ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
作者はTV本編でのこの回、どうしても涙無しでは見る事が出来ません。
上空に突如発生した、正体不明の赤黒い渦。
その付近の森林地帯では、シンヤとヨミの死闘が繰り広げられていた。
ヨミの放った光弾を咄嗟に回避したシンヤは、何とか身を隠そうとして樹木にもたれ掛かった。
「ぐっ……、くっそぉ……!」
「ハハッ。もう限界だ、なんて冗談でも言わないで下さいよ?お楽しみは、まだまだこれからなんですから」
度重なる戦闘と同時に森中を駆け巡った事で、体力が底を尽きそうだったシンヤは、憎々しげに表情を歪め、対するヨミに関しては、愉しそうに笑う余裕すら見えた。
ここまでシンヤが追い込まれた主な原因は、2つあった。それはヨミの高過ぎるまでの近接戦闘のセンスと、彼の精密な射撃の腕だ。
接近戦では何とか喰らい付いていたシンヤだったが、一度距離を取った途端にヨミは、エネルギー弾による追撃を繰り出す。シンヤは光弾の直撃を免れようとして森中を駆け巡り、体力をすり減らしていたのだ。
遠距離攻撃への対抗手段を一切持たないシンヤにとって、これはあまりにも不利な状況であった。
この激戦が開幕する以前まで息巻いていた筈のシンヤは、現在の自分の不甲斐なさを痛感すると同時に、ある事を考えていた。
(ヨミの……アイツの光弾に対抗出来る、強力な「武器」が欲しいっ……!)
シンヤがそのように考えた直後、上空の渦から真紅の閃光が降り注ぎ、それと共に激しい爆発音が響き渡った。
閃光が射した場所には土煙が立ち込め出し、煙が晴れた時そこに現れたのは、シンヤの夢に登場した未知なる怪獣──ゼッパンドンであった。
夢で見た怪獣の出現に、シンヤは驚いて身を乗り出す。その背後からヨミは唐突に、シンヤへの解説を開始した。
「あの怪獣は……!」
「『合体魔王獣 ゼッパンドン』。マガオロチの尾を核として、ゼットンとパンドンが融合し誕生した、新たな魔王獣ですよ」
ヨミの声に反応したシンヤはすかさず振り向き、無意識の内に拳を握っていた。
それを見たヨミは不気味に嗤い、息付く間も無く攻撃を開始した。
シンヤとヨミが戦闘を繰り広げていた場所の近辺には、上空から出現したゼッパンドンの元に駆け付けたガイの姿があった。
「ジャグラー……!」
『「全力で来い……!俺に太刀打ち出来るのは、闇のカードだけだ!!」』
ゼッパンドン内部のインナースペースから聞こえた、ジャグラーのあからさまな挑発を受けたガイは、右腰のカードホルダーから闇のカード──ウルトラマンベリアルのウルトラフュージョンカードを取り出した。
ベリアルのカードは、相変わらず異様なオーラを放っているが、今のガイにはナオミから貰った言葉があった。
──あなたの事、信じてるから……!
「俺はもう闇を恐れない……。ナオミのくれた勇気で、闇を抱き締めてみせる!!」
かつての自分には得る事の叶わなかった、「自分の闇を抱き締められる強さ」を手に入れたガイは強い決意を胸に、オーブリングを構えた!
「ゾフィーさん!」
【ゾフィー!】
「ベリアルさん……!」
【ウルトラマンベリアル!】
「光と闇の力……お借りします!」
【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!
サンダーブレスター!】
土砂を巻き上げながらゼッパンドンの眼前に着地した、ウルトラマンオーブ サンダーブレスター。
これまで通りならば、登場直後は雄叫びを上げるのだが、今回はそうはならなかった。
『──闇を抱いて、光となる!!』
『それで良い……!』
オーブの名乗りにジャグラーが答えると、オーブはゼッパンドンに飛び掛かり、顔面への重いチョップ、数回のボディーブローを叩き込む!
ゼッパンドンも反撃に出るが、これにも怯まないオーブは勢いを付けたヘッドバッドと何度目かの顔面チョップをお見舞いする。
だがゼッパンドンには指したるダメージは無く、雄叫びを上げたオーブは、体重4万5千トンのゼッパンドンを両腕で掴み上げる。後はそのまま投げ飛ばすだけだったが、近距離から放たれたゼッパンドン撃炎弾の餌食となり、あえなく失敗した。
先の攻撃で怯んだオーブに、ゼッパンドンは速やかに反撃を開始。右脚の蹴りと左腕での追撃で、オーブを退ける。
対するオーブは、隣に建設されていた電波塔に目をやり、強引にそれを引き千切り武器にした!
これにはジャグラーもご満悦の様子で、厭らしく笑うのだった。
『「イイねぇ〜、その暴れっぷり!惚れ惚れする……!」』
オーブとゼッパンドンが闘っている現場に到着したジェッタとシンが目撃したのは、丁度この瞬間であり、これを見たシンは息を呑み、ジェッタは叫んだ。
「オーブがまた暴走してます!」
「しっかりしてくれよ、オーブっ!」
武器を得たオーブだったが、ゼッパンドンは火炎弾でオーブを追い詰めて行く。
この2体の戦闘を、建物の屋上から見つめていた者が1人いた。ビートル隊の、渋川一徹だ。
渋川は複雑な心境で通信機に手を伸ばし、ビートル隊本部へと連絡を飛ばした。
「……ウルトラマンオーブ、出現!」
[了解。ゼットビートル、緊急発進!]
渋川からの連絡を受け、3機のゼットビートルがビートル隊基地より発進した。
そんな事とも知らずに、オーブは電波塔を振り回してゼッパンドンを殴る。
しかし電波塔は武器にするには脆く、一撃でへし折れてしまう。だがオーブは電波塔が粉々になるまで攻撃の手を緩めず、ゼッパンドンの顔面を掴みながらボディーブローを浴びせ続けた。
これにも動じないゼッパンドンは、オーブを弾き飛ばす。
地を転がったオーブは、マガオロチやギャラクトロンを打ち破った必殺光線の構えを取った!
『ゼットシウムッ!光せえぇぇぇんッ!!』
『ゼッパンドンシールドォッ!』
これでもゼッパンドンシールドを破る事は叶わず、オーブはゼッパンドンが放った破壊光線を喰らい、倒れてしまった。
『「
必殺のゼットシウム光線を防がれ、ジャグラーの煽動を受けたオーブは大地を叩き付け、ゆっくりと立ち上がるのだった。
飛来したゼットビートルが、ウルトラマンオーブとゼッパンドンの姿を捕捉した。
ゼットビートルを操縦するリーダー格の隊員と、彼の部下が無線で会話をする。
[ターゲット、確認!]
[まずは、ウルトラマンオーブに攻撃を集中せよ!]
[ホントに良いんですか……!?]
[良いんだ!]
[……っ了解!]
オーブと怪獣の姿を確認した隊員は、リーダー格の隊員の指示に困惑するが上司には逆らえず、渋々それを了承した。
双眼鏡で現場を見つめる渋川は、オーブの付近にナオミ達がいるのを目撃した。
「アイツら……!」
ガイの後を追って、森へ駆け付けたナオミは、ただオーブの背中をじっと見つめており、それを見つけたジェッタらが彼女の元に駆け寄った。
「キャップ、何でこんな所に……!」
「危ないから逃げましょう!」
2人の制止を振り切ったナオミは一歩前へ踏み出し、オーブに向けて叫ぶのだった。
「オーブ、私信じてる!どんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても、私の命を救ってくれたあなたの事、ずっと信じてるから!!」
これを聞いたオーブはゆっくりと振り向き、ナオミをじっと見つめる。
ナオミもまた、オーブに頷いて見せた。
[攻撃開始!]
[[了解!]]
そんな中、ゼットビートルによるオーブへの攻撃が開始。予期せぬ事態にオーブは振り向くが、続くゼッパンドンの火炎弾や破壊光線の応酬が、周囲を炎に包み込む。
これにはオーブは当然の事、近くにいたナオミ達までもが巻き込まれた。
ジャグラーはそれを嘲笑い、己の勝利を確信した。
『「ハハハハ!!お前はまた大切なものを守れなかったんだ!終わりだな……。さらば、ウルトラマン!!」』
ゼッパンドンの追撃は止まる事を知らず、周囲では爆発が起こる。
これに巻き込まれまいと、ゼットビートルは各機全速力で退避して行くのだった。
[全機、退避せよ!退避だ!]
[[了解!]]
ヨミとの戦闘を継続していたシンヤは、ナオミ達が爆発に巻き込まれた瞬間を運悪く目撃してしまい、思わず膝を突いて唖然としてしまった。
もう一度立ち上がろうにも、これまでの無理が祟ったのか、はたまた大切な人々が目の前で爆発に巻き込まれた事への絶望か、全身に力が全く入らない。
シンヤがそうしている間にも、ヨミは背後から近付き、この絶好の機会を逃さんとしている。
ジャグラーとヨミは意図せず同時に笑ってみせたが、ジャグラーがある事に気付く。
『「ハハハッ……、あァ?」』
……爆煙が晴れた時、そこには傷1つ負っていない、ナオミ達の姿があった。
では、なぜ彼らが無事に助かったのか。
その答えは、ただ1つ。
サンダーブレスターを制御したオーブが、身を呈してナオミ達を爆発から守っていたからだ!
その手に握っていたカメラをオーブに向けたジェッタは、この動画を観ているであろう視聴者に向けたメッセージを添えた。
「……視聴者の皆さん、オーブです!ウルトラマンオーブが、僕らを救ってくれました!!」
「オーブ……っしゃ!」
病院の屋上からそれを見た渋川は、思わずガッツポーズを取り、間近で目撃していたシンヤの瞳からは、一筋の涙が零れた。
ナオミ達を救ったオーブは、ナオミを見つめながら一度頷く。その意味を理解したナオミは、ガイから頼まれていた事を実行する。
『♪~、♪~…』
『「ぅぐあぁぁ……!このメロディは……!」』
ナオミが奏でる、ルサールカに伝わる子守唄のメロディに、ジャグラー並びにヨミは苦しみ出す。
そしてガイが奏でるオーブニカのメロディと、ナオミのメロディが結び付いた時、奇跡が起こる。
オーブ内部のインナースペースで、ナターシャから託された白紙のカードを取り出したガイは、それを一点に見つめて言葉を紡ぐ。
「己を信じる勇気。それが力になる──!!」
これに応えたのか、白紙だったカードが光り出し、1人のウルトラ戦士の姿が浮かび上がった。
それは巨大な聖剣を構えた、新たなオーブの姿だった。
「これが本当の俺だ!!」
もう迷いなど微塵も無いガイはそのカードを構え、オーブリングにカードを読み込ませる!
【覚醒せよ!オーブオリジン!】
この声と共に、ゼッパンドンにも異変が起きた。
ゼッパンドンの尾──マガオロチの尻尾から光が放たれる。
光は剣の形を取り、オーブのカラータイマーに向けて飛んで行く。
『「この光はッ……!?」』
光を掴もうとジャグラーは手を伸ばしたが、ジャグラーの手は空を切り、光はオーブへと向かう。
その神秘的な光景を目撃したシンヤは、先程の様子が嘘のように声を上げた!!
「オーブが……!オーブが変わる!!」
カラータイマーを経由して、インナースペースにいる自分の元に飛来した光の剣の名を、ガイは高らかに呼んだ!
「オーブカリバー!!」
数百年の時を超え、己の元に戻って来た勇者の聖剣「オーブカリバー」の感触を、懐かしく感じるガイ。
──オーブカリバー。
それは、遥か彼方の「惑星
かつてガイはこの頂に登り、光の戦士として選ばれ、ウルトラマンオーブの力を得たのだ。
オーブカリバーを構えたガイは、地水火風4つのエレメントが宿る中央のカリバーホイールを回転させる。
天高く掲げた剣の柄のトリガーを引くと、火、水、土、風の順で4つの紋章が輝き、それと共にガイのオーブニカのメロディが流れた。
『♪~、♪~、♪~』
そして、オーブも新たなる姿へと変化した。
巨大なオーブカリバーを右手に握り、その身体も赤、銀、黒と言ったシンプルな佇まい。
それを見たジャグラーは、忌々しさを込めた声を上げる。
『「その姿は……!!」』
対するオーブはオーブカリバーを大きく振り回し、顔の側で再び剣を構え、声高く名乗りを上げた!!
『俺の名はオーブ!ウルトラマンオーブッ!!』
この時オーブは初めて、自分を「ウルトラマン」と名乗った。
そう、これこそがオーブ本来の姿「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」!!
(夢で見た……光の巨人……!)
オーブオリジンを見たナオミは、今まで見ていた夢に登場していた巨人の正体を知り驚愕した。
オーブカリバーを下ろし、悠然としてゼッパンドンへと歩み寄るオーブオリジン。
ゼッパンドンが放つゼッパンドン撃炎弾を一刀の元に斬り伏せ、飛び上がったオーブオリジンは、オーブカリバーの一撃を叩き込む!
『オォーッ、シュアァァァァッ!!』
これまでオーブのどんな攻撃にも動じなかったゼッパンドンが、ここに来てようやく、ダメージらしいダメージを負った。
真の姿と、己を信じる勇気を取り戻した今のオーブに、最早ゼッパンドンは敵では無かった。
この逆転劇を観戦していたヨミも、目に見えてはっきりと狼狽え出す。
「馬鹿なッ……!ジャグラー様のゼッパンドンが、あんなに易々と……!」
ヨミが狼狽える一方で、オーブの勇姿をその目に焼き付けたシンヤの中で、再び闘志が燃え出す。
そして、それと同時にシンヤの新たな力が覚醒する!
「僕だって、まだ戦える!マックスさんっ!!」
シンヤが呼び寄せたのは、最強最速のウルトラ戦士「ウルトラマンマックス」のカード。
シンヤ本人には、オーブ同様に歴代ウルトラ戦士の力を借りる事で、戦闘力を引き上げる力がある。今回もまた、その能力を使うのかと思われたが、そうではなかった。
シンヤが構えるウルトラマンマックスのカードが、次第に変化して行き、やがて赤い拳銃の形を形成する。
それを手に取ったシンヤは、ヨミに標準を合わせて引き金を引く。咄嗟に反応したヨミはその銃撃を躱すが、僅かに頬を掠めた。
シンヤが現在その手に握っているのは、「ダッシュライザー」と呼ばれるレーザー銃である。これは、本来ならばマックスと共に戦った対怪獣防衛チーム「
シンヤは新たな能力として、「ウルトラ戦士と共に戦った防衛チームの武器の具現化」を会得したのだ。
頬を伝う血を雑に拭ったヨミは、怒りを露わにしてシンヤに襲い掛かる。
「くそッ……いい気になるなァッ!」
「もういっちょ!メビウスさんっ!!」
逆上したヨミとは正反対に、素早くかつ冷静に事態へ対処したシンヤは、マックスに続いてもう1人のウルトラ戦士のカードを呼び寄せた。
シンヤの手元に到来したウルトラマンメビウスのカードは、「トライガーショット」の形となって、彼の手中に収まる。
すかさずシンヤは、トライガーショットを通常のハンディショット形態から、銃身を伸ばしたロングショット形態へと変形、通称「トリプルチェンバー」と呼ばれる3連シリンダーを回転させ、ヨミに銃口を向けた。
「
トライガーショットから放たれた青い光線は、ヨミを包み込んで閉じ込める事に成功した。
シンヤが使用したのは、立方体型のバリアフィールドを発射して、1分間だけ対象を物理的衝撃から隔絶する「キャプチャーキューブ」。この技術も、本来ならメビウスの世界に存在した「
キャプチャーキューブの強度は高く、流石のヨミであっても内側から破る事は叶わなかった。
それを見つめながら、シンヤはヨミに申告する。
「しばらく、そこで大人しくしてて貰うよ!」
シンヤとヨミの戦闘に一区切りがついた一方で、オーブとゼッパンドンの闘いにも動きがあった。
ゼッパンドンが怯んだ隙にオーブカリバーを構え直したオーブとガイは、カリバーホイールを回して土属性の紋章部分で回転を止め、トリガーを引いて再びホイールを回す。
『オーブグランドカリバー!!』
地面に突き立てたオーブカリバーから、円を描く様な動きで2発の光線が同時に放たれ、左右からゼッパンドンを挟み撃ちにする。
『ッ!ゼッパンドンシールド!!』
咄嗟にゼッパンドンはシールドを左右に展開し、光線を迎え撃つ。
だがオーブグランドカリバーの一撃はゼッパンドンシールドを容易く破り、ゼッパンドンに多大なダメージを与えた!
この反動はゼッパンドン内部のジャグラーの元にまで届き、思わずジャグラーもその威力に驚きを隠せなかった。
『「ぐぁっ……!シールドを破るとは!」』
この勝機を逃さなかったガイは、オーブカリバーをオーブリングに読み込ませる。
【解き放て!オーブの力!】
力を解放したオーブカリバーのカリバーホイールを高速回転させて、トリガーを引いたガイは、再びホイールを回す。
4つの紋章が光り輝くオーブカリバーで、天空に巨大な円を描いたオーブは、ゼッパンドン目がけてオーブカリバーを振り下ろした!
『オーブスプリームッ、カリバァァーッ!!』
オーブカリバーの剣先より放たれた、最強の必殺光線の直撃を喰らったゼッパンドンは爆散し消滅!
オーブの完全勝利だ!!
──本来の力を取り戻したオーブに敗北した上、切り札であるゼッパンドンを倒されたジャグラー。地に伏しても尚、まだ終わらないと言わんばかりにダークリングに手を伸ばす。
……だが、ダークリングはジャグラーの目の前で、突然光となって消滅した。
ダークリングとは、「宇宙で最も邪悪な心を持つ者の元を巡り、持ち主の力を増幅させる」曰く付きの品である。それがジャグラーの元から離れたと言う事は、宇宙のどこかにいる別の誰かが、ダークリングに選ばれた……と言う訳だ。
ダークリングの消滅を目の当たりにし、耐え切れなくなって発狂したジャグラーの慟哭が、延々と響き渡った。
これを感じ取ったヨミは、半ば強制的にキャプチャーキューブを内部から破壊し、捨て台詞を吐いて撤退した。
「この借りは必ず……!ジャグラー様……!」
激戦の果てに、体力も底を尽きかけていたシンヤは、オーブに感謝の言葉を投げ掛けているSSPメンバー達の元へと歩いて行った。
草原を飛び跳ねながらオーブに手を振る、ジェッタとシン。
オーブは、自身に微笑みを向けているナオミと向かい合うと、空の彼方へ飛び立って行った。
そんなオーブの背中を見つめながら、ナオミは改めて感謝の言葉を述べた。
「ありがとう……!」
「礼を言いたいのは、オーブの方だろうな」
ナオミ達の元に戻ったガイは、ナオミに対して優しく口にするのだった。
すると、ガイの存在に気付いたらしいジェッタとシンが駆け寄って来る。
「ガイさんじゃん!ちょっと、今までどこで何してたんだよ!」
「ん?まぁ、色々とな?」
「僕達の心配も知らずに、呑気な人ですねぇもう!」
この場にいた面々が暖かな雰囲気に包まれた時、丁度笑顔を浮かべたシンヤが到着した。
しかし全身に擦り傷や打撲痕を負ったシンヤを見るや否や、ナオミが真っ先に彼を心配した。
「皆さ〜ん!」
「シンヤ君どうしたの、そんなにボロボロになって……!大丈夫?」
「え?えっとー、そこで転んじゃって。えへへ」
あからさまな嘘を吐いたシンヤだったが、ナオミ達はあえてそれには言及しなかった。
すると今度は、日頃から良く聞き慣れた声が、どんどん近付いて来るのが聞こえた。
「おーい!おい!みんな無茶しやがってぇ!」
声の主である渋川は、運悪く身近にいたシンヤにタックルを喰らわせてしまう。ただでさえ傷を負っているシンヤにとっては、どんな軽い衝撃でもかなり傷に響くのである。
それを改めて知り、シンヤを労わった渋川だったが、いつの間にかそこにいたガイの存在に気付いて、声を掛ける。
ナオミは、渋川や多くの人に対して心配をかけてしまった事を謝罪した。
「おじさん、ごめんなさい……!」
「いや、お前達には感謝してるよ。お前達の中継映像を見て、ビートル隊はオーブを攻撃対象から除外した」
渋川からその言葉を聞いたジェッタとシンは互いに抱き合って喜び、今後への決意を新たにした。
「よぉーし!俺達SSPもこの調子で、どんどん突っ走って行くね!オーブの謎も、絶対突き止めてみせる!な、キャップー!」
「おい!まだ無茶すんのかよ、お前らよぉ〜!」
今回、これだけの大事に巻き込まれたと言うのに、全く懲りずに駆け出すジェッタとシンを、渋川は追いかけた。
それを呆れ半分で見守るシンヤ達。ナオミはその傍らで、ガイから預けられたままだったオーブニカを返還した。
オーブニカを受け取ったガイは改めて、この地球を守り抜く決意を固くするのであった。
(君の繋いだ生命は、100年後の未来を生きている。ナターシャ、安心してくれ。これから先の未来を、俺はずっと守り続ける。
この星に、命が続く限り──!!)
「「ガイとシンヤの、ウルトラヒーロー大研究!」」
ガイ「よぉ、クレナイ・ガイだ。かれこれ数回ぶりの登場になっちまったが、みんな俺の事は覚えててくれたか?」
シンヤ「おかえりなさい、ガイさん!」
ガイ「俺がいない間、ずっと1人で司会進行を頑張ってたみたいだな、シンヤ。お疲れさんです」
シンヤ「えへへっ。やっぱり、このコーナーにはガイさんもいなきゃダメですね!」
ガイ「そうかもな。さぁ、今回紹介するのは……!」
【覚醒せよ!オーブオリジン!】
ガイ「『ウルトラマンオーブ オーブオリジン』。本来の力を取り戻した、俺の真の姿だ!光と闇の2つの属性を併せ持ち、聖剣『オーブカリバー』から放つ様々な大技で、どんな強敵にも立ち向かう!」
ガイ「実はこのオーブオリジンには、前身に当たる姿があるんだ。オーブの力を授けられて、間も無い頃の俺の姿。その名も、『オリジン・ザ・ファースト』。オーブオリジンよりも黒い色が少なくて、初代ウルトラマンさんを彷彿とさせる、赤と銀の出で立ちなんだ」
ガイ「最大の必殺技は、『オーブスプリームカリバー』。オーブオリジンの光と闇、そしてオーブカリバーに宿る4つの属性を合わせて、剣先から虹色の光線を放つんだ!!」
ガイ「108年前のルサールカでの闘いで、俺はこの力を制御出来ず、結果として甚大な被害を与えちまった。そのせいで、ナターシャとこの力の両方を失った……。
だが、今回の一件で真実が明らかになった事で、俺は本当の自分を取り戻せたんだ」
シンヤ「ガイさんが力を取り戻して、物語は終わり……では無いんですよね?」
ガイ「あぁ。まだまだ地球を狙う奴らは大勢いる。俺はこれからも、この星を守り続ける!」
シンヤ「僕だって、ガイさんと一緒に闘いますよ!」
ガイ「あんまり無茶はすんなよ?……っと、残念だが、そろそろお別れの時間だ」
ガイ&シンヤ「「次回も見てくれよな!」」
ビートル隊の隊員、渋川一徹。
人々の平和を守る、彼の悩みの種は多い。
町に潜む宇宙人の陰謀、迫り来る怪獣。
そして、年頃の娘──!
次回!
『ウルトラマンオーブ ─Another world─』
『ハードボイルドリバー』。
銀河の光が、我を呼ぶッ!!
……いかがだったでしょうか。
シンヤ君の新しい能力、どうでしたか。
次回からなのですが、作者本人がそろそろ忙しい時期に突入しますので、また間隔を空けた投稿になると思われます。
空いた時間で執筆は続けようと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
隠れたサブタイトルは、『ウルトラマン』第39話(最終回)『さらばウルトラマン』でした。
では皆さん、またいつか……ノシ