ウルトラマンオーブ ─Another world─   作:シロウ【特撮愛好者】

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どうも。

何とか間を開けることなく投稿出来ました…。
今回はちょこっと手を加えました。

それでは、どうぞ。


第9話 ニセモノのブルース ━後編━

 子供達に「ババリューさん」の愛称で呼ばれるようになった竜次。ガイとシンヤ、ジェッタが見守る中、今日もまた子供達と一緒に公園で楽しく過ごす1日を送っていた。

 竜次の励ましのおかげで苦手を克服することが出来たと言う声は後を絶たず、今ではすっかり子供達のヒーローとなっていた。

 未だ自分をウルトラマンオーブだと信じている子供達に罪悪感はあったものの、彼らと平穏な日常を過ごす中で、竜次にはある1つの考えが浮かび上がっていた。

 

(俺、このままウルトラマンオーブになるって人生もあるんじゃねぇのかな……?)

 

 そんな竜次の偽りだらけの日常は、突然終わりを迎えた。

 竜次達のいた公園の上空に、惑星侵略連合の円盤が出現した。

 この円盤の出現に驚いたジェッタが竜次に駆け寄る。

 

「UFOだ……!」

 

 円盤内には、破壊作戦がいつまで経っても始まらないことへの怒りで震えるノストラの姿があった。

 

「もう待てんぞ……!いつになったら破壊作戦が始まるのだ!!」

 

 上空の円盤に全員の視線が釘付けになっていた時、ジェッタが竜次に尋ねる。

 

「馬場先輩、あれはもしかして侵略宇宙人ですか……!?」

「あ、あぁ……」

 

 そう答えた竜次だったが、相手はノストラ。自身の首領に当たる人物だ。彼に刃向かえば、裏切り者として処刑される可能性さえ考えられる。

 そうして身動きの取れない時、マサトが竜次に願い入れる。

 

「ババリューさん、やっつけて!」

 

 このマサトの一言で、子供達からの切実な願いが竜次に殺到する。それを聞いた竜次は悩みに悩んだが、覚悟を決めて走り出す。

 人目に付かない林の中で足を止めた竜次は、両腕を身体の前で交差させ、その両腕を高く伸ばす。

 黄金の輝きに包まれた竜次は、その身をウルトラマンオーブへと変えた!

 オーブの出現に子供達は一気に沸き立ち、その大きな背中に声援を届ける。

 そんなことなど知ったことではないノストラは、ババリューに命令を下す。

 

「まず手始めに、その子供達から踏み潰せッ!」

『「そ、それは……」』

 

 一向に動きを見せないオーブを不思議がって、子供達は声援を止め、その途端に公園を静寂が支配した。

 その静寂の中でも、ノストラはババリューへの指図を止めることはなかった。

 

「どうした……?早く踏み潰せぇ!!」

 

 苛立ちを露にするノストラだったが、ババリューの返事で更にその苛立ちを加速させる。

 

『「出来ません……」』

「何だと……!?」

『「そんなこと出来ません……。俺は今、ウルトラマンオーブなんです!」』

 

 この時ババリューは、自らの意志でノストラの命令に背いた。ノストラは部下の反抗が信じられず、激しくババリューを批判する。

 だがババリューは子供達との思い出を振り返りながら、彼らのヒーロー「馬場竜次」として主張をする。

 

「お前はニセモノだッ!ババルウ星人だろう!!」

『「確かに俺は……悪の星の元に生まれた暗黒星人だと思ってました。

 だけど、こいつらが教えてくれたんです!運命は変えられる……俺だって、ヒーローになれるって!」』

 

 それを聞いたノストラはババリューを見限ったのか、ジャグラーに指示を出す。

 

「ジャグラー、奴を処刑しろ」

「畏まりました……」

 

【ケルビム!】

 

 ノストラの指示に従ったジャグラーは、ダークリングに1枚の怪獣カードをリードする。

 円盤から紅い光線が照射され、その光線からケルビムが実体化する!

 

 宇宙凶険怪獣 ケルビム。

 頭部の角と鰭状の耳、中2本が長い4本指が特徴的な怪獣だ。

 ケルビムの登場に怯える子供達を守るために、ババリューは「ウルトラマンオーブ」として立ち向かう。

 乱暴に腕を振り回してケルビムを殴打するが、ババリュー自身戦闘慣れしていないために、これといったダメージにはならず、ケルビムの右ブローで弾き飛ばされる。俯せに倒れるオーブに、ケルビムは尻尾の先端の瘤で追撃する。ケルビムの尻尾の瘤には鋭利な刺が生えていて、それが余計にダメージを与える。

 何とか立ち上がったオーブは、渾身の右ストレートをお見舞いする。しかしこれにも動じないケルビムは、左手でオーブをはたき、追い討ちの火球を炸裂させる。

 

『「グ、グアアッー!!」』

 

 防御の構えを取る隙も与えられず、オーブは工業団地に仰向けで倒れた。そのダメージが効いたのか変身が解け、本来のババルウ星人の姿を子供達の前で晒してしまった。

 これまでオーブだと信じていた存在の正体が、偽物の宇宙人だったことを知って、子供達は驚愕する。

 その子供達の表情を見たババリューの身体に、これまで負ったダメージよりもっと重い一撃を喰らった感覚が走る。

 子供達それぞれの顔を見たババリューは胸が苦しくなり、これまで騙していたことを自白した。

 

「……そうだ、俺はウルトラマンじゃねぇ。暗黒星人のババルウさ……。お前達を騙していたんだ……。すまねぇ……。所詮俺は偽物なんだ……」

 

 膝を突いて四つん這いになっていたババリューの胴をケルビムは蹴り飛ばし、本能の赴くままにババリューを痛めつける。

 絶望の淵に立たされたババリューの耳に届いたのは、彼にとって信じ難い言葉だった。

 

「──がんばれ、ババリューさん!」

「がんばってぇー!!」

 

 ババリューに助けられたマサトとシンジが叫び、他の子供達もババリューを必死に応援する。

 この子供達の声援と一緒に、ジェッタとシンヤが言葉を届ける。

 

「……そうだ、諦めるな馬場先輩!あなたが誰であろうと関係ない!子供達に言ってくれたじゃないですか!『夢を追いかければ、いつかはヒーローになれる』って!あなたが……、あなたが僕達に夢を見せてくれたんじゃないですか!!」

「アンタのことを、子供達が応援してるんだろ!?アンタは子供達裏切って平気なのかよ!!今まで騙してたこと少しでも詫びてるなら……もういっぺん、立ち上がってみせろよ!!」

 

 これを聞いたババリューの全身に、力が漲る。

 ケルビムに踏み付けられていたババリューだったが、この声援を受けて再び立ち上がった!

 

「そうだ……お前らの言う通りだ……!ここで、諦めてたまるかぁぁぁ!!いよぉぉぉしっ!!やってやらあぁぁぁ!!」

 

 ケルビムに持てる力の全てをぶつけるババルウ星人だったが、これを不快に感じたノストラはこれまで静観を貫いていたヨミに命じた。

 

「ヨミッ!貴様も手伝えッ!!」

「それでは私は、子供達に更なる絶望を……」

 

【ザラブ星人!】

 

 ヨミもジャグラーと同様に、自らのダークリングにカードを読み込ませる。

 するとババリューとケルビムの眼前に、バーンマイトの姿のオーブが現れた!

 これにジェッタは、今度こそ本物が現れたのかと推測したが……。

 

「本物のオーブ……!?」

「いえ、違います!よーく見て下さい、目付きが悪い。あれは、真っ赤な偽物です!」

 

 シンヤに言われた通り、ジェッタは目を凝らすと、本来バーンマイトにはないはずの黒いラインが入っていて、目元も若干つり上がっていた。

 

 ヨミが召還したザラブ星人にも、ババルウ星人に良く似た変身能力が備わっている。ただし、ババルウ星人の変身と比べれば、ややおかしい箇所がいくつもある。

 召還されたザラブ星人は降り立つ直前、その一瞬でオーブに化けたのである。

 つまりあれは、もう1人の「にせウルトラマンオーブ」と言うことだ。

 

 この展開を予期していなかったババリューは当然焦るが、眼前で構えるにせオーブ バーンマイトのボディーブローを喰らってしまう。

 

「グハアッ……!?」

 

 オーブの全形態中でも攻撃に特化しているバーンマイトの一撃は、ケルビムとの戦闘で既にボロボロだったババリューを更に追い込む。

 ボディーブローを喰らって咳き込むババリューに、非情にもケルビムはトドメの火球を放つ。

 

「ウワアアーッ!」

「先輩っ!」

 

 子供達とジェッタの悲鳴が上がった時、場所を移したガイはオーブリングを構えた!

 

「ガイアさん!」

【ウルトラマンガイア!V2!】

「ビクトリーさん!」

【ウルトラマンビクトリー!】

「大地の力、お借りします!」

【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!

 フォトンビクトリウム!】

 

 

 

 ケルビムともう1人のにせオーブの猛攻で力尽きかけていたババリューは、目の前に迫る火球を直視して終わりを悟った。

 

(これで一巻の終わりか……。)

 

 自分の運命に身を委ねたババリューは、諦めるように視線を反らす。

 しかしケルビムの放った火球は、直撃することがなかった。

 何が起こったのかと視線を上げると、ババリューのすぐ目の前に、サークル状のバリアを展開する本物のウルトラマンオーブの姿があった。

 本物の登場に言葉の出ないババリューは、ただただオーブを見つめる。その視線に気付いたのか、オーブはゆっくりと振り向いてババリューに頷いてみせる。

 

 そして標的を自らの偽物と怪獣に見定めたオーブは、勇猛果敢に勝負を挑む!

 まず、にせオーブが本物を襲うが、彼には本物ほどの勇ましさはなく、フォトンビクトリウムの鉄拳を叩き込まれる。その勢いのままにせオーブはケルビムと激突し、本来のザラブ星人の姿へと戻ってしまう。それでもザラブ星人はオーブに猪突猛進するが、渾身の必殺技「フォトリウムナックル」を喰らって空高く舞い上がり、上空で爆散。

 残るは、ケルビムただ1体。

 ケルビムの胴体に、重さを乗せた正拳突きをヒットさせる。負けじとケルビムも右腕を振るうが、オーブはこれをノーガードで凌ぐ。

 ケルビムの突進を左腕のみで抑えたオーブは、更にタイプチェンジ!

 

「ジャックさん!」

【ウルトラマンジャック!】

「ゼロさん!」

【ウルトラマンゼロ!】

「キレの良いヤツ、頼みます!」

【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!

 ハリケーンスラッシュ!】

 

『光を越えて、闇を斬る!』

 

 タイプチェンジと同時に起こった突風で、ケルビムは転倒。オーブは、ケルビムが倒れたのと同じタイミングで名乗る。

 再び起き上がったケルビムはオーブに襲いかかるが、オーブは召還したオーブスラッガーランスで竜巻を精製。ケルビムを天高く飛ばす。

 そして自らも高く飛び上がり、ランスのレバーを3回引き赤いスイッチを押すことで、この姿の必殺技を発動する!

 

『トライデント、スラーッシュ!!』

 

 高速で切り刻まれたケルビムは爆発、オーブの勝利だ!

 オーブの勝利に子供達とジェッタが歓喜の声を上げていたが、これまでそれを見ていたのはババリューも同じだった。

 力なく倒れたババリューは片手で顔を覆って、小さくこう言うのだった。

 

「へへっ……やっぱ、本物はすげぇや……」

 

 そう言い残し、ババリューは金色の光になって消えた。

 それを目撃したジェッタは嫌な予感がして、ババリューの消えた場所へと走った。

 

 

 

 作戦が失敗した挙げ句、オーブにも負けた惑星侵略連合の宇宙人達の間を嫌な空気が漂っていた。そんな中で口を開いたジャグラーとヨミは、この作戦のことを嘲笑う。

 

「ドン・ノストラ……。あなたのやり方は、人間の心の善悪を問う昔ながらのやり方です。……時代はもっと進んでるんですよ」

「次こそ皆様の作戦が成功することをお祈りします。では、我々は失敬致します……」

 

 そう言ったヨミだけは丁寧に礼を行って、彼らは円盤を去る。

 これを聞いたノストラの配下達は、悔しさを露にする。ノストラはと言えば、いつものように玉座に着座していたが、誰も彼の拳がわなわなと震えていたことに気付いていなかった。

 

 

 

 身体の節々から走る痛みに耐えながら、ババリューはその場を離れる。もう、ここにはいられない。それが分かっているからこその行動だった。

 それだと言うのに、呼び止められたババリューは足を止めてしまう。

 

「先輩……!待ってよ先輩……!」

 

 ババリューが振り返ると、そこにはジェッタと自分が変わるきっかけをくれた子供達がいた。

 子供達は口を揃えてババリューに感謝を述べる。

 

「ありがとう、ババリューさん!」

「ありがとー!」

 

 自分がニセモノの宇宙人だったと言うのに、そんな自分にこの子供達は、感謝の言葉を届けに来てくれた。それに涙ぐんだババリューは、涙を堪えて右手を突き出す。それからまた歩き出し、ジェッタ達の前から姿を消した。

 

「馬場先輩……!」

 

 ババリューの後を追おうとするジェッタだったが、突然現れたガイに静止される。

 

「行かせてやれよ!……ヒーローってのは、風のように去って行くんだろ?」

 

 ババリューの消えた道を見つめるジェッタとガイ、そして子供達。

 

 これまで「ニセモノ」にしかなれなかったババルウ星人ババリューはこの日、子供達にとっての「本物のヒーロー」になったのだ。

 

 

 

 ババリュー……馬場竜次が姿を消してから数日が経過し、ガイ達は彼との思い出がいっぱい詰まった公園へと足を運んでいた。

 公園では相変わらず、子供達が元気いっぱいにはしゃぎ合っていた。

 

「馬場先輩、どこ行っちゃったのかな……?」

「きっとまた……、どこかで会えますよ。……僕らは、この空で繋がってるんですから」

 

 ババリューとの別れの淋しさからかジェッタがそう呟くと、シンヤが晴れ渡る空を見上げながらバナナオレを飲む。

 ガイが目線を逸らすと、母親に連れられた小さな女の子が帽子を落としてしまった。それを黒髪の清掃員の青年が拾い、その親子に優しく接していた。

 ガイと目が合ったその青年は口元に手を添えて、嬉しそうな表情をガイに向けてまた作業に戻った。

 それを見て、彼が何者なのかを察したガイは笑みを浮かべ、落ち込むジェッタを励ました。

 

「さぁな……。ヒーローってのは案外、その辺にいるんじゃないか?」

 

 その励ましを受けたジェッタは、平和な公園をまた眺め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ガイとシンヤの、ウルトラヒーロー大研究!」」

 

ガイ「さぁ、ウルトラヒーロー大研究の時間だ。今回もヒーローを紹介していくぞ」

シンヤ「今回は、誰を紹介するんですか?」

ガイ「今回紹介するのは、この人だ!」

 

【ババルウ星人ババリュー!】

 

シンヤ「えっ、ガイさん!?この人は……。あぁ、なるほど」

ガイ「紹介を続けるぞ。『ババルウ星人ババリュー』。元々は惑星侵略連合に属していた宇宙人だ。持ち前の変身能力でオーブに化けて、人々との絆を断ち切ろうと企んでいたようだが、突然現れた野良怪獣のテレスドンと戦うことになってしまったんだ。そんな中で偶然子供達を助けてしまったことで、こいつの運命が変わったんだ」

シンヤ「ババルウ星人という宇宙人はこれまでも、卑劣な作戦でウルトラ戦士の皆さんを追い詰めましたが、今回のババリューさんは、どこかコミカルで人間味のあるキャラクターとして描かれていました」

ガイ「今回登場したザラブ星人は、ウルトラシリーズの長い歴史における元祖『にせウルトラマン』なんだよな」

シンヤ「その通りです!ザラブ星人から始まったにせウルトラマンの歴史は、『偽物=悪者』のイメージを根強くさせましたが、にせウルトラマンの中にも『善のにせウルトラマン』がいることを忘れないで下さいね!」

ガイ「あぁ、こいつもその1人って訳だな!

 ……おっと。悪いがそろそろお別れの時間だ」

 

ガイ&シンヤ「「次回も見てくれよな!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の宿敵、ジャグラスジャグラー。奴との因縁は遥か昔から続く、光と闇の戦い。

 だが、お前との腐れ縁もこれまでだ。さぁ、ケリを付けようぜッ!

次回!

『ウルトラマンオーブ ─Another world─』

『ジャグラー死す!』。

 光を越えて、闇を斬る!!




……いかがだったでしょうか。

フォトンビクトリウムの出番が多いのは、単純に作者が平成3部作でガイアが好きだということもあって、かなり優遇してるなー……という自覚があります。
作者の中では、フォトンビクトリウムは、サンブレの次くらいに攻撃力が高いという(勝手な)位置付けにあります。

皆さん、オーブの映画はどうでしたか?
作者も早く見たいです……。

次回の更新もきっと遅いと思いますが、よろしくお願いします!

隠れたサブタイトルは、『ウルトラQ』第21話『宇宙指令M774』でした。

では……ノシ

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