~~愛~
ウチの名前は海東愛(かいとうあい)。海開きが始まって海の家でバイトを始めたんやけど・・・
「おにいさ~~ん。まだ決められへんのぉ~~?」
「ま、待ってくれ。・・・やっぱりここは王道のイチゴか?いや、ブルーハワイも捨てがたい」
かれこれ10分もかき氷のシロップに悩む黒シャツのおにいさんがいて、ちょっと迷惑してるんよ。
「おにいさん。いい加減決めてくれへんと~~。後ろも並んでるんよ~」
「あ、あぁ。よし!メロンで!」
「イチゴでもブルーハワイでもあらへんやん」
ついつい思ったことを口に出してもうたけど氷を削ってシロップをかけておにいさんにそれを手渡す。そしておにいさんが500円玉を置いて去っていこうとした途端に、いきなりの熱風でおにいさんが買ったかき氷が一瞬で水になってもうたんよ。
「・・・あれ?お、俺のかき氷は?」
一瞬で解けきってしまったことを信じられない様子なおにいさんはこっちに振り返ってきた。こっちに振り返ってもかき氷が解けたって現実はなんも変わらへんってのに。
「だけど・・どうしたもんかな?」
明らかにさっきまでの暑さより温度が上がっとる。それもたぶん倍近く・・まるで太陽がもう1つ増えたみたいな暑さや。
「って・・・なんやろあれ」
驚いたことに空には太陽ともう1つ燃える火の玉が浮いてたんよ。
「あれのせいか・・!!」
解けてしまったかき氷の水を一気飲みしたおにいさんは容器をゴミ箱に投げ捨てると火の玉が浮かんでいる方向へ走っていっちゃったんよ。
~~ガイ~
あの火の玉。どう考えても自然現象じゃないな。炎に包まれてるせいで感じ取りにくいがうっすらと何かの気配を感じる。あの中に何かいるのは確実だな。もしかすると火の魔王獣かもしれない。
「どっちみちあれをあのままにするわけにはいかないな」
あのままあれが地上についたらかなりの被害になることは確実だ。今のうちに対処しておかないとまずい。そう判断した俺はオーブリングを手に取る。
「ウルトラマンさん!」
『ウルトラマン!』
「ティガさん!」
『ウルトラマンティガ!』
「光の力!お借りします!」
『フュージョンアップ!』
『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』
オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと姿を変えた俺はあれが地上へと着地するのを未然に防ぐため空へと飛び上がった。
~~愛~
「あっ!ウルトラマンだ!」
「ウルトラマンオーブだ!」
「オーブぅぅぅ!!」
店に並んでいた列が乱れてみんなが空を見とる。みんな揃いも揃って『ウルトラマンオーブ』って口にしとる。確かオーブってあのでっかいカラフルな人やったなぁ。TVで見た事あるけど実際には見た事ないなぁ。うちも見てみよ。
「お~、でっかいなぁ~~」
初めて生で見たけど、本当にかなりでっかいなぁ。しかもあのでかさで宙に浮いとるし。というかあの火の玉っぽいのは何なんやろ?やっぱりあれがこの暑さの原因なんかな?
「シュゥゥゥゥワァ!!」
両手を合わせたオーブはそれを前に突き出したかと思うと、その指先から勢いよく水が噴射された。
「凄いなぁオーブ。手から水まで出せるなんて」
うち理系やないからそんな詳しくは分からんけど・・・あの水って空気中の水素を水に変えて出しとるんかな。
「ドュア・・・っ!!」
水じゃ解決できへんことに気づいたオーブは右手に光の輪っかを作ったかと思うとそれを自分よりも大きくしたんよ。
「スぺリオォォォン・・・光輪!!」
オーブそのドでかい光の輪っかを力いっぱい火の玉に投げつけたんやけど・・・その輪っかは火の玉の火力に負けて砕け散ったんよ。
「あのおっきい輪っかでも駄目なんかぁ」
いったいあの火の玉ん中身はどうなってるんやろ?そう考えとったらオーブは身体を紫色に輝かせてスンゴい速さで火の玉の周りを飛び出したんよ。
「すっごい速いなぁ」
速すぎて分身してるように見えるわぁ。
「スぺリオン!光線!!」
その分身して見えるオーブから一斉に光線が放たれたんやけど・・・その周囲から一斉に放たれた光線すらもその火の玉には通用せぇへんかった。
「ォァ!?」
大技の連続で消耗しきった様子のオーブは胸のランプが点滅し始めたんよ。
「もしかしてこれって・・・かなりマズイ状況なんやろか?」
噂だとランプが赤い時は限界が近いからって言われとるし、今のところ攻撃が効いているようにも見えへん。
「・・・デュゥゥワ!!」
一度地面に着地したオーブは真上に光のバリアを作ったかと思うと右拳を空へと掲げて空へと飛び上がりおった。そしてそのまま火の玉へとぶつかったんや。
「もしかして・・・そのまま宇宙のどっかに持っていく気なんかな」
そう予想しとった間にオーブは火の玉を持ち上げて空高くへと飛んで見えなくなってもうた。
~~ガイ~
「デュオォォォォォ!!」
火の玉を押し返す形で宇宙へと持ち上げていた俺はそのまま大気圏を突破して宇宙へと出る。変身する前は遠かったんで分かりにくかったが・・・ここまで近ければ嫌でも分かる。こいつは火の魔王獣だ。
「お前を地上には・・・ダァ!?」
地上に付かせる前に倒すと宣言しようよしてた矢先、俺はエネルギーが尽きてしまい引力で地球へと引き寄せられてしまう。
「・・・・・」
そして大気圏摩擦によって身体が炎に包まれてしまう。何とかしようにもエネルギーが尽きているせいで指1本すら動かすことすらままならない。
「あっ!オーブ!!」
「オーブが落ちてくるぞ!!」
人々は俺が落ちてきたことで騒ぎだす。まぁ、あの火の玉に負けたっぽく見えるんだから当然か。
「・・・がはっ!?」
地上へと叩きつけられた俺は姿を維持することができずに人間体となる。すると誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
「痛っ・・」
駄目だ。熱と痛みで今にも意識が飛んでしまいそうで視界が定まらない。
「何をしている?こんなものじゃないはずだろう?」
この声・・・ジャグラーか!
「ぐぁ!?」
声の主に気づいた途端、左手が踏みつけられてしまう。
「お前は選ばれた戦士なんだろう?なぁ?どうしたんだよ光の戦士・・」
視界が定まってくると・・・俺の目には哀れなものを見るような目線で俺を見下しているジャグラーの姿が映った。するとジャグラーは俺の襟筋を掴みあげた。
「もっと俺を楽しませてくれ」
投げ飛ばされた俺はビルの壁に叩きつけられて地面へと落下する。・・・この野郎。人が動けないのを良いことに好き勝手しやがって。
「ただし、あまり時間はないぞ」
そう言い残したジャグラーは土煙に消えるように姿を消してしまい、俺はそこで意識が途切れてしまった。
~~徹~
「確かここら辺だったよな。オーブが落っこちた場所は・・」
火の玉が宙に浮かんでると報告を受けた俺達は喫茶店を木村に任せて現場へと駆けつけると・・・オーブが空から落ちてくるのを目撃してしまった。なのでオーブが墜落した辺りへと急いで向かってみるも・・・そこにはオーブが墜落したことで陥没してしまった跡こそあるものの、オーブ本人の姿はなかった。
「オーブはいったいどこに消えたんだ?」
「徹さん!こちらへ!」
扇に呼ばれたので向かってみると、そこには見覚えのある顔が倒れていた。マガバッサーとマガグランドキングの時に遭遇した謎の男、白銀ガイだ。
「大丈夫かあんちゃん?・・・!!」
意識を確認しようとあんちゃんの肩へと触れると、かなりの暑さに俺は反射的に手をすぐ離してしまう。
「あんちゃんのこの熱さ。普通じゃないな」
「えぇ。おそらくはあの火の玉にかなり近い位置にいたのか、あの火の玉と交戦したオーブが大気圏を突き抜けて落下した熱にやられたかでしょうね」
もしくはこのあんちゃん自身がオーブかもしれないな。
「とにかく一旦うちに運ぶぞ。扇、手を貸してくれ」
俺達はあんちゃんを担いで車へと乗せるとトリコリへと一度戻っていった。
~~ガイ~
夢を見ていた。100年前のあの日の夢だ。
「ゼェェトォォン」
青白く輝く光の魔王獣、マガゼットン。俺は本来の姿で戦いに挑んだ。しかし俺のすぐ後ろには守るべき城があり、それを巻き込まないためにも力を抑えていたので押しきれずに苦戦を強いられていた。
「何をしておるのじゃガイ!しっかりせい!」
「アンジェリカ!?」
城にはどういうことか一度避難させたはずの姫様・・アンジェリカがいたので俺は驚いて動きを止めてしまう。
「ゼェェェトォォォン」
「デュァ!?」
その隙を突かれて俺はマガゼットンの光球を受けてしまい、その場に転倒してしまう。そしてその攻撃の余波は城にまでダメージを与え、城は崩れてしまい炎上してしまった。
「アァァァ・・うわァァァァ!!!」
怒りに身を任せてしまった俺は『剣』の力を限界まで解放し、その一撃をマガゼットンへと浴びせる。そんな怒り任せに放った一撃に『剣』は耐えきれずに自壊したが、俺はそのこと以上にアンジェリカの心配をしていた。
「アンジェリカ!返事をしてくれアンジェリカ!・・・アンジュうぅぅぅぅぅ!!」
人間体へと変わった俺は崩れた城でアンジェリカ・・・アンジュの生存を信じて叫ぶ。しかしいくら叫んでも彼女からの返事は帰ってこなかった。
~~久遠~
「アンジェリカ・・・アン・・ジュ・・」
「またアンジェリカって・・」
いつも通り何となく足を運んでアイスコーヒーを飲んでいると、徹さんと知らない細目な人が以前私やルルを助けてくれた男の人を運んできた。名前は確か・・・白銀ガイだったかな?私が聞いた時は名前を教えてくれなかったのに、ルルの時は答えてくれたってのがちょっと癪に障ったけどその事を問い詰められる状態じゃなさそうなことをすぐに理解した私はルルと共に彼の看病をしていた。
「アンジェリカ・・・ってどう考えても日本人ではないですよね?」
「うん。それにさっき持ち物を確認したんだけど、身元が分かるようなものは何一つ持ってないの」
財布は持ってるようだけど保険証や免許証のようなものは入っていなかったらしい。さらにはスマホ等の通信機器も持っていないようで、本当にその一切が謎な人かな。
「凄い汗ですね・・」
「うん。できれば病院に連れて行ってあげたいけど、何処も熱中症の患者でいっぱいなんだって」
「ん・・。ここは?」
あっ!目が覚めた。
「ここは喫茶店トリコリ。SSPの事務所でもあって、倒れてた貴方はここに担がれてきたの」
「・・・そうか。世話になったな」
ガイはあっさりめなお礼を言いながら身体を起こしてこの場を去ろうとしたので私とルルは慌てて彼を止める。
「じっとしてなきゃダメですよ!熱があるんですから!」
「俺に・・・構うな」
「何よその言い方ぁ・・」
言い返そうとしたけど、ガイは熱のせいで意識が保てなかったようでそのまま再び眠りについてしまった。
「はぁ・・しょうがないかな」
目が覚めた時にでも事情を聞こうと思った私は音々ちゃん達のいる奥へと行こうとすると、お店のドアが開いてお客さんが入って来た。
「何処もめっちゃ暑いなぁ~。アイスこー・・あっ!午前中のおにーさんやん!」
「えっ?」
え?何?この人もガイの知り合い?
~~愛~
謎の火の玉が出現しおったせいで気温がもの凄く上がって外仕事は無理そうってことで今日の海の家のバイトが早めに終了になったうちは涼しそうな喫茶店でアイスコーヒーを飲んでゆっくりしようと思うて『トリコリ』っていうお店に入ってみたら・・・午前中に出くわしたあのおにーさんが看病されておったんや。
「えっ?おにーさん、どうしたん?」
「え、えと。ここの店長が倒れていたこの人を発見して担ぎ込んできたの」
「そうやったんや。あっ、うちは海東愛や。店員さんは?」
「私は白神久遠。常連であってここの店員じゃないから」
そうなんや。なんか完全に店に馴染んどるから店員さんかと思っとったわ。
「わ、私は照井瑠々です!」
「よろしゅうなルルやん」
エプロンつけとるし、こっちの娘は店員なんやろうな。
「ルル!それじゃ私は音々ちゃんに何か分かったか聞いてくるから!」
「え?どゆこと?」
「ここは喫茶店とSSPっていう怪奇現象を調査する活動も行っていて、あの火の玉のことを調べてもらってるの」
へぇ、確かにウチも気になるなぁ。
「ウチも行くぇ」
「え、う・・うん。まぁいいかな」
久遠はんに付いて行ってみると・・・中庭でウチらより小柄な娘が温度計やタブレット、他にも見たことない道具を幾つも使って火の玉の観測をしておった。
「午後15時50分。現在の気温は43℃。火の玉の高度は424キロメートルを維持したまま・・。あっ、久遠さん、来ていたんですね。・・・隣の方は?」
「ウチは海東愛。よろしゅうな」
「大石音々なのです。こちらこそよろしくです」
「それで音々ちゃん。何か分かった?」
挨拶を終えると久遠はんはさっそく火の玉のことを聞くと、ネネやんは首を横に振った。
「残念ながら有益な情報はまだ掴めてないのです。消えたオーブの行方も不明で・・・」
「オーブが消えた場所にガイが倒れてたし、ガイが実はオーブだったりして!」
「兄さんが同じことを考えていましたけど、ありえないのです。オーブの大きさから考えると重さは約5万トンはあるはずなのです。質量保存の法則的には・・・」
なんや、ネネやんは夢がないなぁ~。もっとロマンを抱こうぇ。
「あっ、火の玉の正体は分からないままなのですが、・・・という防衛隊が火の玉に冷却弾を撃ちこんだらしいのです」
組織の名前を聞いた瞬間、久遠はんの表情が少し曇った。
「・・・がね。それで結果は?」
「全然効かなかったらしく、一時撤退をしたらしいのですよ」
「そうなんだ。その人達は無事なの?」
「は、はい。被害報告はないようなのです」
「そう。・・・良かった」
被害がないことを聞いた久遠はんは安心した表情を見せた。もしかしてそこに知り合いでもおるんかな?
~~久遠~
「俺はあいつの正体が怪獣じゃないかと思ってるんだがお前らはどう思う?」
火の玉の正体が気になっていた私はトリコリの営業時間終了後も残ってSSPの会話にそれとなく混ざっていると徹さんがそんな予想を告げてきた。
「た、たぶんその可能性はあるのですよ。それらしい文献を発見したのです」
ずっと中庭で観測をしてたせいため暑さでぐったりしている音々ちゃんはそんな状態でもパソコンの画面に太平風土記を写していた。
「『空に日輪二つのぼりし時、地上のすべては焼き尽くされん。偽りの日輪、これ災いのの炎禍破吞の仕業なり』と・・記されてるのです」
禍破呑(マガパドン)。やっぱり怪獣の仕業だったかな。
「ただでさえ猛暑突入なのに、火の玉の熱波襲来で・・・」
「どうぞ。アイスコーヒーです」
「ありがとうございますなのです。おそらくオーブの活躍がなければ至る所で高温火災が発生してたと思われるのです」
ルルから受け取ったアイスコーヒーを飲みながらも話を続ける。
「なるほど。大惨事の一歩手前だったというわけだな」
細目の青年・・扇の姉らしい乃理は大まかな内容は理解した様子で「うんうん」と頷いている。・・・本当に分かってるのかな?
「おや、その火の玉の高度に変化が起きているようですね。・・・もしやこれは・・」
扇はパソコンに表示されている火の玉の高度を見て驚いたように両目を見開いていた。
「え、えと・・高度が上がったん?それとも・・・」
私と同じく何となく残っている愛が扇に尋ねる。
「残念ながら下がってきていますね。おそらく明日の朝方には再び肉眼で見える高度になると思いますよ」
ただでさえ多くの人が熱中症で倒れているのに、また見える高度まで来たら・・・。はぁ、できれば頼りたくなかったけど仕方ないかな。
「ちょっと席を外すね」
店の外へと出た私は・・・ある人に電話をかけた。
~~徹~
翌朝、何だかんだで木村と照井以外の全員がトリコリに泊まって成り行きを見守っていると新たな情報が入ってきたことを扇から伝えられた。
「例の防衛組織が冷却弾やミサイルを大量に放って火の玉が地上に到達するのをギリギリで堪えているようですね」
どうやら俺達が眠っていた間に普段どんなことをしてるのか分からない防衛組織『BRG』が火の玉を怪獣と判断してミサイルや冷却弾による攻撃を開始したようだ。
「しかし問題も発生していまして、一定の高度に留まっている火の玉は下がらない代わりに周囲に無数の火炎弾を放ち、あちこちで火災が発生しているようですね」
「お~。確かにこりゃあかんな~」
俺と扇の会話の間に目が覚めていた様子の海東は窓から外を眺めて火炎弾がここからそれほど遠くない場所に当たってしまうのを目撃する。そしてその振動と爆音で久遠と音々も目を覚ました。
「・・・おい、お前の姉が起きてないんだが・・」
「姉は些細なことでは動じない人ですから」
先ほどのはかなりの衝撃だったはずなのに乃理だけは未だ爆睡している。神経図太すぎやしないか。
「・・・マガパンドンが活動を再開したのか」
「おっ!あんちゃんも目が覚めたか」
どうやらあんちゃんも目を覚ましたようだな。それに専門家ってのは伊達じゃないらしく俺らよりも先に火の玉の正体が分かっていたようだ。というかマガパドンじゃなくマガパンドンなんだな。
「まさかあいつの撮影に行くってんじゃないだろうな?」
あんちゃんは俺の手に握られているビデオカメラに気づいてそう忠告してくる。
「大丈夫だって!あいつの炎なんざ俺達の情熱で吹き飛ばしてやるよ!ってわけであんちゃん、まだ寝てるそいつをよろしく!」
そうあんちゃんに言い残した俺は音々と扇、そして何故か当たり前のように付いてきた久遠と海東とともにマガパンドンの撮影へと向かった。
~~ガイ~~
まったく、危ないから行くなって言ってんのに行きやがって。
「・・・情熱で吹き飛ばす・・か」
思いついたぞ。マガパンドンを包み込んでいる炎の攻略法をな。
「・・よし、誰もいないな」
喫茶店の外へと出た俺は周囲に人がいないことを確認してからオーブリングを取り出す。
「タロウさん!」
『ウルトラマンタロウ!』
「メビウスさん!」
『ウルトラマンメビウス!』
「熱いやつ!頼みます!」
『フュージョンアップ!』
『ウルトラマンオーブ!バーンマイト!』
オーブ・バーンマイトへと変身した俺は夜明けの太陽をバックに地面に降り立つ。
「待ってろ魔王獣。今度の俺はちょっと違うぜ!」
~~久遠~
「あれは・・・オーブ!!」
火の玉にやられて消えてしまったと聞かされていたオーブが生きていた。しかもその姿は昨日乃理たちから聞いた2本の角がある赤い姿だった。
「お前の炎を吹き飛ばしてやる!」
そう宣言したオーブは胸のあたりで火球を作り出す。
「まさかオーブっ・・皆さん伏せるのです!」
「ストビュゥゥゥム!バァァァストォォ!!」
音々に言われた通り私達が伏せた瞬間・・・オーブはその火球を火の玉へと放って周囲に強い爆風が吹き荒れた。
「い、今のはなんなん?何でオーブは炎に炎をぶつける真似なんかしたん?」
「爆風消化の用量なのですよ」
「爆風消化?」
「はい。強烈な爆風を起こすことで相手の炎を吹き飛ばしたんですよ」
その爆風消化でかき消された火の玉から出てきたのは鳥のような顔が2つある真っ赤な怪獣だった。
「あれがマガパンドン・・」
「シュァ!」
私達が火の玉の正体であるマガパンドンに驚いていると、オーブは地面に着地したマガパンドンに対してタックルを決め込む。
「ォゴ!?」
しかしマガパンドンも反撃と言わんばかりにバシバシと両手でオーブを叩くと尻尾の連撃を加えた。
「ダッァラ!!」
その攻撃によって転倒したオーブに対してマガパンドンは口から火炎弾を放とうとすると、すぐさま起き上がったオーブは左拳を火炎弾を放とうとしている口へと突っ込んでそれを未然に防いだ。
「ドラドラドラ!!」
フリーになっている右拳で何度も腹部を殴りつけたオーブは左拳を引き抜いてマガパンドンの腰を両腕で掴んで持ち上げる。
「これで決めてやる!スぺリオン光線!!」
持ち上げたマガパンドンを地面に叩きつけたオーブは紫の入った角がない姿へと変わると同時に光線を放った。
「ッ!!!」
光線を受けながらもマガパンドンはオーブへと迫る。それでもオーブは光線を続けると・・・さすがに浴びせ続けられる光線に耐えられなくなったマガパンドンは背中から倒れて爆発した。
「シュゥゥゥウワ!!」
マガパンドンを倒し終えたオーブは今回も空の彼方へと飛び去っていく。
~~ガイ~
「あ~。今回は最近じゃかなり厳しかったな」
だけどこれで6属性の魔王獣は全部撃破することができた。あとはこのマガクリスタルから封印してくれていたウルトラマンさんの力を・・・。
「・・・やっぱりマガパンドンはセブンさんでしたか」
マガクリスタルにオーブリングを向けてエネルギーへと変換し、カードを手に取る。予想通りマガパンドンの封印はウルトラセブンさんの力だった。
「ん?」
まだエネルギーの変換が続いていたかと思うと・・・もう1枚のカードまで出てきた。
「これは・・・ゼロさんのカード」
そのもう1枚はセブンさんの息子であるウルトラマンゼロさんの力だった。
「親子で封印なさっていたんですね。お疲れ様です」
セブンさんとゼロさん。お二人の力を宿す2枚のカードをホルダーにしまった俺はコートと荷物をしまっているコインロッカーへと向かおうとすると、そう言えば俺はあの喫茶店に担ぎ込まれていたことを思い出す。
「勝手にいなくなってるのもアレだな。仕方ないから戻るとするか・・」
「あっ!ガイ!もう動いて大丈夫なの?」
喫茶店に戻ろうとすると偶然にもSSPのメンバー達と遭遇してしまった。
「あ、あぁ。もう動いて大丈夫でコインロッカーに預けてた荷物を取りに行こうとしてたところだ」
「ならさ、その後でいいから知ってる事を教えてよ!色々知ってるんでしょ」
まぁ、こうなっちまうわな。
「また今度な。俺もまぁ・・・色々あるんだよ」
このご時世に自分がオーブですと名乗り出るわけにはいかないし、食べられなかったかき氷を食べに行きたかったので適当にあしらう形にして俺はその場を去っていった。
~~ジャグラー~
ウルトラマンオーブが火の魔王獣マガパンドンを撃破し、敗れ去ったマガパンドンのエネルギーがダークリングへと集まり1枚のカードとなる。
「闇、光。風、土。水、火・・」
闇の魔王獣マガタノゾーア。光の魔王獣マガゼットン。風の魔王獣マガバッサー。土の魔王獣マガグランドキング。水の魔王獣マガジャッパ。そして火の魔王獣マガパンドン。6属性全ての魔王獣が出揃った。
「残るは黒き王の力のみ・・」
その最後のカードを手に入れた時、あいつはどんな表情を見せてくれるのだろうか。
ウルトラヒーロー大研究
ウルトラセブン
属性:斬(ザン)属性
地球を愛し、幾たびも地球を訪れては危機から星を守って来たセブンさん。ゼロさんの父親でもあるんだ。
マガパンドン
属性:火属性
火を司る魔王獣マガパンドン。街を襲った火の玉の正体で、常に高熱を発している厄介な奴だ。こいつを包み込んでいた火の玉は防壁の役割も持っていてスぺリオン光線も防いでしまうほどだった。
次回「思い出の少女」