ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
「あ……。これ、ヤバいパターンのヤツだ」
学校帰り、いつもと同じ道を歩いていたのだが。建設中のビルがあったことに気が付かず、その近くを歩いていた自分の自己責任なんだけど。
誰だって、頭上から建設用の機材が降ってくるなんて思わないだろう?
僕は、草薙眞哉。絶賛命のピンチ中だ。
地元の大学に通っていた、まぁどこにでもいる一般人だ。周りと少し違っているとするなら、子どもの頃から好きなウルトラマンが、今でも好きってことかな?
そのおかげなのか、周りには話の合う奴は一人もいないし、退屈な毎日だった……。
……って、人生振り返ってる場合じゃないよ!?とにかくここから動かなきゃ!
でもこんな時だってのに、足は動いてくれないし、両目は悠長に降ってきた機材の観察まで始めるし。
その機材は僕が名前も知らないものばっかりで、大きさはどれも不規則で、バラバラに降ってきている。どう足掻いたところで、これから回避するには遅すぎる。
この時。僕は確実に死を直感した。
……いや、まだ終わりたくない。そんな強い想いが、燃え上がった。
死にたくない。まだ生きたい。こんなところで、僕の人生を終わらせたくない!
僕が尊敬するあの人達だって、絶対に最後まで諦めなかった!だから僕だって!
無駄な足掻きだと思われるかも知れない。それでも……それでも!!
「僕は……!僕はっ……!!」
『──ッ!』
目の前に機材が迫った時。どこからか声が聞こえて、
僕は、光に包まれた。
目を開く。
目の前に広がるのは、白一色の天井。
背中に硬い感触があって、寝転がっていることを認識した。
周囲を見回そうと首を動かす。首はまだ繋がっているようだ。
次に両腕と両足が動くか確認。問題ない。
立ち上がれるか。難なくクリア。
改めて周囲を見回す。そこは病院とも違う、純白の空間だった。
(ここは……。一体……)
ウルトラ作品を見ていた僕には、見覚えのある空間だった。こういう場所だと、その主人公と一緒に戦っているウルトラ戦士が語らったり、新しい力を授かる時によく登場する場所だ。
(ということは……、僕は……)
───草薙、眞哉さん…。
(っ!?誰!?)
聞き慣れない女の人の声が聞こえて、反射的に振り返ったけど、僕以外はここにいなかった。
───眞哉さん、あなたに頼みがあるのです。
(……君が、助けてくれたの?)
姿の見えない彼女にそう訪ねる。しばらく沈黙が続いて、それが肯定だと認識した。
(……僕に出来ることなの?)
───えぇ。あれを見て下さい。
その途端、後ろから音が聞こえた。小さな音ではなく、巨大な何かがぶつかり合う衝撃音だった。
すぐに振り向くと、驚愕の光景が広がった。
そこはどこかの森。周りが暗いことから、夜なのだと察した。そんな中で、巨大な2つの影が争い合っていた。
一方は光輝く巨人。額には水色に光る発光体があり、胸にはアルファベットの「O」の字が見えた。
(……ウルトラマン?でも僕はあんなウルトラマンは……知らない)
もう一方は、光の巨人と対になるような黒い体。顔と認識できる箇所には、赤く光る結晶が目立つ。胸には青いパーツがあった。
(あれは……ゼットン?でも僕が知ってるゼットンとは違う……?)
──ゼットンは、かつて初代ウルトラマンを倒したことがある怪獣だ。その体は、どの種族も黒と金を基調とした色使いだった。だからこそ、あんな色のゼットンは見たことがなかったのだ。
やがて、そのゼットン──マガゼットンは頭部から火球状の蒼いエネルギー弾を、眞哉の知らないウルトラマンに向けて発射。それが直撃して生まれた爆風は凄まじく、周囲にまで影響を及ぼした。
それがいけなかった。
(あっ……!女の子が……!)
その近隣に住んでいたのであろう金髪の少女が、その爆風に巻き込まれたのだ。なぜこの場所に女の子が…。眞哉はそう思ったが、一方の巨人の方にも動きがあった。
その少女とは知り合いだったのだろうか。怒りに震える巨人は、剣のような形状の武器を取り出した。その剣にエネルギーを充填し、光線としてマガゼットンに解き放った!
『ーーーーーーーッ!!』
巨人の声にならない叫びと共に放たれた光線は、マガゼットンに直撃した!だが怒りに任せて放った広大なエネルギーは、巨人でさえ制御が効かず、その剣は持ち主から離れていき、マガゼットンに激突した。
その時の衝撃は先程の爆風を遥かに超え、森林一帯を飲み込むドーム状になって、辺り一面を焼け野原に変えた……。
(そんな……)
僕は自分でも気付かない内にそう呟いていた。ウルトラマンは、これだけの力を持っていると改めて実感せざるを得なかった。
───彼を、オーブを助けて下さい。
(オーブ?あの巨人……ウルトラマンのこと?)
長い沈黙。
(どうして僕なの?)
また沈黙。
(……僕にしか、出来ないことなの?)
───彼に伝えて欲しいのです。あなたがよく知る、英雄達の意志を。
(……っそんなこと言われたって、分からないよ!)
───あなたにならきっと出来ます。……これを授けます。
彼女がそう言うと、上から何かが降りて来た。僕はそれを両手で受け取った。
どうやらカードホルダーのようだ。表紙には特徴的な「O」のマーク。早速めくると、そこには数々のカードが入っていた。
(ウルトラ戦士のカード!?それに……エックスまで!?)
全ページをめくると、所々抜けているカードはあったけど、ほとんどのウルトラ戦士のカードがあった。
───ウルトラフュージョンカード。あなたの、オーブの力になってくれます。
改めて全ページをめくってウルトラ戦士達のカードを確認していく。そこには僕が尊敬して止まない人達がいた。この人達と一緒なら、きっと出来る。そんな根拠のない自信が、ふつふつ沸いてくる。
(分かった……。まだよく分かんないけど、僕に出来ることを、精一杯やってみる!)
その声の主は、静かに微笑んだ。目には見えないけど、そんな気がしたのだ。
───ありがとう。では、あの光に向かって進んで下さい。その先にオーブがいます。
僕の視線のずっと先に、強い光が輝いていた。一歩ずつ、ゆっくり進んで行く。その光に辿り着いた時だった。
───オーブを、ガイをよろしくお願いします…。
その声を聞いて振り向いても、誰もいなかった。
「……行ってきます」
そこにいない誰かにそう呟いた僕は、光の向こう側へと進んで行った。
お昼にキャラ設定を投稿したので、これで2本目ですね。
これから先もこの調子でやれたらいいな~
※眞哉君が所有するカードで抜けているカードは、ガイさんが主にフュージョンアップに使うカードです。
それ以外にも数枚抜けていますが、その理由はいずれ。
またお会いしましょう。ノシ