ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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今回は完全オリジナルのフュージョンアップを登場させます。


青春銀河バレンタイン 前編

~~ライドウ~

 

「フム・・」

 

「ショォォラッ!」

 

 訳合って別次元の宇宙へと足を運んでいた俺は『銀河の覇者』と二つ名もある青き光の戦士と怪獣の戦いを上空から観戦していた。

「噂に違わぬ実力者だな」

 

 まぁ、この次元の地球やあの光の戦士などどうでもいい。我が師でありライバルだったリダルホの悲願である『ウルトラマンオーブを倒し、その地球を手に入れる』をこの手で実現する。

「それこそが俺の生きる道なのだ」

 

 師弟だからやライバルとしての情などではない。・・・俺があいつを超えたという証を示すために。

「流れる時への叛逆をしたもの・・・ルギエル。貴様の力、使わせてもらうぞ」

 

 

~~杏~

 

「はぁ・・はぁ・・まだ・・私は戦える」

 

「無謀です。これ以上はおやめください」

 

 またも敗れた私は再度挑もうとすると千佳に止められる。

「止めないで千佳。私はまだ諦めない!」

 

 そうだ。こんなところで諦めたくはない。

「ですが・・・もうチョコレートの材料はないです」

 

 千佳は冷蔵庫へと視線を向ける。私も釣られて冷蔵庫へと視線を向けると既にそこにはチョコレートの材料はなかった。そう今日は2月10日。バレンタインがもうすぐそこまで迫っていた。

「まさかお嬢様のお菓子作りがこれほどまでに壊滅的とは・・」

 

 調理台の上には失敗の山々。自分でもこんなに下手だとは思ってなかった。

「やはり普通に買ったものをプレゼントすれば良いのでは?」

 

「それじゃ意味がないの。自分で作ったのを・・・ガイにあげたいの」

 

 手作りチョコをあげたい。自分で作ったものをガイに食べて欲しいの。

「・・・お嬢様、こういう時は意外と乙女ですね」

 

「それどういう意味?」

 

 めっちゃ失礼なこと言われたよ。長年教育係してる人なのに『意外と』とか。

「まぁ自分で作りたいという気持ちは分かりました。ですが今日はもう材料がないので、また明日練習しましょう」

 

「そ、そうだね」

 

 材料がないなら仕方ないし。

「材料はお嬢様が学校に行ってる間に買い直しておきますが・・・この滅茶苦茶になった失敗作は片付けておいてくださいね」

 

「えっ!?」

 

 これ私が片付けなきゃいけないの?こういうのいつもメイドがやってくれるじゃん!

「ねぇねぇ千佳。私一応お嬢様。財閥の令嬢だよ?」

 

「・・・それが、何か?」

 

 凄く冷たい目だった。

「いえ・・・何でもないです。はい」

 

 その目を見た私は言い返すことなど無理だとすぐに理解した。

「とはいえ食器を洗うぐらいはこちらでやりますよ」

 

「千佳ぁぁぁ~!」

 

 良かったぁ!この量を1人で何とかしろだなんて無理だもん。それに食器を洗ってくれるってんなら、こお失敗作を捨てて食器を元のところにしまうだけだし。

「それじゃ・・・」

 

「お待ちください」

 

 私は失敗作を捨てようとすると、千佳は私の手を掴んだ。

「どったの?」

 

「何か勘違いをなされているようですね?」

 

 勘違い?何が?

「片付けろ。というのはこの失敗作を自分で処理してくださいという意味です」

 

「・・・?だからこうして捨てようと・・・。っ!!」

 

 ここで私は千佳が言わんとしていることをようやく理解した。

「まさか・・そゆこと?」

 

 私はこの失敗作を指さすと、千佳は無言の威圧を向けてきた。間違いない。千佳は私に「自分の失敗したのは自分で食べろ」と言っているんだ。

「チキショ~~~~!!」

 

 引き下がれないことを理解した私は自らの失敗作の一つを口にする。

「・・・うげぇ・・」

 

 その味は我ながらエキセントリックというかなんというか・・・一言で言うと不味い。どうやったらチョコの材料でこんなものができるのって思うほどに不味い。

「ねぇ千佳?」

 

「遠慮します」

 

 1つ食べてみると言う前から断られた。

 

 

 

~~ライドウ~

 

「さてと・・・準備は整いつつあるな」

 

 ウルトラマンオーブのいる次元へと戻って来た俺は銀河の覇者のいる次元で回収したスパークドールズを眺める。侵略作戦を進めるための新たな計画に必要なアイテムは全て揃った。

「そろそろ計画を一段階進めるとするか」

 

 俺は最近作った1つの薬品を取り出すとモニターに地球に生息する怪獣たちを表示する。

「強力な怪獣といえばやはり魔王獣だが・・・既に魔王獣はオーブに敗れているからな」

 

 出来れば魔王獣の中でも特に強力なマガオロチを手に入れたかったが・・・それは既に叶わぬ願いだ。

「しかしなるべく強力な個体が望ましいな」

 

 俺の持つマグマスパークは本物と同じくスパークドールズを解放することができたが、対象をスパークドールズにするという原典であるダークスパークに限りなく近づけるべく改造を施した結果、以前よりも大幅なエネルギー消費があるシロモノになってしまった。なので今はスパークドールズによる駒・・・即戦力となる怪獣が必要だ。

「むっ、これは・・・」

 

 リストを見漁る中、俺は1体の怪獣に目を止める。

「この怪獣・・・ふむ・・」

 

 魔王獣やファイブキングとまではいかないが・・・オーブを焚き付けるには持って来いの個体だ。

「こいつを利用させてもらうとするか」

 

 モニターに表示されている怪獣を利用することにした俺はさっそく円盤を飛ばした。

 

 

 

~~杏~

 

「いよいよ明日かぁ」

 

 バレンタインもいよいよ明日へと迫り、今日はいよいよ練習ではなく明日ガイに渡すためのものを作ろうと意気込みながらもトリコリへと足を運ぶ。

「・・・分かった。俺も探してみる」

 

 中に入るとガイは何だかシリアスな雰囲気で電話をしていた。

「どうしたの?」

 

「睦美さんからの連絡で・・・何でもBRGの保護区域にいた怪獣の1体が行方不明になってしまったらしいのです」

 

 私は音々にその理由を尋ねると・・・トンでもない返しが来た。

「つまり逃げ出したってこと?一大事じゃん!」

 

「それで念のためにとここに電話をしてきたようなのです」

 

「それで逃げた怪獣ってのはどんな怪獣なの?」

 

「伝説魔獣シャザックと呼ばれる怪獣で・・・全長80メートルもの巨体で背中にハリネズミのような棘を持つ怪獣らしいのです」

 

 80メートルって・・・オーブがだいたい50メートルぐらいだからすっごいデカい怪獣じゃん。

「でもさ、そんな大きなのが逃げたんなら足跡ぐらい残るでしょ?」

 

「それがですね・・・。シャザックは翼もないので空も飛べないはずなのに、そこには足跡すら残っていなかったらしいのです」

 

 足跡も残ってないって・・。

「そんな・・まるで攫われたみたいな・・」

 

「攫われた・・か。あながち間違ってないかもな」

 

 私と音々の会話を聞いていたガイが話に入って来た。

「シャザックは伝説の魔獣ってだけあって、かなり珍しい怪獣なんだ。だから金目当ての怪獣ハンターだったりコレクターのような奴らに攫われた可能性も捨てきれない」

 

 やっぱり宇宙人にもそういう密猟者のようなのがいるんだね。

「宛はないがとりあえず探せるだけ探してくる」

 

「あっ、ちょっと・・私も行く!」

 

 こうして私は今日も屋敷で材料を準備して待っててくれているであろう千佳のことなど気にせずにガイの捜索に付いていった。

 

 

~~ガイ~

 

「そんな訳なんだが・・・何か密輸とかしそうな奴を知らないか?」

 

 本当なら変身して空から探そうと思っていたんだが・・・杏が付いてきてしまったので俺は仕方なく知り合いの宇宙人たちに聞き込みをしていた。

「そうは言われてもでおじゃるな・・。そんなことをしそうな宇宙人なんて心当たりが多すぎるでおじゃるよ」

 

 メトロン星人のマロロは心当たりが多すぎて絞り切れないと答えてくる。まぁ、俺も心当たりが多いから聞いて回ってるんだけどな。

「強いてあげるなら・・・マロはナックル星人バンデロが怪しいと思うでおじゃるな」

 

「どんな奴なんだ?」

 

「何でも簡易的ながらも次元を超える道具を所持しているらしいのでおじゃる。それを用いて様々な次元を渡り歩き、金目のものを手にしては富豪コレクターに売りつけて・・・そういえばバンデロは既にウルトラマンゼロ殿に倒されたでおじゃったな」

 

 犯人第一候補のナックル星人バンデロは既にゼロさんに倒されているらしく、すぐに候補から外れた。

「それなら1つ心当たりがあるじゃない」

 

「おっ、ヤクトワルト」

 

 偶然仕事帰りのヤクトワルトに出くわすと、ヤクトワルトは心当たりがあると告げてくる。

「ヤクトワルト殿。お久しぶりでおじゃるな」

 

「お前さん、マロロか。侵略連合から抜け出してたことは知ってたが、こんなところでのんびりしてたんだな」

 

「・・・娘殿のことは手助けできず申し訳なかったでおじゃる」

 

「いいってことさ。俺だって旦那たちの手を借りなきゃどうしよもなかったんだしな」

 

 そう言えばマロロもヤクトワルトも不本意ながらも惑星侵略連合にいたことが会ったんだったな。顔見知りで当然か。

「ねぇねぇ、そんなことよりさ・・」

 

「おっと、脱線しちまってたな。悪いじゃない」

 

 杏の注意を受けたヤクトワルトは思い出したように話の続きを始める。

「惑星侵略連合のボス、リダルホには弟子でありライバルとも言える存在がいたらしいんだ」

 

 ライバルとも言える存在?

「俺もあったことはないし、名前も聞いたことはないんだが・・・そいつはマグ・・」

 

「マグマ星人。・・・なのだろう?」

 

 何処からか声が聞こえたかと思い見渡すも、何処にもそれらしい人物はいなかった。

「いったい何処から・・」

 

「上じゃん」

 

 ヤクトワルトに言われて上を見上げてみると・・・そこには黒い円盤が待機していた。

「久しぶりだな。白金ガイ」

 

 その円盤から降りてきたのは・・・何処かで見覚えのある相手だった。

「・・・どちら様?」

 

「ッ!!・・・マグマ星人ライドウだ!」

 

 思い出せなかった俺は何者かを尋ねると・・・そのマグマ星人はムキになりながらもライドウと名乗った。

「ライドウ・・・っ!思い出した!ファイブキングの時の!!」

 

 5つのスパークドールズを使ってファイブキングを生み出していた宇宙人だ。ファイブキングの方が印象的だったり、最近色々あったりしてすっかり忘れていた。

「今度は何をするつもりだ?」

 

「今度は・・・とはおかしな質問だ。俺がやることは変わらん」

 

 相変わらず地球侵略ってことか。

「地球侵略のため、まずはお前だ。ウルトラマンオーブ」

 

 マグマ星人がそう告げると円盤から怪獣が呼び出される。その怪獣は俺の見覚えのある怪獣だった。

「シャザックだと?」

 

 伝説魔獣シャザック。たぶんあれはBRGの保護区域からいなくなったって睦美が言っていた奴だろうな。ライドウに捕まっていたのか。

「クグツ・・・と呼ばれるものを知っているか?」

 

「クグツだと・・」

 

 クグツ・・。忘れるわけがない。俺がオーブの光に選ばれて初めてのミッション・・・その事件で戦うことになった宇宙悪魔ベゼルブの持っていた猛毒のことだ。その猛毒を受けた相手は刺したベゼルブの意のままにされてしまう。・・・そんな危険なものだ。

「どうやら知っているようだな。なら話は早い」

 

 そう言ったマグマ星人はどこからともなく試験管のようなものに入っている液体を俺に見せつけてくる。

「これはそのクグツを俺なりにブレンドしたものでな・・。この星の人間たちに管理されていた怪獣の1匹にそれを打ち込んだのだ。今のあの怪獣は俺の意のまま・・・ということだ」

 

「・・・・・」

 

 クグツという言葉が出た時点で察しはついていた。あのシャザックはあいつに操られているんだと・・。

「そんなのオーブが何とかできるに決まってるよ!ねっ!ガイ!」

 

「・・・・・」

 

 隣にいる杏は俺なら何とかできると期待を込めた視線を向けながら言ってくるが・・・俺は焦っていた。今の俺にはクグツを解毒できるほどの浄化技がないからだ。いくら本当の姿であるオーブオリジンを取り戻したとはいえ、元々俺は浄化技に優れている方ではない。なので他のウルトラマンさんの力を頼るところなのだが・・・数いるウルトラマンさん達の中でも特に浄化に優れているコスモスさんのカードと相性のいいカードを俺は持っていないので使うことができない。宝の持ち腐れ状態だ。

「さぁ、正々堂々と勝負しようではないか。ウルトラマンオーブ」

 

「何が正々堂々だ・・」

 

 こんな人質を取るようなやり方しやがって。

「ムゥン!!」

 

 巨大化したマグマ星人は右腕にサーベルを装備すると、その切っ先を「さぁ、変身しろ」と言わんばかりに向けてくる。

「ヤクトワルト、2人を頼む」

 

「任されたじゃない」

 

ヤクトワルトに杏とマロロを任せてオーブリングを手にした俺は俺自身のカードをそれにリードする。

『覚醒せよ!オーブオリジン!』

「オーブカリバー!」

 

 オーブカリバーを出現させた俺はそのリングを回転させてトリガーを引く。そして俺はオーブオリジンへと変身した。

「銀河の光が我を呼ぶ!」

 

 

~~杏~

 

「銀河の光が我を呼ぶ!」

 

 本当の姿である聖剣を持った姿のオーブに変身したガイは巨大化したマグマ星人と怪獣のタッグの前に立つ。

「やれ!シャザック!」

 

「オォォォォォ・・・セイッ!」

 

 オーブは聖剣の柄でシャザックを叩いて怯ませるとそれを大きく振りかぶってマグマ星人を斬りつけようとする。するとシャザックはそれからマグマ星人を庇うべくすぐさま移動してオーブの刃の前に立った。

「っ!?」

 

 シャザックを傷つけるわけにはいかないとオーブはすぐに聖剣が当たる前に攻撃を止めたけど・・・その隙を突かれてマグマ星人のサーベルで斬りつけられた。

「デュァ・・!?」

 

「やはりお前なら攻撃できないな。そう思っていたぞ」

 

 あの怪獣は久遠の妹で飛び級できちゃうほど天才の睦美がよく足を運んでるっていう2人の叔母さんの働く保護地域にいる怪獣らしいし・・・それを知ってるオーブも戦いにくいんだと思う。

「オーブフレイム・・・」

 

「おっと・・」

 

 オーブは聖剣を地面に突き立てようとすると、マグマ星人はシャザックの背後に隠れてしまう。そのせいでまたオーブの攻撃が中断された。

「この!卑怯な戦い方するなぁぁぁ!!」

 

「お、おいっ!?」

 

 見ていられなくなった私はヤクトワルト達のところから駆け出すとマグマ星人に近づきそう叫ぶも、マグマ星人は私をチラリと見てすぐにオーブに向き直した。

「私の言葉なんか気にする気ないってこと・・」

 

 ああ言うタイプって卑怯な手段も戦術のうちって割り切っているんじゃなくて、卑怯な手段は当たり前っていうタイプだと思う。

「・・・シュァ!」

 

 オーブもこのままじゃ埒が明かないと思ったのか聖剣を地面に突き立てて素手での戦闘に切り替えた。そんなことをして本当に大丈夫なのかな?

「いやいや・・・ないだろ」

 

 何かいきなり隣にやってきた長身の人が「ない」と言ってきた。

「誰?」

 

「さてと・・・オーブに手を貸してもらいたいしな。この場はそろそろ解決してもらわないと」

 

 そう言った長身の男は懐から何かを取り出す。

「オーブ!これを使え!」

 

 長身の男は取り出したカードをオーブへと投げつけた。

 

 

~~ガイ~

 

「オーブ!これを使え!」

 

 杏の隣まで走って来たその男は俺のカラータイマー目掛けて何かを投げてくる。それは俺の中へと入ってきたので確認をすると・・・それは1枚のカードだった。

「これは・・ギンガさんのカード」

 

 遠い未来の銀河から来たウルトラマンギンガさん。その力が宿っているカードだ。

「というかあの人は・・・」

 

 そこでようやくあの人が何者かということに気づいた。だけどどうしてあの人がここにいるんだ?

「今は考えている暇なんかないな。ギンガさん!」

『ウルトラマンギンガ』

 

「メビウスさん!」

『ウルトラマンメビウス!』

 

「未来を照らす光!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!メビュームエスぺシャリー!』

 

 未来から来たウルトラマンであるギンガさんと未来へと歩むメビウスさん。2人の『未来』を示すウルトラマンの力をお借りした俺は赤と銀の身体に青く輝くクリスタルを纏った姿、メビュームエスぺシャリーへと変身した。

「眩い光で未来を示せ!」

 

 

~~杏~

 

「眩い光で未来を示せ!」

 

 またオーブが新しい姿になった。何だか今回は青いクリスタルが凄くトゲトゲしてる。

「ショォォラッ!」

 

 トゲトゲしながらも青く輝くオーブは襲い掛かってくるシャザックを跳び箱を飛び越えるように流してマグマ星人との距離を詰めた。

「ッ!!」

 

 そしてオーブは光で数本の刃を作り出したら、それを自分の周りで待機させる。そのうちの一本を手にしたオーブはその矛先をマグマ星人へと向けた。

「メビュースぺシャリーブレード!」

 

 それぞれの刃からマグマ星人へと光線が放たれると、マグマ星人はそれをジャンプして避ける。するとオーブの手にしている刃を取り囲むように他の刃が回転しだす。そしてそれは大きな光の剣になる。

「ダァッ!!」

 

 オーブはその光の剣を振り下ろすと、それを避けきれなかったマグマ星人はサーベルでそれを受け止めた。

「オォォォォ・・・セイッ!!」

 

「ぬぅっ!?」

 

 マグマ星人のサーベルがへし折れてオーブの剣がマグマ星人にヒットした。だけどそれは浅くて倒すまでには至らなかった。

「真の姿でなくともこれほどとは・・・侮ってはなかったが・・・こちらの想定をまたしても上回ったか」

 

 傷を押さえながらテレポートでマグマ星人が消えてしまうと、オーブはマグマ星人に無理やり操られていた怪獣の方を振り向いた。

 

 

 

~~ガイ~

 

 さてと次はこっちの操られていた方だな。少し前の俺には浄化技がなかったから、出来なかったが・・・今の俺にはそういうのに優れているコスモスさんのカードがある。だけどコスモスさんと相性の良さそうな相手と言えばパッとイメージできるのはXさんと80さんあたりだ。

「そういやギンガさんにも浄化技があったよな」

 

 そう考えた途端、ギンガさんとコスモスさんのカードが共鳴して、コスモスさんのカードがティガさんのカードと同じように変化した。

「フューチャーモード・・」

 

 コスモスさんの『優しさ』と『強さ』そして『勇気』に『希望』が加わることで更なる進化をしたというウルトラマンコスモス・フューチャーモードのカードだ。

「それでは改めて・・・コスモスさん!」

『ウルトラマンコスモス・フューチャーモード!』

 

「もう1回ギンガさん!」

『ウルトラマンギンガ』

 

「明日を守る希望、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!フューチャーアイズエスぺシャリー!』

 

 コスモスさんとギンガさんの力をお貸しした俺は赤と青のボディに黄緑色い輝くクリスタルを纏った姿・・・フューチャーエスぺシャリーへと変わる。

「未来を創る信じる心」

 

 

~~杏~

 

「未来を創る信じる心」

 

 怪獣の方を振り向いたオーブはまたも見たことない姿に変わる。さっきのは水色のクリスタルだったのに、今度のは黄緑色だ。

「今、元に戻してやる」

 

 オーブが姿を変えるなり怪獣は熱線で攻撃してくると・・・オーブはまるで銀河の星々のような輝きのバリアでそれを防いだ。

「フューチャリングコンファート」

 

 オーブの平手から放たれた光は怪獣を包み込む。眼を赤くして正気を失っていた様子の怪獣は赤い瞳を緑色へと変える。

「邪気を取り払った・・・のでしょうか?」

 

「あの姿のオーブ、そういう技が使えるんだね」

 

 相手を癒したり、浄化したりできる技かぁ。

「・・・昔のオーブにはなかった技だなぁ。えっ?・・・あれ?」

 

 何で私『昔の』なんて言っちゃったんだろう?

「私がガイと再開したのは宇宙人に捕まって助けてもらったときなのに・・・」

 

 出会ったときのことを思い出したら何故か自然と『再開』という言葉が出てきた。昔から夢でオーブを・・・ガイを観ていたから?いや違う。何処かであったことがあるはずだ。

「もっと前に・・・っ・・!」

 

 もっと前にあったことがあるかもしれないと思い出そうとすると・・・蒼く輝く黒い怪獣がいつも夢で見る城に迫ってくる光景をイメージしてしまった。そう言えば最近似たような恐怖を感じたことがあった。ゼッパンドンという怪獣を見た時だ。私はほとんどの怪獣に対して恐怖心よりも好奇心が勝ってるけど・・・私が捕まったときに現れたというハイパーゼットンとゼッパンドンはどうも駄目なんだよなぁ。

「マガゼットン・・」

 

 頭の中にそんな名前が浮かびあがり・・・ついつい口に出してしまう。そんな名前の怪獣なんて知らないはずなのに・・・。

「おい?具合悪そうだけど大丈夫か?」

 

「う、うん。大丈夫」

 

 オーブにカードを投げ渡していた人は私の顔色が悪い事を心配して声をかけてきた。

「シュゥワァッチ!!」

 

 シャザックが住み家へと帰っていくのを見届けたオーブは空へと飛び去っていくとすぐさまガイが戻って来た。

「・・・先ほどはありがとうございました。ヒカルさん」

 

どうやらガイとこの人は知り合いらしい。

「おっと、そういや自己紹介がまだだったな。俺は礼堂ヒカル。よろしくな」

 

「どうしてヒカルさんがこの地球に?」

 

 礼堂ヒカルと名乗った人にガイはこの地球とは異なる場所から来たようなことを尋ねると、ヒカルさんは深刻そうな顔になった。

「悪い。さっきのマグマ星人絡みの件で手を貸してくれ。奴のせいでまたルギエルが復活しそうなんだ」

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンコスモス
属性・癒(イヤシ)属性

 慈愛の勇者という二つ名を持つ青い戦士、ウルトラマンコスモスさん。怪獣を倒すのではなく保護するのが他のウルトラマンさん方との大きな違いで、浄化技を得意とするウルトラマンなんだ。

シャザック
属性・風属性

 カナダの伝説に伝えられる魔獣シャザック。多くの人々は人間を食っちまう魔獣って誤解しているが実際は争い事を好まない大人しい怪獣なんだ。今回暴れたのはマグマ星人ライドウの用意したのせいで毒で操り人形にされちまっていたせいで、コスモスさんの力がなければ助けられなかったかもしれないな。

次回「青春銀河バレンタイン 後編」

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