ウルトラマンオーブ ─Another world─   作:シロウ【特撮愛好者】

4 / 46
どうも。
マガゼットンのあの技、「マガ光弾」って名前でしたね…。

お気に入り登録、ありがとうございます。
今回から本編開始です。


第1話 夕陽の風来坊 ー前編ー

 ある日の公園。友達と遊ぶ小さな子どもや親子、カップルでにぎわうこの場所で、人々はいつもと変わらぬ平和な一時を過ごしていた。

 その中に、ベンチに腰掛けた親子がいる。母親は子どもに、『風の又三郎』の絵本を読み聞かせている。

 

「どっどど どどうど、どどうど どどう。青いクルミも吹き飛ばせ。すっぱいカリンも吹き飛ばせ……」

  子どもに語りかけるように、優しく読む母親。一方の子どもも、ずっと聞いていたのだが──。

 

「──とり!」

 

 どこからか何かの鳴き声が聞こえたかと思えば、子どもが突然、正面に見えるビル街を指差した。その指先を追い、母親もビル街を見た。

 すると、巨大な黒雲が生まれ、黒い渦を巻く竜巻が突如発生した。それも1つだけではない。いくつもの竜巻が、ビル街を襲った。

 公園で過ごしていた人々はそれに気付いて、悲鳴を上げて逃げ惑う。そんな中、先程の親子に向かって、ビル街の一部だったであろうビルの残骸が降って来た。

 数分前まで人々が平和に過ごしていた公園は、地獄へと一変した──。

 

 

 

 場所は変わり、東京都多摩市北川町──。どこにでもある平和な町。そこに一軒のオフィスがある。1階はガレージで、黄色い車が停められている。このオフィスがどういった建物なのかはっきり分かる看板があって、とても特徴的だ。

 僕は、外に建て付けられた金属製の階段を上り、2階にあるデスクの扉をノックして、しばらく時間を置いてからその扉を開けた。

 

「ただいま戻りました~」

「あ、おかえりシンヤ君。いつもお疲れ様」

 

 この人は、夢野ナオミ。このオフィスに本拠地を構える組織──SSPの発起人兼代表で、キャップと呼ばれている。

 SSP──Something(サムシング) Search(サーチ) People(ピープル)──は、ナオミさんを中心に設立された怪奇現象追跡サイトのことだ。モットーは、「世界のミステリーや怪奇現象を解明すること」。

……しかし閲覧数や経営状態はあまり良くなく、オフィスの家賃は滞納気味で火の車。

 だからナオミさんは、色んなバイトを掛け持ちしているのだ。

 

「いえいえ。ナオミさんこそ、お疲れ様です。……ところで、そちらのお2人は今、何を?」

 

 ナオミさんの後ろに視線をずらすと、パソコンの前でアンテナの様な装置の説明をする眼鏡をかけた青年と、それの説明を受ける茶髪の青年がいた。2人は僕を見つけるなり急に寄って来て、ほとんど同時に話し始めた。

 

「おかえり、シンヤ君。いや聞いてよ、超大スクープなんだよ!あのね……」

 

 この人は、早見ジェッタ。ナオミさんとは大学時代からの友人らしく、「ジェッタ」というのはあだ名で本名は「早見善太」というそうだ。

 SSPのウェブ・カメラ担当で、自分のスクープがきっかけで世界的な有名人になるのが夢……らしい。

 

「おかえりなさい、シンヤ君。ジェッタ君の話より僕の話の方が興味ありますよね?あ、これですか?これは、ストームチェイサーと言って……」

 

 こっちの眼鏡の人は、松戸シン。SSPの調査分析を担当している。小学生の頃にカオス理論の高次元定理?を発見して、23歳という若さで博士号?を取得した天才。そこまで頭の良くない僕には、とにかくすごい人だってことしか分からない。

 

「2人とも落ち着いて!いっぺんに聞くなんて出来ませんよ~!」

 

 そして僕は、草薙眞哉(シンヤ)。ある日この世界にやって来た、いわゆる異世界人だ。

 この世界にやって来てすぐに、泊まる場所がなくて困っていた僕に声をかけてくれたのが、ナオミさんだった。ナオミさんは大家さんに掛け合って、僕を大家さんの家に泊めてもらえるようにしてくれた。その時の恩返しで、僕もこのオフィスの家賃やら水道代やらの返済を手伝っている。

 それでこのオフィスに顔を出すようになって、ジェッタさんやシンさんと知り合った。2人とも悪い人ではないんだけど、せめてこのオフィスの家賃の返済を手伝って欲しいんだよね……。

 

「分かりました!ジェッタさんのお話から聞かせていただきます!シンさんは、その後!」

 

 2人をなだめて、まずどちらの話から聞くかを決めた。ジェッタさんは嬉しそうに笑っていたけど、シンさんは少し落ち込んでいた……。

 

 

 

「鳥を見た?」

「そう!無茶苦茶な竜巻でビルが降ってきて大騒ぎな時、巨大な翼を持つUMA(ユーマ)を目撃した人がいたんだ!ほら、これ見てよ!」

 

 ジェッタさんが使っているタブレットの画面には、暗い雲を背景に巨大な鳥、もしくは翼を広げた龍のような影が写った写真が表示されていた。

 

(この世界に生息している地球の怪獣……なのか?だとしたら、何でこんなことを……?)

 

 その画像を見ながら、僕はそう考えずにはいられなかった。ネットの人達は鳥だって言っているけど、間違いなくこれは怪獣だ。最近頻繁してる異常気象も、きっとこの怪獣が絡んでいる……。そう決めつけるのは早すぎるかも知れないけど。

 

「確かに鳥に見えなくもないですけど……これ捏造とかじゃないんですか?」

 

 さすがにこれを怪獣だって言っても誰も信じてくれないと思った僕は、周りの意見と合わせてこれを鳥ということにして、ジェッタさんに質問をしてみた。

 

「何だよ~これは捏造とかコラ画像とかじゃないって!」

 

 何で信用してくれないのかな~、とジェッタさんは頭を掻きながらぶつぶつ呟いた。

 

「とりあえず、このUMA?については分かりましたけど、これとシンさんの発明品がどう繋がるんです?」

 

 ジェッタさんが見せてくれた画像と、シンさんのアンテナのような発明品のお互いを見比べながら、今度はシンさんの話を聞くことにした。

 

「よくぞ聞いてくれました!これは、僕が発明したストームチェイサーと言って……あ、それはもう説明済みでしたね。えっと、気圧センサと磁力測定器を組み合わせた万能気象追跡マシンで……」

 

 そんな具合で、シンさんは発明品の説明を語り始めた。説明は日頃聞き慣れない単語ばかりで、理解が追い付かず混乱しそうになった。

 

 簡潔にまとめるなら、

 

「つまり……。これを使って、観測した数値が大きい場所の周辺に、あのUMAがいると?」

 

 といったところだろうか。その予想が正しいかどうか、シンさんに同意を求めた。

 

「まぁ簡単に言えばそうなりますかね。シンヤ君が来る前に、このことを話し合っていたんです」

「もしスクープ映像取れたら、俺達大金持ちだよ!ね、シンヤ君も行こうよ!」

 

 ジェッタさんはずいぶん乗り気だけど、その大金持ちって考えはどうかと思うな~……とは言えず、ふとナオミさんが持っていた請求書の束を見て話題を変えてみた。

 

「でも、先月分の家賃も払わなきゃいけないんじゃないですか?そんなことしてるとほら……」

 

 僕がそう言ったと同時に、オフィスの扉をノックする音が外から聞こえた。

 

「夢野さ~ん?お家賃のことでお話に来たんですけど……」

「やばい大家さんだ……。先月の部屋代まだだし……」

「さっさと出かけた方が良いんじゃないですか?裏口から……!」

 

 小声で囁きながら、ナオミさん達はすぐにでもこの部屋から出られる準備を始めていた。

 それを見て僕は思わず溜め息をついたけど、決心して3人に言った。

 

「分かりました、僕が足止めしますから、皆さんは裏口から出て下さい……!」

「ありがとう、シンヤ君…。それじゃあSomething Search People、出動~!」

「しっ!声が大きいですよ!」

 

 最初は小さい声で話していたのに、急に大きい声を出すものだから、シンさん達に口を押さえられながらナオミさんは裏口へ向かって行く。

 

「あ、どうも~大家さん。いつもお疲れ様です……。ナオミさんなんですけど、ついさっきバイトがあるって出かけたばっかりなんですよ~。それで僕が留守番頼まれちゃって……エヘヘ」

 

 僕の方も、大家さんに対してそれらしい嘘を言いつつ、後ろを時々確認していた。そうしている間に、ナオミさん達は裏口から出ていった。

 

 

 

──その頃、零下20℃のトラックの荷台の中に5時間もいた謎の若者が、この町にやって来ていた。

 

 

 

「ふ~……。大家さんの話、だんだん長くなるから嫌なんだよな~。……でもいっつもお世話になってるし、あんま悪いこと言えないんだよね」

 

 そんなこんなで大家さんの足止めを終えた僕は、オフィスの畳部屋に寝転がった。首だけを動かして自分のカバンを見た僕は、カバンに手を伸ばして中身を取り出した。

 カバンの中には、あの時授かったカードホルダーがいつも入っている。そのページを何度もめくりながら、あの時の言葉を呪文を唱えるように天井に言う。

 

「これがオーブの力になる……か。そもそもオーブって誰なんだ?」

 

 オーブ。きっとこの世界にいるウルトラマンのことだろう。でもウルトラ戦士達の力を使うウルトラマンなんて、見たことも聞いたこともなかった。

 

「この事件に、オーブは関わるのかな……?」

 

 ジェッタさんに見せてもらったあの画像を思い出しながら、ふと呟いていた。

 

「ただいまシンヤ君!すごいよ!UMAは実在したんだ!キャップ、ちゃんと撮ってたよね!?」

 

 すると、ついさっき出かけた3人が帰って来た。咄嗟に僕は、カバンの中にカードホルダーを押し込んだ。これはまだ誰にも見せたことがないし、色々問い詰められるのは嫌いだからだ。

 中でも、特にテンションが高いのがジェッタさんだ。これでアクセス爆上がりだ~!とか何とか言っている。余程すごいものを見たのだろうか……?

 

 しかし、映っていたのはナオミさんがSSP-7の後部座席で叫んでいる映像だった。ジェッタさんはものすごいショックを受けていた。まぁそうだろう。世紀の大スクープを撮影していた自前のビデオカメラを紛失して、ナオミさんのスマホで撮影を頼んだ結果がこれなのだから。

 SSP-7というのは、SSPが使っている車のことだ。ガレージに停められている黄色い車がそうだ。

 しかしこの映像を見ると、かなり画面が揺れている。竜巻にでも巻き込まれたのだろうか……?そう思うだけで、SSP-7の頑丈さには驚かされる。

 

「仕方ないですよ。ものすごいパニック状態だったんですよね?大目に見ましょうよ」

 

 ジェッタさんへのフォローを入れていると、シンさんが「これを見て下さい」と自分のデスクのパソコンを示した。

 

「あの男が言っていた、『悪魔の風』について調べてみたんですよ。『太平風土記』にも、悪魔の風を吹かせる『マガバッサー』という妖怪の記載があります……」

 

 そこからは、シンさんの分かるような、分からないような解説が始まった。今日の天気図を見せられたり、「バタフライ効果」やらの説明、何かのスイッチが入ったシンさんが、後ろの黒板に何かしらの方程式を書くまでに至った。黒板消しの粉でむせる僕らを気にせず、夢中になるシンさんを何とかなだめて、明日またあの「マガバッサー」なる怪獣を探しに行くことになった。

 

 今度は僕も同伴することにした。きっとまた、あの巨人は現れる。そんな気がしたのだ。

 

 

 

「大丈夫ですか?ナオミさん。そんなに持ったら危ないですよ……。僕も持ちます」

「大丈夫。昨日はお世話になったし、このくらい……」

 

 後日、町中にやって来たSSP+αは昨日の怪獣を探すべく、調査を始めた。しかし何時間粘っても現れないので、ジェッタさん達がナオミさんにおつかいを頼んだのだ。何でも、手が空いているのがナオミさんだったから。僕も手が空いていたから、ナオミさんの付き添いをしている。でもナオミさんは僕も含めた4人分のコーヒーを持ちながら歩いている。手伝おうとしているのだけど、さっきから大丈夫の一点張りなのだ。

 

「そうやって歩いてて、他の人にぶつかっても知りませんよ……って!もう言わんこっちゃない……」

 

 ナオミさんは、目の前から歩いて来た人にぶつかって、その人の服をコーヒーで汚してしまった。

 その人は黒いスーツに身を包んだ、いかにもホストのような雰囲気の男性だった。

 

「あぁ、すみません……」

「……大丈夫です。では……」

 

 その男性はナオミさんが謝った後、笑顔でそう言って立ち去ろうとした。

 

「あの、クリーニング代を……」

 

 ナオミさんが言いかけたと同時に、向こうの空から雷の音が聞こえた。男性はそれを聞いて、こう言った。

 

「嵐が来そうですね……」

「変な、天気です……」

「僕は嵐が好きですよ。退屈な世界から心を解き放ってくれますからね」

 

 ナオミさんが不思議そうな顔をすると、さっきよりも大きな音が聞こえた。その方角を見ながら、聞き慣れない言葉を男性は発した。ナオミさんは思わず男性に聞き直した。

 

「『Un coup de foudre(アン クー ドウ フードル)』……。日本語で何を意味するか分かりますか?……雷の一撃。出会い頭の一目惚れです」

 

 稲光が走った時だった。その男性の背後に、人間ではない、別の「何か」が見えた気がした。咄嗟に僕はナオミさんの前に出た。でも気が付いた時、その人はもういなかった。

 

「シンヤ君……?どうかした?」

「あ、いえ……。何でも……ないです」

 

 後ろのナオミさんにそう言われて我に返った僕は、そう言わざるを得なかった。

 すると、シンさんがストームチェイサーに反応が出たと連絡をしてきた。2人に合流するために、僕らは走り出した。

 その時も、僕の頭の中にはあの人のことが引っかかっていた。

(今の人……。一体、何者なんだ……?)

 

 

 

 

 

 2人がいた広場に到着すると、ストームチェイサーから点滅するような電子音が聞こえていた。

 それと同時に、巨大な勢力の気圧が真上に迫っていた。

 気圧の中心は黒い渦を巻き、禍々しいとしか表現しようがなかった。

 そこから生まれた暴風が広場にいた人々を襲い、ナオミさんを黒い渦へと吹き飛ばした!

 

「キャップー!」

「ナオミさーん!」

 

 ナオミさんは吸い込まれるように空に昇って行く。それを僕らは見ていることしか出来なかった……。

 

 

 

 逃げ惑う人々の流れに呑まれてしまった僕は、ジェッタさん達ともはぐれてしまった。

 何も出来ずに周囲を見回していた時だった。空から誰かが降りて来たのだ。

 その人は、黒いジャケットを来た男性で、他に誰かを抱えているようだった。その抱えられた人は、僕の見知った人だった。

 

「ナオミさん!無事だったんですね……!」

 

 僕が安心すると、その人は僕とナオミさんを見比べて言った。

 

「こいつの知り合いか?なら任せたぜ。じゃあな……」

 そう言って立ち去ろうとした時だった。空から巨大な怪獣が降り立った!

 

「あれが……、マガバッサー……!?」

 

 そこにいたのは、蒼い体躯で巨大な両翼を広げる怪獣。その額には赤い結晶が輝いていた。

 

「おでましになったな……!」

 

 マガバッサーを睨み付けながら、その人は走り出した。その先には避難誘導をする男性がいた。

 

「足元、気を付けて!足元!」

「あぁ、丁度良かった!お願いします!」

 

 その人は避難誘導をしていた男性に、ナオミさんを抱えた状態のまま預けた。どうやらナオミさんとその男性は知り合いのようだ。

 するとジャケットの人は、避難する人々とは逆方向に走って行った。

 

「えぇ!?そっちは逆ですよ!?」

 

 僕はその人の後を追った。後ろでナオミさんが何か言っていたけど、全然気にならなかった。

 

 そうしなきゃいけない。そんな考えが頭をよぎった。

 

 

 

 その人は、人目に付かない証明写真機の中に入って行った。そしてカーテンを閉めた時だった。機械とは違う眩しい光が内側から差し、力強い声が聞こえた。

 

「ウルトラマンさん!」

【ウルトラマン!】

「ティガさん!」

【ウルトラマンティガ!】

「光の力、お借りします!」

【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!

 スペシウムゼペリオン!】

 

 更に眩しく光り輝いたかと思って目をつぶり、次に目を開いた時。

 僕の目の前に、見たこともないウルトラマンが立っていた。

 

『俺の名はオーブ。闇を照らして、悪を撃つ!』




…いかがでしょうか。
書いた自分でさえ後半が読みづらい…。他の投稿者の方々はすごいなと改めて実感します…。

オーブの声を『』で、オーブリングの音声を【】で表示しようと思うのですが、どうですか?

登場する町や住所はオーブ本編での設定なので、実在しません。

後編へ続きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。