ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 ミスターファイヤーヘッドの汚名を返上したゾフィーさんがかっこよすぎる。


思い出の場所

~~ヤクトワルト~

 

「おうおう、今日もやってるじゃない」

 

新しい刀『星斬丸』を手にした翌日、今日も元気に侵略活動をしようと日本にやってきた暇人さんの円盤が防衛隊の戦闘機と追いかけっこをしていた。

「おっ・・当たった!」

 

「おのれっ!!」

 

 防衛隊の戦闘機の攻撃が円盤に直撃すると、円盤からは脱出したザラブ星人は巨大化して自分を追跡していた戦闘機に光線を浴びせた。

「おっと・・危ないじゃん」

 

 ザムシャー族としての姿に変わった俺は片手でその戦闘機を掴んで墜落を阻止するとザラブ星人は「なぜそいつを助けた」とでも言いたげに標的を俺に変えて攻撃してきた。

「陽炎の太刀」

 

「ぬぉぉぉぉっ!?」

 

 そんなザラブ星人を一太刀で斬り倒した俺はアヌー星人としての姿に戻ると・・・俺と同い年ぐらいの男がこっちに歩いてきた。

「先ほどお前があの巨大なサムライに姿を変える瞬間をみた。先ほどは部下を助けてくれたことを感謝する。俺はBRG日本支部の黒沢朧。お前は何者だ?」

 

 部下・・。大方あの防衛隊の大将ってところか。

「俺はザムシャー族のヤクトワルト。地球じゃ大和って名乗ってる。ハーフだからザムシャー族と今の姿を切り替えることができるのさ」

 

「ハーフ・・。なるほどな」

 

 本当はザムシャー族とアヌーのハーフで地球人のハーフってわけじゃないんだが、面倒臭そうなんで黙っておくじゃん。

「だがお前に俺達を助けてくれる儀理などはないはずだが・・・なぜ助けてくれたのだ?」

 

「今までここを守っててくれたのがどっかに行っちまったからには、その人に助けられた借りを返すためにも俺がこの地を守ろうって思ったのさ」

 

 朧は少し考え込むと何やら思いついたような表情をする。

「この地を守るというのなら俺達BRGの仲間にならないか?お前のような戦士がいると心強い」

 

「悪いけど断るじゃない」

 

「何故だ?地球を守るというのなら俺達のもとのほうが・・・」

 

「防衛隊になんか入ったら中々帰ることができなくなるじゃない」

 

「・・・まぁ、それはそうだが」

 

「俺は今まで1人にしていた娘とこれからは一緒に過ごすって決めたからこの地球に住むことにしたんだ。なのにまた娘を1人にしちまうってのはできないじゃない」

 

 帰る場所があるから・・・守りたい家族がいるから俺は戦うんだ。守りたい相手からまた離れるのは今の俺にはできないじゃない。

「なるほど・・。それなら仕方ないな」

 

 朧も思うところがあるのかその理由に納得してくれた。

「だけどまぁ、この町には娘の学校があるんでね・・・ここに何かあったぶんには手を貸してやるじゃん」

 

「あぁ。今後ともよろしく頼む」

 

 こうして俺は防衛隊の人間である朧と知り合った。

 

 

 

~~ガイ~

 

「・・・戻ってきちまったな」

 

 べリアルさんの力を制御しきれずに久遠を巻き込んでしまってから1週間後、俺は地球のあちこちを周った後、結局は思い出の場所・・・ルサールカへとやってきていた。今ではもうこの地に結界はなく、城の瓦礫もない。完全に緑生い茂る森となっていた。

「あれからもう100年も経ってるんだから当然か」

 

 

 

 

 

「ねぇガイ。いっつも演奏してるその曲は?」

 

 俺がハーモニカを奏でているとアンジェリカがこの曲のことを尋ねてきた。

「これか?これは俺の故郷の曲なんだ」

 

 数千年も帰っていない故郷の曲。

「へぇ、でもそのハーモニカ、だいぶボロボロだね」

 

「言われてみれば確かにボロボロだな。300年前作ったばかりなんだけどなぁ」

 

「えっ!?300年も使い続けていたの!?そりゃボロボロになるでしょ。ねぇガイ!これをあげる!」

 

 そう言ったアンジェリカは俺が使っていたハーモニカより少し大きめのハーモニカを手渡してきた。

「それね。この前私が作ったんだ!」

 

「へぇ・・。アンジュが自分で・・」

 

「・・ごめん。ちょっと不格好だよね。やっぱりもっとちゃんとしたのを・・」

 

「いや、これでいい。アンジュが作ってくれたものなんだろ。お姫様からの貰い物を無碍になんてしないさ」

 

 アンジェリカが作ってくれたハーモニカを受け取った俺はさっそくそれを使って演奏してみせた。その数か月後彼女から貰ったハーモニカはアンジェリカ最後のプレゼント、形見のものになってしまった。

 

 

 

「やはりここにいたか」

 

 俺が100年前のことを思い出しているといつの間にか後ろに立っていたジャグラーが声をかけてきた。

「ここに来ても無くなったものは帰ってこない。お前は昔の自分には決して戻れないぞ。だが所詮過去は過去、大切なのはこれからだ。べリアルが新しいお前を引き出してくれたじゃないか。あれがお前の本当の姿だ」

 

「違うッ・・・」

 

 ジャグラーの囁きを俺は否定する。

「恥じることはない。己の力を試すため他のものを破壊し、支配したくなるものさ。まぁお前の場合大事なものほど壊したくなるよな。・・昔も今も・・」

 

 俺の耳元でジャグラーはそうささやく。俺はその言葉を無視することはできなかった。

「何っ?・・・ッ!!」

 

 その言葉に怒りを覚えた俺は右手を強く握ってジャグラーに殴りかかるも・・・ジャグラーは魔人態へと姿を変えると再び俺の背後へと回り込む。

「ハッ!」

 

「ヌンっ!」

 

 ジャグラーの左拳を右腕で逸らしつつ、俺はもう一度拳を振るう、しかしこちらの拳もあちらに防がれてしまう。

「ダァっ!」

 

 俺は至近距離で光弾を投げつけるも、ジャグラーはそれも弾きつつ逆に光弾を飛ばしてきた。

「くっ・・」

 

「ハッ!ハァァぁァァッ!!」

 

 一発目はこちらも弾くことはできたが・・・ジャグラーは光弾を連続で放ってきたため俺はガードしきれずに後ろに吹き飛ばされてしまった。

「ぐぁっ・・・」

 

「これを見ろ」

 

 刀を取り出したジャグラーはそれを空へと掲げると空には暗雲が出現し、その中心の渦からはマガオロチとの戦いの時にサンダーブレスターの姿で切断したマガオロチの尾が空から生えるかのように出てきた。

「覚えているよな?お前が引きちぎったマガオロチの尻尾だ」

 

「そんな馬鹿な・・」

 

 あいつ、あんなものを取り出してどうするつもりだ?

「どうするつもりだ?なんて聞きたそうな顔をしているな。・・・こうするのさ」

 

左手にダークリングを手にしたジャグラーは怪獣のカード。この地でゼットンのカードを取り出す。

「ゼットンよ・・!」

『ゼットン!』

 

 ゼットンの力がダークリングによって解放されると、ジャグラーはもう1枚カードを取り出す。

「パンドンよ・・!」

『パンドン!』

 

 そしてジャグラーはゼットンだけではなくパンドンの力までおも解放した。

「お前達の力・・・頂くぞ!」

 

 ゼットンとパンドンのカードから解放された力を纏ったジャグラーはマガオロチの尾が浮かぶ空へと飛び上がっていくと、その尾とジャグラーが一体化すると暗雲から赤い雷が地上へと落ちる。その雷が落ちた場所にはゼットンとパンドンが合わさったような怪獣が立っていた。

「超合体!ゼッパンドン!」

 

「ゼッパンドンだと・・・?」

 

 ジャグラーの奴、この間スパークドールズ5つを利用してファイブキングを作り出したのがいたように怪獣カードを使って自分とマガオロチの尾を媒介に2体の怪獣を融合させた新しい怪獣を作り出したのか。

「ここでは・・・ここだけは絶対にお前の好き勝手にはさせてたまるか!!

 

 たとえ思い出の場所が残っていなくても・・・ここは思い出の地なんだ。この場所では絶対にジャグラーの好き勝手にはさせない!

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと変身した俺はゼッパンドンの前へと立つ。

「俺の名はオーブ!闇を照らして悪を撃つ!」

 

 

 

 

~~杏~

 ガイを探して世界中をあちこち飛び回っていたらうっすらと夢で『ルサールカ』という名前を聞いたことを思い出した私は何の名前か分からず千佳に尋ねてみると・・・そんな名前の土地があることを初めて知った。夢で名前や景色を知っていたんだから、初めて知ったってわけじゃないんだけど・・。とにかくよく夢に見ていた景色がルサールカというならガイもルサールカにいるんじゃないかと思ってそこに向かってみると・・・

「俺の名はオーブ!闇を照らして悪を撃つ!」

 

「ビンゴ!」

 

 予想通りガイが・・・ウルトラマンオーブが怪獣と戦っていた。

「・・・何だろうあの怪獣。初めてみる怪獣なはずなのに、何処かで見たことがある気がするの」

 

 夢の中で出てきた怪獣ってわけでもないのに・・・今まで幾つも怪獣を間近で見て来てもこんなことはなかったのに・・・。私はあの怪獣を見て『恐い』と感じていた。『死の恐怖』というものを感じていた。

「大丈夫ですかお嬢様?」

 

「う、うん。大丈夫」

 

「ゼッパンドン・・ッ」

 

 今まで怪獣を見ると『恐さ』よりも好奇心のほうが勝っていた気がする。いや、もう1体だけ恐怖を感じた怪獣がいたことがある。実物を見たわけじゃないんだけど録画映像をみた『ハイパーゼットン』と呼ばれる黒い怪獣だ。ハイパーゼットンが暴れていた時、私は宇宙人に捕まってたせいで気を失っていたけど・・・録画でもその存在に恐怖を感じた。まるで昔、あの怪獣に殺されかかったことがあるみたいだ。

「スぺリオン光輪!!」

 

 オーブは紫色に輝く光輪を怪獣に投げつける。だけど怪獣は光輪に噛みついて止めてしまった。

「・・・イマイチ」

 

「しゃ、喋れるんだ・・」

 

 まるでおせんべいを食べるかのようにバリバリとオーブの光輪をかみ砕いて食べてしまった怪獣は歯に残っていた欠片を爪で取る。

「なんというか・・・随分と人間のような怪獣ですね」

 

「いや、たぶんあれは怪獣だけど怪獣じゃないと思う」

 

「というと・・・どういうことなのでしょうか?」

 

「普通の怪獣は1つの命っていうか生物として存在してるものなんだと思うんだけど・・・あれはこの間のファイブキングみたいな怪獣だと思うの」

 

 正直自分でもよくわからない説明をすると千佳は「なるほど」と頷いた。

「つまりあの怪獣も意図的に複数の怪獣が融合させられて作られた怪獣と言いたいのですね」

 

「うん!そんな感じ!」

 

 それと千佳には言えないけど・・・あの怪獣はガイがオーブになっているみたいに、誰かがオーブを倒すためにあんな姿になってそうなんだよね。

「・・・・ッ」

 

 怪獣は片手で手招きするように挑発をしてくると、オーブはその挑発に乗って腕を十字にする。

「スぺリオン光線ッ!!」

 

 その十字から放たれた光線はまっすぐに怪獣へと飛んでいくと・・・

「ゼッパンドンシィィルド!!」

 

 怪獣は顔の両側から正面に六角形のバリアを展開させてその光線をガードした。

「あぁっ、防がれた!?」

 

「いえお嬢様。よく見てください。あれはただ防がれているのではありません」

 

「えっ?」

 

 私は千佳に言われたとおりそのバリアをよく見ると・・・光線はバリアに吸収されるような防がれ方をしていた。

「ゼッパンォォォン・・。ハッ!光線技はこのゼッパンドンには通用しない」

 

 自らを『ゼッパンドン』と名乗った怪獣は光線技は通用しないと告げてくると・・・オーブは青い姿に変わった。

 

 

~~ガイ~

 

「ハッ!光線技はこのゼッパンドンには通用しない」

 

 確かにゼッドンは光線技を吸収してしまう能力があったな。だったら光線技に持ち込むより直接至近距離で戦う方が良さそうだ。

「ジャックさん!」

『ウルトラマンジャック!』

 

「ゼロさん!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

「キレのイイヤツお願いします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!ハリケーンスラッシュ!』

 

 オーブ・ハリケーンスラッシュへと姿を変えた俺はオーブスラッガーランスを手にしてゼッパンドンへと斬りかかる。するとゼッパンドンはゼットンのテレポート能力を駆使して俺の背後へと回り込んで火球を放ってきた。

「デュァァァ!!」

 

 オーブスラッガーランスを回転させて火球を防いだ俺は瞬間移動でゼッパンドンとの距離を詰めてランスを振るうも、ゼッパンドンは再びテレポートをしてこちらの攻撃を回避した。

「オーブスラッガーショット!」

 

「ゼッパンドン・・」

 

 ならば避けきれない攻撃をと思い、ゼッパンドンが避ける必要もないと判断しそうなオーブスラッガーショットを飛ばすと・・・それを避ける必要もないと判断してくれたゼッパンドンはテレポートを使わず、光の刃が当たっても気にせず火球を放とうとしてくれた。

「今だ!ビッグバンスラスト!!」

 

 俺はその溜めの隙を突いて光の刃を再びランスへと変えてビッグバンスラストを決めにかかる。そしてランスの刃がゼッパンドンの腹部に突き刺さる。このままエネルギーを注ぎ込んでゼッパンドンを倒そうとすると・・・ランスがゼッパンドンの高熱によって溶けだしていた。

「アッツ・・っ!?」

 

 あまりの熱さに俺はランスを手放すと、ランスは完全に溶けてしなう。なるほど。パンドンの能力で身体が超高温になっていてランスがゼッパンドンの身体を貫く前に溶けちまっていたのか。

「デュァ・・・」

 

 あの高熱に耐えられる姿となれば・・・今は2つしかない。超高温に耐性のあるメビウスさんの力をお借りしているバーンマイトか・・俺にはまだ制御しきれないサンダーブレスターかのどちらかだ。

「どうした?闇の力を使えよ・・。このまま滅びるか、闇に墜ちるか・・。お前にはそれしかないんだぁ!!」

 

 ゼッパンドンとなっているジャグラーは俺にべリアルさんの力を使うように煽ってくるが今の俺にはアレは使えない。

「タロウさん!」

『ウルトラマンタロウ!』

 

「メビウスさん!」

『ウルトラマンメビウス!』

 

「熱いヤツ!頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!バーンマイト!』

 

 唯一あの高熱に対抗できるバーンマイトへと姿を変えた俺はゼッパンドンへと殴り掛かった。

 

 

 

~~乃理~

 

「オーブ・・・」

 

 ガイを探してルサールカを探索していると偶然にも赤い2本角のオーブと赤と黒のキツネっぽい顔をした怪獣が戦うところに遭遇した。

「姉上。この場から離れましょう」

 

 扇は私の心境を察してこの場から離れることを提案してくるも、私は首を横に振った。

「いや、いい。見届けさせてくれ」

 

 確かに以前までオーブは私が憧れていた『正義の味方』そのものだった。だがギャラクトロンの件もあり、今の私にはオーブのことを自信を持って『正義の味方』と言い切れない。

「オォォォシャァ!!」

 

 両手に炎を灯したオーブは連続パンチで『ゼッパンドン・・』と鳴き声をした怪獣を攻撃しているが・・・その攻撃は怪獣に通用していなかった。

「あの赤い姿は火力と格闘戦に優れた優れた姿だったはずですが・・・その格闘がまるで通じていませんね」

 

「オォォォォ!セェイ!!」

 

 打撃が通用しないと判断したオーブは投げ技で怪獣に攻めようとその腹部を両腕で抱え込むようにがっちりと掴んで持ち上げようとするも・・・

「ゼッパンドォォォン・・・」

 

「ダァァぁっ!?」

 

持ちあがらないどころか逆に投げ飛ばされてしまった。

「ストビュゥゥゥゥム・・・バァァァァストォ!!」

 

「・・・ッ!!」

 

 オーブは膝をついた状態のまま怪獣に火球を放つと、怪獣は口からマガオロチが放っていた雷撃と同じような攻撃を放ってその火球を相殺した。

「ゼッパンドォォォン・・・」

 

「っ!?でぁぁっ!?」

 

 技がぶつかり合い爆煙で怪獣の姿が見えなくなると・・・まるでテレポートするかのようにオーブの真後ろに出現した怪獣がオーブを背後から蹴り飛ばした。

「ppp・・ゼッパンドォォン・・」

 

「デュァァァァぁ!?」

 

 そして追い討ちといわんばかりにオーブ目掛けて火球を放ってくる。その火球が直撃したオーブはその場に膝をついて胸のランプを点滅させた。

「もう終わりか?」

 

「しゃ、喋った!?」

 

「どうやら意思はあるようですね・・」

 

 しゃべることが出来た怪獣はオーブが大したことがないとでもいうように挑発をしてくる。するとオーブは何とか立ち上がると自身の身体を炎で包み込んだ。

「ストビュゥゥゥム・・・ダイナマイトォォォォ!!!」

 

 そして炎に包まれるその体で怪獣へと体当たりをすると爆発が起き、それなりに離れているこちらまでその爆風による衝撃が伝わって来た。

「うおっ・・!?」

 

「大丈夫ですか姉上?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

 爆風に目を瞑ってしまった私は再びオーブと怪獣の戦う場所へと視線を向けるも、そこにオーブの姿はなかった。

「何処だ?オーブ・・。何処だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 オーブを完膚なきまでに叩きのめすつもり満々だった様子の怪獣は消えたオーブへと向けて怒りの声を上げながら闇の霧になるかのように自身も姿を眩ませた。

 

 

 

~~ガイ~

 

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・」

 

 ゼッパンドンの圧倒的な力を前に最大火力のストビュームダイナマイトすら通用しなかった。

「今の俺じゃ・・・あのゼッパンドンには勝てない・・」

 

 やっぱりジャグラーの言う通り・・闇の力に頼らないと勝ち目はないのか?

「・・・ッ・・」

 

 意識が朦朧とする。今にも気を失ってしまいそうになっていると人の気配を感じた。

「・・・・・」

 

「アンジュ・・?」

 

 俺の前には心配するように俺を見つめるアンジェリカの姿があった。俺はアンジェリカに右手を伸ばすと・・・アンジェリカは俺の右手を両手で握った。

「・・・?」

 

 握られた手の中には何かが握らされていた。どうやらアンジェリカから何かが手渡されたようだ。それに視線を向けてみると・・・そこには白紙のカードがあった。

「これは・・?」

 

「「あなた自身よ」」

 

 2つの声が聞こえたのでアンジェリカに視線を向け直すと・・・アンジェリカがいた場所には久遠と杏がしゃがみ込んでいた。

「ありのままのあなた」

 

「戻って来て。私達のところへ」

 

 2人はカードが握られている俺の右手を強く握る。

「「私達はありのままのあなたを受け入れる」」

 

「だから思い出して」

 

「輝いているものを」

 

 そう俺に言い残した2人は森の中に姿を消していくと・・・俺の意識が覚醒した。

「・・・夢だったのか?」

 

 自家用の飛行機持ってる杏はともかくとして久遠は今、ここに来られるような状態じゃないはずだ。だからさっきのは夢か幻のはずだが・・・。

「・・・・・」

 

 俺の右手の中には白紙のカードが握られていた。あれは夢じゃなかったっていうのか?いいや、アンジェリカはもうこの世にはいないからあれは夢幻のはずだ。

「白紙・・俺自身か・・」

 

 白紙のカードをホルダーにしまった俺は立ち上がる。ここにいたらまたジャグラーが暴れ出して、ここが更にめちゃくちゃにされちまうかもしれない。

「早くここを・・離れないとな・・」

 

「あっ!ガイ!」

 

 生き覚えのある声が聞こえたので振り向いてみると・・少し先には杏と千佳が立っていた。

「いきなりどっか行ったりして・・・心配してあちこち探したんだよ」

 

 駆け寄ってきた杏は俺に飛び込んで抱きついてきた。

「悪か・・・痛っ!?ちょ、杏!痛いから離してくれ・・」

 

 ゼッパンドンとの戦いのダメージがあるのに光圀公が丈夫に生きて欲しいとの計らいで地球人どころかエスメラルダの人たち以上に怪力にされている杏のハグで俺の身体が悲鳴を上げる。

「お嬢様、そろそろ離れてあげなければガイ殿にトドメを刺してしまいますよ」

 

 あぁ、本当にトドメが刺されてしまいそうですよ。

「あっ、ごめん」

 

 杏が離れてくれると俺はまたこの場に座り込んでしまう。痛くて今は立ち上がれそうにない。

「ねぇガイ。・・・戻ってこないの」

 

「・・・俺はまだ探してる答えを見つけられてない。それまでは絶対に戻れない」

 

 闇を抱きしめて光になる強さ。その答えがまだ分からないままだ。

「・・・分かった。帰ろう千佳」

 

「いいのですか?」

 

「うん。ガイは必ず戻ってきてくれるって信じてるから」

 

 俺の帰りを信じてくれると言ってくれた杏は千佳とともにこの場を去っていくと・・・入れ違いで乃理と扇の2人がやってきた。

「見つけたぞガイ・・・ってボロボロじゃないか!大丈夫か!?」

 

「今、手当てをしますね」

 

 救急セットを持っていた扇の応急処置を受けていると、乃理が隣に座り込んでくる。

「なぁガイ。お前も正義が・・・いいや、自分の信じていたものが分からなくなって旅立ったのか?」

 

「・・・まぁ、そんな感じだ」

 

自分を見失いかけてるって点ではだいたい合ってる。

「俺は昔・・・誰1人として犠牲を出したくないって理想を掲げながら怪獣や宇宙人たちと戦っていたんだ。だけど俺1人の力なんてこの広い宇宙にとってはちっぽけなものでな。結局多くの犠牲を出しちまった」

 

「ガイはBRGのような・・・怪獣たちから人々を守る仕事をしていたのか?」

 

「あぁ。そしてここは俺が大切な人を守ることができなかった後悔の土地なんだ」

 

「そう・・・だったのか」

 

 乃理は踏み入ったことを聞いてしまったとでも言うように後悔した表情を見せる。

「・・・手当て、ありがとな。俺はもう行く」

 

「もう1つ聞かせてくれ。ガイにとって正義とは何なんだ?」

 

 俺にとっての正義・・か。

「この宇宙に誰もが抱いている思い。・・・愛だ」

 

 信じる正義が『愛』であることを話した俺は体の痛みを我慢しつつもこの地を後にした。

 

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンオーブ・ストリウムギャラクシー
属性・猛(モウ)属性

 ウルトラ6兄弟最強と言われるタロウさんと最強最速の2つ名を持つマックスさんの燃えるような熱い光を重ねた姿、それがストリウムギャラクシーだ。先手必勝パワーマックスのファイティングスタイルで宇宙の悪に立ち向かうぞ。

ニセウルトラマン
属性・風属性

 ザラブ星人がウルトラマンに化けた姿、それがニセウルトラマンだ。そうやって光の戦士に化けることで人々から光の戦士の信頼を損ねるのが目的なんだが・・・今の俺は既に信頼を損ねていたのでわざわざ俺になるだなんてことはしなかったようだ。

次回「復活の聖剣」

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