ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
何とか中編、書き終えました。
暖かい目でご覧下さいませ……。
休眠状態から目覚めたマガオロチを見上げ、何も出来ずに歯痒い思いをしているガイにシンヤは駆け寄り、5枚のカードを差し出す。
「……あまり、無茶しないで下さいね」
「あぁ、お前もな……。必ず戻る……!」
そうシンヤに告げたガイは、一目散に駆けて行き、すかさずオーブリングを構えた!
「ギンガさん!」
【ウルトラマンギンガ!】
「エックスさん!」
【ウルトラマンエックス!】
「シビれるヤツ、頼みます!」
【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!
ライトニングアタッカー!】
マガオロチは、相も変わらずマガ迅雷を撃ち、破壊の限りを尽くす。あちこちで爆煙が上がり、町が跡形も無くなるのも目前となった時。
空の彼方から稲妻のように、颯爽と光の戦士が舞い降りた──!
『電光雷轟、闇を討つ!』
マガオロチを眼前に捉えたウルトラマンオーブ──ガイの脳内に、様々な情報が流れ込む。その膨大な情報量に、ガイは僅かばかりクラっとなり頭を押さえるが、それが全てマガオロチに関するものだと言うことに気付く。
この姿のオーブには、相手のデータを解析する能力が備わっている。かつてのサンダーダランビア戦は初陣だったがために、この能力の真価を発揮することは無かったが、今ならその全てを存分に役立てそうだ。
マガオロチの攻撃を防御ないし回避しつつ、精密機械のように解析を続けるオーブ。そして解析が終了し、1つの結論を導き出す。
『「危険な賭けだが……、今はこれに賭ける!」』
覚悟を決めたオーブは、バク宙を繰り出してマガオロチと距離を置く。そんな隙をマガオロチが見逃す訳も無く、オーブが着地するタイミングを狙い、マガ迅雷を放つ。
しかし、オーブの狙いはそこにあった。
着地したオーブは咄嗟に両腕を伸ばし、バリアを形成。そのバリアはマガ迅雷を凌ぎ切り、逆にそれのエネルギーを、自分が回復するためのエネルギーに変換した。
ライトニングアタッカーは、電撃を操ることに特化した姿でもあり、マガオロチのマガ迅雷を逆用することで、不足していた分のエネルギーを補給したのだ。
……実際、これは一か八かの大勝負だったため、ガイも内心ホッとしていた。
オーブの様子がおかしいことにマガオロチが気付き、マガ迅雷を解除した時には、既にオーブのエネルギー充填が済んでいた。
『「ここからは、俺の戦いだッ!!」』
強く言い放ったオーブは、自分の拳同士をぶつけて気合いを入れ直す。その際生まれたスパークを、オーブは両腕に纏わせ構える。今オーブの拳には、青と黄の稲妻が迸っていた。
そんなものは虚仮威しだと言わんばかりに、マガオロチはオーブに迫り、乱暴に腕を振るう。
それが直撃するより先に、オーブは一瞬でマガオロチの顔面に鋭い鉄拳を叩き込み、マガオロチが今の一撃で怯んだ隙に、俊敏な連続攻撃で一気に攻め立てる!
マガオロチは反撃しようと何度も腕を振り回すが、そのどれもが空を切る。
ゴツゴツとして重そうな見た目のライトニングアタッカーが、なぜこうも素早く動くことが可能なのか。実はこれにも、この形態の固有能力が関係していた。
拳に電撃を纏わせたのと同様に、オーブは全身に電流を循環させることで、一時的に雷と同等の速度で移動しているのである。
もちろんそれを実行するためには、オーブの保有する全エネルギーだけでは不足してしまう。そこで活かされるのが、エネルギー充填に逆用したマガ迅雷。その膨大なエネルギーを応用することで、オーブは今、マガオロチを終始圧倒しているのだ。
『さぁ、まだまだ行くぜッ!』
マガオロチと一旦距離を置いたオーブは、両腕のクリスタルから光の長剣を伸ばす。そのまま超スピードでマガオロチの懐に飛び込み、それぞれの斬撃をクロスさせるように「ギンガエックスセイバー」を繰り出し、マガオロチの体表を斬り付けた!
悶えるように吠えたマガオロチの胸元には、オーブが刻んだ傷痕がしっかりと残っていたが、前回のバーンマイト戦で見せた脅威的な再生能力が作用し、だんだんとその傷痕が塞がりつつあった。
それを目の当たりにしたオーブは空高く飛翔し、全身のクリスタルを黄色く輝かせて威力の増した必殺技を放った!
『アタッカーギンガエックスッ!!』
オーブの必殺技が上空から放たれたのを察知したマガオロチは、それを迎撃しようとマガ迅雷を躊躇うことなく放射した。
オーブとマガオロチの雷撃が、互いの間合いでせめぎ合い、やがてそのどちらも空中で爆発。
爆発の影響で発生した黒い爆煙が、マガオロチの視界を遮る。
そしてこの瞬間を待っていたオーブはマガオロチ目がけて急降下しつつ、別の姿にチェンジした!
「エックスさん!」
【ウルトラマンエックス!】
「コスモスさん!」
【ウルトラマンコスモス!】
「繋がる優しさ、頼みます!」
【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!
フルムーンザナディウム!】
マガオロチに接近するオーブは、引き絞った右手に光のエネルギーを集中させる。
黒煙を突っ切り、先程自分が斬り付けた傷痕をその瞳に捉えたオーブは、それを目がけて右手を伸ばし叫ぶ!
『お前の邪気を浄化する!フルディウムフラッシャーッ!!』
今オーブの放った一撃は、ウルトラマンコスモスのルナモードが使用する「フルムーンフラッシャー」と同様に、相手の邪気を祓うための浄化技だが、ウルトラマンエックスの力を上乗せすることで、浄化の力を高めたのだ。
ライトニングアタッカーの姿で、ガイがマガオロチの解析をする中で最も目に付いたのは、マガオロチ内の魔王獣達の邪気と闇の力だった。
マガオロチを復活させる際、ジャグラーは全ての魔王獣と、ウルトラマンベリアルの力を注ぎ込んだ。つまりマガオロチには、マガオロチだけではなく魔王獣達の力とベリアルの力も宿っているということになる。
解析結果から導き出された答えは、その全てを取り除くことが出来れば、こちらにも勝算はある……と言ったもの。
ガイがシンヤから預かったカードの中には、それを可能とするウルトラマンコスモスのカードが含まれていた。
そのため、ある程度ライトニングアタッカーで深手を負わせることで、この策を実行したのだ。
『ウオォォアァァッ!!』
最後の一押しを決めようとオーブが吠える。
その右手から放たれる光は、マガオロチの傷痕から体内に浸透し、マガオロチを少しずつ浄化していった。
その瞬間を、シンヤは大通りからずっと見守っていた。これならきっと、あの怪獣に勝てる。
そう思った時だった。
シンヤの背後から、砂利を踏んで歩み寄る誰かの足音が聞こえた。
それが一体誰なのかすぐ察知したシンヤは、警戒心を露わにして振り向く。
「やっぱり来たか……ヨミ!」
シンヤが言い放ったのと同時に、ヨミはその歩みを止めた。隠す気がないのか、ヨミの左手にはダークリングが握られている。
シンヤの呼びかけにヨミは鼻で笑ってみせて、続けて答えた。
「当然でしょう?これ以上、あなた方に邪魔されるのはゴメンですからね……!」
するとヨミは、胸元のポケットから1枚のカードを取り出し、正面に構えたダークリングにそれを読み込ませる──!
【ディゴン!】
ダークリングから放たれた闇の波動から現れたのは、人間に似た、二足歩行の怪物達。
しかし人間と違って、黄色い双貌と緑色の肌。そしてその肌は濡れているのか、テカテカと光っている。
まるで、魚が一人歩きをしているかのような、この怪獣は──!
半魚人兵士 ディゴン。
高い知性を持つ「水棲生命体 スヒューム」が操る遺伝子改造兵士で、知能はあまりないが強靭な腕力の持ち主で、それを活かした集団戦法を得意としている。
尚且つ、スヒュームが健在なら、いくらでも補充が利くという厄介な性質を持っている。
以前、ラゴンの親子に出会ったシンヤだったが、このディゴンの見た目はそれを遥かに凌ぐ醜悪さを身に纏っている。
「コイツら……!」
ディゴンの群れと対峙したシンヤは、即座に身構えて戦闘態勢に入る。
その内の1匹がシンヤに迫るが、それを回避しつつ2匹目の胴体に勢いを付けた正面蹴りを浴びせる。直後、シンヤは最初のディゴンが背後から近付いて来るのを察知して、豪快な裏拳を放る。それは見事にディゴンの側頭部を直撃し、喰らったディゴンは倒れ伏す。
「よしっ……、っと!」
自分の攻撃が上手く入ったことに喜び、一瞬油断したシンヤに別のディゴンが飛びかかる。取り付いたディゴンを強引に振り払うものの、また1匹とシンヤを狙って迫り来る。
その物量に、やがて押され始めるシンヤ。正面のディゴン目がけて拳を喰らわせるが、別の1匹が近付いていたことに気が付かず、咄嗟に振り向いた時にはディゴンの平手打ちをまともに貰っていた。
ディゴンの怪力から放たれたその平手打ちは、一撃でシンヤを叩き伏せた。それを皮切りに、ディゴンの大群は一斉にシンヤに群がる。
必死に抵抗するシンヤだったが、自分を押しつぶそうと言わんばかりに来襲するディゴンに、次第に限界を迎えかけていた。
何とか頭部を死守しようと両腕を交差させた時、1枚のカードが手元に飛来した。そのカードを見て、その訳を察したシンヤは、カードに向かって頷いた。
「本当の戦いは……ここからだっ!ダイナさんっ!!」
それが呼び声になったのか、カードから放たれた輝きがディゴンを弾き返した。
ディゴンの拘束から、ようやく解放されたシンヤはゆっくりと立ち上がると、再びディゴンの群れに立ち向かって行く。
これまで押されていたのが嘘のように、パワフルかつダイナミックな攻撃で、シンヤはディゴン達を圧倒。
シンヤが、最後の1匹に全力で横蹴りを叩き込むと、辺り一面に伸びていたディゴン達が消滅した。
勝利を確信したシンヤは肩で息をしながら、ヨミを指差し言い張った。
「どうだ見たか!僕の超ファインプレー!」
一方のヨミは一度俯いたが、依然として余裕綽々といった様子で笑みを浮かべるだけだった。
「お見事……ですが、誰もこれで終わり……なんて、一言も言ってませんよ?」
ヨミはその表情のままシンヤを讃えるが、一瞬で顔色を変えてもう1枚のカードをダークリングにスキャンした──!
【チブロイド!】
すると今度は、ディゴンとは対照的な人型の集団が具現化した。
機械的な装甲を纏い、顔に見られる部位は紫色のバイザーで覆われていて、表情を窺うことは不可能だ。
この集団は傀儡怪人 チブロイド。
「チブル星人エクセラー」が制作したアンドロイドで、個々の戦闘力が高く、しかも集団で襲って来るため、ディゴンとは違った意味で厄介な相手である。
ディゴンとの戦闘で疲弊しているシンヤに、チブロイド達は一斉攻撃を仕掛ける。シンヤも何とか気力を振り絞り戦うが、ディゴン達と打って変わって、連携の取れた攻撃を繰り出すチブロイドに、シンヤは翻弄される。
そんなシンヤを尻目に、ヨミはマガオロチを黙視する。
オーブの浄化技を受けたせいで、すっかり大人しくなってしまった伝説の大魔王獣の有様を見たヨミは、内心がっかりしていた。
失望を込めた視線を向けたヨミだったが、呆れるように溜め息を吐いた後、ぼそっと呟いた。
「……さて、私も助け舟を出しますか」
ヨミはマガオロチに手を伸ばすように、右腕を掲げる。その腕からは黒い波動が放たれ、マガオロチの全身を繭のように包み込む。
『何だ!?この異常な闇のエネルギーは……!?』
それを眼前で目撃したオーブは、何が起こったのかと警戒する。
フルディウムフラッシャーでマガオロチの邪気を祓い、鎮静化させることに成功した矢先、この不可解な現象が発生したため、オーブは頭の整理が追い付かない。
するとマガオロチが、闇の繭を内側から引き裂き、再び姿を現した!
その瞳には、また獰猛な光が宿っていた。
またしても暴走するマガオロチを捉えたシンヤは驚愕して、チブロイドの攻撃を捌きながら、この原因を生んだヨミに問いただす。
「そんな……!お前、一体何をした!?」
「さぁ?……強いて言うなら、強くなったのはあなただけではない、ということです」
人を喰ったような態度で質問に答えたヨミは、シンヤに追い討ちをかけるように、更にもう1枚カードをスキャン。
【レイビーク星人!】
次に現れたのは、鳥もしくは恐竜のような尖った顔の宇宙人達。複眼状の黄色い眼で、リーダー格と思われる宇宙人の眼は赤かった。
奴らは誘拐宇宙人 レイビーク星人。
人間によく似た生物を奴隷として酷使していたが、結果その生物の数を減らしてしまい、代用として夜な夜な人間を縮小光線銃でミクロ化させて、拉致していた宇宙人だ。
レイビーク星人もチブロイドに加勢して、シンヤを襲う。必然的に一対多数の戦闘を迫られるシンヤの顔には、苦痛の色が浮かんだ。
そんな中、シンヤの身に異変が起こる。
ウルトラ戦士の活動限界である3分間を迎えてしまったのだ。ガイとの特訓で技量や体力は上がっていたものの、こればかりは克服することが出来なかった。
一方のオーブも、これまでの計画が全て水の泡になったことで、再び凶暴性を宿したマガオロチと戦わざるを得なくなってしまった。決死の覚悟で立ち向かうオーブだったが、マガオロチの攻撃を捌き切れない。
このままでは不利だと考えたガイは、別の姿に変わろうとするが、それよりも先に放たれたマガ迅雷が直撃。
それによってオーブは片膝を突き、2度目の敗北に悔しさを滲ませながら姿を消した。
奇しくもそれは、2大勢力に圧倒されたシンヤが倒れ込んだのと同じタイミングだった。
連戦による消耗でうつ伏せに倒れ、レイビーク星人とチブロイドを睨んだシンヤと、何度倒れても人々を守るために立ち上がるガイ。
マガオロチはそれを嘲笑うように吠えて、また町を蹂躙し始めた。
次回、ようやく後編です。
長い寄り道をさせてしまいまして、申し訳ございませんでした。
なるべく早い投稿が出来るように、精一杯努力しますので、よろしくお願いします……。