IS 〜バイクと名人とSchoolLife〜 作:無限の槍製
第4話 学校 〜Admission〜
4月3日 (月) AM08時50分
「全員揃ってますかー。揃ってますね。それじゃホームルームを始めますよ」
黒板の前に立つのは副担任の『山田真耶』先生。下から読んでも『やまだまや』。うん、なんとも言えない。
そんな山田先生が何か話している。しかし教室には変な緊張感に包まれて誰からも反応がない。山田先生涙目である。それも仕方ないような気はするが。
「じゃ、じゃあ自己紹介してもらおうかな。出席番号順で」
うろたえる先生。反応のない生徒。山田先生に精神的ダメージ!山田先生のライフはもうゼロよ!
なんてことも言っていられない。なぜなら。
俺ともう一人以外、クラスメイトが女子なのだ。しかももう一人男がいたなんて知らないぞ!?てかなんで制服じゃないんだ!?なんでアロハシャツなんだ!?なんで教室でサングラスかけてるの!?
(いろんな意味で……キツイな)
そんな不審者同然の奴にも視線が集まっているが、当然俺にも視線の雨あられ。俺のライフもゼロになりそうだ。
だいたい席も悪い。真ん中プラス最前列。こんなとこ真面目な奴に座らせろよ!目立つんだよ!アロハ兄さんは後ろの方なのに!
「織斑くん?」
「え?あ、はい!」
「大丈夫?自己紹介が次だったからね」
「あ、そうですか。すいませんボーッとしてて」
自己紹介。これを失敗すれば三年間高校生活をぶっ壊すことになる。ウケ狙いで1発ギャグでもしてみろ。それこそ三年間ボッチルートまっしぐらのデッドエンドだ。
「えー…織斑一夏です。趣味は………」
ヤバイ。勢いで趣味は、なんて言いだしてしまった。なんか周りの女子が目をキラキラさせている。
「……ぼ、盆栽…です。以上です」
『…………』
「(な、なんだこの沈黙は)ええっと、」
続けて話そうかと迷ったその瞬間、背後に寒気を感じる。
「何が盆栽だ。盆栽などしたことなかろうに」
「げえっ、カードキャプター?」
「さくらだよ!って違うわバカ!」
まさかのノリツッコミ。みろよ若干女子が引いてるぜ。これがドン引きってやつだ。てか……千冬姉ってこの学校の先生だったのか。
「もう会議は終わられたんですか織斑先生」
「クラスへの挨拶を任せて悪かったな山田君」
「いえいえ、これでも副担任ですから」
胸を張る山田先生。スキル『強調』である。一部の女子が悔しがっている。
「えー、見ての通り私が織斑センセーだ。フルネームは織斑千冬。君たちを一年で立派な操縦者に育てるのが私の役目。とまあ堅苦しいのはここまで。一回きりの高校生活を楽しむように。以上だ」
『はい!!』
山田先生の時とは大違い!千冬姉の時はこんなにもみんなが元気になるとは。キャーキャーと騒ぐ女子たち。唖然とする俺。態度の変わらないサングラス兄さん。
「で、挨拶もまともにできんのか?お姉さんはお前をそんな風に育てた覚えはないぞ?」
「いやだって特に話すことないし」
と、このやり取りでクラスに姉弟なのがバレた!いやまあ織斑で分かるか……
「やっぱり織斑君って、織斑先生の弟?」
「それじゃあ、男でISを動かされるのもそれが関係して?」
「じゃああのアロハの人は?あの人も親戚?」
「あーいいなー。代わってほしい」
なんて会話がチラホラ。ここで一応説明しよう。
俺は『名目上』唯一のISを使える男として公立IS学園にいる。
IS学園とは『ISについて勉強する学校』である。そのままである。実につまらん。
「まあいい。自己紹介の続きをしてくれ」
「はい、それじゃあ次に行きましょう」
こうして俺の番は終わった。うん、実に長かった。俺だけかな?そんなことを考えているとアロハサングラス兄さんの番になる。
「では九条君。次お願いします」
「はいはい。自分九条桐也って言います。まあ好きに呼んでもらっていいけど。あと私服なのは制服がまだ出来てないから。まあこんなとこかな」
九条桐也。キリヤ……なんか似た名前を聞いたことがある。確かあれは最近買ったゲームの……
◇
4月3日(月)AM09時40分
「ふぁー……」
参った。もう駄目だぁ、お終いだぁ。逃げるんだ!分かるわけがない!あれは伝説のスーパー難関授業なんだぞ!恐れを知らないのか貴様らは!
「………」
それにしても、この状況はどうにかならないのか。どこを見ても女子、女子、女子、男子、女子、女子、女子女子女子女子女子女子ああああああ!!!
というわけで廊下には他クラス、二、三年のパイセンが詰めかけている。まるで動物園のパンダだ。パンダの気持ちがわかったよ。
「………」
チラッと桐也を見る。もう表情でわかった。教科書を見て『うわーこんな授業するのかよー。いやだなー』って顔だ。つまり引きつっている。そう、つまり俺たちは同じ!この授業についていけない組だ!
「な、なあ」
「ん?」
「俺、織斑一夏って言うんだ。よろしくな」
「改めて、九条桐也だ。まあ好きに呼んでよ」
「じゃあ、キリヤでいいか?」
「ん?妙に発音が違うような……まあいいか。自分も一夏って呼ばせてもらうよ」
「おう」
見た目に反していい奴だ。やっぱり人を見かけで判断してはいけない!そう考えさせられるな!
「……ちょっといいか?」
「え?」
突然話しかけられた。この声には妙な懐かしさを感じる。無理もない、6年ぶりの再会になる幼なじみなのだから!
「久しぶりだな箒」
「6年ぶりだな一夏。それと久しぶりだなキリヤん」
「キリヤ、ん?」
「それはヤメろって自分言ったよね?」
「好きに呼べって言ったのはキリヤんだろ?」
篠ノ之箒。俺が昔通ってた剣道道場の娘。ポニーテールが似合う幼なじみだ。不機嫌そうな目は生まれつきらしい。このことにはあまり触れたくない。昔の古傷が……
「箒はキリヤと友達なのか?」
「中学でな。と言ってもキリヤんがすぐに転校したからな」
「大人の事情さ」
箒の場合、見た目がチャラチャラしたチャラ男を最も嫌う。キリヤもアロハにサングラス(もう外している)でだいぶチャラチャラしているはずだ。しかし箒はそんなこと気にしていないような。
「6年ぶりなんでしょ?自分に構わず再会を喜びなよ」
「どこに行くんだキリヤん」
「悪いけど、俺は特別授業なんだ。それじゃ」
もうすぐ2時間目のチャイムが鳴る。キリヤは足早に教室を後にした。
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3月21日 AM11時00分
「本気で九条君をIS学園に入れるつもりなんですか社長」
「うん、彼には『対未確認用特殊部隊』に入ってもらう。仮面ライダーの適合者である以上それが一番だ」
「仮面ライダーの適合者……彼が天才ゲーマーなのですか?」
「いや、彼は普通のゲーマーだ。ただある一点を除いては」
「ある一点?」
「ガンゲイル・レーシングを知っているね?」
「ちょうど一年前に発売されたゲームですよね。銃で攻撃しながらレースをする」
「それのチャンピオンの名前は?」
「えっと……キリト、ですよね」
「それが九条君だよ」
「ええ!?九条君がキリト?あの誰も抜けないタイムを叩き出したキリトが九条君なんですか?」
「確認してあるから間違いない。あとレベル1であのポテンシャルを秘めているんだ。間違いないよ」
「それでも、それでも私が変身したほうが!」
「木綿季くん。君は彼の入隊を拒否しているのかい?自分の妹が属しているというのに」
「もう、あの家とは縁を切ってます。関係ないです」
「それでも私は九条君が仮面ライダーレーザーとして戦ってくれると信じているよ」
「……社長、別に目的があるんじゃないんですか?」
「無いよ。さて、仕事に戻ろうか」
◇
4月3日(月)AM09時50分
あの時は誤魔化されたけど、多分社長は何か考えているとしか思えない。だって九条君は……絶望的にレースゲームが苦手なんだから。
彼の家にお邪魔した時、一緒にガンゲイル・レーシングを遊んだ。結果は私の全勝。到底彼がレースゲームの優勝者とは思えない。
「ほら来たぜセンセー」
「ちょうどだね九条君。君はIS学園に通うことになるけど、君はISを動かせない。だから君には普通の高校の授業を受けてもらいます」
「自分しかいないのは寂しいねぇ」
「それについてはごめんなさい。本当なら君は友達と授業を受けるべきなんだけど、君は特殊だからね。こうなってしまった」
「まあ気にしないよ。休み時間と体育は一緒に居られるんでしょ?なら気にしない」
「そう、ありがとう。それじゃあ早速授業を始めようか。まずは英語からだね」
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「だいぶ、慣れたな」
「もう普通に話せるかバヅー」
「虫唾が走るガナ!これもゲゲルの駄目ダ」
「ではお前は……2日で40人」
「……楽勝ダ」
社長が怪しい?気にするな。
次回は『早よクウガ、赤にならんかい!』の巻、になる予定。あとセシリアも出るよ!レーザーのレベル2はマイティフォームが出てから!
ではSee you Next game!