ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 サブタイトル通り主人公は今回登場しません。


ガイのいない日

~~ヤクトワルト~

 

 旦那がトリコリを去ってから1週間が経った。オーブがこの日本という地を去った事はこの国に潜んでいた侵略者どもに噂になっちまっていて、段々とその活動が活発になり始めていた。

「・・・邪魔するじゃん」

 

 流石にこのまま奴らを野放しにしておくわけには行かないと考えた俺は仕事が休みの日に人里離れた土地に住む刀匠のもとにやってきた。名を水島昭三。70過ぎの爺さんだがその腕はかなりの者だと聞いた。

「珍しい客が来たものだな。・・・人間ではないな」

 

「人間ではあるぜ。他の星のだかな」

 

 驚いた。この爺さん、気配だけで俺をこの星のもんじゃないって見抜きやがった。

「それで・・・何用だ?」

 

「この刀を直してほしい」

 

 俺はマガオロチとの戦いで折れちまった刀を爺さんに見せる。

「お前さん、この刀で色んな相手を斬ってるな。宇宙で剣客でもやっとったのか?」

 

「まぁな。今はもう引退してこの土地で娘と穏やかに過ごしたかったんだが・・・ちょっとそうも言ってられなくなってな」

 

「・・・ウルトラマンがここから去っちまったからか?」

 

「何でそれを!?」

 

「いくら田舎でもTVぐらいは見る。東京によく怪獣も出とることも知っとる。そしてこの間の暴れっぷりもな」

 

 この間の暴れっぷり。つまりはギャラクトロンとの戦いであのべリアルの力を暴走させて嬢ちゃんを傷つけちまったことだ。世間にはギャラクトロンの中に嬢ちゃんが乗っていたことは公表されず、オーブが戦いに巻き込んで嬢ちゃんを傷つけたことだけが発表された。そのせいでギャラクトロンによる被害のほうが大きなはずだというのに、それらの被害がすべてオーブのせいとでもいうかのような扱いとなっていた。

「怪獣が現れたらBRGが撃退してるらしいが、あれからウルトラマンは姿を見せてない。逃げたんだろうな・・・批判する人々からではなく、自分自身から」

 

 自分自身から逃げた・・・か。この爺さん直接見たわけじゃねぇのに随分と確信を突いてくるな。

「そんでお前さんが刀を直したいのはその代わりに戦いたいからなんだろう?」

 

「あぁ、俺も旦那に救われた身だ。旦那がいない間、旦那の大切な人達ってのを絶えぬ悪意から守るためには刀が必要なんだ」

 

「お前さん。名前は?」

 

「ヤクトワルト。地球じゃ剣崎大和って名乗ってるじゃん」

 

「・・・大和。お前も剣士ってんなら一度折れた刀は直すことができないってことぐらい分かるだろ」

 

 爺さんの問いかけに俺は頷く。1度折れてしまった刀は形を変えて短刀ぐらいにはできるが再びくっつけるってのは不可能だ。

「そんぐらいは承知だ。だからそれを短刀にしてくれていい。だがその刀じゃないと俺が力を振るうことはできないんだ」

 

 ハーフである俺の兄弟はザムシャー族としての姿とアヌー星人としての姿を切り替えるのにスイッチになるものが必要になる。俺の場合はこの刀だった。前に他のでも切り替われるか試してみたことはあったが・・・他の刀じゃどうも波長が合わないらしく、切り替わることができなかった。別に折れた状態でも切り替わること自体は可能だが・・・この折れた状態では武器として振るえない。刀がなければ剣士である俺はまともな戦力にならない。

「・・・お前さんの星でどうなのかは知らないが刀は武士の魂って考えがこの国にはあるんだ。お前さんがこの刀じゃないと力を振るえないってのは、お前さんの魂に見合うほどの刀がこれしかなかったからなんだろうな」

 

 刀は武士の魂。・・・似たような考え方ならザムシャー族の村にもあった。だからこそ『刀に見合う強さ』と考えたことはあったが『俺に見合うほどの刀』と自分を過大評価するような考えで刀を選んだことはなかった。

「・・・・」

 

 立ち上がり刀工の奥へと行った爺さんは柄のない刀を持ってきた。

「俺が今まで打ったなかでも一番出来のいい刀だ。持ってみろ」

 

「っ!!」

 

 俺は言われるがままその刀を手に握ってみる。すると初めて手にした刀のはずなのに、これまで長らく愛用した刀のようなしっくりくる感覚を感じた。

「・・・驚いた。すんごくしっくりくる刀だ」

 

「お前さんならその刀を使いこなせるだろうよ」

 

「・・・ムンっ!」

 

 俺は試しにその刀を空へと掲げてみると・・・俺はザムシャー族としての姿に変わることができていた。

「やっぱり俺の目に狂いはなかった。大和、お前さんならその刀を任せられる!」

 

 どうやら爺さんはこの刀を譲ってくれるらしい。

「この刀の名は?」

 

 アヌー星人としての姿に戻った俺は爺さんに刀の名を尋ねる。すると・・・

「星斬丸」

 

 思いがけない名が出てきた。星斬丸と言えば歴代のザムシャーの中でも最強とうたわれたザムシャーが愛刀し、暗黒宇宙大皇帝と恐れられたエンペラ星人に一太刀を入れた名刀だ。それと同じ名の刀とは・・・。

「ちょっと待ってろ」

 

 爺さんは折れた刀の柄を分解して外すとそれを星斬丸に付けてくれた。

「ほらよ。見たところ長さもほとんど同じだからその鞘にはまるだろ」

 

「・・・・」

 

 俺は試しに今まで使っていた鞘に星斬丸を納めてみると・・・本当にぴったりだった。

「これで正真正銘、星斬丸はお前さんの刀だ」

 

「・・・星斬丸。ありがたく貰っていくぜ」

 

 こうして俺は無銘だった刀に変わる新たな刀『星斬丸』を手に入れた。

 

 

 

~~音々~

 

 オーブがギャラクトロンを破壊して何故か久遠さんを巻き込んだことに責任を感じていたガイさんが帰ってこなくなって1週間が経過しました。杏さんはガイさんを探すと言って学校にも行かず世界中を飛び回って探していると聞きました。瑠々さんも恩人であるガイさんがいきなり姿を眩ませたことがショックで元気がなく、兄さんも何処か後悔しているかのような表情をずっとしていて・・・いつも無駄にテンションが高い店内の雰囲気は暗く重たいものになっているのです。

「きい、何だかみんなくらいぞ」

 

 ヤクトワルトさんは「刀を直してくる」と言って木村さんにシノさんを預けて人里離れた刀匠のところに行ってしまっているのですが・・・まだ幼いシノさんですら店の雰囲気が重たいことに気づいていたのです。

「せやなぁ。もうちょっと元気出さんと接客業としてアレやで」

 

 久遠さんが傷つき、ガイさんが出て行ってもそれなりに平常心を保っている愛さんはこの状況は何とかしないといけないと言ってくれたのですが・・・正直私ではどうしよもないのです。

「はぁ・・。ガイさんがいないのでプリンとシュークリームを作る事ができず、売り上げにも響くのです」

 

 レシピをお願いしていて、先日そのレシピを見つけたのはいいのですが・・・そのレシピは日本語ではなく、私にも分からない何処かの国の言語で結局作り方は分からずじまいだったのです。

「なんでそんなうっかりをしているのですかガイさん・・」

 

 確かに海外生活が長いのは知っていますが・・・これは何処の国の文字なのです?

「そう言えば乃理さん達は今何処にいるんですか?今年になってからまだトリコリに来てはいませんが・・・」

 

 瑠々さんはまだ今年になってからトリコリに足を運んでいない乃理さんと扇さんが何処にいるのかを尋ねてきました。

「私も分からないのです。兄さんは知っていますか?」

 

「乃理のやつならゲンさんに言われてたことを自分なりに考えて『私の正義を探す』とか言ってたぞ。扇はそれに付いていってるはずだからあいつに聞けば何処にいるか分かるかもな」

 

 兄さんは試しに扇さんに電話をかけてみましたが・・・

「駄目だ。圏外になってやがる」

 

 どうやら乃理さん達は電波の繋がらないところにいるようです。

「いったいどこにいるのやら・・ん?」

 

 兄さんがスマホをポケットへとしまうと店の電話が鳴り始めました。

「はい、もしもし喫茶トリコリです。・・・あっ、扇さん!」

 

 瑠々さんはその受話器をとると・・・どうやら電話をしてきた相手は扇さんだったようです。

「今はどちらに・・・海外電話で・・今はルサールカですか」

 

「音々やん。ルサールカって何処らへんなん?」

 

「シベリア高原の辺りなのです」

 

 ルサールカの場所を映し出したタブレットの画面を愛さんへと見せた私は以前ガイさんがルサールカには思い入れがあると言っていたことを思い出しました。まさか乃理さん達がルサールカに行ってるだなんて。これはある意味チャンスなのです。

「瑠々さん。乃理さん達に伝えて欲しいことがあるのです」

 

「何ですか?」

 

「ガイさんは以前ルサールカに思い入れがあるようなことを言っていました。もしかしたらルサールカの何処かにガイさんがいるかもしれないのです」

 

「っ!!もしもし扇さん、あのですね・・・」

 

 瑠々さんは扇さんにガイさんがルサールカにいるかもしれないことを話してくれると、通話を終えました。

「見つかるかどうかは分からないですが、可能な限り探してみると言っていました」

 

 必ずそこにいるとは確証はありませんが・・・私の知るかぎりでガイさんのいる可能性がある場所と言えばそのルサールカぐらいなのです。

「ただいま」

 

「買い出しから戻りました」

 

 ガイさんが見つけられるかもしれないことに期待をしているとウールさんとサァラさんが買い出しから帰ってきたのです。

「お帰りなさいなのです」

 

「外、寒い」

 

「少し雪が降っていました」

 

 以前よりは寒さに慣れてきたお二人は店の奥へと行ってお店の制服へと着替えてくると・・・ウールさんがルディアンのスパークドールズを落としてしまいました。

「あっ、落ちましたよ」

 

 私はそれを拾い上げると・・・マガオロチとの戦いで壊されたはずの片腕がくっついていたことに気がつきました。

「あれ?ルディアンの腕が直ってますね」

 

「ルディアンには自己修復機能がある」

 

「ですがまだ修復できたのは外装だけです。マガオロチとの戦いによるダメージは大きく、ルディアンが再起動できるようになるにはもうしばらくかかります」

 

 確かにマガオロチとの戦いでルディアンは片腕が破壊されるほどのダメージを負ってました。それが自己修復できるというところは凄いのですが、流石に1カ月程度で片腕がはかいされたのを完全修復できるほどではないようなのです。

「今はBRGの人達が頑張ってくれとるからなんとかなっとるけど・・・あれからオーブも現れてくれへんもんなぁ」

 

 愛さんのいう通りギャラクトロンの件から怪獣が現れてもオーブは現れてくれませんでした。確かにオーブが必要なほど被害があったわけではないのですが・・・あれから現れてくれてないという自体に問題があるのです。

「・・・・・」

 

 私はTVの方へと視線を向けると・・今日も『ウルトラマン暴走!被害女性が重体!』とニュースにされていました。

「あれ以降世間からのオーブの評価はガタ落ちで・・・今日もオーブを許すなというデモ行進が国会議事堂の前でやっているらしいのです」

 

「みんな薄情やなぁ。散々オーブに助けられてきたはずやのに・・」

 

 薄情という愛さんの気持ちも分かりますが、オーブを許せない気持ちも分かるのです。みんながオーブを信じていたのにこんなことになってしまって・・・私も乃理さんのようによく分からなくなってしまいそうなのです。

「被害にあった久遠さんはどう思っているのでしょうか?

 

 昨日も一昨日もオーブを叩くネタ欲しさのマスコミが邪魔になって久遠さんのお見舞いに行けなかったのです。

「うちは何とかマスコミ潜り抜けて久遠はんのとこまで行けて・・・その時言っておったで。『私にはオーブの気持ちが分かる。ギャラクトロンの中で自分が何をしてるのか分からなかった。オーブもきっとそんな状態だったんだと思う』って」

 

「・・・はぁ。あの嬢ちゃんそんなことを考えてたのかよ」

 

 ため息をついた兄さんは自分の頬を両手でパンと強く叩いたのです。

「被害にあった嬢ちゃんが信じてるのに、助けられた身の俺らがオーブを信じずにどうするんだ!!」

 

 その言葉で私は目が覚めました。これまでオーブは自分がどれだけ傷ついても私達を守るために戦ってくれていたのです。

「・・・そうですね。私達が信じななきゃ本当にオーブの味方はいなくなってしまいますよね」

 

 世間がどう言っていようと、せめて私達だけでもオーブの味方でいないと・・。

「久遠さんのお母様が言うに・・・今は久遠さんがギャラクトロンの中にいたことは公開しない方針なのですよね?」

 

 瑠々さんは今はお客がいないことを確認してからエルさんが話していたことを聞いてきたので、私は頷きました。

「下手にこの事を公にしてしまうと久遠さんにもマスコミによる被害が及ぶかもしれないということでBRGの方達が規制しているのです」

 

 この事実を知っているのは私達と製鉄所の皆さん。そしてBRGの方々とガイさんぐらいなのです。

「ですのでなるべくここでもその事はあまり話さないようにお願いしたいのです」

 

「そうですね。入院している久遠さんにもしものことがあれば大変ですしね」

 

 こうして久遠さんがギャラクトロンの中に乗っていたことは私達の間でも極力話さないようにすることが決まったのです。

 

 

 

 

~~朧~

 

 俺の名前は黒沢朧(くろさわおぼろ)。BRG日本支部の長官として日夜怪獣や宇宙人の事件解決へと尽力していたのだが・・・1週間前、見過ごせない事件が発生してしまった。

「久遠・・・ッ」

 

 今は亡き妹の忘れ形見である久遠がギャラクトロンと名付けられたロボット怪獣とウルトラマンオーブとの戦いに巻き込まれてしまい、一時生死を彷徨うほどの重体となってしまったのだ。

「あれほど危険な場所には赴くなと言ったというのに・・・」

 

 SSPという怪獣や宇宙人を追いかける奴らに時折同行していたことは知っていた。久遠の親たちであるあの人達は容認していたが、俺個人としては正直反対していていた。だから時折久遠に「あの喫茶店に行ったり、SSPのメンバーに会うのをやめろとは言わないが、危険な場所に行くのはやめろ」ということを話していた。確かに行くのをやめろといえばよかったのかもしれないが・・・俺個人としてどころかBRG日本支部全体として久遠を可愛がり、過保護にし過ぎたせいで中学高校と久遠は友人といえる存在を作ることができなかった。そして去年の6月頃から久遠は「友達ができた」と語ってきてくれた時はこちらも嬉しかった。

「・・・っと、また同じことを考えてしまったな」

 

 この1週間・・・ずっと同じことを何度も考えてしまっている。

「この精神状態では仕事に支障が出るな・・」

 

 俺はこの日本支部の代表なのだ。俺がずっとこの調子ではオーブに突き落とされた隊員にも示しがつかんな。

「失礼します!」

 

 そんなことを考えていると隊員の1人が指令室へと入って来た。

「長官!折り入ってお頼みしたいことがあるのですが・・・」

 

「言われずとも分かっている。ウルトラマンオーブのことだろう」

 

 直接見たわけではないがオーブはこれまで多くの怪獣や侵略者たちを倒してきたという報告は受けていた。だがオーブは久遠がギャラクトロンの中に閉じ込められていたことを知りながらも、必要以上にギャラクトロンに攻撃を加えて完膚なきまでに破壊した。これは紛れもない事実だ。

「SSPの事はこの際後回しでいいな」

 

「・・・?」

 

「すまない。こちらの話だ」

 

 友の力になりたい。だから久遠はSSPの捜査に同行するのだろう。危険な行為だとは思うが、友の力になりたいという気持ちは俺にも分かる。完全に許したというわけではないがSSPに通うことはひとまず不問にしよう。そう・・久遠の方はな・・。

「オーブ・・。ウルトラマンオーブ。あんな危険な存在をこれ以上野放しにしておくわけにはいかない」

 

 基本的には人間の味方だということは理解している。だが人間を守るためとはいえ人間を傷つけていいというわけではない。

「オーブ。お前は確かに『正義』なのかもしれない。だがお前の正義は危険すぎる」

 

 大勢を救うために誰かを犠牲にする正義はいずれ破滅が待っているだけだ。

「おい、本部には俺が伝えておくからお前は隊員たちに伝えろ。『今後オーブは攻撃対象に指定する』とな」

 

「・・・ハッ!」

 

 破滅する道に進む正義にせめてもの情けだ。俺達BraveRescueGuardians。通称BRGがその正義に引導をくれてやろう。

 

 

 

 

~~???~

 

 パリ、BRG本部。私は娘である久遠が戦いに巻き込まれて生死の境を彷徨ったことを耳にし、その病院にいる妻のエルとデバイスで通信をしていた。

「それで久遠の様子はどうだ?」

 

『ふつうならもう目を覚まさないかもって状態だったんだけど、流石あなたの娘ですね。手術したその日のうちに目を覚ましたようですよ。流石にまだ退院していいほど回復しているわけじゃないけれど、松葉杖なしで歩けるようになるまでにはなったって聞きました』

 

 それはまた・・・我が娘ながら凄い回復力だ。

「今、久遠と話せるか?」

 

『今はちょっと・・・』

 

 おかしいな?パリと日本の時差で日本が8時間ほど進んでるので、あちらが午後15時ほどの朝7時に通信しているというのに。

「診察中なのか?」

 

『いえ・・・あなたも覚えているでしょう。あの娘がお風呂好きだってこと。久遠ったら自分が怪我人だってことなんて気にしないで今日3回目のお風呂に入ってるの』

 

「・・・怪我人の自覚がないのかあいつは?」

 

 傷の治りが早いことは嬉しいが・・・もう少し安静にしていてほしい。

「・・・私も近いうちに日本へと帰国する。エルはもうしばらく日本に残って久遠の傍にいてやってくれ」

 

『分かりました。あなたも体には気を付けてね』

 

「あぁ、分かってる・・」

 

 エルとの通信を終えた私は再びオーブと久遠の仲間たちがギャラクトロンと名付けたというロボットの戦いを確認する。

「これがウルトラマンの戦い方か・・」

 

 この殺意溢れる戦いぶりをみた私は30年近く前に見たあの戦いを思い出す。私がまだ少年な頃に見た銀色の巨人と黒い巨人の戦いを・・・。あのウルトラマンオーブの戦いはまるでその黒い方を見ているかのようなのだ。

「手にした闇が大きく制御しきれず暴れてしまったのだろうな」

 

 私には分かる。かつて2回だけ光の戦士として戦ったことのある私には。だからこそもどかしい。彼の暴走の理由を察しながらもBRG最高司令官という立場のせいで、彼に手を貸すことができないということが・・。

「いや・・・立場というのは言い訳か・・」

 

 久遠の父親として娘を守り切れなかったオーブに少なからず負の感情を抱いているのだ。だからこそ私は日本支部の判断に口出しをしないという行動を取ってしまっているの。

「このままでは攻撃対象になってしまうというのに・・・未だ悩んでしまっているとはな」

 

 ジェットバラージのパイロットをしていた隊員だけではなくBRG最高司令官である私・・『白神誠司(しらかみせいじ)』の娘である白神久遠を巻き込んでしまったという事実はBRG全体のウルトラマンオーブに対する信頼を突き落としてしまった。久遠の実の母・・病で亡くなった私の前妻である柚葉の兄にして日本支部隊長である黒沢朧が憤怒してしまい、次にオーブが現れた場合『オーブを攻撃する許可』を受諾してしまっていた。私はその判断を耳にしながらも、口出ししないで現地の判断に任せてしまっている。

「お前だったらどうしていたんだろうな。・・・ウルトラマンネクサス」

 

 私はかつて戦いをともにした戦士の名を呟きながら、彼の力が残されている1枚のカードを見つめた。

 




ウルトラヒーロー大研究

ティガダーク
属性・闇属性

 かつてとある宇宙のティガさんが闇に染まっていた姿。それが闇の巨人ティガダークだ。超古代文明を破壊せんとする闇の巨人の中でもティガダークの力は特に強大で、多くの戦士がその前に敗れ去った。

マガタノゾーア
属性・闇属性

 俺がこの地球へとやってきて間もない頃に戦った魔王獣。それがこのマガタノゾーアだ。存在自体が闇ともいうべきこの魔王獣は6大魔王獣の中でも特に強力で巨体から振るう触手や『闇』を操る技を使ってくるんだ。

次回「思い出の場所」

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