~~ガイ~
「宇宙恐魔人ゼットだと・・・?」
まるで宇宙恐竜ゼットンを彷彿とさせる名前だ。いや、よくよく見ればあいつの姿はゼットンに似てなくもない。
「あっ、名前ゼットンっぽいとか思っただろ。そうなんだよ。俺さ、ゼットンの突然変異体だから」
軽い口調でゼットは自分がゼットンの変異体であることを語って来た。まるで自分にとってそんなのは些細な問題であると主張するかのようだ。
「突然変異とはどういうことだ?」
久遠を守るように立っているBRGの隊員服の男は銃口をゼットへと向けながら問い詰める。
「バルタン星人によって遺伝子操作をされたゼットンの個体から生まれたのが俺なんだけどさ、あっちもこんな風なのが誕生するとは予想してなかったっぽいんだよ。・・・とまぁ、自分語りはこの辺にしとくか」
自身の身の上話を終えたゼットはマグマスパークを取り出す。
「これがあれば面白いゲームができると思って海賊版を幾つか作ってみたはいいものの・・・所詮劣化品だったな」
ゼットは手にしたマグマスパークを握りつぶすとその破片を投げ捨てた。
「貴重なアイテムなんじゃないのか?」
「スパークドールズを解放できるって点では貴重だが、コピー品の改造だからな」
まるで遊び飽きた玩具を捨てるようにマグマスパークを見限ったところをみるに・・・冷静というよりはドライなようだな。
「まぁそんなのはもうどうでもいいんだよ。そんじゃ次のゲームを始めようぜ」
「次のゲームだと?」
「観戦も飽きたしな。そろそろプレイアブルで参戦だ」
よく分からないが・・・たぶんこいつ自身が打って出るってことか。
「だがオーブは消耗してて、今俺が戦うとつまらないワンサイドゲームになっちまう。だから明日この辺りで1対1だ」
そう言い残したゼットはゼットンのようなテレポート能力でこの場から姿を消してしまうと、BRGの男は銃を構えながらも周囲を確認する。
「完全にこの場から去ったようだが・・・明日にまた攻めてくるのか。隊員達に警戒レベルを挙げさせなくては・・・」
「待って伯父さん。あのゼットとかって宇宙人、オーブと1対1をするって言ってた。もしそれを邪魔したら被害が酷くなっちゃうかもしれないかな」
「分かっている。警戒レベルを上げて近隣住民をなるべく避難させておいた上で、極力は手出ししないようにさせる」
住民をあらかじめ避難させてくれるのはありがたい。
「申し訳ありません」
「ルディアンをリミッターを解除した反動でまたしばらく動かせない」
ウールとサァラはまたルディアンが動かせなくなったことを謝ってくると、それを聞いていた久遠の伯父らしいBRGの隊員は2人に近づいてくる。
「お前達がアレに乗っていたのか」
ヤクトワルトがバレてるのは聞いていたが、このタイミングでこっちもバレたか。
「バレた」
「やってしまいました」
「・・・いや、何も責めようとしてるのではない。俺はBRG日本支部隊長の黒沢朧。これまで何度もこの星のために戦ってくれたこと、地球を代表して礼を言おう」
久遠の伯父だという人物はどうやら日本支部の隊長だったらしく、2人に頭を下げた。
「私達は数回しか戦っていません」
「お礼ならいつも戦っているウルトラマンオーブに言うべき」
「確かにそうだが・・・話せる機会がないのだ。それ以前にウルトラマンオーブは普段人間の姿をしているのかも判明していないのでな」
良かった。俺のことはバレていないようだ。
「もしかすればまたお前達にも手を貸してもらうかもしれん。その時はまた頼む」
ウールとサァラが支部隊長の言葉に頷くと、支部隊長はこの場を去っていく。
「しっかしまぁあのゼットが動いてくるとなぁ」
「何か知ってるのか?」
ヤクトワルトはゼットのことについて何かを知ってるようで、ゼットのことを尋ねてみた。
「ちなみに旦那はどんぐらい知ってるんだ?」
「星をゲーム感覚で侵略する奴って聞いた」
「だいたいそれで合ってるが、ゼットはその星の強い奴を手当たり次第にぶっ倒して最終的には星から武力を無くしてるんだ。それがあいつにとっての侵略らしい」
武力を無くしているか・・。聞こえはいいかもしれないが・・・厄介なことだな。
「武力を無くすことの何がいけないのかな?武力を無くしたら争いが起こらなくなるんじゃないの?」
「確かに『争い』はなくなるだろうな。・・・いいや、争いにすらならなくなるって言ったほうがいいか」
久遠は言葉の意味が分からなかったようで「どういうこと?」と聞きたげな視線をこちらに向けてくる。
「あいつにとって武力を破壊し尽くした星は遊び飽きた玩具ってわけだ。遊び飽きた玩具は・・・他の誰かに譲る。見知らぬ相手にな」
「武力を持たない星を狙って別の星が狙って来ても、一度攻略し終えた星に興味はないからどうなってもいいってことかな」
久遠の答えに俺とヤクトワルトは頷く。
「とにかくトリコリに戻ろう」
「そうだね。ヤクトワルトの手当てもしないと・・」
~~杏~
「なるほど。昨日はそんなことがあったんだね」
昨日トリコリにこれなかった私は久遠からゼットとかいう宇宙人がゲーム感覚でゼットン集団を送り込んでいたらしい。
「・・・何でよりにもよってゼットンばっかりなの・・・。話を聞く限りでゼットはゼットンの突然変異ってのは分かったけど・・・それならむしろゼットンを遠ざけてもおかしくないじゃん。何で自分から傷口えぐってるの?むしろそれを個性みたいにアピールするとか、どういう神経してるの?」
「・・・杏さんは随分と今回のゼットという宇宙人を敵視してますね。いつもの杏さんらしくないのですよ」
「確かに・・・。いつものお嬢様なら宇宙人や怪獣に恐怖するよりも興味を抱いて行動していますが・・・ゼットン絡みだと怖がったり敵視したりするところがありますね」
千佳は私がゼットン絡みで怖がったり敵視するようなところがあることを音々達に話してしまう。別に隠してはいなかったけどいざ言われるのは何か嫌だな。
「どうしてゼットンに苦手意識を持ってるのです?」
「言いたくない・・」
言えるわけがない。私にはアンジュって100年前の人の記憶が残ってて、その人がゼットンに殺されちゃう記憶があるだなんて。・・・そんなこと言っても信じてもらえるわけがない。
「・・・無理には聞かないけど、何かあったら言ってね。解決できるって保証はないけど、話せば少し楽になるってこともあるから」
久遠は話せば楽になることもあるからと言ってくれた。確かに話せば気は楽になるかもしれないけど・・・そもそも話す勇気が湧かなかった。
~~ゼット~
「ん?何だこいつ・・?」
オーブとの対戦の前に相手の確認をとチームゼットンのプレイ動画を見ていると、画面の片隅にオーブのバトルを見守る人間たちがみえた。別にバトルにギャラリーがいることはいいんだが・・・ギャラリーのうちの1人からはエスメラルダ星人のような波動が出てるんだよな。
「解析してみるか」
何となく興味が湧いた俺は解析してみると・・・見た目こそ地球人のそれだが遺伝子情報が複数の宇宙人がミックスされているという結果が出た。
「遺伝子情報が何度も再構成されてるような痕跡があるな・・。弄られすぎてもう地球人でもエスメラルダ星人でもないな」
地球人はおろかエスメラルダですらない変異体か。まるで俺みたいなやつだ。
「面白いじゃん。欲しいな・・これ・・」
~~杏~
「杏、付いてくるな。巻き込まれるぞ」
トリコリで昨日のことを聞いてから数時間後、もうそろそろゼットがやってくるだろうと非難区域に1人で向かおうとするガイにこっそり付いてきていると・・・私に気づいていたガイが振り向かないままそう言ってきた。
「大丈夫!ガイが守ってくれるでしょ」
ガイが絶対に守ってくれる。私はアンジュのようにはならない。私はガイに言うよりも自分に言い聞かせるようにそう言う。
「ガイが守ってくれる・・・ね。ウルトラマンオーブのことを随分と買ってるんだな」
「えっ?」
後ろから聞こえてきた声がガイ=ウルトラマンオーブだと分かっているような発言をしていたので、私はその声に振り返る。そこには『ゲーム魂』と書かれたダサいTシャツにグラサンをかけた金髪の男が立っていた。
「よぉウルトラマンオーブ!ゲームをしに来たぜ!」
「・・・ゼットか」
どうやらこの男はゼットが地球人に擬態している姿のようだ。・・・もう少し服のセンスは何とか出来なかったの?まだ4月頭なのに半袖短パンとか見てるこっちが寒いよ。2重の意味で。
「ダイナさん!」
「あっ、一応このことは先に伝えておくわ。気が変わったから俺はこの星を侵略しないことにする」
「えっ?」
ガイがいざオーブに変身しようとするとゼットはいきなり予想外なことを言ってきた。あいつって侵略目的でゼットンを出しまくってたんじゃないの?
「なら俺と戦う必要はないんじゃないか?」
ガイは変身するためのアイテムを下げて自分と戦う必要がないことを尋ねると、ゼットは首を横に振った。
「いやいや、お前と命をかけたゲームをしに来たのがメインイベントで地球侵略なんてそもそもオマケなんだよ」
地球侵略をオマケって・・・。
「地球はいらないが・・他に欲しいものができたんでな。エスメラルダ星人をクローン技術を用いて蘇らせた存在だが、幾度という遺伝子の再構築によりもはや地球人でもエスメラルダでもない遺伝子構造をした変異体」
「っ!?」
ガイはゼットの言葉が誰のことを言ってるのか察しがついたようで、その続きを言わせまいと駆け出す。
「姫山杏。同じ変異体のお前が欲しい」
「えっ・・・」
告白じみた言葉だったけど・・・それ以上に私が驚いたのは『変異体』という言葉のほうだった。
「ちょっと待って・・?私が変異体ってどういうこと?」
確かにアンジュの記憶があることはおかしいと思っていた。だけどクローンで変異体とか・・・何でそういうことになるの?
「さっきも説明しただろ。クローン技術の応用で幾度となく遺伝子が改造されてるんだよ。地球人をベースにしてるがエスメラルダの細胞を組み込むために他にも何種類かの遺伝子が組み込まれてるぜ。例えば地球人ではありえないぐらいの怪力だったりしないか?」
確かに私は時々鉄を貫いちゃうぐらいのパンチができたりすることがあったけど・・・。
「キュラソ星人の遺伝子構造もあったからそれだろ」
エスメラルダにキュラソ星人って・・・本当に私はあいつのいう通り変異体ってこと?
「ガイはこの事を知ってたの?」
「・・・杏がアンジェリカのクローンだというのは光圀公から聞かされていた」
「お父さんから・・」
お父さんから私がアンジュのクローンだって聞いたってことは・・・私を作ったのはお父さん・・・姫山光圀ってことなんだね。
「お前は地球人とは違う存在ってのは分かったろ。つまりお前は俺と同じ特別な存在、レアキャラなんだ」
特別な存在・・・。
「好き勝手言いやがって!!杏はゲームのキャラなんかじゃねぇ!1人の人間だ!!」
「地球人は自分達と異なる存在のことを『バケモノ』ってよぶだろ」
「ッ!」
バケモノ・・・私が変異体ということをみんなに明かした時・・・みんなにそういう反応をされたらどうしよう?私はそんな不安でいっぱいになる。
「いい加減黙れ・・ッ!」
私の代わりに怒ってくれたガイは近くの壁を殴りつけて大きく陥没させてしまう。
「台パンプレイはマナー違反だぜ。ウルトラマンオーブ」
ゼットはそう言いながら久遠から聞いた黒い魔人の姿に変わるとそのまま巨大な姿へと変わった。
「さぁ来いよオーブ!ゲームを楽しもうぜ!」
~~ガイ~
地球人のような姿から本来の姿へと戻ったゼットはそのまま巨大な大きさへと変化する。
「さぁ来いよオーブ!ゲームを楽しもうぜ!」
何処までゲーム感覚なんだあいつは・・。
「その減らず口を黙らせてやる!ゾフィーさん!」
『ゾフィー!』
「べリアルさん!」
『ウルトラマンべリアル!』
「光と闇の力、お借りします!」
『フュージョンアップ!』
『ウルトラマンオーブ!サンダーブレスター!』
サンダーブレスターへと変身した俺はゼットの前に着地すると土煙が宙を舞う。
「闇を抱いて光となるッ!」
~~杏~
「闇を抱いて光となるッ!」
禍々しい姿のオーブはゼットの前に立ってそう口上を述べると、ゼットはさすまたのような槍を出現させる。
「ゾフィーとべリアルのフュージョンアップか。ガチで来てくれて嬉しいぜ」
あの姿のオーブを見て怯えるどころかむしろ本気で来てくれたことに喜ぶような反応をしたゼットは槍でオーブに仕掛けると、オーブはそれを右拳で受け止める。
「ゼットシウム光輪ッ!!」
槍を受け止めている拳から赤黒い光輪を展開したオーブはそれで槍を破壊しようとすると、すぐさまゼットは槍を下げてオーブの腹部に蹴り込んだ。
「オォォォっ!!」
蹴り込まれても怯まないオーブはその足を両手でガッシリと掴むと持ち上げてから思い切り地面に叩きつけた。
「グッ・・・さっすが難易度ウルトラなだけはあるな。だが・・・」
「ヴォっ!?」
ゼットは右手から火球を放つとそれはオーブの顔面に直撃する。怯みはしちゃってるけどその攻撃では止まらないよ。
「ヴォォっ!!」
オーブは勢いよく頭を振り下ろして頭突きをぶつけようとした瞬間・・・ゼットの姿がいきなり消えた。ゼットンのテレポート能力だ。
「ゼットンの変異体ってだけあって・・・やっぱりゼットンの能力は使えるんだ」
火球にテレポートも使えてるんだからバリアとか光線を吸収する芸当もできるはず。
「・・・上か!!ゼットシウム光線ッ!!」
空から火球を撃とうとしていたことに気づいたオーブは赤と青がらせん状に交わる光線を放つと、ゼットは瞬時に火球を消す。やっぱり火球はフェイクで本命はオーブの光線を吸収することだったようだ。
「っと・・・倍返しだ!」
オーブの光線を吸収することで防ぎ切ったゼットはそのエネルギーを利用してエネルギー弾を放ってきた。
「サンダークロスガード!!うおっ!?」
赤い稲妻を纏った両腕をクロスさせてエネルギー弾を防ごうとしたオーブだったけど、それを相殺しきれずにその場に背中から倒れてしまう。
「これでフィニッシュだオーブ!」
倒れているオーブにゼットは槍を突き立てながら降下してくると、オーブは本当の姿に変わって聖剣を掲げた。
「オーブカリバー!」
「うっ・・」
オーブの持つ聖剣が光を放つと、その光に怯んだゼットは一瞬だけ動きを止める。
「オォォォォ・・セイッ!!」
そしてその隙を突いたオーブは空に飛び上がってゼットに一太刀を浴びせた。
「ぐっ・・・」
地上へと落下したゼットは斬られた箇所を押さえながら立ち上がる。あのダメージならもうゼットはまともに動けないはず。
「この戦い、オーブの勝ちだ!・・・えっ?」
私はオーブの勝利を喜んだ瞬間・・・ゼットの傷口が一瞬で塞がってしまったことに驚いた。
「やっぱり強いな。ウルトラマンオーブ・・。こうなりゃとっておきの切り札を使うしかないな」
傷口は回復させたけどダメージ自体は残っている様子のゼットはこのままじゃ勝てないと判断したようで一度人間ぐらいの大きさに戻るとカプセルのようなものを取り出す。
「これはゼットンを粒子分解したデータをカプセルに変換してたものだ。そしてこっちが・・」
それを黒いナックルにセットするとさらにゼットはもう1つカプセルを取り出す。
「バルタン星人のデータだ。異なる2つの力をレッツらまぜまぜしてっと・・・」
ゼットはそのカプセルもナックルにセットすると何やら赤いアイテムでそれをスキャンする。
「大・大・大・大・大変身ッ!」
2つの力を自分の身体に取り込んだゼットは紫色の光に包まれる。そして光が割れて中から出てきたのは細身のゼットンの両腕が鋏になっているような怪獣だった。
「名付けて・・・ゼットンバルタン星人!」
「そ、そのまんまだ」
もう少し捻った名前にすると思ってたら融合元の名前をそのまま繋げただけだった。案外ネーミングセンスはないのかも。
「これになった俺を舐めるなよ」
ゼットンバルタンは残像を残すようなスピードで・・・
「ってあれ?」
残像かと思ったら明らかにそれぞれが別の動きをしていた。あれは所謂『分身』ってのだと思う。バルタン星人の力を取り入れたから分身能力まで手に入れたってこと?
「バルタン星人は宇宙忍者って言われてる宇宙人なんだぜ」
宇宙忍者?・・・宇宙にも忍者っているの?
「これでどうだ!!」
ゼットンバルタンは8人に分身してオーブを取り囲むと、それぞれが両腕の鋏から火球を放ってきた。
「オーブウインドカリバー!」
その火球を竜巻で振り払ったオーブはそのうちの1体に聖剣を振り下ろしたけど、それは分身だったらしくてあっさりと消えてしまう。
「はい、ハズレ・・」
「っ!!」
空振りをしたオーブに対して7人のゼットンバルタンはエネルギー弾を放つと、オーブは水色のマフラーをつけた姿に変わってそれを回避する。
「シュァっ!!」
そしてすぐさま光弾を連射してゼットンバルタン達を攻撃すると本物の1体だけが残った。
「ダァッ!」
空中に飛び上がったオーブは急降下して跳び蹴りを決め込もうとすると、ゼットンバルタンはテレポートでそれを避ける。するとオーブも着地と同時に瞬時に高速移動でテレポートした目の前に移動すると至近距離で光弾を喰らわせた。
「やった!」
直撃した。そう期待したのに爆煙が晴れて見えたのは光線を吸収するバリアのようなものが張られている光景だった。
「惜しかったな!」
「デュァぁぁっ!?」
光弾のエネルギーを至近距離で撃ち返されたオーブは避けきれずに直撃してその場に倒れると胸のタイマーが赤く点滅した。
「やっぱり難易度はウルトラなだけあるぜ。だけどこれで終わりだ」
「やめてぇぇぇっ!!」
ゼットンバルタンは倒れているオーブにトドメを刺そうとしたので、私はそれに対して止めるように叫んだ。
「あなたの勝ちだから!私はあなたのところに行くから!だからオーブを・・・」
「待て杏・・。俺はまだ負けてない」
私はゼットンバルタンに付いていくからオーブの命を奪わないでと叫んでいると・・・オーブは負けを認めずに上半身を起こした。
「何で・・・私が付いていくっていえば地球は助かるんだよ?」
「・・・地球が守られても・・・お前の心が守られてない。俺はアンジェリカに誓ったんだ。守れなかったぶん、お前達を守るってな・・」
再び本当の姿に変わったオーブは聖剣を杖のようにして立ち上がるとその剣先を虹色に輝かせる。
「悪あがきか。ウルトラの戦士は諦めが悪いとは聞いていたが・・・そういうのは嫌いじゃないぜ。足掻いてみろよ!!」
ゼットンバルタンは分身と高速移動で何度もオーブを攻撃するけど・・・オーブはその攻撃に耐え続ける。
「オーブスプリーム・・・」
「これでトドメだァッ!!」
ゼットンバルタンは鋏でオーブを貫こうとすると、オーブは聖剣を振り上げて一太刀を決める。
「ぐっ!?」
「カリバァァッ!!」
そしてその刃を完全に振り上げずにゼットンバルタンの胸元で止めると・・・オーブは世間先から虹色に輝く光線を放ってゼットンバルタンを貫いた。
「悪あがきじゃなくて・・・負けられない意地って奴か。・・・負け・・たぜ」
背中から倒れたゼットンバルタンはそのまま爆発するとオーブは膝をついて光になって消えてしまう。
「ガイ!!」
私はオーブが消えた場所へと走ると・・・ガイは呼吸を荒げながら膝をついていたので私はすぐに駆け寄った。
「・・・確かにあいつの言う通り、お前は特別な存在かもしれない。だけどそれがなんだ・・。お前はお前・・・姫山杏なんだ。アンジェリカの記憶があろうとなかろうと、杏が杏なことは変わらない」
「でも私は変異体らしいんだよ・・。それがみんなに知られたら・・・」
「そんなことでみんながお前のことを嫌いになるわけがないだろ。あの喫茶店に俺も含めて何人の宇宙人がいると思ってるんだ」
ガイのいう通りトリコリには仕事をしているウールとサァラに、よくやってくるヤクトワルトとシノ。スパークドールズ盗難事件以降たまにトリコリにやってくるマロといった宇宙人が足を運んでいる。
「だけど・・・」
「強く生きて欲しい。その想いが届くのはいつかとは思っておったが・・・遺伝子を操作したのがお主をここまで苦しめていたとは・・・」
「え?」
声の聞こえたところに振り向くと・・・そこにはお父さん・・姫山光圀がいた。
「遺伝子を何度も操作したことは謝る。済まなかった。・・・だがこれだけは言わせてくれ。確かに最初は死んだアンジュを忘れられなくて儂はクローンを作り出した。だが儂にとってお主はアンジュのクローンではなく、大切な私のもう1人の娘なんじゃ」
「・・・お、お父さん・・っ!」
私は泣きながらお父さんに抱きつくと、お父さんは優しく私の頭を撫でてくれた。
「分かったろ杏。お前が特別だからって、それでお前を嫌う人なんかいない。だからこれからも胸を張って生きろ。自分が自分であることに自信を持て」
「・・・うんっ」
~~ゼット~
ゲームに負けてからしばらく経った頃、生き残ってしまった俺は円盤へと帰還しようと歩いていた。
「あ~あ。負けちまった」
ウルトラマンオーブ・・・噂以上に強かったぜ。悔しいが負けは負けだ。敗者は潔くこの地を去ろう。
「ちょっと潔すぎるだろ。お前・・・」
「お前は・・・ッ」
潔すぎると声をかけてきた人物に振り返った瞬間・・・俺は刀で斬りつけられてしまう。オーブとの戦いで激しく消耗していた俺はうまく避けることも敵わず・・・最後に視たのは胸の赤い三日月を輝かせた魔人の姿だった。
ウルトラヒーロー大研究
ウルトラマンジード
属性・力(チカラ)属性
未だ謎多きウルトラマンであるウルトラマンジード。俺と同じく2人の先輩方の力を使って変身する戦士らしい。噂によるとあのべリアルさんの息子らしいんだが、その真実はまだ分からない。
ゼットンバルタン星人
属性・光属性
ゼットが謎の道具を用いてゼットンとバルタン星人の力でフュージョンした姿、それがゼットンバルタン星人だ。ただでさえトリックスターなゼットンがバルタン星人の忍術を得て更に厄介になった相手だった。
次回「人物紹介part4」