ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 アニメには登場しませんでしたがウルトラ怪獣擬人化計画で好きな怪獣はツインテールだったりします。


思い出の少女

~~久遠~

「さてと、今日もSSPに顔を出そっと!」

 

 マガパンドンの事件から一カ月が経過した土曜日、大学に行かない日の私は店が開店してから1時間ほど経った11時頃からトリコリでくつろいだりSSPの活動に参加したりをしている。今日もそんなふうに過ごそうとトリコリへと足を運んでいると・・・

「まったくチカの奴め!私は土日ぐらい遊ばせろと言ってるのに、勉強しろだと、習い事だとと・・」

 

 頬を膨らませてプンプンと怒った表情の14~5歳で音々より少し小柄な女の子とすれ違った。きっとお母さんか姉と喧嘩をしたんだろうな。分かるよ、押し付けられてやらされるのって嫌だもんね。

「ふふっ。きっと習い事を抜け出してきたのかな・・」

 

 私もあの娘ぐらいの時はよく抜け出していたなぁ。そう自分の過去と女の子を重ねながらもトリコリへの足を進めていると・・・

「~~~~ッ!!」

 

 後ろから口を塞がれても叫んでいるような感じの声が聞こえたので振り返る。するとさっきの女の子が怪しげなフードを被った人に攫われそうになっていた。

「ちょっと!何をしてるのかな!」

 

 そこに駆け寄った私はフードを被った人の肩を掴むと、フードが下ろされてその素顔が晒された。

「えっ・・・」

 

 私はその顔を見て言葉を失った。フードを被っていた時は確かに『人間』の顔だったはずなのに、降ろした瞬間その顔が単眼に頭頂部にはアンコウのような触覚がある黒く細長い怪人となったからだ。

「いいねぇ、その表情。驚きと恐怖は最高の餌になる」

 

「っ!!」

 

 人間の男の顔になったその怪人はニヤリと笑いながら私へと手を伸ばしてきたので、私は即座に回し蹴りをその顔へと決め込んだ。今日はズボンで良かった。スカードだったら蹴れなかったもの。

「っ!?人間め!やりやがって!!」

 

「タァァっ!!」

 

 怒った反応をしたそいつに対して掌底で少し距離を離してからのサマーソルトキックを決め込む。すると再びその男の顔は怪人のものとなった。

「こいつ。正体を見せたらいきなり攻撃してきやがって!普通まずは様子見だろ!!」

 

「人さらいしてる相手を様子見する必要はないかな」

 

 私は平手を突き出すような構えをしながら怪人の手から離れた女の子を助けるためにジリジリと詰め寄る。・・・しくじったかな。さっきのサマーソルトキックでスマホを落としちゃった。これじゃ、助けを呼ぶことができないや。

「タぁっ!」

 

「むっ・・」

 

 殴り掛かると思わせてバックステップをした私はすぐさまスマホを拾い上げて徹さんへへと連絡を入れる。

「今、女の子を攫おうとしてた怪人と取っ組み合いになってるの。場所はえっと・・・ちょ、このっ!!」

 

 場所を伝えようとすると怪人は銃のようなものを向けてきたので、私はすぐさまそれを撃たれまいとスマホを手放して銃を持つ右腕を押さえ込んだ。

「撃たせないかな!」

 

「くっ・・・」

 

 幸い怪人は人間と筋力に差はないようで私の力でも押さえこむことはでき、そのまま右腕に膝蹴りをして銃を手から離れさせる。

「このまま・・・ッ!!」

 

「ストップだ!!」

 

 このままダウンさせて捕まえてしまおうとすると、怪人はもう1つ持っていた銃を気絶している女の子へと向けた。

「卑怯者・・」

 

 女の子を人質にされた私は大人しくその怪人に捕まった。

 

 

 

 

~~ガイ~

 

「たまにはコンビニの串カツもいいな。・・・ん?」

 

 公園でコンビニで買った串カツを食べていると、ブランコのあたりに熊のぬいぐるみが落ちていることに気がついた。

「いったい誰のだ?」

 

 周囲を見渡してみるも、落とし主らしい子供はいない。それにその子が手を繋ぐように右腕を掴んでいたのか、糸がほづれて今にももげそうになっていた。

「さて・・どうしたものか・・」

 

 交番に届けるか?でも確か半年見つからないと届けた人のモノになるんだろ?俺、戸籍どころか電話も持ってないから連絡先すらないぞ。

「交番に頼るよりなら・・・あいつらを頼ってみるか」

 

 SSPのあいつ等なら何らかの対処はしてくれると思い、俺はこの前担ぎ込まれた喫茶店へと足を運ぶことにした。

 

 

~~音々~

 

6月最初に出現したマガバッサーより始まり、マガグランドキング。マガジャッパ。マガパンドンと一月の間に4体もの怪獣事件が発生しました。ですが8月はそのような事件は発生せずにもうすぐ9月になろうとしています。その間の変化といえばマガパンドン騒動後、海の家のバイトを辞めた海東さんはSSPの仲間になりました。人員が増えたのは良いことなのですが・・・ブログの閲覧数は相変わらずなので給料は実質トリコリの売り上げからという形で、そろそろ財政的に心配になってきたのです。

「怪獣騒動のせいで地方に引っ越したりする人も増えつつありますから、この店に来てくれるお客も減りつつあるのです。ですので無駄な消費を抑えつつ業績を伸ばして・・・」

 

「まぁまぁ。そんな硬くならんでもええんちゃう?最近怪獣事件もないからちょっとお客も戻ってきとるやん」

 

「それでも赤字ギリギリなのですよ」

 

 そもそもこの店の店長は兄さんなのに、何で経営管理を私がやっているのですか。おかしいのです!事実今も最近連続して行方不明事件が起きているからと乃理さんと扇さんの3人で出かけてしまい店にはいないですし。

「はぁ・・SSPのサイトで宣伝こそしてますが、そもそもSSPサイトの閲覧数が多くないので宣伝効果もないのですよ」

 

 お父さんとお母さんが経営していた頃はそれなりにお客さんの数も安定していたのに・・・ここ5年で分かりやすく足取りが減っているのです。今日は土曜だというのにお客は5人だけ。今の時間は1人もいないのです。

「ってあれ?いつもならこの時間帯には久遠さんが来ているはず・・・」

 

 常連というよりSSPの準メンバーと化している久遠さんが今日はまだここに顔を出していないのです。いつもなら大学に行かない日のこの時間ならここにいるはずなのに・・・。

「もしかして彼氏さんでもできてデートしてるとかかな?」

 

「それらしい相手がいるだなんて聞いた事ないのですよ」

 

 よくよく思い出してみると常連で仲間っぽく活動しているはずの久遠さんは自身の家族や友人関係を語ってくれたことがないのです。今にして思うと案外謎が多い人ですね。

「チワ~す」

 

「あっ、おにーさん!」

 

 珍しいお客さんが来たのです。久遠さん以上に謎が多い人、ガイさんなのです。今まで何度か見かけたり、倒れてたので運んできたことはありましたけど、この人が自分からここに来たのは初めてですね。

「改めて来てみるといい雰囲気の店じゃないか」

 

「どうもなのです」

 

「とりあえずアイスココアを頼む。ところでさ、お前らの中で裁縫が得意なのっているか?」

 

 そう訪ねてきたガイさんは手に持っていた熊のぬいぐるみを見せてきたのです。

「これは?」

 

「公園に落ちてたんだよ。なんか腕のところが今にももげそうになっててさ・・」

 

 なるほど。持ち主を見つける前に直しておいてあげたいということなのですね。まだ分からないことは多いですけど、優しい人だということは分かりました。

「それなら私がやりますね。裁縫や料理を作るのは好きなので・・」

 

 瑠々さんが自分がやると名乗り出たのです。

「それなら今、裁縫道具を持ってくるのです」

 

 店の2階、自室から裁縫道具を持ってきた私はそれを瑠々さんに渡すと、瑠々さんはさっそく取り掛かってくれました。

「どうぞ」

 

「サンキュー。・・・確かにうまいもんだな」

 

「私、昔から活発なお姉さんやお兄さんの服を縫い直したりしてたんですよ」

 

 木村から受け取ったアイスココアを飲みながらガイさんは瑠々さんの裁縫を見守ります。すると慌てた様子の兄さんが店に入ってきました。

「いっけねぇ。スマホ忘れた」

 

 どうやらスマホを忘れたので一旦戻って来たようなのです。しっかりして欲しいのです。

「ん?着信があったっぽいな。・・・嬢ちゃんからか」

 

 マナーモードなのでこちらも気づかなかったのですが、兄さんのそれに着信があったようなのです。それもどうやら久遠さんからのようなのです。

「録音メッセージがあるな。再生するぞ」

 

『今、女の子を攫おうとしてた怪人と取っ組み合いになってるの。場所はえっと・・・ちょ、このっ!!』

 

 場所を伝えようとすると、取っ組み合いの後にスマホを落としたような音が聞こえたのです。

『この電話の人。白金ガイと名乗っている男に伝えろ。彼女達を返してほしくばお前1人で来いとな』

 

 録音はそこで終わっていました。

「・・・おい。今の場所は何処か分かるか?」

 

 兄さんは先ほどまでの表情とは打って変わって真面目な顔で私に尋ねてきたので、私はすぐさまパソコンの電源を入れました。

「久遠さんには念のためにGPS付きの端末を預けているのです」

 

 久遠さんに預けている端末のGPSの現在地を確認すると・・・その場所は久遠さんの通う大学から遠くない場所に位置する工場を示していました。

「おいあんちゃん!マジで1人で行こうなんて・・」

 

 兄さんはガイさんに注意しようと振り向きましたが・・・既にこの場にガイさんの姿はありませんでした。

 

 

 

~~ガイ~

「怪獣工場・・・きっとここだな」

 

 GPSが示していた工場へと到着した俺は扉を開けて奥へと進んでいくと何度か出会ったあの女・・・久遠が鎖で柱に縛られていた。

「よく来たなぁ。白金ガイ」

 

 あの顔・・・ケムール。いいや、ゼットン星人か。だとするともっと奥から感じる大きな気配はゼットン辺りだろうな。

「ガイ!来ちゃ駄目!罠よ!奥に黒くて胸の辺りが黄色に光る怪獣がいるの!」

 

 特徴から言ってやっぱりゼットンだろうな。ならとっととお前を助けてゼットンを倒させてもらう。

「さぁ!この場で消えてもらうぞ!白銀・・がぁ!?」

 

 ゼットン星人が銃を取り出すよりも先に俺はそいつにアッパーを決めた。人間の姿になってるとはいえ、身体能力は地球人を遥かに超えている俺に殴られたゼットン星人は顔が天井にめり込んだ。

「大丈夫か?」

 

「う、うん。特にこれといった怪我はないかな」

 

「よし、だったらはやくここを出るぞ」

 

 鎖を解いた俺はすぐさまここを出ることを提案すると、久遠は首を横に振った。

「私の他にももう女の子が攫われたの。その子は奥の方で・・・」

 

 そういえば確かに女の子を攫おうとしていたのと取っ組み合いになったって言っていたな。

「だったら早くそっちも助けないとな」

 

「うん!」

 

 俺と久遠は駆け足で奥へと向かって行くと、久遠と同じく鎖で縛られた状態の少女が気を失っていた。

「良かった。まだ無事だった・・」

 

 幸いにもゼットンは奥にいるようで襲ってくる気配はない。助けるなら今のうちだな。

「今鎖を・・っ!?」

 

 俺はその少女の顔を見て思わず固まってしまう。なぜなら・・・

「アンジュ・・・?」

 

 その少女は・・・かつて俺が守り抜くことができなかったお姫様、アンジェリカそっくりだったからだ。

「どうしたのガイ?」

 

「っ!い、いや・・・何でもない」

 

 そうだ。落ち着け俺。アンジェリカが生きているはずはない。この娘はただのそっくりさんなだけだ。そう自分に言い聞かせた俺は少女の鎖を解く。

「はやく脱出しないとあいつが・・・」

 

「さっきはよくもやってくれたな!」

 

 捕まっていた女の子を助けていた俺達に気づいたゼットン星人は俺達へと光線銃を向けてきた。

「恐怖や絶望している人間を食わせることであいつがより強く育つのだがこの際仕方ない。死体を食わせるとしよう」

 

「・・・俺が足止めをするからお前はその娘を連れて逃げろ」

 

「1人じゃ危険かな。こう見えて私、体術は得意かな」

 

「勇気と無謀は違うんだ。それにその娘もここに残すわけにはいかないだろ」

 

 久遠は少女に視線をチラリとみるとしぶしぶ納得するように頷く。

「・・・それじゃ、任せるかな。この娘を安全なところに避難させたら戻ってくるから!」

 

 いや、危ないから戻ってこないでくれよ。そう思いながらも俺は少女をおんぶしてこの場を去っていく久遠を見送る。

「逃がさん!」

 

 ゼットン星人は久遠へと向けて光線銃を向けようとしたので俺はそれに竹串を投げつける。

「ぬぁ!?」

 

 その竹串が銃を持つ手に刺さったゼットン星人はそれを落とす。

「貴様、よくも焼き鳥の串を・・・」

 

「生憎今投げたのは串カツの串だ。それもコンビニのな・・」

 

「ゴミはゴミ箱に捨てろ!」

 

 人さらいに正論で返されちまった。

「ゼェェトォォン・・・」

 

 通路の奥の方から鳴き声が響く。この鳴き声・・・久遠が見たって言っていたのはやっぱりゼットンか。

「ゼェェェェトォォン・・」

 

 奥から匍匐前進をするようにこちらへと迫って来たのはただのゼットンではなかった。

「おいおい・・マジかよ」

 

 同じゼットンはゼットンでもその進化個体・・ハイパーゼットンだった。しかしよく見ると成虫のハイパーゼットンのはずなのに、両腕が鋏じゃなく幼虫の時の鎌に似たものになっている。

「これが貴様を倒すために人間を食らい成長させたハイパーゼットン。ハイパーゼットンデスサイスだ!」

 

「俺を倒すために・・・だと・・」

 

 俺を倒すためだけに・・・人々を攫ってこいつに食わせてたってのか。

「だったら許すわけにはいかないな。っ!!?」

 

 俺はオーブリングを取り出した瞬間・・・ゼットン星人に収縮されていたハイパーゼットンは本来の大きさに戻されて地上へと乗り出した。

「さぁ!ハイパーゼットンデスサイス!白銀ガイをやってしまえ!!」

 

「ゼェェェトォォォン・・」

 

「えっ!私がみた怪獣ってあんなにデカかったっけ!?」

 

 ハイパーゼットンが俺を見下ろす。するとこのタイミングで久遠が戻って来てしまった。

「お前なんつうタイミングで・・・」

 

 お前がいたんじゃ変身できないじゃんかよ。

「とりあえず近くにいた乃理と扇にあの娘を任せてきたけど・・・何かさっきよりヤバくなってるね」

 

 あぁ。確かにやばくなってる。だから早く変身したいんだけど・・。

「あぁ。あいつはハイパーゼットンデスサイスっていうらしい。既に人間を何人か食って成長しちまってるらしいぞ。・・・ヤバいからとっとと逃げろ。さっきも言ったが無茶と勇気は違うんだぞ」

 

「だけどせっかく謎を解き明かせるチャンスなのに・・」

 

「死んじまったら、謎を解き明かすこともできなくなるんだぞ」

 

 そう・・・。死んじまったらそれで終わっちまうんだ。

「・・・分かった」

 

 頷いた久遠が走り去っていく。俺はその背を見ながらもオーブリングを取り出した。

「よし、行ってくれたな。・・・ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

「俺の名はオーブ!闇を照らして悪を撃つ!」

 

 久遠がいなくなったことを確認してからオーブ・スぺシウムゼぺリオンへと変身した俺は口上を述べるとすぐさま殴り掛かるも・・・持ち前の瞬間移動能力であっさりと回避されてしまい、背後へと回り込まれた。

 

 

 

 

~~久遠~

「ゼェェトォォン・・」

 

 ハイパーゼットンが火球を放つとオーブはギリギリのタイミングでバリアを張ってそれを防いだけど・・・その威力はオーブの想定を超えていたようで、バリアが砕けてしまい少し遅れて放たれた2発目が直撃してしまった。

「デュァ!?」

 

 その攻撃を受けて数歩後ろへと下がったオーブは右手に光の輪を作り出す。

「スぺリオン光輪!」

 

 オーブはハイパーゼットンに反撃として光輪を投げつけたけど、その光輪は真ん中の穴にハイパーゼットンの鎌を引っかけられる形で受け止められてしまった。

「無駄だ!貴様の戦い方は分析済みだ!」

 

 ゼットン星人はオーブに対してそう叫ぶと、オーブは下を向きながらゼットン星人を指さした。

「なら、あんたの知らない俺を見せてやるよ!」

 

 そう宣言したオーブはバック宙をすると空中で白い光に包まれた。

 

 

 

~~ガイ~

「なら、あんたの知らない俺を見せてやるよ!」

 

 ゼットン星人にそう宣言してやった俺は輝きの中でオーブリングを手に握る。

「ジャックさん!」

『ウルトラマンジャック!』

 

 ウルトラマン二世ことウルトラブレスレットの使い手であるウルトラマンジャックさんの力。

「ゼロさん!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

 2枚目はウルトラセブンさんの息子にしてアナザースペースの宇宙を守るウルティメイトフォースゼロのメンバーであるウルトラマンゼロさんの力だ。

「キレのいいやつ頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!ハリケーンスラッシュ!』

 

 ジャックさんとゼロさん。お2人の力が俺に重なり、胸部や肩にゼロさんのようなプロテクターがついている青い姿へと変わった俺はビルの上に着地して、その上で立ち上がりハイパーゼットンを見下ろす。

「な、なんだあの姿は?データにないぞ」

 

 ゼットン星人は慌てた反応を見せる。当然だ。この姿に変身したのはこれが初めてだからな。

「光を超えて・・・闇を斬る!」

 

 ハイパーゼットンを指さしてそう口上を述べた俺は頭部の刃から光の刃、オーブスラッガーショットを2つ生成してそれを飛ばした。

 

 

 

~~久遠~

 トサカが2つある青い姿になったオーブはビルの上へと着地をすると、そのトサカからエネルギーで作った刃のようなものをハイパーゼットンへ向けて飛ばす。ハイパーゼットンはそれを瞬間移動で回避するとオーブはビルの上から飛び降りて回し蹴りによる攻撃を仕掛けた。

「ppp・・ゼェェトン・・」

 

 回し蹴りを受けても動じないハイパーゼットンに対して、オーブは風を切るかのような鋭いチョップを決める。そして更にバック転をしながらのキックを決め込むと、先ほどハイパーゼットンに避けられた光の刃がブーメランのように戻って来て背後から斬りつけた。

「シャァ!」

 

 光の刃がトサカへと戻ると、ハイパーゼットンは瞬間移動で私の真上・・・というより上空へと瞬間移動する。するとオーブも光の粒子になるような瞬間移動で上空に出現して降下しながらもハイパーゼットンと取っ組み合いをする。

「えっ!ちょ・・・」

 

 このままじゃ下敷きにされると思った私は頭を両手で押さえるように守りながらしゃがむと、数十メートルぐらいのタイミングで互いに瞬間移動したことで難を逃れた。

「今のはかなり怖かったかな・・」

 

「大丈夫かい嬢ちゃん」

 

 そのタイミングで徹さんと音々ちゃんが合流してくる。

「うん。でも流石にさっきのは怖かったかな」

 

「ご無事で何よりです。それにしても紫、赤に続けて今度は青の姿ですか。ビルの上に乗ってもビルが崩れないところから察するに、おそらくあの青い姿は他の2つより軽いようなのです」

 

 どうやら2人もオーブが青くなった瞬間を目撃していたようだ。

「ゼェェトォォォン」

 

「デュアァ!!」

 

 ハイパーゼットンの鎌による攻撃を受け止めたオーブは背中合わせになると、ハイパーゼットンは横に回転しながら鎌でオーブを狙う。オーブはそれをしゃがんで避けつつもキックを決め込んでハイパーゼットンと距離を取ろうとすると・・・ハイパーゼットンは再び瞬間移動をしてオーブの真正面に立ち、両腕の鎌を振り下ろした。

「デュ・・ッ!!」

 

 その攻撃を瞬間移動で回避したオーブはハイパーゼットンの右腕を掴んで背負い投げをしようとするも、ハイパーゼットンは再び瞬間移動をして地面に叩きつけられるのを回避した。

「ゼェェトォォン」

 

 オーブの真横に出現したハイパーゼットンはドロップキックを放ってくると、オーブはそれを受け止めて、そのまま両足を掴んでジャイアントスイングをするように振り回す。

「ppp・・・ゼェェトォォン・・」

 

 瞬間移動でジャイアントスイングから抜け出したハイパーゼットンは火球を放つと、オーブは再びトサカから2つの光の刃を飛ばして自身の前で渦を描くように高速回転させて防御した。

「オーブスラッガーランス!」

 

 そしてそのまま2本の刃が一つに合わさって1本の三又槍へと形を変えた。

「オーブが武器を持ったのです」

 

 光を操作したり炎を宿したりしていたことはあったけどオーブが明確な武器を手にしたのはこれが初めてだった。

「ゼェェェトォォォン・・」

 

 ハイパーゼットンの火球が放たれるとオーブはその槍についてるレバーを1回スライドさせてスイッチを押した。

「オーブランサーシュート!!」

 

 槍の先端から光線が放たれ、続けて放たれた火球を相殺しながらもオーブは前へと進み、槍をハイパーゼットンへと突き刺した。

「この距離ならゼットン特有のバリアは張れないよな!」

 

 レバーを2回スライドさせたオーブはスイッチを押すと槍を上へと向けてハイパーゼットンを持ち上げる。すると槍の先端にエネルギーが集中し出した。

「ビックバンスラストッ!!」

 

「ゼットォォ・・・ン・・」

 

 槍を通してエネルギーが流し込まれたハイパーゼットンはそれに耐えられずに爆発する。

「シュゥゥワァ!!」

 

 槍が2つの刃へと変わってトサカへと戻ると、オーブは急ぐかのようにすぐに飛び去って行ってしまった。

「あっ!そういえばガイは!!」

 

 オーブとハイパーゼットンの戦いですっかり忘れていたけどてっきり一緒に逃げていると思ってたけど、後ろにいなくて探していたんだった。

 

 

 

~~ガイ~

 

 ハリケーンスラッシュの変身を解いた俺はすぐさまゼットン星人の前へと着地した。

「さてと、頼みの綱だったハイパーゼットンは倒してきたぜ」

 

「このぉ!!」

 

 俺を倒すために用意したハイパーゼットンが倒されたゼットン星人は銃で光線を連射しながらも走りながら迫ってくる。光線を回避したり弾いたりしながらもゼットン星人を引きつけた。

「ホォォォ・・・ワチャァ!」

 

 そして別に中国拳法ができるわけではないけど、とりあえずそれっぽい動きでゼットン星人を殴りつける。

「ぐおっ!?このぉ!!」

 

 格闘戦では勝てないことを悟った様子のゼットン星人はハイパーゼットンを縮小していたのと同じ手段で小さくしていたバズーカを懐から取り出すと、それを元のサイズへと戻してその砲身をこちらへと向けた。

「これでどうだ!!」

 

「っと・・!」

 

 バズーカから放たれたジ弾丸をジャックさんのカードから発せられたバリヤーで弾き返す。

「何っ!?ぬぁぁぁぁぁっ!?」

 

その弾丸はゼットン星人にそのまま跳ね返り直撃した。立っていられなくなったゼットン星人がその場に倒れると、そのタイミングで久遠たちがこちらへと駆け寄って来た。

「大丈夫ガイ?ってさっきの怪人!?」

 

 倒れているゼットン星人に気づいた久遠はその胸倉を掴みあげた。

 

 

~~久遠~

「貴方の目的は何?侵略?」

 

 ガイを探して工場の場所まで戻ってみたら・・・ガイのすぐ近くにあの怪人が倒れていたので私は掴みあげながらその目的を問い詰めてみた。

「侵略だと?お前はこの星にまだそんな価値があると思っているのか?」

 

「・・・どういうことかな?」

 

 

「こんな腐りかけな星になんて・・興味がないと言ってるんだ。俺が欲しかったのは名声だ。白金ガイを倒せば俺の名声は銀河に知れ渡って・・・いたのに」

 

 そこで力尽きた怪人は泡になって溶けるように消滅してしまった。いったいなんでガイを倒せていればその名前が銀河に広がっていたんだろう?

「ねぇガイ?貴方っていったい何者なの?」

 

「・・・怪獣の専門家みたいなものだな」

 

 なんか引っかかるなぁ。この怪人を倒してたっぽいし、倒したりするほうの専門家。怪獣ハンターってやつだったりして。

「ところでよあんちゃん、あんたはいったいどの辺に住んでいるんだ?」

 

「まぁ、世界中を旅してるから家はないな」

 

 何となく風来坊って感じだったからそんな気はしてたけど、やっぱり旅人だったんだ。

「ならよ、1つ提案なんだが・・。この町にいる間だけでもSSPに、ウチに来ないか?」

 

「「えっ?」」

 

 徹さんの予想外な提案にガイだけじゃなく私も驚いてしまった。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンゼロ
属性:斬属性

 セブンさんの息子ゼロさん。光の国でもかなり高い実力の持ち主で父であるセブンさん同様の多彩な光線技と師匠であるレオさんの宇宙拳法の両方を受け継いでいるんだ。ウルティメイトフォースゼロという頼もしい仲間とともに宇宙のワルを倒すため日夜奮闘している。

ハイパーゼットンデスサイス
属性:光属性

 怪獣の中でもトップクラスの戦闘力を持つ宇宙恐竜ゼットン。その強化個体がハイパーゼットンデスサイスだ。今回はゼットン星人ヌワルギが操っていて、瞬間移動能力を使った高速戦闘と鎌による攻撃は驚異的だったな。

次回「侵略の侵略」

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