ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 ウルトラマンジードが楽しみすぎる。


チームゼットンの強襲

~~久遠~

 

 お父様と5年ぶりに直接会ってから2週間近くが過ぎた。あの後お父様は2日ほど日本に滞在してトリコリの事やみんなの事を私の口から話すことができた。そして初めて私はお父様が別の地球から来た人だと聞かされた。

「ねぇ、ガイは知っていたの?お父様が別の地球から来た人だってこと」

 

「知っていたわけじゃない。ザ・ワンのところに走ってる間、久遠よりも先に聞かされていたってだけだ」

 

 私よりもガイに話したのはやっぱり・・・ガイがそうだからかな。

「ガイ・・お父様は元の世界・・・自分の生まれた地球に帰りたいって言ってた?」

 

「それは聞いてないな」

 

 ガイもやっぱり聞いていないんだ。

「だけどまぁ・・・帰ろうと思えばたぶん帰れたかもしれないのにな」

 

 お父様昔ウルトラマンの1人として戦った結果、この地球にやってきたって聞いた。つまり帰ることへのチャンスもあったはずなのに20年以上もここにいたかもしれないってことかな。

「もし今まで帰れなかったとしても・・・今ならオーブがいるから帰れるんだよね」

 

 きっとオーブならお父様を元いた地球へ送り届けることもできるはずかな。

「まぁ、確かに今ならできるだろうな」

 

 やっぱりオーブならできるんだ。

「それを知ったらお父様は帰りたいっていうかな?」

 

 たぶんお父様のことだから自分1人で帰るなんてことは言わないと思うかな。だけどそうすると私達も一緒にって言ってくるかもしれない。

「久遠はどうだ?」

 

「えっ・・・?」

 

「久遠はこの地球じゃなく、お前の親父さんがいた地球で暮らしたいか?」

 

 私は・・・私は・・。

「みんながいるここにいたい」

 

 せっかく友達と呼べる人達ができたんだから・・・ここにいたいと思うかな。

「そう思うなら大丈夫だろ」

 

「どういうこと?」

 

「言葉通りの意味だ。あの人が家族のことを考えずに元の世界に帰るだなんていうと思うか?」

 

「・・・思わないかな」

 

 そう考えるともうお父様は元いた地球に帰ることはないと思うかな。

「でもそれでいいのかな?」

 

「そんなに心配なら自分で聞いてみろ。約束してくれたんだろ?これからはなるべく話せるようにするって」

 

「うん・・!」

 

 今度話せるときにお父様にちゃんと聞いてみよう。元いた地球に帰りたいかって。

「こんちわ~!」

 

 そんな決意を固めていると杏がやってきた。

「あっ杏、今日も来れたんだ」

 

「杏さん。もうすぐ卒業式ですよね?準備などがあるのでは?」

 

 瑠々は杏はもうすぐ中学を卒業するので、高校の準備や片付けがあるのではと尋ねる。

「大丈夫大丈夫。全部、千佳達に任せてきたから」

 

 うん。それは大丈夫じゃない。

「ねぇ、それ大丈夫?怒られたりしない?」

 

「今回は大丈夫。こういうのはいつも任せてる感じだから」

 

「あ、杏がそれなら別にいいんだけど・・・」

 

「そう言えば杏さんは何処の高校に行くのですか?」

 

 杏の通っているお嬢様学校は初等部と中等部だけらしくて、高校は別のところらしいけど、まだ何処に行くかは聞いていなかったかな。

「あれ?まだ言ってなかったっけ?天ノ川高校だよ」

 

 天ノ川って確か音々達の通う高校だったかな。

「てっきりお嬢様学校へと進学すると思っていました」

 

「いったいどうして私達の高校に?」

 

「お父さんがそろそろ共学に慣れておいた方がいいって幾つか候補を挙げてね、せっかくなら知ってる人がいる場所がいいってことで決めたんだ」

 

 普通ならそんな理由でと思うところかもしれないけど、境遇が似ている私には何となくその気持ちが分かった。親が組織のトップだと友達を作りにくいところがあるから、今いる友達を大事にしたいよね。

「てな訳でこれからもよろしくね!音々センパイ!」

 

「せ、先輩・・っ」

 

 音々は今まで自分を呼び捨てにしてた相手がいきなり先輩と呼んできたので照れくさそうな表情をしていた。

「あっれぇ~もしかして照れてるのぉ~?音々センパ~イ」

 

「て、照れてないのです!」

 

 杏はニヤニヤしながらもう一度音々のことを先輩呼びすると、音々は顔を赤くしながらそっぽを向いた。

「・・・・・」

 

 木村君は「あれ?僕は先輩と呼んでくれないの?」と訴えるかのような目をしてるけど、杏はその視線にまったく気づかない。

「どうせ僕なんか・・・いっつも空気ですよ」

 

「そんなことよか音々、ちょっと買い出しに行ってきてくれないか?」

 

 珍しくトリコリの仕事をしている徹さんは音々に買い出しを頼んできた。

「あれ?いつもならウールさんとサァラさんにお願いするのに珍しいですね」

 

「あぁ、喫茶店としてのじゃなくSSPとしての方でな」

 

 確かにSSPとしての方の買い出しじゃ2人にお願いすることは無理かな。

「分かったのです」

 

「これ、メモな。悪いあんちゃん、結構荷物になりそうだからついてやってくんね?」

 

「しょうがないな」

 

「あっ、ガイが行くなら私も行く!」

 

「それじゃ私も・・・」

 

 こうして音々とガイ、杏と私の4人でSSPの買い出しに向かうことになった。

 

~~ガイ~

 

「それでいったい何を頼まれたんだ?」

 

 何を買うかが分からないので尋ねてみると、音々はメモを確認する。

「ATXにSATA、ASUSなどですね」

 

「・・・何それ?」

 

 何ひとつとしてまったく分からない。久遠と杏も「何それ?」という顔をしている。

「簡単に説明するとパソコンの部品なのです。今のままじゃスペックに限界があるのですよ」

 

 へぇ、パソコンってパーツでスペックが変わるのか。

「そういえばガイさんはパソコンが出来なかったですね。今度教えるのですよ」

 

「あぁ。頼むわ。・・・ん?」

 

 俺は音々からパソコンを教わる約束をすると何か気配を感じた。

「っ!?」

 

 それが殺気だと気づいた俺はすぐさま飛び上がると、先ほどまで俺が立っていた場所に3方向から光線が飛んできた。

「えっ?いきなり何かな!?」

 

 前を歩いていた久遠たちはこっちに振り返り光線が直撃して砕けたコンクリートへと視線を向ける。

「どうやら狙われてるようだな」

 

「避けられたか」

 

 それぞれの光線が飛んできた場所から黒いパーカーの人物たちが現れる。

「お前ら・・・いったい何者だ?」

 

 俺は突然襲い掛かって来た3人は一斉に黒いパーカーを投げ捨てる。その3人は地球人ではないそれぞれ別の星の宇宙人の姿があった。

「ゼットン星人ノマル!」

 

「バット星人トング!」

 

「スラン星人ソルド」

 

 ゼットン星人にバット星人、それとスラン星人がまるで日曜朝の3人組みたいなポーズで名乗って来た。

「流石に前に戦った奴らじゃなさそうだな。俺が惹きつけとくから久遠たちは先に逃げてろ」

 

「う、うん。無茶しないでね」

 

 久遠たちを逃がした俺は3人へと視線を向ける。ハイパーゼットンを操ってきたゼットン星人は泡になって溶けたし、マックスさんの力を使っていたスラン星人も確かに倒した。まぁ名前が違うから別人なのは当然か。だけどあの少し太いバット星人は初めてみるな。俺の知ってるのって何というかもっとこうスマートな奴だった気がするんだけど。

「「「我ら!チームゼットン!!」」」

 

「ゼットンだと・・・」

 

 よりにもよってその怪獣の名前がチーム名かよ。

「私がリーダーの・・」

 

「おい待て、何でお前がリーダーなんだ?」

 

「そうだ。何を勝手に決めてるんだ!」

 

 何こいつ等?何でこの場でリーダーを言い争ってるんだよ?

「チームゼットンだぞ!ゼットン星人である俺がリーダーを名乗るにふさわしいに決まってるだろ!」

 

「ゼットン星人が育てたゼットンは人間にあっさり倒されたことがあるって聞いたぞ!」

 

「お前のところはデブいのしか作れないだろ!」

 

「そんなことない!うちのところの若いのは3人のウルトラマンを相手にしても圧倒したというハイパーゼットンを育て上げた奴がいるんだ」

 

「それ、お前じゃないだろ。こっちのが育てたのは全方位バリアが可能な最強クラスのゼットンを・・・」

 

『お前ら何言い争ってんだよ?』

 

 勝手に3人が言い争っていると・・・何処からか通信によるノイズ交じりな声が聞こえてきた。

『雇い主は俺、俺がリーダー』

 

 声の主・・それをわざわざ言うために通信してきたのか?

「僭越ながら・・・貴方様は我々の主であり・・・我々は現場指揮のリーダーについて言い争っていただけで・・」

 

 バット星人が『主』と呼ぶ声の主に言い争いについての言い訳を話し始めた。

『現場指揮ねぇ・・。3人しかいないのにそれ重要か?』

 

 俺もそう思う。

「重要ですとも!そうでなくては連携が取れません!」

 

『じゃあ今回一番活躍した奴がリーダーな』

 

 通信が途絶えた途端、ゼットン星人たちは俺をやる気満々な目で睨みつけてくると一斉にマグマスパークのようなアイテムとゼットンのスパークドールズを取り出してきた。

「白金ガイ!覚悟しろ!」

『『『ゼータライド!ゼットン!』』』

 

「「「ゼットぉぉぉぉン!!」」」

 

 ゼットンのスパークドールズをリードした3人は一斉にその姿をゼットンへと変身させた。

「あの量産タイプっぽいのもライブできんのか・・」

 

見た目から察するにあのマグマスパークもどきは新しくマグマスパークの持ち主になったあいつ等の主が作ったコピー品だろうな。

「コピー品のコピーってのだいぶ劣化しちまうもんだぜ。ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「ダイナさん!」

『ウルトラマンダイナ!』

 

「超新星の光、お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!ゼぺリオンソルジェント!』

 

「光の輝きと共に」

 

 オーブ・ゼぺリオンソルジェントへと変身した俺は3体のゼットンの中心に降り立って構えを取った。

 

 

~~久遠~

 

「光の輝きと共に」

 

 3体の黒い怪獣の真ん中に現れた金のオーブは拳を構えながら口上を述べる。

「頑張ってオーブ!!」

 

「・・・・・」

 

「ん?」

 

 私はいつも通りオーブに声援を送るとすぐ隣にいる杏が浮かない顔・・・というよりもまるで怯えているかのような表情だったことに気がついた。

「どうしたの杏。大丈夫?」

 

「・・・あの怪獣、ゼットンを見ていると不安になるの」

 

「えっ?杏なんであの怪獣の名前を・・・」

 

 ガイからあの怪獣のことを説明されてないのにどうして名前を知っているのかな?

「何度も夢に見たの。あれとは色は違うけど・・・ゼットンって怪獣の攻撃に巻き込まれて私が死んじゃう夢」

 

 あの怪獣・・・ゼットンの攻撃で死んじゃう夢?

「でもそれは夢・・・っ」

 

 それはきっと夢だと否定してあげようとすると・・・またヴィジョンが見えた。目の前にいるゼットンと似ているけど青白く輝いているゼットンがオーブと戦っているヴィジョンだ。

「マガゼットン・・」

 

「えっ?何で久遠もその名前を知ってるの?」

 

 何となく頭に浮かんできた名前に杏が反応した。どうやら杏が怯えているのはそのマガゼットンという怪獣っぽいかな。

「マガゼットンなのですか?」

 

 私達の話に反応した音々は何か思い当たるようにタブレットを取り出す。

「いつもの太平風土記?」

 

「『マガ』と付いているんですからきっと魔王獣の仲間なのです」

 

 目の前に別のゼットンがいるのにここで検索するんだと思いながらも、やはり気になるのでオーブの戦いを見ながらも音々の検索結果を待つ。

「・・・あれ?いつもの太平風土記には載ってないのです」

 

「そりゃそうだよ。マガゼットンが現れたのはルサールカなんだから」

 

 ルサールカって・・・ガイの思い出の場所だよね。

「何でマガゼットンが・・・」

 

「オォォァ!?」

 

「きゃぁっ!?」

 

 私はやたらとマガゼットンのことを知っている杏にその理由を尋ねようとすると、3体のゼットンが放った火球がオーブに直撃してその衝撃がこっちにまで伝わって来た。

「グァ・・・」

 

 いくらオーブといえども3体同時に相手をするのはキツイらしく、まだ胸のタイマーは点滅していないながらもだいぶ息を切らしていた。

「ゼペリジェント光線!」

 

 オーブは片膝をつきながらも1体のゼットンへと光線を放つも、その光線はまるで吸収されるかのようにゼットンに当たる直前で消えてしまった。

「そういえばこの間のゼッパンドンもそれっぽいことをやっていたかな」

 

 思い返してみればゼッパンドンもゼッパンドンシールドとか言いながらシールドに当たった光線を吸収していたかな。ゼットンも同じことをしてオーブの光線を無力化したんだ。

「ッ!!」

 

 ならばと言わんばかりにオーブは青い姿に変わって槍でゼットンを貫こうとすると、1体だけ太いゼットンがその攻撃からその攻撃を受け止めた。

「ゼットォォン・・」

 

「オォォォ・・セイッ!」

 

 肉厚なゼットンは両手でオーブをビシバシと叩くと触覚の部分を掴まれて投げ飛ばされた。

「よしっ!」

 

「ダァァぁっ!」

 

 再び槍を手にしたオーブは太くないながらもマッシブなゼットンに槍を振るおうとすると、そのゼットンは全方位に広げられたバリアでオーブの攻撃を防いだ。

「何なのあのバリア・・っ!?」

 

 普通あんな感じのバリアだったら、全体にエネルギーが均等になってるせいで1度防ぐだけで砕けたりひび割れしてしまいそうなものなのに・・・あのバリアは砕けるどころか傷一つ付いていなかったかな。

「トライデントスラッシュ!!」

 

 オーブは邪魔なバリアを砕こうと連続斬りを仕掛けてみるも、やはりそのバリアは傷一つ付かないままだったかな。

「何て硬いバリア・・・」

 

「オーブランサーシュート!!」

 

 槍の先端から光線を放つと、太くもマッシブでもないゼットンがテレポートで割って入ってその光線を吸収してしまう。普通っぽいゼットンが光線を吸収して、太いのが接近戦。そしてマッシブなのがバリアでオーブの攻撃を防ぐ。結構連携が取れているかな。

「ウルトラハリケェェェン!!」

 

 再び迫って来た太いゼットンをジャイアントスイングで投げ飛ばしたオーブは瞬間移動でマッシブなゼットンの真後ろへと移動して槍で貫こうとすると・・・マッシブなゼットンも瞬間移動をしてオーブの真後ろに立った。

「「「ゼェェトォォン・・」」」

 

 シンプルなゼットンと投げ飛ばされて空中に飛んだままの太いゼットン、そしてマッシブなゼットンは一斉にオーブに火球を放つとそれを避けきれなかったオーブはその場に膝をついてしまった。

「オォォァ・・」

 

 胸のタイマーが赤く点滅し始める。3体同時とはいえやっぱりゼットンって怪獣は並大抵の強さじゃないかな。

「やっぱり・・・ゼットンには・・」

 

杏は完全に怯えてしまっていてオーブがあの3体には勝てないと思いこんじゃってるかな。

「杏・・・オーブを・・」

 

「オーブを信じるのじゃ。杏」

 

 私の話に割り込んできた声に反応して振り返る。そこには70歳ぐらいのお爺ちゃんが立っていた。

「お・・・お父さん。どうしてここに?」

 

「えっ?お父さん?」

 

「杏さんのお父さんということは・・・姫山財閥の総帥・・」

 

「姫山光圀・・・その人ってことか!」

 

 

 

~~杏~

 

 私のお父さん、姫山財閥のトップがここにきたことにみんなは驚いた反応をしている。私も驚いて反応に困っていた。

「え・・えぇ?お父さんどうしてここに・・・?」

 

「しばし休暇を取って来たんじゃよ。もうすぐ杏の卒業式じゃろ?」

 

 そういえばお父さん私が小学生のときも卒業式には来てくれてたっけ。

「休みを取ってきたのはいいけどさ、何でわざわざこんなところに来たの?危ないよ?」

 

「それはお主も同じじゃろう。・・・それにしてもゼットンとは・・」

 

 お父さんは普段のおっとりとした目とは違う鋭い目つきでゼットンを見上げる。というかお父さんもゼットンのことを知っていたんだ。

「どうして貴方もゼットンのことを知っているのです?」

 

「まだ儂が若い時にちょっとのぉ・・・その時もオーブに救われたんじゃよ」

 

 杏は恐る恐るお父さんがゼットンのことを知っている理由を尋ねると、お父さんは遠い記憶を思い出すように語ってくれた。

「・・・むっ、もしやお主が・・」

 

 お父さんは久遠を見て何かに気づいたようだ。

「えと・・私がどうかしましたか?」

 

「ほっほっほっ。杏から話は聞いておる。お主が白神のところの娘じゃな」

 

 どうやらお父さんは久遠のお父さんのことも知っているらしい。

「えとお父様を知っているんですか?」

 

「直接あったことはないが・・・若くして総司令になっただけあり、有名じゃからの」

 

 確かに久遠のお父さんがBRGのトップだったら業界で名前が知られていても当然だよね。

「というかそんなことはいいの!ここに来たら危ないの!ましてや相手はゼットンが3体もなんだよ!!」

 

 ただでさえ並の怪獣よりも強いゼットンが3体も相手でオーブが苦戦してる状況なのにここに来るなんて・・・。

「もしもの事があったらどうするの?」

 

「もしも・・・か。心配せずともよい杏。オーブは必ず勝つ。儂らは信じて見届けるのじゃ」

 

 信じて見届ける・・。

「そうだよ杏。いつもの杏ならオーブの勝利を信じて疑わないかな」

 

 確かにいつもならそうかもしれないけど・・・今回は相手がゼットンだもん。

「やはり心の中にあるもの・・ゼットンへの恐怖は消えぬか」

 

 お父さんは私がゼットンを怖がっていることを知ってるようだった。お父さんには一度も私が死んじゃう夢の事を話したことがないのに。

「守るべきものがある。光の戦士・・・ウルトラマンはその誓いを胸に儂らを守り続けてくれているんじゃ」

 

 守るべきもの・・。

「信じる心は光となり・・・ウルトラマンの力となる。信じるのじゃウルトラマンオーブを」

 

 まるで本当に昔からウルトラマンを知っているような口ぶりのお父さんは私達の信じる心がオーブの強さに繋がると語ってくれた。

「頑張って・・オーブ・・っ!」

 

 私もお父さんの言葉でオーブを信じる決意がかたまり、オーブの勝利を祈った。

 

 

 

~~ガイ~

 

「「「ゼットォォォォン・・」」」

 

 3体のゼットンは膝をついてしまっている俺を取り囲む。本当の俺で勝負するかとも考えたが奴らの瞬間移動には聖剣を持ってでは対応しきれないのでやっぱりこのまま勝負するしかない。

「・・・ん?」

 

 かくなる上はサンダーブレスターでのゴリ押しを仕掛けてみようかと考えているとセブンさんとゼロさんのカードが輝いていることに気づいた。杏と光圀公、親子の俺を信じてくれる心に反応してこの二つの組み合わせが使えるようになったのか。

「今こそ親子の力・・・使わせてもらいます」

 

 俺はオーブリングを取り出す。

「セブンさん!」

『ウルトラセブン!』

 

「ゼロさん!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

「親子の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!エメリウムスラッガー!』

 

 セブンさんとゼロさん。親子であるお二人の力を借りた俺はゼロさんに似た鋭い目つきというよりも全体的にゼロさん似の姿へと変身を遂げた。

「智勇双全、光となりて」

 

 

~~杏~

 

「智勇双全、光となりて」

 

 青くて目つきの鋭い姿になったオーブは右拳に光を集めると一瞬で太いゼットンとの距離を詰めてその右拳を叩き込んだ。

「ゼ・・・ゼットォォ・・ン」

 

「シュァ・・」

 

 太いゼットンはその一撃で爆発すると、シンプルなゼットンとマッシブなゼットンが左右から火球を放ってきた。

「っ!!」

 

 頭のトサカから2つの光の刃を飛ばしたオーブは真ん中のトサカを刃物として投げとばす。それでゼットンが放った火球を切り裂くと右脚に光を集める。

「オォォラァっ!」

 

 そしてシンプルなゼットンに跳び回し蹴りを決め込むと3つの光の刃で追い討ちをかけた。

「こいつでフィニッシュだ!」

 

 左腕を横に向けたオーブはその腕にエネルギーを溜める。

「ワイドスラッガーショット!」

 

 そして腕をL時に組んでマッシブなゼットンにそれを放った。マッシブなゼットンは当然バリアでそれを防ごうとするも、光線の威力はマッシブなゼットンが展開したバリアよりも上だったようで、そのバリアを撃ち砕いて光線がゼットンに浴びせられた。

「ゼ・・・ゼッォォォン・・」

 

 その光線に耐えきれなかったマッシブなゼットンは爆発すると、オーブはこっちの方に振り向いた。

「・・・・・」

 

 こっちを見るその視線はまるで「大丈夫だ」と語り掛けるようだった。そこでようやく私はゼットンに対して抱いていた恐怖心が取り払われた。

「大丈夫じゃよ杏。先ほども言ったがウルトラマンオーブは負けぬ。今度こそ・・・お主を絶対に守ってくれるじゃろう」

 

「今度こそ?・・・」

 

 私はお父さんが『今度こそ』なんて使った理由を尋ねようかとも思ったけど・・・聞くのを辞めた。何となくだけど分かったからだ。たぶん今まで夢の中で見ていたのは『記憶』だ。それも私の記憶じゃなくガイがよく名前を言っていたアンジェリカという人物の・・。そしてたぶん・・・アンジェリカってのはお父様の本当の娘だったんだと思う。だから今、お父んは今度こそなんて言い回しをしたんだ。

「シュゥゥワッチ!」

 

「さて・・・そろそろ帰るかのう」

 

飛び去っていくオーブを見届けたお父さんとともに私は家路を辿る。今までは夢だと思っていたものがアンジェリカの記憶だったんだとすると・・・どうして私はアンジェリカの記憶があるんだろう。

「お父さん・・・」

 

「なんじゃ?」

 

「う、ううん。何でもない」

 

 私はお父さんに何でアンジェリカの記憶があるのかを尋ねようと思ったけど聞くのを止めた。聞いてしまうと後戻りができなくなるような気がしたから・・・私がガイに抱いているこの気持ちがニセモノなのかもしれないという不安が・・・私が『何者』なのかが分からない不安が交差して答えを知るのが怖かった。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンオーブ・エメリウムスラッガー
属性・導(ドウ)属性

 セブンさんとゼロさん、親子であるお2人の力をお借りした姿がエメリウムスラッガーだ。頭部の3つのスラッガーで隙のない連続攻撃を繰り出すだけでなく、ワイドスラッガーショットやトリプルエメリウム光線などの強力な光線技で戦うぞ。

ゼットン
属性・光属性

 数いる怪獣たちの中でも強豪と言われる怪獣、それが宇宙恐竜ゼットンだ。かつてウルトラマンさんを倒したことのあるほどで一兆度の火球だけでなくバリヤー、テレポートに光線吸収などを駆使したトリッキーな戦術も使えるんだ。

次回「先生として」

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