ウルトラマンオーブ ─Another world─   作:シロウ【特撮愛好者】

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どうも、お待たせしました。
本日「絆の力、おかりします!」公開開始!
作者はどうやら公開初日には見に行けないようなので、皆さんには是非楽しんでいただきたい一心でございます…。

『THE ORIGIN SAGA』も次回で最終話を迎える一方で、この作品はまだまだ序盤!
「こんな回もあったな~」みたいな感じで読んでいただければと…。

では、どうぞ。


第9話 ニセモノのブルース ━前編━

 宇宙空間で停滞している、惑星侵略連合の円盤。

 その内部では、連合を束ねるリーダー・メフィラス星人ノストラが玉座にどっしりと腰掛け、配下の宇宙人達とウルトラマンオーブについて語らっていた。

 

「ウルトラマンオーブが強い理由は何か……。それは、人間達との絆の強さなのだよ。人々の希望が奴へ力を与えている」

「それは同時にオーブの弱点でもあります。……何より彼は、戦いの最中に人間を傷付けることを恐れます」

 

 ノストラの言説に、ホストのような佇まいのジャグラーが介入する。それを聞いたノストラの配下達は、呆れるように鼻で笑った。

 これを受けたノストラは、次の作戦を実行する。

 

「……宇宙指令M774!ババルウ星人!」

「ドン・ノストラ……、ご用でしょうか」

 

 ノストラに招集され、彼の眼前で跪いたのは黒のボディと金色の髪、頭部に2本の角を生やしたババルウ星人だった。

 暗黒星人 ババルウ星人。

「暗黒宇宙の支配者」とも呼ばれ、かつてウルトラの星のエネルギーや軌道を制御する巨大な鍵「ウルトラキー」を盗み、ウルトラの星と地球を衝突させようと企んだ宇宙人である。

 ウルトラキーは光線銃としても使用でき、その一撃は惑星を破壊することも可能な危険な代物なのだ。

 今回呼ばれたババルウ星人ババリューは、これまでの同族の実績を買われてこの連合に所属していた。

 そしてノストラは、ババリューに命令を下す。

 

「お前の変幻自在の能力で、ウルトラマンオーブに変身し、地上を攻撃するのだ。そしてオーブと人間の信頼関係を、壊してしまえ!」

「畏まりました……。フンッ!」

 

 そう言って立ち上がると、ババリューは口元に手を添える。すると彼の身体が輝き、たちまちウルトラマンオーブの姿へと変わっていた。

 ババルウ星人の固有能力として、優れた変身能力がある。ウルトラキーを盗んだ時も、ウルトラマンレオの弟「アストラ」へと化け、ウルトラ兄弟とレオの同士討ちを図った程である。この変身能力には、アストラの兄であるレオでさえも気が付かなかったのだ。

 こうして、ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオンへと変身したババリューは、計画を遂行すべく地球へと向かった。

 

 

 

 それを知らないナオミ達SSPとガイは、都内のとあるハンバーガーショップへと足を運んでいた。どうしてガイも同行しているのかと言うと、ジェッタにハンバーガーを奢ると言われたからだった。

 ハンバーガーのセットを2人前注文していたガイは、ジェッタが運んで来たそれを受け取り、嬉しそうに目を輝かせる。やはりこの風来坊、地球の食べ物には目がないようだ。

 向かい合って座るジェッタとガイの隣の席にシンが座り、その向かい側にはナオミとシンヤが腰掛けていた。ナオミとシンヤが何を聞いているのかと言うと、シンが発明した人工知能の解説だった。

 その人工知能の目的とは、ナオミの代行をするといったもの。シンが手元のタブレットをナオミ達に向けると、そこにはこちらを見て言葉を発する3頭身程のキャラクターと、何らかの円グラフが表示させていた。

 ナオミはそれを見て、自分の代わりになる人工知能を作るのは大変だったのではと尋ねる。

 開発者の松戸シン曰く、「赤字よ!」「どういうこと?」「何これ!」「顔でも洗って、反省しなさい!」等々単純な事しか言わないから、作るのは簡単だったとのこと。それを聞かされたナオミは腹を立てて文句を言うが、己を模した人工知能も同様のことを言ったため絶句した。

 その脇でジェッタは、コップに挿したストローで水面にあぶくを作ったりしていた。

 

「怪獣が現れないと……暇だねぇ~……。……待って、何だあれ!?」

 

 退屈だったのか、窓の外を眺めていたジェッタさんは何を見たのか突然店を飛び出す。それを追う形でナオミさん達も店から出ると、遠くの住宅街に金色の人影を目撃した。

 その光が晴れると、ウルトラマンオーブが突如出現した。

 

「ウルトラマンオーブ!」

「「……え?」」

 

 突然現れたオーブに、僕とガイさんは互いに変な声を出しながら目を見張った。

 それはそうだろう。本物のウルトラマンオーブは、ここで食事をしているガイさんなのだから。

 そしてガイさんの方を見ると、オーブが登場した驚きからか、食べようとしていたフライドポテトを皿の上に落として呆然としていた。

 それにナオミさん達は気付いていないかも知れないけど、あのオーブ──にせウルトラマンオーブは腕の構えが本物とは左右逆なのだ。まるで、鏡の鏡像のように。

 突然現れたオーブを見て新しいスクープを予感したのか、ナオミさんはいつもの号令を叫ぼうとするけど、ナオミさんを遮ってジェッタさんが号令を言い渡す。

 

「よ~し!」

「Something Search People、出動~!」

 

 これまで退屈にしていたのが嘘のように、ジェッタさんはいの一番に駆けて行き、それをシンさんとナオミさんが追いかける。

 ガイさんと僕は、にせウルトラマンオーブを眺めて立ち尽くしていたけど、気を取り直してナオミさん達の後を追った。

 

 僕が現場に着いた時にはとっくに人だかりが出来ていて、そこにいた全員の視線がオーブに集中していた。気が付くとガイさんの姿はなく、きっとあの偽物の退治に行ったのだと僕は思った。

 けど、そのガイさんの腕を掴んで引きずるジェッタさんを見つけた。

 何をしてるのかジェッタさんに問い質すと、さっきハンバーガーを2個奢ったから取材を手伝ってもらおうとしたそうで、このスクープをモノにしたいジェッタさんは余計に焦ってガイさんの腕をより強く引いた。

 

 

 

「さぁ、ババルウ星人!地上を破壊するのだ!」

 

 オーブに化けたババリューの耳に、ノストラの声が届く。それを受諾したババリューは、まずどこから破壊するかを決めようと周囲を見回す。

 それを見たナオミは、オーブがいつもと様子が違うことを不振に思った。怪獣もまだ出て来ていないのに、どうしてオーブが現れたのか。これには、シンも同じ気持ちのようだった。

 すると今度は地鳴りが起こり、ババリューは戸惑う。

 

『「な、何だ!?」』

 

 咄嗟にババリューが振り返ると、大地を突き上げて地中からテレスドンが現れた!

 

 地底怪獣 テレスドン。

 全身が鎧のような強固な皮膚で包まれていて、怪力任せの攻撃を得意とする怪獣だ。

 このテレスドンは、惑星侵略連合がウルトラマンオーブと人間達との絆を断ち切るための作戦を実行しようとしたと同時に偶然出現した、いわゆる野良怪獣だった。

 この予期せぬ事態に混乱したババリューは、ノストラに答えを求めるが……。

 

『「これは……どういうことですか!?」』

「分からん……。想定外だ」

『「わ、私はどうすれば……アッ!?」』

 

 ノストラの返事に更に戸惑ったババリューは、背後のテレスドンに気が付かず、背中に頭突きを喰らい倒れる。

 ついにはノストラに「自分の身は自分で守れ」と言われる始末であり、仕方なくそのテレスドンとの戦闘へと突入する。

 ババリューは現在オーブの姿に化けているが、似せているのは見かけだけで、オーブの強さまでは真似ることは出来ないため、終始テレスドンに圧倒される。テレスドンの顎を押さえ付けて行動を制限するが、抵抗空しく振り払われ地に伏す。

 すかさずテレスドンは口から火炎を吐き、何とか立ち上がったババリューの背中を焼く。

 

『「ぐわぁあぁぁぁっ!!あっちぃなぁ、このヤロォ!もう勘弁ならねぇ!」』

 

 これには腹を立てたババリュー、テレスドンに飛びかかって頭部を掴み力任せに殴打を何度も繰り出す。

 これに参ったのか、テレスドンは地面を掘り返して撤退した。

 

『「何だこのヤロォ!二度と来んな、野良怪獣!……あ~、疲れた。……っ!やべぇ……!」』

 

 テレスドンを退けて疲れたのか、ババリューは脱力するがその拍子で変化が解けそうになってしまい、慌てて姿を消した。

 

 しかしババリューは気付いてはいなかった。

 先程の戦いで、偶然地球人の子供を助けていたことを。

 

 

 

 何とか難を逃れ、人目の付かない場所で呼吸を整えようと足を止めたババリューだったが、そんなババリューに休みを与えないと言わんばかりにビデオカメラを構えた青年が駆けて来た。

 

「っはぁ、はぁ、はぁ……。あ~、妙なことになっちまったぜ……。ウォアッ!?」

「あなたが、ウルトラマンオーブですね!?」

 

 今日こそはウルトラマンオーブの正体を突き止めると躍起になっていたジェッタは、先程オーブが消えた場所へと急行。

 そこにいたのは金色の宇宙人で、彼がオーブの正体だと早とちりしたジェッタは、カメラを構えたまま全速力で叫びつつ彼の元へと走る。

 

 咄嗟のことで驚いたババリューは、得意の変身能力で今度はチャラい金髪の人間態になる。しかしその瞬間もジェッタに撮られてしまい、それを誤魔化して何とかこの場を去ろうとする。

 

「……何の、ことだ?」

「え?あ、ちょっと待って下さい!せめて、お名前だけでも……」

 

 ババリューはジェッタに名前を聞かれてつい口走りそうになるが、咄嗟に思い付いた偽名を語る。

 

「ババルウ、いや……。馬場、竜次」

「ば、馬場、竜次?あ~……なるほど?正体が分かると?活動がやりにくい……?……うんうんうんうん、ヒーローって、そういうもんですよね!?」

「ま……まぁ、そういうもんだ!」

 

 この誤魔化しが効いているのか、ジェッタは余計な考察をババリューに述べる。その返事を予想していなかったババリューは戸惑いながらも肯定する。

 その直後ジェッタがババリューの両手を取りつつ、ババリューを見つめてこう言った。

 

「分かりました!僕、絶っ対に秘密にします!」

「そ、そうだよ!俺とお前の、秘密だ!じゃあ……!」

 

 何とかジェッタを振り切ったババリュー改め馬場竜次は、すぐさま駆け去って行く。

 この2人のやり取りを、遠くからガイは見守っていた。

 

 

 

 この騒動の後、ノストラの元へ戻ったババリューは今回の報告を行う。

 しかしノストラは、命令を実行しなかったババリューに対してご立腹のようで、声を尖らせてババリューを追及する。

 ノストラや配下の宇宙人達に睨まれ、肩身の狭いババリューはおどおどとした口調で答えた。

 

「それで……?これからどうするつもりだ……?」

「も、もちろん引き続き、宇宙指令を遂行いたします!」

 

 ババリューを見ていたのはノストラの配下達だけではなく、つい最近惑星侵略連合に介入した怪しげな2人組の1人──ヨミが自分に近付き、耳打ちをする。

 

「手こずっているようなら……、私も手伝いましょうか?」

「う、うるせぇ!俺だけで十分だ!」

「ハハッ。その意気ですよ、その意気」

 

 どうやらこの男は自分に発破をかけるつもりで近付いて来たようで、からかう様子を見せる。

 それに腹を立てたババリューは鼻息を荒くして、円盤から出て行った。

 

 

 

 昨日の一件から一夜明けて、今日は朝からそのニュースがラジオから流れていた。ウルトラマンオーブの活躍のおかげで、怪我人は出なかったとアナウンサーが言う。

 そのニュースが報道される度に、僕は「あのオーブは、偽物です!」……と大声で叫びたくなる。そう叫んだところで、誰も信用してくれる訳はないんだけど……。

 

「シンヤ?お~い、シンヤ?」

「へぇ!?……どうかしましたか、ガイさん?」

「いや……。お湯、溢れてる」

「え……?うわぁ!やっちゃったぁ……!」

 

 これまで僕が何をしていたかというと、ナオミさん達にお茶を出そうとしていたのだった。

 ガイさんに話しかけられてから湯呑み茶碗を見ると、注いでいたお湯はとっくに溢れていて、机を濡らしていたことに気が付いた。僕は慌てて布巾を手に取り、一心不乱に机を拭く。

 その傍らで、ガイさんは濡れていないコーヒーカップに残ったお湯を注いでコーヒーを飲み始める。

 この一部始終を見ていたからではないだろうけど、ジェッタさんはなぜか終始ニヤニヤしていた。そんなジェッタさんを気味悪がって、ナオミさんはジェッタさんに尋ねた。

 

「さっきからニヤニヤして気持ち悪いな~……。何なの?」

「別に~?……ちょっとガイさん!」

 

 するとジェッタさんは、ガイさんの元に駆け寄って肩を掴む。そしてガイさんにだけ何かを囁いていた。ちなみに僕はまだ机を拭いていたから、盗み聞きをするようで悪いけどその会話が間近で聞こえていた。

 …そもそもジェッタさんは隠すつもりがないのか、かなり聞き取りやすい声量で話していたから盗み聞きになるかどうかは分からないけど。

 

「実を言うと俺、ガイさんがウルトラマンオーブなんじゃないかって思ってたんだ……。

 でも違った!誰にも言うなって言われたけど、ウルトラマンオーブの正体、見ちゃったんだ……!」

「……何者なんだ?」

「さぁ?よく分かんない。何しろヒーローは、風のように現れて……、風のように去って行くからね……。はい、じゃあガイさん!これ持って!」

 

 そう言ってジェッタさんは、いつも持ち歩いている撮影道具が一式入ったカバンをガイさんに持たせる。

 この行動が理解出来なかったのか、ガイさんはかなり仰天した。

 

「えぇ!?何これ!?」

「何これって、昨日奢った分も全然働いてないでしょ?だからね?今日は、一日中付き合ってもらいます!ね?」

 

 困惑するガイさんを尻目に、ジェッタさんはガイさんの背中を押してオフィスから出て行ってしまった。

 しばらく呆けていた僕だったけど、ナオミさんとシンさんにお茶を新しく淹れ直した後、2人の後を追った。

 

 

 

 僕がガイさん達を追って走っていた時に、パトロールをしていた渋川さんに偶然出会った。そこで渋川さんに、ガイさん達を見かけなかったかと尋ねると、何分か前に顔を合わせたこととジェッタさんの高校時代の先輩だと言う人を見かけたこと、最後に、その人を含めた3人で公園に向かったことを教えてもらった。

 渋川さんに教わった道なりに進むとその公園に到着したけど、そこにはガイさんとジェッタさん、そして子供達に囲まれる金髪の男性がいた。

 その男性から少し離れたところに、ガイさんはいた。

 それを見た僕は、ガイさんの元に駆けて行った。

 

「ガイさ~ん」

「おぉ、シンヤか。よくここが分かったな」

「えぇ、渋川さんに教わって……。ところで、あの人と子供達は……?」

「……ジェッタが言うには、昨日オーブに助けられた子供達で、あいつがオーブの正体らしいぞ?」

「えっ……!?じゃあ、あの人宇宙人なんじゃ……!」

 

 僕が飛び出そうとした時、ガイさんが僕の肩を掴んで僕を静止させる。

 

「……あいつには大切な使命があるらしいからな、そっとしといてやろうぜ?」

「いや、アレ全然そっとしてませんよね?」

「フフッ……。あ、シンヤ。これよろしく」

 

 ガイさんは足元に置いていた三脚やらカバンやらを僕に預けて男性を取り囲む子供達の輪へと混ざり、日頃のジェッタさんの見様見真似で撮影を始めた。

 

「えっ?え、えぇー……」

 

 

 自分がオーブの正体なのだと誤解している子供達に、すっかり懐かれてしまって困惑するババリュー──馬場竜次。

 そんな竜次にジェッタの助け船が差し出される。しかし、それは竜次の考えていたような助けではなかった。

 

「じゃあ、ババリューさんに、質問がある人?」

「「「はい!はい!はい!」」」

 

 元気良く手を伸ばす子供達の中からジェッタは、マサトという少年を指名した。

 

「ぼく、逆上がり出来ないんですけど、どうすればいいですか?」

「……はぁ?」

「そりゃあ、諦めずに練習することですよね?」

「そう……だね、諦めちゃいけない」

「じゃあ、次の質問!」

 

 今度指名されたのはシンジという少年。

 このマサトとシンジは、先日オーブに化けた竜次が無意識に救っていた子供達で、後からジェッタにオーブの正体が「ババリューさん」だと聞いていたのだ。

 

「ねぇ、ぼくもウルトラマンのようなヒーローになれますか?」

「いや、それは流石にちょっと……」

「なれますよねぇ?」

「なれ……るよ?夢を持っていれば、君のなりたいものに、きっとなれる」

「そのためには、お父さんやお母さんの言うことをしっかり聞いて、好き嫌いしないでいっぱい食べないといけませんね?」

「あ……。まぁ、そんな感じかな?」

「みんな、分かった?」

「「「はーい!!」」」

 

 竜次への質問だったはずだが、ほとんどジェッタが答えて竜次が後から補足するといった形で、質問の時間は終了した。

 その最中、竜次はとても複雑な表情を何度も作っていた。

 

 

 

 時は流れて夕暮れ時。

 そろそろ帰る時間だと言うのに、子供達はまだ元気に遊び続けていた。

 子供達に散々振り回された竜次は、ベンチにどっしりと腰を下ろしていた。

 そんな竜次の元にジェッタが駆け寄り、数枚の画用紙を差し出す。

 

「今日はご苦労様でした……。先輩……、これ」

 

 疲れから俯き気味になっていた竜次がそれを見て振り向くと、そこには子供達からオーブに宛てた、たくさんのプレゼントの山があった。

 

「何だよこれ……!」

「子供達からのプレゼントなんです。是非、貰ってあげて下さい」

 

 ジェッタが差し出していた画用紙を受け取った竜次の中で、何かが揺らぐ。

 それを必死に誤魔化そうと、竜次は咄嗟にジェッタに質問をした。

 

「……あのさ、1つ聞いてもいいか?……ヒーローってさ、そんなに良いもんなのか?」

 

 そう聞かれたジェッタは、食い気味に答えて竜次の隣に腰かける。

 

「そりゃそうですよ!僕なんて、子供の頃からずっと憧れてましたもん」

 

 それからジェッタは、子供の頃のことを、自分がヒーローに憧れる理由を竜次に語り出す。

 昔からヒーローに憧れていたジェッタは無茶ばかり繰り返していて、生傷が絶えなかったこと。

 ヒーローと言うのは、わざと危ないことをするものではなく、地味で目立たないことでも、誰かのために一生懸命頑張るのがヒーローなのだと教わったこと……。

 そしてジェッタは、自分の想いを竜次に伝える。

 

「世の中には、弱い人や困ってる人に……手を差し伸べてあげる存在が必要なんです。けど……僕には、馬場先輩みたいなことは出来ない……。

 そんな時、奇跡のヒーローが目の前に現れた……!

 ……先輩。僕はそれをみんなに伝えることで、誰かの役に立てたら良いなって、そう思うんです」

 

 それを聞いた竜次は、子供達が書いたウルトラマンオーブの絵に目を落とす。お世辞にも上手いとは言えない絵ばかりだったが、彼らなりにオーブに感謝を伝えたいという気持ちがひしひしと伝わって来た。

 そうしていると、ジェッタが紙パックのジュースを竜次に差し出す。

 

「これは、僕からの気持ちです」

「お、おう……」

 

 それを受け取って、竜次は飲み口にストローを突き刺し、一口飲む。初めて味わったその甘さに、竜次は感激を覚える。

 

「美味いなこれ……!何て飲み物なんだ!?」

「それ、バナナオレですけど……」

「バ、バナナオーレ?」

「バナナオレですよ。適当に選んじゃったんですけど、それで良かったですか……?」

「あぁ……気に入ったぜ!バナナオレ!」

 

 ジェッタと竜次の会話を、ガイとシンヤは木陰に隠れて聞いていた。

 シンヤはジェッタの話を聞いて、彼が日頃そんなことを思っていたとは……と考えを改める一方で、竜次の正体が何者なのか目星を付けていた。

 

 

 

 連合の円盤に、本来のババルウ星人としての姿で帰還したババリューは、周囲に誰もいないことを確認して、溜め息混じりに手近な椅子に座る。

 子供達からのプレゼントで貰った、オーブの似顔絵を1枚ずつ見ていると、ナックル星人ナグスから突然声をかけられ、ババリューは飛び上がりすかさずその絵を隠す。

 ナグスは、ババリューの挙動を不審がるが追及はしなかった。

 

「どうした、ババリュー?……?変な野郎だぜ」

「あ、いや……、別に。なぁ、おい……。人に憎まれるより、喜ばれる方が何倍も気持ちが良いもんだよな?そう思ったことは、ないか?」

「……何を言ってんのか、さっぱり分かんねぇなぁ?」

 

 ババリューのその問いかけを一蹴して、ナグスはどこかへ去って行った。

 それを見届けて、ババリューはまた座り直して背もたれに寄りかかる。ふと漏れた溜め息で平静を装うが、その心は未だに揺れ動いてばかりだった。




バナナオレの下りは、分かる人には分かる小ネタです。
分からなかった方は、『鎧武外伝 仮面ライダーデューク/仮面ライダーナックル』をご覧下さい。

後編はしばしお待ち下さい…。

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