ウルトラマンオーブ ─Another world─   作:シロウ【特撮愛好者】

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後編ですよ~
今回、主人公が…。

それでは、どうぞ


第5話 逃げない心 ー後編ー

 僕が現場に到着した時には、オーブの戦いは始まっていた。

 オーブの相手は、ハイパーゼットン。

 元々ハイパーゼットンは、かつて初代ウルトラマンを打ち破ったことのある「宇宙恐竜 ゼットン」の別個体を素に「バット星人」が生み出した怪獣だ。

 不完全体の繭「コクーン」とコクーンから孵化した「ギガント」、成体になった「イマーゴ」の3つの形態がある。

 でもあのハイパーゼットンはイマーゴに近いけど、両腕にギガントの「ギガンティスクロー」のような鎌を備えている。

 

 対するオーブも新たな姿に変わっていた。

 胸部や肩には銀色のプロテクター、頭部の2つのスラッガー。全体的な色使いからウルトラマンゼロさんの力を使ったのだろうか。でも、よく見てみると胸と腰、二の腕はウルトラマンジャックさんの模様だった。

 

「あれが、ゼロさんとジャックさんの力を借りた姿なのか!」

 

『光を越えて、闇を斬る!』

 

 名乗りを上げたオーブはビルの屋上から飛び降り、ハイパーゼットンに攻撃。それに反撃するようにハイパーゼットンは腕を振るう。だがオーブの素早い身のこなしで回避され、連続蹴りを喰らう。その一撃一撃には、青い旋風のような波動が起こる。

 受け身を取りつつも善戦するオーブ。ハイパーゼットンの腕を掴んで背負い投げを繰り出すが、地面に直撃する寸前でハイパーゼットンの姿が消えた。

 

「テレポートまで使えるのか……!」

 

 ハイパーゼットンテレポート。最初のゼットンから受け継がれた瞬間移動能力だ。

 消えたハイパーゼットンを探すオーブだったが、突如横から現れたハイパーゼットンの両足蹴りを喰らう。だが逆に両足を掴んでハイパーゼットンを振り回す。それはまるでウルトラマンジャックの「ウルトラハリケーン」のようだった。

 その勢いで投げ飛ばすが、再びハイパーゼットンはテレポート。オーブの背後を取る。それに気付いたオーブは、頭部のスラッガーにエネルギーを溜めて光の刃を飛ばす。「オーブスラッガーショット」だ!

 それすらテレポートでかわしたハイパーゼットンはまたオーブの背後に回り、暗黒火球を数発至近距離からぶつける。

 オーブはスラッガーショットで飛ばした刃を頭部に戻し、ハイパーゼットンがどこから現れるか周囲を警戒する。

 そしてハイパーゼットンの鳴き声が聞こえた瞬間、額のランプが光ると赤と青の閃光が走り、オーブが消えた。

 

「オーブが消えた……!まさか!」

 

 僕がそう言うと、空中に突如オーブとハイパーゼットンが取っ組み合いをしながら現れる。

 オーブもハイパーゼットンに対処するべく瞬間移動を使ったのだ。すぐさま消えた2体はまた町に降り立つ。

 ハイパーゼットンを鳴き声を上げると、胸部に熱エネルギーを溜め始め、暗黒火球を放つ!

 対するオーブは頭部のスラッガーから再び光の刃を作り出すと、目の前で円を描くように刃を回転させて火球を防ぐ。

 だが、オーブはそれだけでは終わらない!

 

『オーブスラッガーランス!!』

 

 その円の中心から三又の槍を召喚し、低く構える。

 ハイパーゼットンはありったけのエネルギーを暗黒火球として撃つ!

 オーブは、オーブスラッガーランスを構え直し、ランスのレバーを1回引き先端をハイパーゼットンに向ける。

 

『オーブランサーシュートッ!』

 

 槍の先端からは強力な光線が放たれ、暗黒火球を相殺する。その爆炎を目眩ましにして、オーブは間合いを詰めて胸部の発光体を貫き破壊する!

 今度はランスのレバーを2回引き、敵の体内に高エネルギーを放つその技は──!

 

『ビッグバンスラストッ!!』

 

 その技は、オーブスラッガーランスを相手に突き刺し高エネルギーを体内に放ち内側から爆発させて倒すもので、それを喰らったハイパーゼットンは爆発した!

 その爆風は凄まじいもので、僕は思わず尻餅を突いてしまった。

 オーブはオーブスラッガーランスを光の刃に戻し、また頭部に収納する。そして空を見上げて飛び立って行った。

 

 

 

「おのれ、ウルトラマンオーブめ……!あんな隠し玉を持っていたとは……!」

「お前は……ケムール人!?」

 

 オーブが飛び立って行ったのを見た僕は、後ろから突然宇宙人が現れたことに驚き、その外見から何者かを察して名を呼ぶ。

 しかしそれは外れていて、宇宙人はわなわなと震え始め、ついに怒りを爆発させる。

 

「俺は……!俺はケムール人じゃねえ!ゼットン星人マドック様だぁ!」

 

(やっぱり、似てるって自覚はあるんだ……)

 

 その様子を見て、僕はそう思わずにはいられなかった。

 実際、ゼットン星人とケムール人の見た目の違いとは頭の向きと、単眼かそうではないか。もっと細かく見比べれば手や爪の長さぐらいしかないのだ。

 それに驚いた拍子に答えてしまったのだ。間違えてしまっても仕方ないだろう。

 

「こうなりゃ自棄だ!テメェを始末してやるっ!」

「ッ!!」

 

 するとケムール人……もといゼットン星人は、右手に持っていたビーム砲を八つ当たり気味に、僕に向かって撃ってきた!

 直撃しそうになったその瞬間、1枚のカードが僕の目の前に飛び出す。そのカードから解き放たれるエメラルド色の光が、僕を包み込む。

 

 僕が目を開いた時、そこには僧侶の格好をした男性がいた。その顔は歴戦をくぐり抜けた戦士の顔をしていた。

 

「おおとり……ゲンさん!どうして……?」

『ちょっとした気まぐれだ。大切な人をこれ以上失う悲しみを、彼に──オーブに味合わせたくはない』

「……」

 

 僕がその言葉を聞いて思ったのは、ゲンさん─レオの過去だった。故郷を追われ、円盤生物との戦いでMACの仲間達や恋人を失ったゲンさんだからこそ、その言葉はとても重く、響くものがあった。

 

『それにゼロも戦ったんだ。ならば師である俺も、黙って見ている訳にはいかんだろ?』

 

 そう言うとゲンさんは照れ臭そうに笑う。その笑顔はとても優しい笑顔だった。

 するとゲンさんの隣に、ウルトラマンレオの幻影が現れた。次第に2人は1つになっていき、僕の目の前にはウルトラマンレオが立っていた。

 

『僅かだが俺も力を貸そう。だが、これだけは忘れるな。お前達の戦いは、必ず勝たねばならない戦いなのだと』

「……!はい!」

 

 力強い返事をした後、ウルトラマンレオは光の粒子となって僕と融合する──!

 

「ハハッ、俺の名前を間違えたからだ!」

 

 マドックは、オーブに敗北した腹いせを解消出来たと上機嫌に笑う。

 だが、目の前に始末したはずの地球人が現れたことでその笑いは途絶えた。

 ゼットン星人の眼前に立つ僕の左薬指には、金色の獅子の指輪が嵌められていた。

 それを見て全てを理解した僕は一度左腕を水平に伸ばし、次に両腕を身体の正面で交差、最後に右腕を力強く突き出す!

 

「ヤァッ!!」

「その構え……!まさか、宇宙拳法か!」

 

 ゼットン星人は再び武器を構えて、僕に向けて放とうとする。でもその一瞬を見逃さなかった僕は跳躍してゼットン星人のビーム砲の銃身にボレーキック、それを蹴り飛ばす。そしてすかさず敵の懐に入り込む。

 

「武器に頼れば隙が生じる……。最後に頼るべきは、自分自身だッ!」

「ぐぉぉぉっ!!?」

 

 がら空きになった胴に渾身のフック、それを喰らったゼットン星人に後ろ回し蹴り、更に正拳突きを放つ。

 だがゼットン星人も負けじと両手を重ねてガード。

 それでもシンヤの追撃は止まない。ゼットン星人の伸ばした両腕を、下から掬い上げるように左アッパーで持ち上げ、また胴体に正面蹴りを撃ち込む!

 連続攻撃を喰らってフラフラなゼットン星人に、空手の要領で何度も拳を撃ち込み距離を取る。

 シンヤはまた最初の一連の動作をして高く跳び、全力で吠える──!

 

「エイヤァァァァッ!!」

 

 レオさんの必殺技「レオキック」を模倣した飛び蹴りが、ゼットン星人に炸裂する。その威力は模倣したものだとしても、ゼットン星人を吹き飛ばすには十分だった。

 そして着地をした拍子に、薬指から指輪が消えた。

 何の偶然か、僕が戦っていた時間は2分40秒程だった。

 

(レオさん……、ありがとうございました!)

 

 今までの戦いの反動からなのか、身体がどっと重く感じた。初めてまともな戦いを経験した結果がこれだと言うなら、自分はまだまだだなと思う。

 肩で息をしていたけど、肺に全く酸素が回らない。その状態のまま苦しんでいた時だった。

 

「調子に乗りやがって……!たかが……、地球人ごときがぁ!」

 

 いつの間にか立ち上がっていたゼットン星人が武器を拾っていて、僕に向けて銃を放つ。

 身動きの取れない僕は、今度こそ終わったと思った。

 

「させるかよっ!」

 

 すると、颯爽と駆け付けたガイさんがウルトラマンさんのカードを正面にかざした。その瞬間、そのカードからバリアが発生してゼットン星人の攻撃を弾き返す。

 予期せぬ事態に驚いたゼットン星人は、その反撃をかわすことが出来なかった。

 

「ハイパーゼットンを育てて、何するつもりだった?」

「お前を倒せば、俺の名が上がる……」

「ガイさんを、倒すためだけに……?」

 

 ガイさんの肩を借りて立ち上がった僕は、地面に横たわるゼットン星人 マドックに近付く。そしてガイさんは、マドックに今回の事件の経緯を尋ねた。

 マドック曰く、ガイさんを誘き寄せるためにナオミさんを餌にしたらしい。しかもずっとガイさんを観察していて、ガイさんがナオミさんのことを放っておけないと結論付けたようだ。マドックはガイさんに、ナオミさんの何が特別なのかを苦し紛れに問いかける。

 

「いるべきじゃないところで居合わせる……不注意の塊みたいな女ってだけだ」

 

 いつも通りぶっきらぼうに、ガイさんは答える。

 するとナオミさん達が合流する。ジェッタさんとシンさんは、初めて目撃する宇宙人に興奮気味だったけど、被害者であるナオミさんが2人を制する。そしてその宇宙人が悪者だと知ったシンさんが、目的が侵略なのかと言うと、マドックは急に笑い出して意味深な一言を呟く。

 

「お前達はまだ……この腐りかけた星に、侵略する価値があると思っているのか?フッ、笑わせるぜ……!いつか……この星を捨てて……、逃げ出すだろう……よ」

 

 そう言い残すとマドックは頭の触角から黒い液体を吹き出し、白い泡となって絶命した。

 その様子を見たジェッタさんはかなり引いていたけど、ナオミさんはそれを見つめながらこう言う。

 

「あたしは……自分で散らかした部屋は自分で片付けなさい。そう言われて育ったの……。だから逃げない……!」

「まぁ頑張れよ。俺には関係ない」

 

 僕をシンさんに預けたガイさんはまたどこかへ去ろうとするけど、その背中にナオミさんは叫ぶ。

 

「関係あるよ!この星で生きてるんだもん、この星の上で起こることは、全部関係あるんだよ!

……お礼ぐらいさせて!……何か美味しいもの作る!」

「……美味しいもの?」

 

 その一言を聞いたガイさんは振り向き、目の色を変える。それを見た僕らも釣られて笑顔になった。

 それから渋川さんが遅れてやって来たけど、僕らは美味しいものに釣られたガイさんとSSPのオフィスに戻ることにした。

 

 

 

「どーぞ!特製マッシュルームスープよ!」

「スープか……。いただきます」

 

 オフィスに到着してすぐにナオミさんは調理に取りかかり、特製のスープをガイさんに振る舞う。

 それを一口運んだガイさんは、少し表情を歪める。ナオミさんは不安げに尋ねる。

 

「……味、変だった?」

「いや……、懐かしい……。二度と味わえないと思ってた…」

 

 ガイが思い出したのは、金髪の異国の少女の記憶。

 ナオミの作ったスープが、その少女が作ってくれたスープの味によく似ていたのだ。

 己の過去を思い出しながら食べ続け、気付けばスープ皿は空になっていた。

 

「ごちそうさま……」

 

 食べ終えたガイさんはゆっくり立ち上がると、オフィスの棚に置かれたマトリョーシカ人形を手に取り、1つ1つを丁寧にかつゆっくりと分解していく。

 

「それは……あなたと同じね。幾つもの別のあなたが、あなたの中に隠れてる感じ」

「最後の1つを開けてみれば……結局、空っぽだって分かる」

 

 ナオミさんが歩み寄り、ガイさんに語りかける。そして最後の1つを手に取ったガイさんは、それも分解しようとする。

 でもナオミさんが素早くそれを取り、ガイさんに言う。

 

「最後の1つは開けちゃダメなんだって、パンドラの匣みたいでしょ?」

 

 ガイさんとナオミさんが話をしていたら、オフィスの扉が開く。そこにいたのは小さな女の子。その手にはポスターが握られていた。

 どうやら、今朝がたガイさんが拾ったお人形の持ち主のようだった。ジェッタさんが人形を預かっているというポスターを作成していて、そのポスターを頼りに1人でここまで来たそうだ。

 ジェッタさんが女の子の話し相手をしていて、ガイさんが人形を拾ったことを教える。その子に感謝されたガイさんは照れ臭そうに笑う。

 女の子がオフィスを出て間もなく、ガイさんもここから出て行く準備をしだした。

 

「もう行くよ……」

「そう……。屋根が欲しくなったら、それはここにあるから」

 

 ナオミさんが言うと、ガイさんは少し考える素振りを見せてナオミさんに振り向く。

 

「……2、3日ここで世話になるか。あんたの作るスープ、美味いしな。おかわり」

 

 そう言いガイさんは、またテーブルに戻る。

 それを見ていたジェッタさんはナオミさんを小突く。

 

「やったじゃん、キャップ!」

「僕もそのスープ食べたいです!」

「分かった!大盛り?」

 

 その日また一段と、SSPのオフィスが騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ガイとシンヤの、ウルトラヒーロー大研究!」」

 

シンヤ「ヤァッ!!」

ガイ「おっと、びっくりした!何だよ急に……」

シンヤ「あ、すみません……。ちょっと今回のことが印象強すぎて……」

ガイ「ったく……。もうこのコーナー始まってるぞ?」

シンヤ「そうでしたね……。では今回紹介するのはこれですっ!」

 

【ウルトラマンオーブ!ハリケーンスラッシュ!】

 

ガイ「『ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ』。ジャックさんとゼロさんの力で戦う戦士だ。現在登場している他の形態より体重が軽くなっていて、その身軽さを活かしたスピーディーな格闘戦を繰り広げるんだ」

シンヤ「由来はジャックさんのウルトラ『ハリケーン』、ゼロさんのエメリウム『スラッシュ』。ゼロさんの要素だけが強くてジャックさん要素があまり目立っていないようですが、よーく見れば分かるはずですよ!」

ガイ「この姿では三又の槍『オーブスラッガーランス』を巧みに使いこなして戦うんだ!

 ところで、このお2人には密接な繋がりがないように思えるんだが……」

シンヤ「何を言ってるんですか!ちゃんとありますよ!2人はお互いにセブンさんからブレスレットを授かってますし、2人ともウルトラハリケーンを使うって共通点があるんです!」

ガイ「おぉ……!なら、どうして今回レオさんが登場したんだ?」

シンヤ「レオさんはゼロさんの師匠で、ジャックさんとは『ウルトラマンレオ』第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』で、アシュランを倒すため一時的に共闘しました。

 ハリケーンスラッシュの詳しい技の紹介は、また別の機会ですね」

ガイ「次回はオリジナル回だ!今回はここまで!」

 

ガイ&シンヤ「「次回も見てくれよな!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前、北川町で頻発していた停電騒ぎがまた発生した!

 その原因はなんと、怪獣の仕業だった!?

 なら、このお2人の力をお借りするぜ!

次回!

『ウルトラマンオーブ ─Another world─』

『闇夜の(いかずち)』。

 電光雷轟、闇を討つ!




…いかがでしょうか。

これが年内最後の投稿です。
また来年お会いしましょう。

隠れたサブタイトルは、『ウルトラマン』第31話『来たのは誰だ』です。

皆様、良いお年を…。

ではノシ

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