ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 隠れサブタイトルの答えは5~6話目の後に予定している登場人物紹介の時に発表します。


うどんが食べたい

~久遠~

 

 

「本日からここで働くことになりました照井瑠々です。よろしくお願いします」

 

 マガグランドキングの騒動から3日後、トリコリに新しい娘が入って来た。どうやらマガグランドキングの件でバイト先だったファミレスがなくなったらしく徹さんに誘われる形でここで働くことになったようだ。

「それじゃ、あらためてよろしくねルル!」

 

「はい!久遠さん!」

 

 まだルルと話したのは昨日が初めてだけれど、何となく波長が合いそうなのでうまくやっていけそうな気がする。

「ところでルルはSSPの方では活動しないんでしょ?」

 

「あぁ。確かにSSPの方も人手不足だが向き不向きってのがあるからな。喫茶店の方を頼むことにしたんだ」

 

「不向きって・・・ルルもだいぶ好奇心があるように思うけど?」

 

「・・・SSPに在籍してる他の奴が喫茶店に向いてなくてな。常に喫茶店の方に入れるのが木村だけなんだよ」

 

 確かに木村君だけに喫茶店を任せるのは流石に可哀想だもんね。

「そう言えばまだ他のSSPの人にあったことないんだけど、徹さんと音々以外に誰がいるの?」

 

「あぁ。あと2人・・・姉弟で所属してくれてるのがいるぜ。ブログに寄せられた記事の調べに行ってもらってるから今頃はたぶん・・・四国のどっかだろうな」

 

 四国の何処かってずいぶんとおおざっぱ過ぎやしないかな。

「他のSSPの人にもあってみたい気持ちはあるけど、やっぱりもう一度白銀ガイって人とも会いたいかな」

 

 ルルも彼に助けられたことで名前を知ることができた命の恩人、白銀ガイ。できればもう一度ちゃんとお礼を言いたいけれどあの人は今頃いったいどこで何をしているんだろう?

「案外、あの人がウルトラマンオーブだったりして」

 

 

 

 

 

~~ガイ~

 

 香川県。そこはうどん県と自称するほどのうどんの名産地であり、讃岐うどんがやはり有名だろう。

「讃岐うどん1つ」

 

 そういうわけで俺は香川まで足を運んでうどんを食べにやってきていた。せっかく東京からうどんを食べた後に温泉に行くとしよう。

「ごめんねぇ。今、うどんがつくれないのよ」

 

「うどんが・・・食べれないだと・・」

 

 俺はショックのあまり握った箸を落としてしまう。

「い、いったいどうして?」

 

「なんだかねぇ、この辺りの地域の水が突然悪臭を放つようになっちゃって料理に使うことができなくなっちゃったのよ。この辺りの温泉や銭湯もそのせいで臨時休業になっちゃってねぇ」

 

 うどんだけでなく・・・湯につかることすらも駄目だと・・。だったらいったい俺は何のために香川まで来たんだよ。うどん食いに来たんだぞ。そんで食った後はゆっくり温泉にって思ってたのに・・・。

「・・・分かった。俺がその原因を解決してくる」

 

「え、でも・・」

 

「大丈夫だ。おおよその検討はついてる」

 

 水をこんな風にクサくできるやつは・・・きっとあの魔王獣だ。

「・・・うどんと温泉の恨み。高くつくぜ」

 

 

 

 

~~乃理~

 

「これはどうしたものか」

 

 私の名前は貫葉乃理(いずるはのり)。弟の扇(おうぎ)と共にサムシングサーチピープル、通称SSPに属している。そして現在私はあるピンチを迎えていた。

「姉上、消臭剤です。どうぞ」

 

「あ、あぁ・・」

 

 ホテルのシャワーを浴びた際、水がどういうわけかしばらく洗ってないザリガニの水槽のような強烈なニオイで・・・まぁそのせいで私からそのニオイがしてしまっているというわけだ。

「それで・・・こうなった原因は何か分かったか?」

 

「水道局に問い合わせたところ水質異常は見当たらないようですね。徹さんにこの事態をメールで伝えて調べて貰ってる段階なので今はまだ・・・。しかしこのニオイ。悪臭防止法に引っかかりますね」

 

「むぅ・・」

 

 私は冷蔵庫を開けてみるも中にあるのはビールや炭酸飲料ばかり。普通の水は先ほど慌てていた私が頭からかぶったことで既になくなってしまっている。

「今の現状で普通の水を買うことは難しいでしょう。スーパーの無料水に行列ができているようですが、実のところあれは洗浄水、もとは水道水なのであの水もおそらくは・・・」

 

「こうなれば・・・奥の手だ」

 

 そう言った私は近所の商店で大量のしょうがを買い、それを半分に切ったりして着てるジャージに巻き付けたりテープで張り付ける。

「どうだ!父から臭みを取るにはしょうがが一番だと教わったのだぞ!」

 

「流石姉上。よくお父上から教わったことを覚えてらっしゃいましたね。確かにしょうがにはジンギペロール、セスキテルペンという臭いを打ち消す成分が含まれています。とは言え・・・」

 

 これだけのしょうがを以てしても臭いを打ち消しきることはできず、何より見栄えが悪すぎる。これでは私の目指す『いい女』からはほど遠い。

「おや、徹さんから電話ですね」

 

 ようやく調査結果が来たか。

「もしもし・・・」

 

『おう、扇。音々が調べてくれたおかげで少しずつ分かってきたぜ。どうやら各地で似たようなことが報告されててな。何処も臭いの原因を解明するには至ってないんだ』

 

「ですが電話をかけてきたということは・・・何かを掴んだということですよね?」

 

『あぁ。ここからが本題だ。例の太平風土記にそれらしい記述があったんだ。むくつげなるもの、巨大なる魔物禍邪波が現れ水を禍々す。海の悪臭十合わせたるばかりて井戸からも悪臭漂い・・・ってな』

 

 マガジャッパ・・。確か東京の方ではマガバッサーとマガグランドキングという2体の怪獣が猛威を振るい、今回も怪獣騒動の可能性があるということか。

「怪獣事件の可能性があるということは・・・」

 

『そうだ。俺達SSPの案件だ。そしてマガジャッパがいる可能性がある湖の特定も済ませている。悪いがそこに向かってくれないか?』

 

「姉上、どうします?」

 

 愚問だな扇。答えは決まっているというのに。

「湖のひみつ。暴きに行くに決まっているだろう。サムシングサーチピープル!出動だ!」

 

 

 

 

 

~~ガイ~

 

 ハーモニカを奏でながら魔王獣が発する気配を辿っていくと、町からそう遠くない湖には地球の生物で言うところのタツノオトシゴのような顔をした今回の騒動の発端。水の魔王獣マガジャッパがまるで湯にでも浸かるように湖に浸かってゆったりとしていた。

「大自然を風呂代わりか。・・・おいお前!湯船につかる時はちゃんとかけ湯してから入れ!!マナー違反だろ!!」

 

 俺の声が聞こえてるのか聞こえてないのか、マガジャッパは呆けた表情のまま湖に浸かったままだ。

「おいおい。魔王獣の水浴び程度に何、そこまで声を荒げているんだ」

 

 そんな俺をあざ笑うようにジャグラーが湖へとやってきた。今日は一段とその胡散臭い笑い顔がイラつくな。

「ところで・・・これは何でしょうか?」

 

 ジャグラーの手にはオーブリングが握られていた。こいつ・・・いつの間に俺から掠め取りやがったんだ?

「不甲斐ないなぁ。実に不甲斐ない。かの国に光の英雄とうたわれたお前が大切なものをこんなに簡単に奪われていいのか?」

 

 光の英雄・・・か。久しぶりに言われたな。でも俺はそんな大層なものじゃない。・・・俺は結局守れなかったんだから。

「ほら、取り返してみろよ。昔のお前自身でな」

 

 ジャグラーはオーブリングを突き出して取り返すように挑発してくる。

「昔も今も・・・俺は俺だ」

 

「カッコいいなぁ。他のウルトラマンの力を借りなきゃ戦えないやつが・・・」

 

 挑発だということは分かってはいるが、オーブリングを取り戻さないことには始まらないと考えた俺はジャグラーへと駆け出して殴り掛かるも右腕でガードされる。続けて回し蹴りを仕掛けるもしゃがんで避けられてしまった。

「俺は本気のお前と殺り合いたいんだ」

 

 今度は高速で連続パンチで攻めてみるも、ジャグラーも高速の動きでそれを避けてカウンターのボディーブローをしてきた。

「くっ・・」

 

 それを両腕でガードするとジャグラーは顔を間近に近づけてくる。

「どうした?こんなものか?今のお前の力は?」

 

「ダァッ!」

 

 その煽りの隙をついて膝蹴りをオーブリングを手にするジャグラーの手にヒットさせ、空中へと飛ばされたオーブリングをキャッチして取り戻す。するとジャグラーは俺の背後へと回り込んだ。

「やればできるじゃないか。完全には錆びついていないようだな」

 

 ニヤリと笑ったジャグラーはスタスタとこの場を歩き去っていく。俺はさっそくマガジャッパへと挑もうとオーブリングを前に構えたそのタイミングで背後から誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。

「姉上、あちらを・・」

 

「あれがマガジャッパか」

 

 あの姉弟らしい男女・・・マガジャッパのことを知ってるのか。良く見ると『SSP』の腕章をつけてるな。ってことはマガバッサーやマガグランドキングの時に見かけたあの兄妹の仲間か。だがそろそろマガジャッパも動き出しそうな雰囲気だし、次に動いたら香川の水が全滅しそうだ。そろそろ変身しないとな。

「お前ら・・。ここは危ないからとっとと離れろ」

 

「それはお互いさまだろう。というかお前は何者だ?」

 

「俺はガイ。まぁ・・・あんな奴らの専門家みたいなもんだ」

 

 研究の方じゃなくどちらかと言えば倒すほうだがな。

「専門家だと!?聞いたか扇!」

 

「えぇ。専門家の人がご一緒なら安心ですね」

 

「私は貫葉乃理。こっちは弟の扇だ」

 

「よろしくお願いします」

 

「というわけでガイ。旅は道ずれという言葉もあるし、協力しあおうじゃないか!」

 

 こいつら、あくまで引き下がるどころか一緒に行動すると言い出してきやがったよ。

「とりあえずここを離れるぞ。あいつは湖から湖に温泉巡りみたいに移動する奴だ。一応あいつとの距離はあるが・・・あいつ自身のニオイは汚染された水以上だぞ」

 

「姉上。流石にこれ以上のニオイとなれば・・・」

 

「あぁ。これ以上は耐えられないな。撮影しながら距離を取ろう」

 

 よし、とりあえずこれで2人ともこの場から離れてくれそうだな。そう一安心した瞬間だった・・。

「っ!?危ない!!」

 

「えっ・・・」

 

 このタイミングで動き出したマガジャッパがこちらへと水流を放ってきたので俺はすぐさま乃理を庇って水流に吹き飛ばされた。

 

 

 

~~乃理~

 

「ガァァァァイ!!?」

 

 私を庇ってガイがマガジャッパが放った水流に吹き飛ばされてしまった。今すぐ助けに行かなくては・・

「いけません姉上!危険です!」

 

 ガイを助けに行こうとすると扇が私の肩を掴んで止めてくる。

「離せ扇!」

 

「まずはガイさんの言っていた通り、マガジャッパとの距離を取るべきです。このまま動いて二次災害となってしまうより、マガジャッパが活動を停止してからの方がよろしいかと・・・」

 

 扇の言うことは確かに正論だ。言ってることも正しい。

「だが同行を許可してもらったうえに助けられたのだぞ。それだというのに置いて先に逃げるなどという恩を仇で返すことなどできん!」

 

 助けられた恩を返さず逃げるなどということはできん。そのことを話した私は水流でガイが吹き飛ばされた方角へと駆け出した。

 

 

 

~~ガイ~

 

「いてて・・。あいついきなり水をぶっ放しやがって・・」

 

 しかしまぁ、これでそれなりにあの2人との距離は取れたか。今なら変身できるチャンスだな。

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと姿を変えた俺はちょうど湖から上がったマガジャッパの道を塞ぐように出現する。

「俺の名はオーブ!闇を照らして悪を・・・デュォ!?」

 

 

 

 

~~乃理~

 

「闇を照らして悪を・・・デュォ!?」

 

 ガイの行方を捜している最中、ここ最近話題のウルトラマンオーブが私達の前に現れて口上を述べていると・・・マガジャッパは敵を見つけたと言わんばかりにウルトラマンオーブへと飛びかかって来た。

「あいつ、ヒーローが口上を述べているタイミングで攻撃を仕掛けてくるとはなんと無粋なことを・・」

 

 飛びつかれたはマガジャッパのニオイが私達の想像以上なのか臭そうな反応をしている。正直1キロ以上離れているここですら一週間洗ってない柔道着よりもひどい臭いがする。

「デュゥゥ・・ワぁ・・」

 

 ウルトラマンオーブは何とか離れようとマガジャッパを突き放そうとするも、マガジャッパはそれでも寄ってくる。

「デュラァ!!」

 

 マガジャッパの腹部にキックを叩き込んで距離を取ったウルトラマンオーブは続けて首にチョップを入れようとするも、口元を押さえながら後ろへと下がり青白い光を手裏剣のような形にするとそれを連続で投げつける。

「デュァ!デュ、デュアァ!!」

 

 しかしマガジャッパの外皮は思いの外硬いらしく、その光の手裏剣もあっさりと弾かれてしまっている。

「何だか引き気味に投げている気がするな」

 

「おそらくウルトラマンもマガジャッパの悪臭で近づきたくないんでしょうね」

 

「デュァァァァ!?」

 

 流石のウルトラマンオーブもこのニオイには耐えられず動きが鈍っているためマガジャッパの水流攻撃を避けきれずに直撃して倒れてしまうと今にも吐きそうに口の部分を押さえた。

「お、オェェ・・」

 

 そんな苦しむオーブを何度か踏みつけたマガジャッパは強烈な吸引力でウルトラマンオーブを吸い寄せた。

「ウルトラマンオーブっ!」

 

「グサァァ!?グァァ・・・」

 

 私達は幸いマガジャッパの後ろ側でその吸引には巻き込まれなかったが、マガジャッパに吸い寄せられて掴まれたウルトラマンオーブはその口臭を間近で受けてしまうこととなり臭そうにもがいている。

「デュゥゥゥワ!!ゴォ!?」

 

 何度も肘打ちをすることで何とかマガジャッパの拘束から抜け出せたウルトラマンオーブだったが・・・尻尾の不意打ちによって転倒してしまう。するとマガジャッパはうっすらと少しずつ透明になり、見えなくなってしまう。

「あの巨体で周囲に擬態して透明になるとは・・」

 

「いったい何処に・・・」

 

 見えなくなったマガジャッパが何処に行ったのかと見渡すと、オーブは背後から見えるようになったマガジャッパの体当たりによる奇襲を受けて再び倒れてしまった。

「ダァ・・・!?」

 

 そして再び強烈な吸引力でウルトラマンオーブを引き寄せた。

「グサァァ!?グサァァ・・・」

 

 マガジャッパの拘束から抜け出そうと抵抗するウルトラマンオーブは白い光に包まれた。

「ぬおっ!?」

 

 何が起きたのか分からないが、ウルトラマンオーブが白い光に包まれたかと思うとマガジャッパの手元からは消えていた。

「ウルトラマンオーブはいったいどこに?」

 

「姉上、あれを!」

 

「赤い・・・巨人?」

 

 扇の指さす場所へと視線を向けるとマガジャッパから少し離れた場所に2本の角を生やした赤い巨人が立っていた。

 

 

 

~~ガイ~

 

「グサァァ!?グァァ・・・」

 

 臭い!臭すぎる!チクショウ、こいつのせいで風呂には入れないしうどんも食べられない。その上にこのニオイだなんて・・・こうなったら新しい力を使ってやる!!

「タロウさん!」

『ウルトラマンタロウ!』

 

 2本の角を持つ赤いウルトラ戦士。ウルトラマンナンバー6ことウルトラマンタロウさん。マガグランドキングとの戦いの時に手に入れた力だ。

「メビウスさん!」

『ウルトラマンメビウス!』

 

 2枚目にリードするのはウルトラ兄弟10人目の戦士にしてウルトラ10勇士という2つの肩書きを持つウルトラマンメビウスさん。マガバッサーとの戦いで手に入れた力だ。

「熱いやつ、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!バーンマイト!』

 

 タロウさんとメビウスさん。2人の熱い力をお借りして俺は2本の角に金色のラインが入った赤き姿、オーブ・バーンマイトへと変身した。

「紅に燃えるぜ!!」

 

 そう口上を述べた俺はジャンプをしながら身体を回転させ、タロウさんの得意技らしいスワローキックをマガジャッパへとヒットさせる。

「ドォラ!ドラドラドラドラ!」

 

 さらにスぺシウムゼぺリオンの時よりも強めなパンチを連続で打ち込んだ。

 

 

 

 

~~乃理~

「ドォラ!ドラドラドラドラ!」

 

 赤くなったウルトラマンオーブは先ほどまでの姿よりも好戦的なようで、より力の入った拳でマガジャッパを殴りつける。

「シェァ!」

 

 そして右手人差し指をマガジャッパの鼻穴へと突っ込んで、そのまま前へと押し出した。

「ダァァァァラァ!!」

 

 さらには首を両腕で押さえ込みジャイアントスイングで投げ飛ばし、起き上がろうとするマガジャッパにフライングプレスを決め込む。

「あの赤い姿・・・先ほどまでの姿以上に格闘戦をしていますね」

 

 紫の姿の時は格闘だけではなく、光の輪を手裏剣のように投げたりした中距離の戦闘もしていたが、あの赤い姿は文字通り『全身』を使ったプロレスのような戦闘スタイルをしている。

「オォォォラァ!!」

 

 どうやらあの姿は炎を扱うこともできるようで、燃える拳をマガジャッパの顔面へと叩き込んだ。

「俺に触ると火傷するぜ!」

 

 そう宣告したウルトラマンオーブは全身に炎を纏いながらマガジャッパへと駆け出していく。

「触ると火傷すると忠告したのに自分から迫っていいくのか」

 

「姉上、気にするのはそこではありませんよ」

 

「ストビュゥゥゥム!ダイナマイトオォォォォォォォォ!!!」

 

 ウルトラマンオーブの炎を纏った体当たりがマガジャッパへと炸裂し、大爆発を起こす。それなりに距離を取っていた私達はその爆発に巻き込まれはしなかったが、私達のところまでその爆風が吹き荒れた。

「この爆発・・。まるで自爆技のようですね」

 

「自爆だと!!ウルトラマンオーブは無事なのか!?」

 

「ディァ・・・」

 

 そして爆煙が収まるとそこにはウルトラマンオーブが立っている。てっきり扇の言う通り自爆してしまったのかと思いヒヤヒヤしたぞ。

「シュゥゥゥワッ!!」

 

 ウルトラマンオーブが空へと飛び去っていく際の風圧は爆発で燃えていた木々の炎を消さる。

「徹さんが言っていた通りまさに『正義のヒーロー』でしたね。ウルトラマンオーブ、いったい何者なのでしょうか?」

 

「そうだな。・・・ってそれよりガイだ!水流で飛ばされてしまったガイを探さなくては!?」

 

 ウルトラマンオーブとマガジャッパの戦いですっかり忘れていたがガイの行方が分からなくなったままだった。急ぎ探さなくては・・・。

 

 

 

 

 

~~ガイ~

 

 人間体へと戻った俺はマガクリスタルへとオーブリングを向けてクリスタルから『力』を取り出した。

「おっ。マガジャッパを封印していたのはジャックさんの力だったんですね。お疲れ様です」

 

 まさかマガジャッパを封印していたのがジャックさんだったのは予想外だったな。

「・・・クッサ・・」

 

 カードをホルダーにしまった俺は自身のニオイを嗅いでみる。予想通りマガジャッパの戦闘でニオイが染みついていて、相当臭くなっていた。

「こりゃうどん食いに行く前に温泉だな」

 

「おぉ!ガイも無事だったんだな!」

 

 温泉へと向けて歩き出そうとすると偶然にも乃理と扇と再開した。

「あぁ。だけど奴のせいでニオイがだいぶ酷いんでな。これから温泉に向かうつもりだ」

 

「確かにあのマガジャッパという怪獣のニオイはかなり酷かったからな。私達も同行するとしよう」

 

 まぁ、あいつの近くにいたんだから温泉に入ってニオイを落としたくなるのは当然だな。

「マガジャッパがいなくなったので2~3時間後には営業を再開する場所も出てくるはずですね。となると夕食も近くで食べられそうな場所が良いですね。・・・この場所はどうでしょう?」

 

 スマホを取り出した扇はここからそれなりに近い温泉施設の地図を見せてくる。

「この近くには有名なうどん屋が・・・」

 

「うどんだと!!よし!そこに行こう!」

 

 マガジャッパのせいで予定が狂わされたがそもそもここにはうどんを食いに来たんだ。ここまで来たらうどんは絶対に食べるぞ。

「決まりだな!では向かうとするか!」

 

 事件解決後の温泉で汗とニオイを落とした後に食べた讃岐うどんはマガジャッパへの怒りを忘れるほど格別だった。

 

 

 

~~ジャグラー~

 

「流石はウルトラマンオーブ。実に順調な働きぶりだ」

 

 ガイがマガクリスタルからウルトラマンのカードを取り出しているのを眺めつつ、俺もダークリングで悪しき力を収集してマガジャッパのカードを手にする。

「これで残る魔王獣のカードは1枚。火の魔王獣だけとなった。最後の1枚も期待しているぞ」

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンジャック
属性:盾(タテ)属性

 帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックさん。万能武器のウルトラブレスレットを巧みに使いこなし、ゼロさんからも「武器の扱いに関しては一日の長がある」と言われるほどの実力者だ。
 

マガジャッパ
属性:水属性

 水を司る魔王獣マガジャッパ。強烈な臭気を放って湖に浸かるだけで辺りの水がひどいニオイになっちまうほどの迷惑なやつだ。酷いニオイのわりには身体を透明にしたり両手の吸盤で相手を吸い寄せたりと器用なこともしてきたな。

次回「真夏の昼の熱波」

 

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