ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

55 / 56
 今回で最終回です。最後の人物紹介も連続で投稿します。


星の祈り歌

~~ジャグラー~

 

「ジャグラー様~~!!」

 

「・・・この声はまさか・・」

 

 俺は久しぶりに聞く声に反応して振り返ると・・・そこには俺的には100年ぶりに見かける顔がいた。

「探しましたよジャグラー様~!」

 

「うっわっ・・ビランキ・・」

 

 目の前にいる娘の名はビランキ。元々どっかの星のお姫様だったらしいんだが強力な脳波で異次元とリンクすることで次元を超えて怪獣を呼び出したり、持ち前の妄想力で様々な超常現象を起こす困ったちゃんだ。その力を恐れた両親は監獄に幽閉しようとしていたんだが傭兵時代に俺はつい気まぐれでこいつを助けちまった。それからしばらく何度も付け回されていて、100年前こいつに睡眠薬入りのコーヒーで眠らせてる間に別の次元に置いてきたはずなんだが・・・もう俺を見つけてきやがった。

「お前なんでまだ俺につきまとうんだ」

 

「ジャグラー様は私の王子さまですから」

 

 勝手な妄想癖で俺を運命の王子様認定しやがったビランキはいくら自分も不老長寿だからと数千年も俺のストーカーをしている。何度も突き放しても何度も懲りずにやってくるとかいう筋金入りの変態だ。

「・・・さてどうしたもんかな。・・・ん?」

 

 今回はどうやってこいつを突き放すか考えていると、空から地上へと降りてくる光が見えた。

「あれはオーブカリバーの輝き。・・・あいつ次元を超えてたな・・」

 

 すぐにガイの奴が次元を超えてここに戻ってきたのだと理解した俺はその理由を考えて見る。

「とうとう時が来たってわけか」

 

 すぐに戦士の頂で新しいミッションを受けたのだろうと悟った俺は目先のストーカーを無視して辺りを・・・この星を見る。

「まぁ・・色々悪くなかった星だったな」

 

 この星で数千年間ガイと殺し合った時間・・・まぁそれなりに楽しめたぜ。サンキュー地球。

 

 

 

~~光圀~

 

「総帥、ガイ様がお見えになりました」

 

「うむ。通せ」

 

 10月も半ばとなった頃、仕事が一段落していたため我が家でくつろいでいた儂のところにガイがやってきた。

「どうも光圀公。ご無沙汰しております」

 

「ふむ・・。ガイよ、ここに来たと言うことはいよいよここで働く気になったのじゃな」

 

 儂は冗談交じりにガイにここで働く気になったのかと問うてみると・・・ガイは少し虚しそうに首を横に振った。

「いや、今日は挨拶をしに来たんです」

 

「・・・そうか」

 

 雰囲気でワシは察した。ガイがとうとうこの星を離れるのじゃと。

「杏達にはもう話したのか?」

 

「いや・・。まずは光圀公に話すべきと思いまして」

 

「・・・ふむ、して・・何時経ってしまうのじゃ?」

 

「お世話になったみんなに挨拶をしてからにするつもりなので1週間後には・・」

 

 1週間後か。別れまで随分と短いのぅ。

「ガイよ。この後は時間はあるか?」

 

「えぇまぁ・・誠司さんに別れの挨拶をした後でなら時間が取れそうですけど」

 

「ならば別れの前に最後の晩餐に付きおうてもらおうかのう」

 

 たとえガイが再びこの地球に帰ってくることがあったとしても、儂がそれまで生きておるとは限らん。ならばこれが最後を覚悟して晩餐に誘うことにしよう。

「・・・分かりました。ではまた後で」

 

 ガイもそれを察してくれたようで晩餐の申し出を受け入れると、白神のところへと向かっていきおった。

「・・・千佳よ。話は聞いておったな」

 

「えぇ・・」

 

 儂は近くに控えさせておいた千佳へと声をかける。それなりにガイと関わりがあった千佳もガイがこの星を去るということには驚きが隠せないようで何とも言えない表情をしておった。

「料理長に伝えよ。今宵の夕食は旅立つ友を送るために最高の食事を振る舞えとな」

 

「承知致しました」

 

 

 

~~誠司~

 

「なるほど。この星を去っていってしまうのか」

 

「はい。・・・」

 

 ガイからこの星を去ると聞かされた私は2つのコーヒーを入れて、その1つを彼の前へと置いた。

「飲んでくれ。・・・ちゃんとした喫茶店であるトリコリには劣るが、それなりに良い豆を使っている」

 

「どうも・・」

 

 彼はこの地球を愛していて、ここ最近になるまではほとんど特定の人物たちと深い関わりを持たない風来坊をやっていたのだ。ここに来て別れを惜しんでしまうのは当然なのだが・・・いかんせんかけるべき言葉が見つからない。

「この地球は我々BRGが守る。・・・と言っても君の気にしていることはそれだけではないのだろう」

 

 私は流れつく形だが、一度次元を超えたことがある身だからこそ分かる。それぞれの次元というのは浦島太郎のような時間の流れが違うかもしれない。そちらで数日の時を過ごして無事戻ってこられたとして、既に元いた世界では数十年の時が流れているのではという不安もある。

「君は何度も次元を超えたことがあるんだったな」

 

「えぇ・・・ところで睦美のことなんですが・・」

 

 睦美こと・・か。確か睦美はレイオニクスとやらの血を引くもので怪獣を使役する能力を身に宿していたのだと本人が言っていたな。

「睦美の力ははっきり言ってかなり強力なものです。その気になれば宇宙を支配することができるかもしれないほどに・・。だからその力を狙ってくる奴らがこれからも現れるかもしれません」

 

「だろうな。膨大な力を持つ者を引き入れようとするのはいつの時代も何処の世界にもいるものだ。だがそのようなことはさせない。BRGはそのような悪を許さない組織。そして何より・・・大切な娘をそのような輩に渡すつもりなどない」

 

 私は侵略者たちに睦美を渡す気などないことを告げると、ガイは安心したような表情をした。

「どうやら俺が心配するまでもないようですね。・・・この地球のこと。久遠や睦美のこと。これからも無茶をしちまうと思うSSPを頼みます」

 

「注文が多いな。・・・確かに任された」

 

 頼まれたこをを承諾すると・・・ガイはまるで風のようにこの場から去って行ってしまった。

 

 

 

~~瑠々~

 

「・・・みんなに大事な話がある」

 

 営業終了となった時間、ちょうど全員が揃っていたタイミングでガイさんは重めな表情でそう言ってきました。

「どうしたんですかガイさん。そんなに深刻な顔をして?」

 

「もしかしてまたレイブラッドとかいう奴の件か?だったらいますぐ調査・・・」

 

「いや、何かが出たってわけじゃないんだ。ただまぁ・・・今後のことでな」

 

 今後のSSPの活動について何かガイさんから提案があるということでしょうか?

「レイバトスとの戦いの後、俺は一度O-50に戻った時・・・俺は新しいミッションを受け取った」

 

 そう言えばガイさんはオーブだと皆さんにバレた後にO-50からミッションを受けてこの地球で戦っていたのだと教えてくれましたが・・・新たなミッションというのは何なのでしょうか?

「魔神獣たちの復活を阻止しろってていうミッションだ」

 

 魔神獣・・・何だか魔王獣の上位互換みたいな名前ですね。

「そいつ等はこの地球とは違う別の宇宙にいるらしくてな。・・・俺はそいつ等を倒すため、この星を離れることになった。3日後には・・・俺はここを出ていく」

 

「えっ・・・?どういうことかな?」

 

 ガイさんの言葉にみんなが固まってしまうと、久遠さんは確かめるようにガイさんに問いかけました。

「言葉通りの意味だ。・・・」

 

「で、でもさ。この間みたいにすぐ帰ってくるんだよね?」

 

 杏さんは倒したらすぐここに帰ってきてくれるのかと尋ねてみると・・・ガイさんは背を向けてしまいました。

「この前はあくまで0-50に帰還して新しいミッションを受け取っただけだ。そして偶然にもレイブラッドの事件はこの宇宙だっただけで・・・あの時に俺はここを去っていたかもしれなかったんだ。付け加えるなら次のミッションも魔王獣の時のような長期に渡るかもしれないミッションで・・・この宇宙に戻ってきてまた杏達に会える保証はない」

 

 それはつまり・・・ガイさんと二度と会えなくなるかもしれないということなのでしょうか?

「もう会えないかもしれないって・・・う、嘘だよね?」

 

「・・・・・」

 

 詰め寄って来た杏さんにガイさんは何も答えようとはしませんでした。

「ヤクトワルト。・・・地球は・・・後は任せた」

 

「・・・応さ。任されたじゃない」

 

 ヤクトワルトさんに今後の地球を任せることにしたガイさんは貸していた部屋を片付けるために店の奥へと行ってしまいました。

「ガイの・・・馬鹿っ」

 

 杏さんは涙を流しながらそう呟くと、乃理さんはその震えてる肩を両手で押さえてあげました。

「ガイは確かに私達の仲間だ。だが同時に大勢の人のヒーローであるウルトラマンなんだ。・・・ヒーローは助けを求めている場所へと向かうもの。・・・杏はガイのことをヒーローだと思うか?」

 

「・・・当然でしょ・・」

 

「なら・・。見送ってあげるんだ。ヒーローは風のように現れて風のように去っていく。・・・ガイは元々風来坊なんだ。またいつかひょっこり帰ってくるさ」

 

「うん・・・。千佳・・」

 

「承知しました」

 

 乃理さんの言葉を信じることにした杏さんは涙を拭うと今日はいつもより少し早く帰ってしまいました。

「・・・ごめん。私ももう帰るね」

 

 久遠さんも理解はしたけど気持ちの整理は付いていない顔で帰っていってしまうと、愛さんが私の隣に座ってきました。

「みんな気持ちの整理がついとらんなぁ」

 

「・・・愛さんは整理がついてるんですか?」

 

「まぁ、お兄さんがオーブやって知ってからは何時かはこんな日が来るんやろなぁって思っとったし」

 

 最初からこうなる覚悟をしていたということですね。

「ウルトラマンは永遠に地球に留まり、地球を守っているわけではありません」

 

「幾多の星を、幾多の宇宙を守っている。オーブもそのうちの1人」

 

 洗い物を終えたウールさんとサァラさんはガイさんも数いるウルトラマンの1人だからいずれはこうなっていたと分かっていたように語りました。

「でも・・・気持ちの整理なんて・・・そう簡単につきませんよ」

 

 簡単に割り切れるものじゃありません。・・・たぶん私以上に久遠さんと杏さんは特にその想いが強いはずです。

 

 

 

~~音々~

 

 ガイさんが新たなミッションでこの地球を去ると告げてから3日が経過がしてしまい、とうとうお別れの日が来てしまいまったのです。

「・・・はぁ・・どうしたものですかね」

 

 この3日間、どう声をかけたらいいものかと気にして私達とガイさんはろくに会話が出来ていない状態が続いてしまいました。

「このままじゃ・・・駄目なのです」

 

 今日でお別れだというのに何も準備ができていません。

「お別れ会・・・のようなものは違う気もしますし。私達はどうすればいいのですか?」

 

 私は兄さんにどうすればいいのかを聞いてみると・・・兄さんはクスリと笑ったのです。

「そんな分かりきってることを俺に聞くのか?音々」

 

「兄さんはどうするべきなのか分かってるのですか?」

 

「あぁ。・・・本当は音々だった分かってるはずだぞ」

 

 本当は分かっているはず・・・ですか。確かにそうかもしれないのです。

「悔いのないようにガイさんを見送る。・・・結局はそういうことなのですね」

 

「あぁ、それが俺達があんちゃんにできる唯一のことだ」

 

 口にするのは簡単なことですがそれは実際とても難しいことなのです。でも・・・それが私達にできる唯一のことだというのなら・・

「はい。・・・今までのお礼・・しっかり言うのです」

 

 悲しむだけじゃなく、しっかりとガイさんを見て見送ってあげなきゃなのです。

 

 

 

~~ガイ~

 

「O-50にまた帰還したと思えば新しいミッションを受け取ったようだな。その辛気臭い表情から察するにいよいよ持って別宇宙なのだろう。いつ出発する?俺も同行しよう!」

 

 いよいよ持って俺がこの地球を去ることとなったことを察したジャグラーは愉快そうにそう声をかけてくる。最近は何かと協力的だと思っていたが相変わらず人の不幸はからかうんだな。

「別についてこなくてもいい」

 

「釣れないこというなよガイ。俺とお前の仲だろう?」

 

 数千年間殺し合ってた仲だがな。

「ジャグラー何が目的だ?」

 

「以前言っただろう?お前に勝つと・・。どうせお前のことだ。次の宇宙でも人間達を助けてヒーローとして称えられるつもりなのだろう?そんなことはさせん。俺はお前よりも活躍してお前よりもヒーローとして称えられてやろうじゃないか!!」

 

 どうやらジャグラーは俺より人気者になるのが次の目的らしいが・・・胡散臭い顔をしているので何処までが本気なのか分からなかった。

「・・・ところでだ。まさか気づいてない訳じゃあないよな?」

 

「あぁ、気づいてるさ。・・・殺気を隠しきれてないぜ。いい加減に出てこいよ」

 

「元より殺気を隠す気はなかった。・・・だが気づかれていたとはな」

 

 俺は殺気がビシビシと飛んでくる方を向いてそう告げると・・・透明になっていたスラン星人がその姿を現した。

「スラン星人のソルドだ。覚えているか・・・」

 

「あぁ、覚えているぜ」

 

 スラン星人ソルド。宇宙恐魔人ゼットの使者として現れた3馬鹿・・・チームゼットンの中で唯一馬鹿じゃなかったヤツだ。

「ゼットの作ったゼータスパークを使うと死に至るって聞いていたから、お前も命を落としたもんだと思ってたが無事だったんだな」

 

「俺の特技はハッキングでな。・・・あの道具にそのようなデメリットがあったことは使う前から気づいていた。なので調整してそのデメリットを軽減していた」

 

 軽減ってことはそれなりに命は削っちまってるってことか。

「生きているだけ良かったじゃないか。生き残った命を大切にするんだな」

 

 俺は背を向けて立ち去ろうとすると、スラン星人は光弾砲を俺の背中に突き付けてくる。

「・・・なんのつもりだ?」

 

「リベンジ・・・といったところか」

 

「もうお前の主・・・ゼットはいないんだぞ?」

 

 既にこいつ等の主だったゼットは倒した。わざわざ俺にリベンジを仕掛ける理由はないはずだ。

「主だったものが生きてる生きていないというのは些細な問題だ。・・・俺はお前を倒す。その命令こそが全てだ」

 

「そうかよ!!」

 

 引き金が引かれるよりも前に振り返った俺はアッパーカットで光弾砲を弾き飛ばすと、スラン星人は高速移動で俺の背後へと回り込んでくる。

「ヌンっ!」

 

「セイァ!!」

 

 振るってきた爪を跳んで避けた俺はそのまま跳び回し蹴りをスラン星人の顔面に叩き込む。

「・・・やはり一筋縄ではいかんか。ならば・・・」

 

 スラン星人は2つのカプセルを取り出す。・・・あれはネオパンドンとゼッドンか?

「そのカプセルはライザーとかいう道具がないと使えないらしいぜ」

 

「主が使うのを見たのだ。そのようなことは100も承知だ」

 

「ならそのカプセルをどうしようって言うんだ?」

 

「こうする・・」

 

 カプセルを砕いたスラン星人はそれに宿っていた力を無理やりその身に取り込んだ。

「ウォォォォォォ!!超融合!!ネオ!ゼッパンドン!!」

 

 自分の身を媒介にして無理やり2つの力を融合させたスラン星人はゼッパンドンそっくりの怪獣・・・ネオゼッパンドンへと変貌する。

「なんだありゃ?お前のストーカーか何かか?」

 

 ネオゼッパンドンを見上げたジャグラーはそんなことを口にする。むしろストーカーをしているのはお前の方だろうに。

「あいつ、俺の真似をしやがって」

 

 あのネオゼッパンドンが気に入らないジャグラーはダークリングを取り出して変身しようとしたので、俺は片手を広げてジャグラーを静止させた。

「何だこの手は?」

 

「ジャグラー、お前は手を出すな。これは俺の・・・この星でのラストバトルだ」

 

「・・・いいだろう。存分に奴をぶちのめしてこい」

 あのネオゼッパンドンがこの地球でのラストバトルだと決めた俺はオーブリングを構える。

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ネクサスさん!」

『ウルトラマンネクサス・ジュネッス!』

 

「光の絆、繋げます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムシュトローム!』

 

「受け継がれていく魂の絆!」

 

 オーブ・スぺシウムシュトロームへと変身した俺は口上を述べながらネオゼッパンドンの正面に立つ。

「覚悟しろ!オーブ!」

 

「シュァっ!」

 

 ネオゼッパンドンが放ってきた火球を裏拳で弾き飛ばした俺は空中へと飛び上がると、ネオゼッパンドンはテレポート能力を用いて俺の背後に回り込んできた。

「ヌンッ!」

 

「クロスレイスぺローム!」

 

 ネオゼッパンドンの熱線と俺の光線がぶつかり合うと互いの攻撃が相殺される。そしてその爆発の衝撃で俺もネオゼッパンドンも地面に叩きつけられた。

『覚醒せよ!オーブオリジン!』

「オーブカリバー!」

 

 インナースペースでオーブカリバーを手にした俺はそのエレメントを解放してオーブオリジンへと姿を変えた。

「銀河の光が我を呼ぶ!」

 

 オーブオリジンとなった俺はオーブカリバーのリングを回転させて土のエレメントの力を解放する。

「オーブグランドカリバー!!」

 

「ぬぅ・・・っ」

 

 カリバーを地面に突き立ててグランドカリバーを放つと、ネオゼッパンドンはゼッパンドンシールドでそれを受け止めようとする。

「ふん、ゼッパンドンシールドじゃそれは止められないぜ・・」

 

 ジャグラーのつぶやきと共にゼッパンドンシールドが砕けてグランドカリバーがネオゼッパンドンへと直撃する。

「まだまだぁ!!」」

 

 だがゼッパンドンシールドで威力が落とされていたようで、ダメージこそあるがトドメまでは持って行けていなかった。

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力、お借りします!!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 スぺシウムゼぺリオンへと姿を変えた俺は両腕に光のエネルギーを集める。

「俺の名はオーブ!闇を照らして・・・悪を撃つ!!」

 

 そして口上とともに両腕を十字に構え、スぺリオン光線を放つ。

「オオォォォォォ!!!」

 

 ネオゼッパンドンも対抗して火炎放射を放って光線にぶつけてくる。

「シュァ!!」

 

 俺は更に光線の威力を強めると・・・光線は火炎放射を貫いてネオゼッパンドンに直撃した。

「ぁぁぁぁぁぁッ?!」

 

 断末魔とともに爆発したネオゼッパンドンからはそれに変身していたスラン星人が地面へと落下した。

「アレは俺の獲物だ。てめぇなんかが手を出すんじゃねぇよ」

 

 ジャグラーは取り出した刀を鞘から抜くとその刃を振り下ろす。

「・・・ここまでか」

 

 スラン星人は諦めたような反応をした途端・・・ジャグラーはその刃を寸前のところで止めた。

「やめだやめ。命捨てる気の奴を煽っても面白味がねぇ。とっととどっか行って、何処かで勝手にのたれ死んでろ」

 

「・・・・・」

 

 刀を鞘に収めたジャグラーはスラン星人に背を向けると、スラン星人は無言で立ち上がる。

「勝手に・・・か。ならばそうするとしよう」

 

 透明になるように姿を消すと・・・久遠たちが騒ぎを聞きつけてきたのかこちらに走って来た。

 

 

 

~~杏~

 

 オーブと以前現れたスラン星人が戦っていると音々から聞いた私はSSPのみんなと一緒にその現場へと駆けつけると・・・既に戦いを終えたオーブが立っていた。

「・・・これがここでの最後の戦いだったんだね」

 

 私は雰囲気でこれがオーブの・・・ガイがこの地球で戦う最後だったのだと悟る。

「ガイ・・。私はお別れを言わないよ。・・・またいつか会えるって信じてるから。思い出は惑星を超えて・・・きっと心は繋がっていられるから」

 

 でもこれがお別れじゃない。しばらくは会えなくなっても数か月後・・数年後・・・水十年後にまた会えるかもしれないから。

 

 

~~久遠~

 

 初めての出会いは悪魔の風が吹き荒れた時・・・彼は焼き鳥を食べていたかな。すぐに再開した時・・・彼は竜巻に飲み込まれた私を助けてくれた。あの時はまだ彼が光の戦士だなんて考えてもいなかったかな。彼がSSPの仲間となった後も彼に何度も助けられた。

「今までありがとな。あんちゃんのおかげで何度も命拾いしたぜ」

 

「色々な怪獣、たくさんのことを教えてくれてありがとうなのです!教えてもらったたくさんのこと絶対・・・絶対忘れないのです!」

 

 そんな彼が今・・・この地球を去ろうとしている。

「ガイ!次の場所でもヒーローであり続けてくれ!」

 

「時折姉がご迷惑をお掛けましたね。どうかお気をつけて」

 

 杏に続けて徹さんに音々、乃理に扇と別れの言葉を告げていく。

「お兄さん。うちらのこと忘れんといてな~!」

 

「私、もっと料理がうまくなりますから!食べに来てくださいね!」

 

「ガイさん。お世話になりました!」

 

 愛に続いてSSPではないので普段は怪獣騒ぎで出てこない瑠々に木村も外に出てきて別れを告げる。

「ほらシノ。旦那にさよならをいいな」

 

「ガイ。たっしゃでな~」

 

「ガイ様、貴方に救われたこの身。この星を守るためにこれからも・・・」

 

「守護獣ルディアンとともにある」

 

 ヤクトワルトにシノ、ウールとサァラもオーブに別れを言い終えると・・・長く立ったままだったオーブのランプが赤く点滅し始めた。きっと彼はオーブの姿のまま元の姿に戻らずにもうこの星を去ってしまうかな。

「・・・・っ!」

 

 だからこそ決めた。私は別れの言葉も再開の約束もしないと。そのどちらもしない代わりに・・・

「~~っ~」

 

 思い出の歌を・・・心に刻まれた歌を歌った。彼といつか再び巡り合えるはずだという祈りを込めて。

「シュァ!!!」

 

「ハァッ!」

 

 オーブが夕陽の向こうの空へと飛び上がると魔人の姿へと変わったジャグラーもそれに付いていくように空へと飛び立った。きっとあの男は何処までも彼を邪魔して、時には協力もするかな。

「っ~~」

 

 涙を流しながらも2人が見えなくなるまで私は歌い続けた。彼が往く天駆ける星に・・・この祈り歌が届くように。

 




 ウルトラマンオーブ 天駆ける星の祈り歌。完結です。前日談のULTRAMISSION ORBはもう少し続きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。