは残ってたから、それを使ってガシャットにしてみました〜」

 

「マジか……天才かよ……てかこのタイミングとかナイスタイミングかよ」

 

「勿論、未確認に対抗するためでもあるけど〜。キリヤん明後日誕生日でしょ〜?」

 

「………………あーー!!!」

 

完全に忘れていた桐也。ラブコメ鈍感主人公みたいな展開には絶対ならないと決めていた桐也だが、思った以上にバタバタしており曜日感覚が無くなっていた。

 

「マジか……完全にすっぽ抜けてた……サンキュー本音」

 

「どういたしまして〜。じゃあ、中入ろっか〜流石に体冷えちゃうよ〜」

 

「……そうだな…………ありがとな本音」

 

本音に礼を言う桐也。過去にケジメをつける時は刻一刻と近づいていた。

 

 

10月12日(木)AM11時48分

 

聖都大学付属病院。

 

「雨の中ありがと〜来てくれて」

 

「今はそんなに降ってないし、大丈夫だよ」

 

桐也の姿は奈津子の病室にあった。あの未確認の性質上、ダーゲットを精神的に追い詰めてから殺すはずと踏んだ桐也。病室の外には虚とヒイロがスタンバイしている。

 

「でも天気予報だとこれから酷くなるみたいだよ?昨日も夜中は雨凄かったし」

 

「ま、自分の心配はいいからさ」

 

奈津子と話しながらもいつも以上に警戒を怠らない桐也。しかしそれが奈津子には違和感として感じ取ってしまったのだろうか。

 

「どうかした?いつもより顔怒ってるよ?」

 

「え?そう?…………そう、かもな……」

 

「何かあった?」

 

「うん……まあ、色々とね………ケジメをつけなきゃいけなくてね」

 

「え、ケジメって小指切るの!?」

 

「いやいや、そんなことはしないから。てかなんの映画観たのそれ?」

 

「フフッ……やっといつもの顔になった」

 

笑う奈津子。桐也自身も少しは肩の力が抜けた気がした。ガチガチになってちゃいざという時に動けなくなる。

 

「ふぅ…………わり、気張り詰め過ぎてた。大事なことに変わりないからさ」

 

「大事なことでも、桐也くんなら大丈夫!だって桐也くんだもん!」

 

「それ、答えになってないからね?」

 

病室がいつもの雰囲気に包ま

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『PAUSE・・・RE START』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

れた。

 

「!?……なっちゃん?」

 

目の前から奈津子が消えた。目を離したわけでもない。未確認が攫っていったわけでもない。目の前から忽然と姿を消したのだ。

 

「先輩!大先生!」

 

「どうしたの?」

 

「…………いなくなった…」

 

「何?」

 

虚とヒイロが病室に入る。病室に誰かを入れたり出したりしたということはない。2人はずっと部屋の前で立っていたのだから。

 

「…………ッ!」

 

すぐさま病室を飛び出す桐也。虚とヒイロも追いかけるが、この時の桐也は誰よりも速かった。

 

 

10月12日(木)PM00時26分

 

雨の音が響き渡る。場所は廃工場。昨日桐也と虚が未確認と戦った場所だ。

 

そこに奈津子は横たわっていた。

 

そしてその近くのドラム缶の上に未確認のジャラジが座っていた。

 

「うっ…………冷た……ここは……」

 

「あ、起きたー?ちゃんと目覚めたぁ?」

 

「だ、誰ですか貴方!?」

 

「俺?うーん、怪人?」

 

ジャラジは人間態からグロンギの姿に戻る。当然目の前に未確認生命体が現れたのだから奈津子は逃げようとする。

 

しかし足が動かない。恐怖で動かなかった。

 

「逃げてよ〜、みっともなく足掻いてよ〜じゃないと面白くないじゃんかぁ〜」

 

ジャラジは針を取り外し奈津子に投げつける。針は奈津子の頬をかすめ、地面に刺さった。

 

「いや……こないで………こないでよ!あっち行って!!」

 

「もっと!もっと聞かせて!君の!リントの悲鳴を!!」

 

ジャラジが指を鳴らそうと構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数秒前に桐也はガシャコンスパローから矢を放った。

そして矢はジャラジの両手に風穴を開けた。

 

「ぐうっ!?ぎゃああああっ!!?俺の手がぁぁあ!!」

 

「はぁ……はぁ…………間に合ったぜ」

 

悶絶するジャラジを横目に桐也は奈津子に駆け寄る。

 

「桐也くんッ!桐也くんッ!!」

 

「待たせてごめんな。時計壊れて体感1時間ぐらい走ってやっと見つけれたよ」

 

「ありがとうッ……見つけてくれて…………助けてくれて…………」

 

奈津子は桐也に抱きついて泣いていた。

 

「テェェメェ!!!俺の手をよくもぉ!!」

 

「あ?手ごときでギャーギャー言ってんじゃねぇよ」

 

桐也はベルトを装着すると2つのガシャットを取り出す。

爆走バイクと新しいガシャット、ノインシュヴァンツ。

 

「悪いな。今回ばっかりは手加減出来ねぇぞ」

 

『爆走バイク!』

『ノインシュヴァンツ!』

 

「最速、変身!!」

 

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!!』

『爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク』

 

桐也の姿がレーザーターボに変わる。が、それだけでは終わらない。

今ベルトには二本のガシャットが刺さっているのだ。

 

『激走!合装!幻想!無双!シュヴァンツバイク!!』

 

レーザーターボの黄色い装甲がオレンジに変わり、キツネの耳を模したパーツが付き、腕にも銀色の装甲が追加され、極め付けはキツネの尻尾のようなパーツが腰から伸びていた。

 

これこそが本音が作り上げたノインシュヴァンツガシャットの力で変身した『シュヴァンツバイクゲーマー LvX』だ。

 

「最速で決めるぜ」

 

武器のガシャコンキースラッシャーを構えジャラジに接近する桐也。怒り狂ったジャラジも腕を振り回しながら襲ってくる。

 

が、冷静さを失った未確認生命体など、最速の力を手に入れた桐也には雑魚当然だった。

 

「はっ!らあっ!せりゃぁ!!」

 

高速で移動しすれ違いざまにキースラッシャーで切り裂いていく。そのスピードは今までのレーザー、及び仮面ライダーや未確認生命体よりも速い。

 

「ふっ、そらよっと!」

 

尻尾でジャラジを屋外へと吹き飛ばす。外は今だに雨が降っていた。

雨に打たれて冷静さを少し取り戻したのかジャラジはこの前では勝てないことを悟った。屋外に出れば逃げられる。そう思った。

 

「いつまでもお前に付き合ってられるかよ!!」

 

「そうだな。それはこっちのセリフでもあるんだぜ?………じゃ、お望み通り終わらせるか」

 

逃走を図るジャラジ。逃げ足は速い故、ここで逃してしまうと後が面倒になる。

 

「ノインシュヴァンツ、右足、1本ゲージ」

 

桐也がそう言うと、尻尾のパーツから右足へとエネルギーが伝わっていく。

ノインシュヴァンツ最大の特徴、それは尻尾のパーツに仕組まれている『ブーストゲージ』だ。尻尾の中には3本のゲージが積まれており、使用者の任意のタイミングでゲージが起動。指定した箇所にエネルギーを回すという仕組みだ。

 

「くらい……やがれッ!!」

 

一気に駆けた桐也は逃げようとするジャラジの背中めがけて蹴りを叩き込んだ。

 

メキメキッと骨が軋み、最終的には体が折れ曲がってしまった。

こうなってしまっては、ジャラジに逃げることはできなかった。

 

「グッ……ギィヤァァ……た、たすけて……」

 

命乞いするジャラジ。それを見た桐也はキースラッシャーでジャラジの左腕を斬り飛ばし、更に右手を踏みつけ顔にキースラッシャーを突きつける。

 

「……いいこと……教えてやるよ」

 

「ああ…………ああっ!!あああっ!!?」

 

「俺今な…………楽しすぎて、狂っちまいそうなんだぜ」

 

キースラッシャーに残りゲージ2本分のエネルギーを流し込み、ジャラジの体を両断した。つまりベルトも真っ二つになった。

爆発に巻き込まれる桐也。しかし仮面ライダーに変身している桐也には少しの衝撃が走っただけだった。

 

戦いが終わると同時に雨は止んだ。

 

桐也の心の中には少しの安堵があった。

 

◇ーーーーーーー◇

 

10月12日(木)PM01時43分

 

「…………ん……あれ…」

 

「起きましたか?あまり無理はしないでください」

 

目を覚ますとそこは病室で、私のベッドの隣には女性が座っていた。気品があり真面目そうなその女性は私が眼を覚ますのを確認するとその場を離れようとする。

 

「では、私はこれで」

 

「あ、あの…………桐也くん、私の……幼馴染……見てませんか?」

 

「…………安心してください。彼はもう二度と逃げません。ケジメをつけたらまた来ると言っていました」

 

「ケジメ……」

 

「貴女と再び会い、同じ時間を過ごしたことで、彼の中の決意もより強いものになったようです。ですから待ってあげてください。いい加減なところもありますが、それでも彼は」

 

「約束を……守ってくれる……」

 

「…………ええ……では」

 

女性は病室を出て行った。

 

『逃げて!早く逃げて桐ちゃん!』

 

『…………ッ!絶対!絶対戻ってくるから!なっちゃんを助けるから!』

 

『…………うん、待ってるよ……桐ちゃん』

 

あの時君は泣きながら駆けて行った。帰ってくるのに時間がかかっちゃったね。きっと君はその事で悩んで悔やんだのだでしょう。でもいいの。ちゃんと帰ってきてくれたから。

 

「約束、守ってくれたね…………ありがと桐ちゃん」

 

病室に、心地よい風が流れてきた。

 

◇ーーーーーーー◇

 

「うーーーーーん、バケモノかな?」

 

暗い部屋。唯一の光であるテレビにはシュヴァンツバイクゲーマーのレーザーが映っていた。

 

「スペック、能力、いずれも従来の仮面ライダーを超えてる…………変身者がヘッポコなのが唯一の救いかな?」

 

ブツブツと独り言を言いながらパソコンを開き、カタカタと打ち込む。

 

「ノインシュヴァンツのデータが取りたいから結果的に未確認に手を貸しちゃったし、女の子見つけるまで彼の以外の時間止めてみたけど…………その苦労も無駄じゃなかった」

 

笑顔になる女。その笑顔はパソコンの光が当たり狂気的な笑顔になっていた。

 

「……それじゃあ、そろそろ始めようか。究極の闇による破壊を」

 

パソコンにはIS学園破壊計画と記されていた。




ノインシュヴァンツガシャット。レーザーの最強フォームをどうしようかなと悩んだ結果がシュヴァンツバイクゲーマーになります。変身音は友人達が考えてくれました。仕事しろ作者。

なんだかんだ一夏が出てきてませんが、次回からは出てきます。
次回は最後のヒロイン、簪の予感が!

ではsee you next game!

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