ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 5月28日から番外編の『ULTRAMISSION ORB』をスタートさせます。


復活の聖剣

~~ジャグラー~

 

 ルサールカでの戦いから数時間後、日本では既に深夜となっていて俺は真夜中の病院へとやってくると盗んだ白衣を着て1人の女のもとを訪れていた。

「白神さぁ~ん。白神久遠さぁ~ん。診察ですよ~」

 

 白神久遠といういつもガイを付け回している女の1人だ。こいつは別次元から来たロボットとオーブの戦いに巻き込まれて瀕死の重体となって病院行きとなったらしいが・・・とても地球人とは思えない回復力で既に歩けるようになるまで回復をしているらしい。

「脈を測りますねぇ~」

 

「っ!?」

 

 血圧を測ろうと右手首を握りしめると白神久遠がそれに気がついて飛び起きた。

「おやぁ、脈拍が上がってますね。少し熱もあるようだ。恋の病ってやつかな?」

 

 俺はそう嘲笑いながらも白神久遠の手を引き寄せながら顔を近づける。

「何故マスコミに本当のことを言わない?ウルトラマンオーブには失望した。奴は人類の敵でこの星から排除するべきだと。お前がそういえば人類は一斉にオーブを敵視する。たとえそこまでとならなくてもBRGという組織は確実にオーブを排除しにかかってくれるはずだぞ」

 

 既にこいつの父親がBRGのトップだということは調べ終えているんだ。この女がオーブに敵意を向けた時点でオーブは人間の信頼を完全に失い、守るべき人間から攻撃を受けるはめになる。

「オーブは敵なんかじゃない!きっと自分の力の大きさに苦しんでいるだけかな!いったいなんであなたはオーブのことを憎んでいるの?何を知っているの?ガイは今どこにいるの?」

 

「あいつはあなたのことを置いて逃げだした。そんな男の話などどうでもいい」

 

「どうでも良くなんかない!きっと私達には言えない事情があるから去っていったんだと思う」

 

 そういえばガイは極力自分がオーブであることを隠していたな。

「ガイさんは必ず帰ってくる」

 

「フッ・・」

 

 自分はガイのことを信じているというような目線に俺はついつい笑ってしまう。

「随分と肩を持つじゃないか。・・・試してみるか?」

 

 俺は刀の刃を抜き、それを振るう。そして白神久遠のすぐ横に置かれていたペンダントを斬りつけて真っ二つにしてやった。

「ハッハっ・・。次はお前を切り裂くぞ」

 

 魔人態へと姿を変えた俺は今度は白神久遠へと向けて刀を振るおうとした瞬間、白く輝く光が俺の前を通り過ぎた。

「遅かったな」

 

 光に選ばれた男・・ガイだ。

「あと少しであの世行きだったぞ」

 

 俺が忠告してやると気を失った白神久遠を抱えたガイは光の速さでこの場を去っていった。

 

 

~~久遠~

 

「あれ?・・ここ何処かな?」

 

 目が覚めると病院ではない何処かのベンチで寝かされていた。

「確か夜にジャグラーがやってきて刀が振り下ろされそうになってそれから・・どうしたんだったかな?」

 

 夜に起きたことを思い出そうとしているとすぐ近くに私達のもとから姿を消してしまったガイがいたことに気づいた。

「・・・済まない久遠。俺のせいでまた巻き込んじまった。お前のお守り・・・このペンダントも壊されちまった。これ以上大切なものを失いたくないのに・・・。俺といるとみんな不幸になる」

 

「勝手に決めないで欲しいかな。あなたが何者で何を抱えているのかは分からないけど一緒にいるって決めたから。私が自分で決めたの」

 

 そう告げた私はガイが手に持っていた真っ二つにされてたペンダントに視線を向ける。

「それね。私の曾御婆様の代から受け継がれてきたお守りなの。動乱の時代を生き抜いた曾御婆様。大怪我をして発見された時にはそれよりも前の記憶をなくしちゃっていたらしいけど・・・それでも奇跡的な回復力で持ち直して50歳ぐらいまで生きたんだって」

 

 私はお母様から聞かされたことのある曾御婆様の話をガイに語った。

 

 

 

~~乃理~

 ガイと出会った翌日、流石にそろそろ手持ちの資金が尽きそうなので偶然ルサールカで出会えた杏とともに私たちは日本へと帰国した。

「なるほど。ガイさんは大切な人をルサールカで・・・」

 

 トリコリへと戻って来た私はルサールカでの出来事をみんなに話した。

「乃理さん達が戻ってくる少し前にBRGはオーブを攻撃対象に指定したと公式発表があったのです」

 

 そんな・・。何もオーブを攻撃対象にするだなんて・・。

「会見で日本支部代表の人は『オーブに助けられてきた人には何もそこまでと思う人もいるとは思う。だが守るということは何かを傷つけなければならないということだ。それを分かってほしい』と言っていました」

 

 守ることは傷つけること・・・か。

「それはオーブも同じなのかもな。何かを守るために何かを傷つける。正義にも光と闇の面がある」

 

 ようやく私にも分かって来た。正義には光と闇があり、正義の味方というのは光と闇の面から戦う力のない正義のために前に出てくれる存在だったんだな。

「はい、もしもし・・・あぁ、久遠の妹の・・」

 

 私がようやく正義とはなんなのかを理解していると徹に電話がかかってくる。どうやら久遠の妹である睦美からの電話なようだ。

「何!?嬢ちゃんが病室からいなくなっただと!?」

 

 その電話はまだ入院中である久遠が病室から姿を消したという連絡だった。

 

~~ガイ~

「ガイはオーブのことをどう思ってるの?」

 

 一通り曾御婆さんの話を終えた久遠は俺にオーブのことを尋ねてきた。

 

「なんだいきなり?」

 

「あの男・・・ジャグラーが言ってたの。世の中にはオーブを非難する人も多いけど私はオーブを信じてる。ギャラクトロンを倒した時、確かにオーブは私のことを傷つけた。けれど今私がこうして生きていられるのはオーブのおかげかな。たとえ世界中の人々がオーブの敵になっても、私はオーブに救いの手を差し伸べたい」

 

 そう言った久遠はベンチから立ち上がると青空を見上げる。

「握った手の中、愛が生まれる。曾御婆様の遺言なの」

 

「愛・・か」

 

「~~ ~ 」

 

 久遠は空を見上げながら歌を歌い始める。このメロディ・・・アンジェリカがよく歌っていたメロディだ。

「どうしてそれを歌えるんだ?」

 

「曾御婆様が子守歌として歌ってくれていたメロディだんだって。私の御婆様もよく私にこれを聞かせてくれてて、いつの間にか覚えてたんだ」

 

 偶然ってのもあるもんだなと思いながらも俺は手に握るペンダントを再度眺めると、そのペンダントの中に何か紙のようなものが入ってることに気がついた。

「これは・・・写真か?」

 

 真っ二つになっているペンダントの中にそれぞれ入っていた写真を合わせてみると・・・そこには俺とアンジェリカが写っていた。

「まさか・・・」

 

 そう言えばさっき久遠は曾御婆さんが重体で記憶を失っていたと言っていた。

「なぁ久遠、その曾婆さんが重体で発見された場所ってどこなんだ?」

 

「確かルサールカの森の近くって聞いているかな」

 

 ルサールカの森の近く。その言葉で俺は確信した。久遠の曾婆さんというのはアンジェリカのことで、アンジェリカはあの戦いに巻き込まれて記憶を失いながらも生きててくれたんだな。そして今ここにいる久遠まで命を繋いでいてくれたのか。

「生きていてくれて・・・ありがとう」

 

「きゃっ・・!?」

 

 俺は空を見上げていた久遠に後ろから抱きつく。アンジェリカがあの惨劇を生き抜いててくれたことと、久遠が生きていたくれたことに対してお礼を言いながら。

「久遠、頼みがある」

 

「な、何かな?」

 

 久遠は少し顔を赤くしている。まだ万全じゃないのに無理をさせたから熱が上がってきちまったんだろうな。

「次にオーブが現れたら・・・さっきの歌を聴かせてやってくれ」

 

 

~~久遠~

 

「次にオーブが現れたら・・・さっきの歌を聴かせてやってくれ」

 

 後ろから抱きついてきたガイにドキドキして顔を赤くしてしまっていると、ガイはそう告げてくる。

「次に現れるオーブはまた力を制御できずに暴れてしまうかもしれない。だけどその歌があればオーブは闇に呑まれない。オーブを救ってやってほしい」

 

「分かった・・」

 

 ガイの言葉に頷いた瞬間、少し先の空がいきなり黒く曇り出す。すると赤い雷とともにマガオロチやマガパンドンに少し似ているけど違う怪獣が現れた。

「ゼッパンドン・・ジャグラーのやつまた・・・」

 

 どうやらあの怪獣はゼッパンドンって名前の怪獣のようかな。

「これ、返すぞ」

 

 ガイはペンダントを返してくれると真剣な眼差しで私を見つめてくる。

「久遠、俺は必ず帰ってくる。・・・必ず」

 

 そう言い残したガイはゼッパンドンの方へと走っていった。

 

 

 

~~ガイ~

 

「ジャグラー・・・」

 

「全力で来い。俺に太刀打ちできるのは闇の力だけだ」

 

 ゼッパンドンの中にいるジャグラーにそう言われた俺はホルダーからべリアルさんのカードを取り出すと・・・俺は久遠と杏のことを考える。

「俺を信じて待っててくれている人達がいる。だから俺はもう闇を恐れない。2人のくれた勇気で闇を抱きしめて見せる!ゾフィーさん!」

『ゾフィー!』

 

「べリアルさん!」

『ウルトラマンべリアル!』

 

「光と闇の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!サンダーブレスター!』

 

 オーブ・サンダーブレスターへと変身した俺はゼッパンドンと向かい立つ。

「闇ヲ抱イて光とナる!」

 

 

~~久遠~

 

「闇ヲ抱イて光とナる!」

 

 禍々しい黒い姿となって現れたオーブはガイがゼッパンドンと呼んでいた怪獣と向かい合う。

「それでいい・・」

 

「オぉォッ!!」

 

ゼッパンドン・・・いいや、たぶんその中にいるんだと思うジャグラーはオーブがあの姿になって喜ぶような反応をすると、オーブはゼッパンドンに駆け出して殴り掛かった。

「嬢ちゃん!どうしてこんなところにいるんだよ!」

 

 オーブとゼッパンドンの戦いを見守っていると偶然私を見つけた様子の徹さん達が近づいてきた。

「ジャグラーに襲われそうになってたのをガイに助けられたの」

 

「ガイに!?・・・そうか。それで・・」

 

 徹さんは納得しながらオーブとゼッパンドンの戦いを見上げる。

「あの見た目、宇宙恐竜ゼットンと双頭怪獣パンドンが合わさったような怪獣ですね」

 

「ガイがあの怪獣のことをゼッパンドンって呼んでいたかな」

 

「ゼッパンドン・・。やっぱりゼットンとパンドンが合わさった怪獣なのですね」

 

「ヴぉおぉォォぉォ!!」

 

 連続パンチがまるで通用していなかったオーブは雄叫びを上げながら首と腹部を掴んで持ち上げる。パンチが通用しないなんなら地面に叩きつけてダメージを与えるつもりかな。

「ゼッパンドン・・」

 

「ヴぁぉ!?」

 

 ゼッパンドンは「そんなことは読めていた」かとでもいうかのように自身を持ち上げているオーブに対して火球を放って怯ませた。

「ゼッパンドン・・」

 

 持ち上げていられなくなったオーブがゼッパンドンを離して数歩後ろへと下がると、ゼッパンドンはオーブを蹴りつけ、追い討ちをかけるように何度も叩く。

「ヴォぉォ・・・ッ!」

 

 その攻撃に怯み後ろへと下がったオーブは自身のすぐ横に20メートルぐらいありそうな電波塔があることに気がついた。

「まさか・・っ!」

 

「ヴォヴォォ!!」

 

 私達の予想通りオーブはその電波塔を引き抜いてまるで棍棒のように振り上げた。

「いいねぇ、その暴れっぷり。惚れ惚れする」

 

 ゼッパンドンの中のジャグラーはその暴れっぷりにご満悦らしいかな。

「お、オーブがまた暴走してるのです!?」

 

「しっかりしろオーブ!」

 

「そうだ!正気に戻れオーブ!お前の正義はそんな力を振りかざすものじゃないだろ!」

 

 みんながオーブに勝機に戻るように呼びかけるも・・・その声はオーブには届いていないらしく電波塔を棍棒のようにしてゼッパンドンを攻撃する。

「あれは・・・BRGの・・」

 

 5機もの戦闘機が私達の上の空を通過する。BRGの最新型戦闘機ジェットスピーダーかな。去年見せてもらった時はテスト段階だったのにもうあんなに導入されてるだなんて・・。伯父さんは本当に全力でオーブを倒してしまう気のようかな。

「ヴォぉぉぉぉ!!」

 

 自分達の近くまでやってきているBRGの戦闘機などまるで気にする気のないオーブは電波塔が折れて短くなるまでそれで殴り続け、使い物にならなくなると「いらない」とでもいうかのように地面に捨てる。そしてヤケになったようにゼッパンドンの頭や腹部を何度も殴りつけるも・・・やはり通用しなかった。

「グァぁ!?」

 

 ゼッパンドンに蹴り飛ばされたオーブはすぐさま立ち上がり両腕にエネルギーを溜めて腕を十字に重ねる。

「ゼッとしうム光線!!」

 

「ゼッパンドンシールド!」

 

 水色と禍々しい赤がらせん状に交わる光線を放った瞬間、ゼッパンドンは黄緑色のバリアを展開してその光線を吸収するように打ち消した。そして即座に耳のような部分から2つの光線を放ってオーブにカウンターを喰らわせると、オーブは背中からその場に倒れてしまう。

「ヌルイ!お前の闇はそんなもんか!」

 

 いまいち力を出し切れていないことに気づいていたゼッパンドンはオーブに向かってそう告げると、オーブはまだまだと言わんばかりに立ち上がった。すると次の瞬間・・・

「っ!?」

 

 BRGの戦闘機はゼッパンドンよりも先にオーブのほうを攻撃してきた。

「ど、どういうことなのです!?」

 

「オーブも攻撃対象にされたことは耳にしていましたが・・・まさか怪獣よりも優先してオーブの方を狙うとは・・」

 

 私達は真っ先にオーブが攻撃を受けていることに驚いているとBRG戦闘機による一斉攻撃がオーブを襲った。

「ヴァぁぁ!?」

 

「オーブ!私信じてる!あなたがどんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても・・・私の命を救ってくれたこと、ずっと信じてるから!」

 

「そうだよオーブ!私達は信じてる!あなたがもう一度自分のことを信じられるようになることを!」

 

 遅れてやってきた杏は私の言葉に続けるように叫ぶ。オーブはBRG戦闘機の攻撃を受けながらも私達の言葉に気づいてこちらを振り向くと、ゼッパンドンが火球を放つ体勢を取る。BRGの戦闘機は一斉にゼッパンドンの攻撃から難を逃れるために退避すると、ゼッパンドンの火球がオーブへと浴びせられ、その炎が私達まで向かってきた。

「フハハハハっ!お前はまた大切なものを守れなかった!さらばウルトラマン!」

 

 ゼッパンドンの中にいるジャグラーがオーブに勝ったと喜びの声を挙げるが、私達は無事だった。何故なら・・・

「・・・オーブ・・」

 

 オーブが私達を守ってくれたからだ。

「徹!」

 

「分かってる!」

 

 徹さんは慌てながらもビデオカメラを取り出すと生中継で撮影を開始する。

「みんな見てくれ!オーブが・・・ウルトラマンオーブが私達を庇ってくれたぞ!」

 

 乃理の実況のもと、オーブが私達を庇ってくれたことが中継される。

「っ・・」

 

「~ ~~ 」

 

 オーブは大丈夫だったか?とでも言うように頷く。それに対して私はガイに頼まれたことを・・・歌を歌うことを実行した。

 

 

 

~~ガイ~

 

「~ ~~ 」

 

「己を信じる勇気。それが力になる」

 

 久遠の歌とともに白紙だったカードが輝き出し、1人のウルトラマンのカードとなる。

「これが本当の俺だ!」

 

 俺は俺自身が・・・剣を構えたオーブが描かれているカードをオーブリングでリードする。

『覚醒せよ!オーブオリジン!』

 

「この光はっ!?」

 

 光の渦がリングから広がるとゼッパンドンの尾が割れ、その中から聖剣が・・・オーブカリバーが出てくる。オーブカリバーは光となって俺の中に入ってくると、オーブリングから出ている光の渦が形を成してオーブカリバーになった。

「オーブカリバー!」

 

 オーブカリバーを手に取った俺はそのリングを回転させてトリガーを引く。するとオーブカリバーに宿る力が解放されて俺は他のウルトラマンさん達の力をお借りした姿ではなく、俺自身のウルトラマンとしての姿へと変わった。

「俺の名は・・・ウルトラマンオーブ!!」

 

 ウルトラマンオーブ・オーブオリジン。これが本当の俺だ。

 

~~久遠~

「俺の名は・・・ウルトラマンオーブ!!」

 

 大剣を手にしたオーブはそれを空へと掲げて円を描きながら名乗りを上げる。

「まるでいつもの紫の姿から紫の要素と肩のアーマーをなくしたような姿なのです」

 

 音々の言う通りやたらとゴツい姿が多い中ではかなり大人しくてスマートな見た目をしている。だけど私はそんなことよりも別のことを思っていた。

「あれは・・・この間夢で見た。光の巨人ッ!」

 

 マガオロチが現れたときに視たヴィジョンに出てきた光の巨人。その姿はまさしく今のオーブそのものだったかな。

「ゼッパンドン・・ッ!」

 

 ゼッパンドンはオーブへと火球を放ってくると、オーブは大剣を振り上げて火球を真っ二つに切り裂いた。

「シャァッ!」

 

 オーブは次々と放たれる火球を切り裂きながらも前へと進んでいく。

「オォォォォ・・セイィ!!」

 

 そして大剣をゼッパンドンへと振り下ろして一太刀を決める。その一太刀に怯んだゼッパンドンは数歩後ろへと下がると、オーブは大剣のリングを半回転させてそれに宿る力を解放した。

「オーブグランドカリバー!!」

 

 大剣の刃を地面に突き立てる。すると地面を這いながら円を描くような動きで2つの光線がゼッパンドンへと向かって行く。

「ゼッパンドンシールド!」

 

 ゼッパンドンは禍々しいオーブの光線を防いだバリアを2枚展開してそれぞれの光線を受け止めようとするも、2つの光線はそのバリアを難なく破壊してゼッパンドンに直撃した。

 

 

~~ガイ~

「なっ!?シールドを破るとは・・・」

 

 ゼッパンドンの中にいるジャグラーはグランドカリバーが自身のバリアを破ったことに驚いているようだ。今の俺は・・・久遠と杏が俺を信じてくれているかぎり俺は何度でも自分を信じることができる。

「信じてくれている人がいる。だから俺は負けない!」

『解き放て!オーブの力!』

 

 オーブリングにオーブカリバーをかざして力を完全開放した俺はオーブカリバーのリングを回転させてトリガーを引く。

「オーブスプリームカリバァァァァァッ!!」

 

 そしてオーブカリバーで頭上に大きな円を描き、エネルギーを剣先に集束させる。その剣先をゼッパンドンへと向けて俺自身の最強光線『オーブスプリームカリバー』を放った。

「なっ!?」

 

 俺が本当の姿に戻ったことに対して驚きを隠しきれてないジャグラーはゼッパンドンのテレポート能力を発揮できずに光線が直撃すると、ゼッパンドンは爆発した。

 

 

~~杏~

 

「やったね。オーブ!」

 

 夢で何度も変身していた姿になれたオーブはゼッパンドンを倒してこちらを振り向く。すると次の瞬間オーブの背後にザムシャー族姿のヤクトワルトが現れた。

「えっ?なんでヤクトワルトが・・・?」

 

「・・・・・」

 

 ヤクトワルトは無言で刀を構えた。

「ちょっとヤクトワルト!何やってるのかな!!」

 

「えっ?ヤクトワルト?知り合いなのか?」

 

 乃理は偽名の大和のほうしか知らないようようで、あの姿のヤクトワルトが知り合いなのかと聞いてくるも・・・誰も反応しない。

「・・・・」

 

 オーブはヤクトワルトの言いたいことを察したように頷くと自身も聖剣を構える。そしてほぼ同時に前へと出て互いの刃がぶつかった。

「・・・それが旦那の本当の姿かい」

 

「あぁ・・」

 

 ヤクトワルトの問いかけにオーブが頷くと、ヤクトワルトは普段の姿に戻ったのかその場から消えてしまう。するとオーブも空高く飛び上がっていった。

「ありがとうオーブ!!」

 

「ありがとうなのです!」

 

「お礼を言いたいのはオーブの方かもな」

 

 乃理たちがお礼を言っているとオーブの姿から戻ったガイがやってくる。

「ガイさん!帰ってきたのですね!」

 

「答えは見つかったのか?」

 

「まぁな」

 

 ガイが探していた答え。それが見つかったのかどうかを乃理が問いかけると、ガイは満足げに頷く。

「そうか。私も見つかったぞ」

 

 どうやら乃理のほうも探していた答えが見つかったようだ。

「ところでガイさん。オーブがお礼を言いたいというのはどういうことでしょうか?」

 

「お前たちがオーブを信じてくれたから、オーブも自分を信じて戦えたってことさ。・・・さぁて、1週間ぶりにトリコリのコーヒーでも飲むとするか」

 

 こうして本当の自分を取り戻したガイは私達のところに戻って来た。

 

 

~~ヤクトワルト~

 

「奴は・・・どうだった?」

 

 俺がアヌーとしての姿に戻ると、戦いの一部始終を見ていた朧の大将がやってきた。

「どうだった?なんのことじゃない?」

 

「試したのだろう?オーブのことを・・また暴走してしまいそうなのか?」

 

 この大将、察しがいいじゃない。

「剣を交えて分かった。あれならもう力に溺れて暴れてしまうなんてこと・・・きっとないじゃない」

 

「フッ、そうか」

 

 少し前まで旦那に敵意を向けっぱなしだったはずの大将は少し嬉しそうに笑うと背を向けて歩き出す。

「さて、忙しくなるな。まずは先日オーブを攻撃対象に指定したことを撤回する会見を開かないといかん」

 どうやら大将はもう一度旦那を・・・ウルトラマンオーブを信じてくれる気になったようだ。

「ところで・・・お前の連絡先を教えろ。今回のようにいきなり現れられては事後処理が厄介なんだ」

 

「生憎俺、通信機器なんて持ってないじゃない」

 

 機械音痴ってほどでもないが、あんまりそういうのは得意じゃないし。アパートにも電話なんてないじゃない。

「第一、 俺は組織に入るつもりないって断ったはずじゃん」

 

「・・・そうだな。ひとまずお前とウルトラマンオーブ。それと時折現れる犬型のロボットは俺達BRGの味方として扱うように申請しておいてやる」

 

 俺や旦那だけじゃなくゴールド星人の双子までとは・・・気が利くじゃない。

 

 

 

~~ジャグラー~

 

「うっ、くぅ・・」

 

 本来の力を取り戻したガイに敗北した俺は意識を取り戻して少し先に落ちているダークリングへと手を伸ばそうとする。するとダークリングは『闇』となって手を伸ばした先から消失してしまった。

「ぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 俺は声にならない声を挙げながら悔しさとみじめさに囚われる。また俺はガイに負けてしまった。俺の力が・・・俺に力が足りないせいで・・・。

「力がないのは・・・罪だ」

 

 ボロボロになった身体を起き上がらせた俺はまたも自分の力を信じ切れなくなり・・・力を求めてこの場所を去っていった。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンオーブ オーブオリジン
属性・光属性

 自分を信じることで取り戻した本当の姿のオーブ。それがオーブオリジンだ。聖剣オーブカリバーには『火』『水』『風』『土』の4属性を宿していて、聖剣のリングを回すことでそれぞれの力を解放できるんだ。そして俺自身の『光』と『闇』も含めた全てを解放することで放たれるオーブスプリームカリバーは俺の最大の必殺技だ。

ゼッパンドン
属性・闇属性

 ジャグラーがダークリングを用いてゼットンとパンドンのカードに宿る力とマガオロチの尻尾で誕生させたフュージョン怪獣。それが合体魔王獣ゼッパンドンだ。ゼットンの多彩な能力だけでなく、パンドンの高熱とマガオロチの防御とパワーも健在で中にいるジャグラーのせいもありとても厄介な怪獣だった。

次回「人物紹介part3」

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