ウルトラマンオーブ ─Another world─ 作:シロウ【特撮愛好者】
※誤字修正しました。ご指摘ありがとうございました。
その夜。
ガイさんへの看病は続き、ナオミさんはうちわでガイさんに風を送っていた。
すると、オフィスの扉が開く。うちのオフィスに、しかもこんな時間に来る人と言えばこの人しかいない。
「ひゃあ~、あっついなぁオイ!」
「渋川さん……」
「……おい、彼の様子はどうだ?」
渋川さんは、どうやらガイさんの様子を見に来た様子だった。
渋川さんの問いかけに、ナオミさんは首を横に振ることで答える。
「そうか……。お前達のところで、あの火の玉について何か分かったことないか?」
渋川さんはジェッタさんにそう尋ねる。ジェッタさんも首を横に振って答える。
渋川さん達ビートル隊でも調べているらしいけど、正体が分からない上に冷却弾も全く通用しなかったそうだ。
かといってあのままにしておく訳にもいかない。
それは僕らだって同じだった。
「俺は……奴の正体は、怪獣じゃねぇかって思ってるんだよ。だからお前達なら、何か情報を掴んでるんじゃないかと思ってな。例のやつを使ってさ……」
「『大平風土記』ですか?さすがに、そう都合良く何でも載ってる訳……」
「ありました……」
僕が渋川さんにそうツッコミを入れようとした時、渋川さんに叩き起こされたシンさんがタブレットを持ってやって来ていた。
その場にいた全員の視線が、シンさんのタブレットに集まる。シンさんは寝惚けながらも、僕らにそのページを読み始めた。
「『空に2つの日輪昇りし時、地上の物皆焼き尽くされん。偽りの日輪。此れ災いの焔、禍破呑の……』」
(マガパンドン!?じゃあ、あの火の玉の正体は……!)
「やっぱり怪獣の仕業じゃん!」
シンさんによると、火の玉の熱が加わったことで気温が一気に上昇したとのこと。あのまま放っておけば、至るところで高温火災が発生していた可能性もあったそうだ。
「そして、辺り一面は火の海になる……」
「大惨事の一歩手前だったってことですか……」
僕は渋川さんと向き合ってそう話していた。
すると、シンさんのデスクからアラーム音が聞こえた。
「皆さん大変です!これ見て下さい!」
「火の玉の高度が下がってる!」
シンさん達は、日中火の玉の観測をしていた。だからこそその情報がリアルタイムで更新されて、今に至るのだ。
それを知った渋川さんは、本部に至急ありったけのミサイルを撃ち込むように要請する。
それを受けたビートル隊本部は、火の玉にミサイルを撃つ。だが健闘虚しく、そのどれもが到達する一歩前で、火の玉から発せられる熱のせいで爆発してしまう。
しばらくして夜が明けて、日の出と共にガイは目覚めた。
今の状況を確認するためにゆっくり起き上がり、周囲を見回す。
「気が付きましたか?ガイさん」
「シンヤか……。俺に構うなって言ったろ…」
「またそうやって……。前にも言ったじゃないですか、あなたは1人じゃないって」
「あのな……。そう言えば、あの火の玉はどうなった!?」
呆れながらそう言うガイだったが、その正体が恐らく怪獣だと認定された、あの火の玉のことを尋ねた。
すると、シンがパソコンの画面を見ながら大声で叫んだ。
「下降が止まりました!」
火の玉が停止したのは都心の上空。すると火の玉──マガパンドンは、無数の火炎弾「マガ
SSPのオフィス周辺の建物にも火炎弾が直撃し、爆発した。
高温に加えて、上空からの火炎。町が灼熱地獄になろうとした時、ナオミ達は支度を始めた。
それと同時にガイも立ち上がるが、また座り込んでしまう。
「ガイさん、もう起きて大丈夫なの?ホントにホントに大丈夫なのね?」
ぶっきらぼうにガイは答えるが、その視線は外に向いたままだった。
そんなガイめがけて、ナオミが急に銀色の何かを投げる。それが何なのか分からないガイは、ナオミに問いかける。
「防火スーツ。シン君が前に作ってたの。それ着て、地下室に避難してて!あそこなら、備蓄用の食料と水もあるし。地下だから少しは安全なはずよ!」
「お前達は?」
「この世紀の大スクープを収めに行くんだよ!」
「なら僕も行きます!僕だって、SSPの一員です!」
身支度の途中のナオミ達へ、シンヤは強く発言する。
するとナオミは優しげな表情を浮かべて、シンヤに語りかける。
「シンヤ君は、ガイさんと一緒にいてあげて?ここの留守を任せたいの」
「ナオミさん……」
「大丈夫!きっと帰って来るから」
「待て!今行くのは危険だ!」
ガイがSSPの3人を止めようとした時だった。
急な停電が発生して、エアコンから白い煙が上がる。ジェッタとシンがそれにむせ返っている最中に、ナオミはガイに笑顔で答える。
「心配しないで!あんな炎ぐらい、私達の情熱で吹っ飛ばしてやるわよ!」
その発言に、シンヤは思わずツッコミを入れたくなった。だが、ガイの表情を見てそれを止めた。
「吹っ飛ばす……?そうか……!」
ナオミの台詞で何か閃いた様子だったが、シンヤもそこだけではガイの考えを理解するのは難しかった。
「Something Search People、出動~!」
「「了解!」」
やがて、全身銀色のスーツに身を包んだSSPの3人が、愛車のSSP-7を駆り現場へと向かって行った。
それを見ていたガイは面倒くさそうに言う。
「……ったく、見てらんねぇな!」
「ガイさん……」
「安心しな、俺も絶対帰って来る」
「……無事に帰って来てくれたら、アイスごちそうします!」
「フッ……。じゃあ、行って来る!」
オーブリングを構えたガイを、光が包み込む──!
「タロウさん!」
【ウルトラマンタロウ!】
「メビウスさん!」
【ウルトラマンメビウス!】
「熱いやつ、頼みます!」
【フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!
バーンマイト!】
昇る太陽を背に受けた紅い巨人が、町に降り立った!
『待ってろ魔王獣……。今度の俺は、ちょっと違うぜ!!』
町に降り立った紅い巨人──ウルトラマンオーブ バーンマイトは、空中回転を何度も繰り返し、着地する。その着地地点で、先日敗北した火の玉と対面する。
火の玉──マガパンドンは、空中からマガ火玉火炎弾で威嚇攻撃を繰り出すが、オーブは怯むことなく立ち向かう!
『お前の炎を吹き飛ばしてやる!!ストビューム……バーストォッ!!』
オーブは、体に刻まれたファイアーシンボルに炎のエネルギーを集中させる。そして七色の光と共に、渦巻く火炎弾を撃ち込む!
オーブが放ったストビュームバースト。それは、ウルトラマンメビウス バーニングブレイブが使用するメビュームバーストと同系統の技だ。オーブはそれに、ウルトラマンタロウの力を上乗せして放ったのだ。
超高温の火の玉を張り巡らしたマガパンドンに直撃した火炎弾は、特大の爆風を放つ。
するとどうだろう。マガパンドンの周囲の火の玉が、文字通り吹き飛ばされていた!
「ほう……。爆風消火の要領か」
この戦いを観戦していたのはSSP達だけではなく、ジャグラーも例外ではなかった。
爆風消火。それは、爆弾を破裂させてその爆風で火を消したり、周囲の物体を吹き飛ばして消火帯を作ることで、延焼を防ぐ消火法である。森林火災や油田火災など、大規模な火災を鎮火するのに用いられることがある。
オーブはそれを応用することで、強烈な爆風を起こし相手の炎を吹き飛ばしたのだ!
これまで火の玉で身を包んでいたマガパンドンが、ついにその真の姿を現す。
真っ赤な体色、身体から生える無数の刺。鳥の頭のような顔が2つあり、身体の所々に亀裂が走っていた。
オーブはマガパンドンと戦闘を開始する!
両者互角の戦いが展開する中、マガパンドンに動きがあった。
オーブに頭部を押さえ付けられていた時、マガパンドンは左右の口から火炎弾「マガ火球」を至近距離から放とうとする。
それを察知したオーブは、マガパンドンの左右の口をそれぞれ両方の拳で塞ぐことで、マガ火球を封じることに成功した!
それからはオーブが怒涛のラッシュ!マガパンドンの顔面に膝蹴り、がら空きのボディにボディーブローを連発。右足を掴み持ち上げ、何度も回して投げる!
再び構えたオーブは、すかさず姿を変える!
『これでトドメだ!!』
【ウルトラマンオーブ!スペシウムゼペリオン!】
『スペリオン光線!』
必殺のスペリオン光線を、マガパンドンに向けて撃ち込む!
だが、マガパンドンもそれだけでは終わらない。スペリオン光線をまともに喰らいながらも高い防御力で耐え続け、怯むことなくオーブに向かってずんずん進んで行く……!
オーブも負けるものかと長時間光線を撃ち続ける。
そしてマガパンドンがオーブに肉薄した時、ついに耐え切れなくなったマガパンドンが背中から倒れ、爆発した!
SSPの面々が手を振るのを見たオーブは、空の彼方へ飛んで行った。
マガパンドンの身体に埋め込まれていたマガクリスタルが、大地に突き刺さっていた。その前に立ち、オーブリングをかざすガイ。クリスタルが砕け、光の粒子となってオーブリングに吸い込まれた。そこから新たなウルトラ戦士のカードが生成される。
その戦士は、光の国の若き最強戦士だった。
「おぉ!マガパンドンを封印していたのは、ウルトラマンゼロさんでしたか!お疲れさんです!」
オーブの戦いを眺めていたジャグラーは、左手に持つダークリングから、敗北したマガパンドンのカードを回収した。
そして、これまで回収した魔王獣のカードを全て取り出す。その中には「邪神 ガタノゾーア」に酷似した魔王獣「闇ノ魔王獣 マガタノゾーア」や、「光ノ魔王獣 マガゼットン」のカードがあった。
「闇と光……。そして風、土、水……火。これで全ての魔王獣は揃った……。残るは……、『黒き王』の力のみ……!」
「『黒き王』の力……。新たなゲームの始まりですね」
ジャグラーの後ろから、まるで初めからそこにいたかのように突然ヨミが現れ、邪な笑みを浮かべる。
ジャグラーも、それに答えるように笑った。
「ただいま~」
「皆さん、おかえりなさい!」
「ただいま~。ちょっとガイさん、シンヤ君!すごいのが撮れたんだよ~!」
ナオミさん達が帰って来た。ガイさんは、カップアイスを腰掛けながら食べている。
するとジェッタさんが僕らに駆け寄り、ビデオカメラで録画した映像を見せる。そこには、オーブが怪獣を倒した映像が収められていた。
僕としては、現場でこの戦いを見たかったと思っている。でもオフィスを空っぽにして出る訳にも行かなかったのだ。
「へぇ~良く撮れてますね!さすがジェッタさんです!」
僕がそう言うと、ジェッタさんは照れ臭そうに笑った。
「もうすっかり元気になったみたいね!」
「皆さん、アイス食べませんか?実は結構前に買って来てたんですよ~!冷凍庫の中に……」
ナオミさんがガイさんにそう言い、僕はみんなにアイスをごちそうしようとした。
でも、ガイさんが今食べているアイスを見て、嫌な予感がした。
「ガイさんそれ……!僕が買って来たアイスじゃ……!」
その声と同時に、ナオミさん達も冷凍庫の中身を確認する。
だが中身は空っぽで、アイスらしきものは何一つなかった。
「あたしのアイスがない!」
「僕の分もありません!」
「俺のもない……!」
「ちょっと……!これどういうこと……」
ナオミさんがガイさんに詰め寄ろうとした時だった。
そこには既にガイさんの姿はなく、置き手紙とわずかなお金が置かれているだけだった……。
「もぉー!また逃げられたぁ!」
「これじゃ足りませんよぉー!」
「ガイとシンヤの、ウルトラヒーロー大研究!」
ガイ「アイス、ごちそうさんな!」
シンヤ「……(ムスッ」
ガイ「悪かったよ、あんなに食っちまってさ……」
シンヤ「アイスごちそうするとは言いましたけど、だからって全部食べることないじゃないですか……それに、お金足りなかったし……」
ガイ(『食べ物の恨みは恐ろしい』って、こういう時に使うのかな……)
シンヤ「……今回紹介するのは、これです」
ガイ(シンヤのテンションが、いつものテンションより、あっさりしてる!)
【ウルトラマンオーブ!バーンマイト!】
ガイ「今回は、この姿が使う技の紹介だぜ!
まずは『スワローキック』。タロウさんの得意技を受け継いだんだ!
次は『ストビュームカウンター』。燃える炎を拳に宿して、豪快なブローを放つぜ!
最後に『ストビュームフット』。すれ違いざまに炎を纏ったスライディングキックを喰らわせるんだ!
どれもマガジャッパ戦で使って、大ダメージを与えたんだ!」
シンヤ「紹介お1人でお疲れ様でした。僕、アイスが食べたいです。ガイさんのおごりで」
ガイ「……あ~もう分かったよ!それでチャラだな!?」
シンヤ(無言でサムズアップ)
ガイ&シンヤ「「次回も見てくれよな!」」
卑劣な宇宙人の策略で、ナオミが捕まってしまった!
まったく、じゃじゃ馬は危険も考えずに飛び込んじまうから、困ったもんだぜ!
こうなったら、俺も新たなカードを切らなきゃな!
次回!
『ウルトラマンオーブ ─Another world─』
『逃げない心』。
光を越えて、闇を斬る!!
…いかがだったでしょうか。
次回はキレの良いやつです。
作者のキレのない文章で書けるかどうか分かりませんけど、頑張ります。
そろそろスピンオフ作品『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』の配信が始まりますね。
作者も楽しみです。
今回の隠れサブタイは、『ウルトラマンガイア』第28話『熱波襲来』です。
皆さん、良いクリスマスをお過ごし下さい。
ではノシ