ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 ウルトラマンジードにまさか乙一が参加してくるとは思いませんでした。


君の正義僕の悪意

~~乃理~

 

『私は私に与えられた唯一のコマンドを実行中だ。君はこの星とは無関係の存在。邪魔をするな』

 

「デュ・・アぁ・・」

 

 ギャラクトロンの警告とともに腹部を貫かれたオーブは光となって消えていく。するとギャラクトロンはオーブが消えたのを確認すると再度語り出した。

『人間の文明から争いがなくならないのはこの星の残虐な自然界を模倣しているからだ。この宇宙には最初から有り余るほどのエネルギーが満ちている。別の生物からエネルギーを奪わなくて済むようにデザインされている。この星の人間は自分の命を長らえさせるため他の命を奪い、この星その物を傷つけ、天然自然を掘り尽すような低レベルな文明を良しとしている』

 

「俺達の文明が低レベルだって言ってるのか!!」

 

『耳が痛いか?だから君たちは耳を塞ぐ。都合が悪いから無視する。だがこの星は君達の都合で存在しているのではない。よってこの星の文明と『食物連鎖』という間違った進化を選んだ生態系全てをリセットする』

 

 ギャラクトロンは文明だけじゃなく大自然まで根絶やしにする気なのか。

「何勝手なこと言ってんだ!お前だって久遠の事を利用しているじゃないか!平和が望みなら他の星の女の子を拉致ったりするな!」

 

 私がそう指摘をするとギャラクトロンは考え込むかのようにその動きを止めた。

「なんだ!今度は自分の耳が痛いからってだんまりか!」

 

 反応がまるでないが・・・これはチャンスでもある。

「音々!」

 

「分かってるのです!」

 

 徹に言われるまでもなく計測用のタブレットと生体反応観測機で久遠の安否を確認する。

「・・・あの結晶体の奥に久遠さんらしきバイタルが確認できるのです。今は無事なようでずが、このままあの中にいて無事でいられるとは限らないのです」

 

「確かに食事なしで監禁されてるようなもんだからな」

 

「ですが僕らにはどうすることもできません。BRGが動いたとしてもあの中から久遠さんを助け出すことは難しいでしょう」

 

 やはり私達にはオーブの復活を待ち、久遠を助けてもらうことを信じるしかないということか。

「歯痒いな・・」

 

 正義の味方に憧れ・・『いい女』になると言い張ってるわりに・・・飛影のときも今回も私は所詮口だけで何もできていない。

「姉上、ギャラクトロンがまた動き出しましたよ」

 

「あ、あぁ・・」

 

再び動き出したギャラクトロンは穏やかな音楽とともに尻尾に何重もの魔法陣を広げながら空中へと浮かび上がる。

「あいつ、今度はいったい何をする気だ?」

 

 浮かび上がったギャラクトロンは周囲に炎の円を広げるとそれを自身の結晶体にそれを収束させ・・・赤い光線を放った。その赤い光線は周囲の山岳地帯に直撃すると今までで一番巨大な魔法陣が展開され、ギャラクトロンの視界に広がる森を近くの村ごと焼き尽くしてしまった。

 

 

 

~~ガイ~

 

「くっ・・・。あのポンコツロボットめ。・・・ん?」

 

 オーブの変身が解かれて少しの間気を失っていた俺は空に赤い輝きが見えたような気がしたので空を見上げた。するとギャラクトロンの一撃がその視界に見えるもの全てを焼き尽くす光景を目の当たりにすることとなった。

「やるしかねぇ!!」

 

 べリアルさんの力を制御できない可能性のほうが高いが・・・久遠を助け出すにはもう闇の力に頼るしかない。そう考えた俺はオーブリングと闇のカードを取り出した。

「べリアルさん!」

『ウルトラマンべリアル!』

 

「ゾフィーさん!」

『ゾフィー!』

 

「闇と光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!サンダーブレスター!』

 

「ヴァぁァァッ!!」

 

 闇の力を解放した姿。サンダーブレスターとなった俺はギャラクトロンの飛んでいる空へと飛び上がった。

 

 

 

~~乃理~

 

「ヴァハハハは!!」

 

 黒く禍々しいオーブはまるで魔王が笑うかのような声を上げながら飛んできた。

「よし、またオーブが来てくれた!今度こそ久遠を・・・」

 

 今度こそ久遠が助けられる。そう考えた瞬間だった。

「ヴァハハハはは!!」

 

なんとオーブはギャラクトロンに攻撃をしていたBRGの戦闘機を「邪魔」と言わんばかりに叩き落としたのだ。

「オ、オーブ・・・?」

 

 これまでのオーブからは考えられない行動に私達は唖然とする。

「ヴォォおぉォぉ!!」

 

 叩き落とした戦闘機が墜落し、爆発してもまるで気にしていないオーブは力強く振り下ろした拳をギャラクトロンに叩き込んで地上へと突き落とす。

「ヴァはハハハは!!」

 

 自身も着地をしたオーブはまるで久遠のことなど気にもしていないように強めの蹴りで倒れているギャラクトロンを蹴り飛ばした。

「ヴァぁァァっ!!」

 

『・・・・』

 

 立ち上がったギャラクトロンにオーブは拳を叩き込もうとするも、左腕の大剣を盾のようにしてそれを防いだ。

「ヴォぉぉぉぉォォ!!」

 

 オーブは左手で厄介な左腕を押さえつつ何度も胴体を殴りつける。しかしギャラクトロンの装甲は分厚いらしくあのマガオロチを追い詰めた禍々しく黒いオーブの力でも大したダメージにはなっていなかった。

「ヴォっォ!!」

 

 何度も殴りつけてようやく肩を揺らすぐらいに怯んだ隙をつき、オーブが飛び膝蹴りを決めると・・・ようやくギャラクトロンはまともに怯んで後ろへと数歩下がった。

『・・・・』

 

 右腕のクローを展開したギャラクトロンはそのまま右腕をロケットパンチのように飛ばしてオーブに一撃を喰らわせる。するとその右腕はオーブの頭上からレーザー光線を放ち、オーブは膝をついてしまった。

「ヴォォォ・・・ッ!」

 

 レーザー光線が直撃しながらも黒いオーラを纏った両腕で頭上の右腕をがっしりと掴んだオーブはそれをギャラクトロンへと向けて投げ返した。

『・・・・ッ』

 

 投げ返された右腕は元々付いていた関節部にぶつかると地面に落下して爆発する。そしてオーブは怯んでいるギャラクトロンに飛びかかり、尻尾を掴みあげた。

「ヴォぉぉぉ!!」

 

 両腕で尻尾をがっしりと掴んだオーブは右脚で身体のほうを押さえながらそれを引っ張り、力任せに引きちぎった。

「ヴぁははハハッ!」

 

 引きちぎった尻尾を投げ捨てたオーブはそれを踏みつぶしながらそれを楽しむかのような笑い声をあげた。

「レスリングとかのヒールっつうよりは・・・」

 

「今のオーブは『悪』そのものになっているようですね」

 

 はっきりいって今のオーブは・・・『恐い』。普段の『正義の味方』としての面影がまるでない。

「ヴァぁァァウ!!」

 

 ギャラクトロンの頭を押さえつけながら地面に叩きつけるその姿はまるで1匹の怪獣のように思えた。

 

 

 

 

~~久遠~

 

「えっ?・・・あれ?」

 

背中で何かが引き抜かれたような感覚とともに私の意識が覚醒した。えと私は確かBRGの人達に見つからないように車の中に隠れていたら、車がギャラクトロンの尻尾に掴まれて・・・。

「きゃぁぁっ!?」

 

 車の外はケーブルやらよく分からない金属で覆われているけど・・・今の激しい揺れから察するにギャラクトロンが攻撃されているのは分かった。あのギャラクトロンをこんなにも揺らせるほどの攻撃ができるのは・・・

「オーブだけかな・・」

 

 きっとオーブだけだ。

「オーブっ・・!」

 

 私はオーブの助けを信じてこの前睦美から預かったお守りを握りしめる。

「ヴァぁァァァ!!」

 

 まるで怪獣のような雄叫びが響いてくるとともにまたも強い振動が伝わって来た。オーブがギャラクトロンを張り倒したんだ。

「きゃぁぁぁぁっ!?」

 

 見えないものに殴られている恐怖に私は悲鳴をあげてしまう。だけどその悲鳴が外まで届いていないのか、私に気づいてないであろうオーブは倒れているギャラクトロンを殴りつけているような振動が伝わって来た。

 

 

~~乃理~

「ヴォォウ!!ヴァぁウ!!」

 

 ギャラクトロンを張り倒したオーブは右腕に赤黒く禍々しいエネルギーを纏わせて破壊力を上げながら、ギャラクトロンを殴りつける。そして顔を踏みつけて片目を破壊すると右腕のエネルギーを収束させて光輪を作り出し、それをメリケンサックにでもするかのようにしてギャラクトロンを攻撃し始めた。

『きゃぁぁぁぁっ!?』

 

 久遠の悲鳴がギャラクトロンのマイクを通して響いてくる。意識が戻ったようだが、それが反って久遠に恐怖を与えているんだ。

「徹!オーブを、オーブを止めてくれ!!」

 

「・・・無理だ。俺には何もできない」

 

 徹は悔しそうにオーブを止めることをできないと告げると・・・オーブは大剣になっているギャラクトロンの左腕を引っ張り出した。

「ムゥゥァァァ!!ヌゥゥゥン!!」

 

「俺達に止められなくても・・・もうすぐオーブは消えてくれる」

 

 力任せにギャラクトロンの左腕を引っ張るオーブは胸のランプを赤く点滅させ始めた。もう姿を維持できる時間が少ないのだ。

「ヴォォォぉぉォォ!!」

 

 そんな自身の残り時間を気にもしていない様子のオーブはギャラクトロンの左腕にある大剣を引きちぎると、その刃部分を両手で掴み、それをまるで斧かハンマーにでもするかのように倒れているギャラクトロンに何度も振るい降ろした。

「やめてくださいオーブ!このままでは久遠さんが死んでしまいます!」

 

「ヴァゥ!!ガァぁァァッ!!」

 

 音々の声などまるで耳に入れていないオーブは大剣でギャラクトロンを叩くことをやめようとはしない。

「やめろオーブ・・。このままでは本当に久遠が・・・」

 

 このままでは中にいる久遠がオーブの手で本当に死んでしまう。

「やめろぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

「っ!!」

 

 私がやめるように叫んだ瞬間・・・オーブは正気を取り戻したのか、大剣を振り下ろすその手を止めた。するとその隙を逃す気がなかったギャラクトロンは目から光線を放つと、オーブは咄嗟に大剣を盾にするようにそれを防いだ。

「ヴァぁぁっ!?」

 

 光線によって大剣が爆発してしまい、オーブはその場に転倒すると・・・必要以上にオーブに攻撃されて白かったボディがオイルや塗装の剥がれで黒くなっていたギャラクトロンが立ち上がる。

「ヴォぉ・・・ヴぉぉぉぉっぉ!!」

 

『・・・・・』

 

 再び正気を失った様子のオーブは両腕にエネルギーを溜めて光線技を放つ体勢を取ろうとすると・・・逆にギャラクトロンはオーブを落ち着かせるかのように穏やかな音楽を奏で始めた。

「ヴァぁァァァ!!」

 

 そんなものなど聞く耳を持たないとでもいうかのようなオーブは赤黒い光線と水色に光る2色の光線がらせん状に交わったものを放つ。

『・・・・・』

 

 ギャラクトロンは自身の各部に魔法陣を展開し、まるで久遠を守るかのようにオーブの放った光線を一瞬だけ防御するも・・・既にボロボロになっているギャラクトロンにオーブの光線を防ぎきるほどのパワーは残ってはおらず、ギャラクトロンは爆散して周囲に爆風が吹き荒れた。

「久遠!!」

 

「久遠さん!」

 

 私達はすぐさまをギャラクトロンの残骸から久遠を探し出すために走り出すと・・・再び正気に戻った様子のオーブは自分のやってしまったことを後悔するように両手を震わせながら光となって消えていった。

 

 

 

~~ガイ~

 

 真っ白い空間・・。そこでアンジェリカが悲しそうに俺の方を見ていた。

「どうしたんだアンジェリカ?」

 

 俺は涙目のアンジェリカに涙の理由を尋ねようとすると・・・アンジェリカは透明になって消えてしまう。そして俺の足元に落ちていた1枚のカードを見てこれが夢だと認識した。

「べリアル・・」

 

 足元に落ちているべリアルのカード。そうか・・・。これは夢なんかじゃなくて俺の心の悪意が見せた幻覚なんだな。

「ウオォォォッ!!」

 

 地面にクレーターができるほどべリアルさんのカードを強く殴りつけると・・・幻覚が消える。周囲にはギャラクトロンの破片と戦いに巻き込まれて折れ、爆発に巻き込まれて燃えた木々が広がっていた。

「・・・・ッ」

 

 これを・・・俺がやってしまったのか。べリアルさんのカード・・・闇の力を制御しきれなかった俺が・・。

「く、久遠は・・・」

 

 闇の力を制御できはしなかったが、暴走している間の記憶自体はあった俺はゼットシウム光線で久遠ごとギャラクトロンを吹き飛ばしてしまったことに遅れて焦りを抱いていた。

「久遠ッ・・・!」

 

 俺はギャラクトロンの爆発に巻き込んでしまった久遠を探すため殴ったべリアルのカードをその場に残したまま光の速さで森中を駆け抜けた。

 

 

 

 

~~乃理~

 

 オーブがギャラクトロンを撃破した後、奇跡的に五体満足の状態で生きていた久遠はすぐさま病院へと運ばれて手術となった。

「久遠・・・」

 

「・・・大丈夫だ。お前の友達はきっと助かる」

 

 父さんは自分も職場と住んでいたアパートを失ってそれなりの被害を受けているというのに私を慰めてくれた。すると手術中の明かりが消えて医師たちが出てきた。

「久遠は、久遠は無事なのか!?」

 

「一命は取り止めましたが・・・五体満足で生きていただけでも奇跡的で、いつ目が覚めるかは分かりません。このまま目覚めないことも考えられます」

 

 久遠の目が覚めないだと・・。

「お前は医者なんだろ!何とか!何とかならないのか!!」

 

「・・・・」

 

 私は医者を襟を掴んで何とかするように言うも・・・医者は何も答えてくれない。

「おい!何とか言え!」

 

「もうよせ乃理・・」

 

 頭に血が上っていた私は徹の言葉で我に返る。

「す、すまん・・」

 

「いえ、友人がもう目覚めないと言われて取り乱すのは仕方がないことです。力及ばず申し訳ありません」

 

 私達に頭を下げた医師はこの場を去っていく。すると何かが一瞬駆け抜けたような気がした。

「どうしたのです乃理さん?」

 

「あ、いや・・・なんでもない」

 

 人のように見えた気もしたが・・・人間があんな速さで走れるわけがないしな。

「なぁ父さん。人間の正義は何かを壊さなければ作れないものなのか?命を奪うことで生き長らえている人間は地球にとって悪で・・・食物連鎖をしなければ生きられない生態系はリセットしたほうがいいのか?」

 

 私はそう呟きながら近くの長椅子に座り込む。すると父さんは私の頭に右手を乗せてきた。

「何馬鹿なこと言ってんだ。あのロボットが言ってたってことを真に受けたのか?・・・機械と同じ考えで考えてんじゃねぇよ。機械で体温は計れても想いの熱さは計れない。人は人の想いの熱さに共感できる。何故だか分かるか?」

 

「心があるからか?」

 

「そうだ。人間には熱い心がある。だから大自然を奪ってるんじゃなく、支え合ってるんだって分かる。シマウマが増え過ぎれば草原がなくなっちまう。だからライオンがシマウマの数を減らす」

 

「・・・そしてライオンが死ぬと大地に草が生える」

 

 父さんの言葉に、父さんが何を言いたいのかを理解した徹が続けた。

「そうだ。そしてその草を食ったシマウマが育っていく。確かに生存競争っていう過酷な生き方をしてるのは事実だ。だけどただ争ってるんじゃない。命のサイクルは続いていて、命が命を支えているんだ」

 

「命という名の冒険をすることで地球はそんな支え合う道を選んだんだよ。この地球はな・・・」

 

 支え合う道を・・・。つまり地球は1つの大きな命でもあるということか。

「だから乃理。お前の足りない頭じゃどうせまともな答えなんて出やしないんだからもっと単純に・・・心で感じてみろ。あのロボットのカメラでは見れなかっただろうもんを見据え続けるんだ。お前の心でな」

 

「・・・足りない頭というのは余計だぞ」

 

少し頭に来た言葉はあったが・・・父さんの言わんとしていたことは理解できた。すると父さんの製鉄所に務めている男が走って来た。

「社長!」

 

「おいここは病院だぞ。走るんじゃねぇよ」

 

「す、すんません。ってそんなことよりも社長!墜落したBRGのパイロットなんですけど・・・無事でした!うちのバネが・・・緊急脱出用のスプリングがパイロットを救ったんですよ社長!」

 

 社員は本当にパイロットが無事だったことを語り、嬉し涙を流している。父さんがその社員の肩をポンと叩くとその社員は自身の涙を拭った。

「っと・・・。泣いてる暇なんてないな。それじゃ俺は会社の方に戻ります!早く会社を直さないと!」

 

「あぁ。悪いが任せたぜ。俺はもう少しこっちにいる」

 

「はい。それじゃ失礼します!」

 

 会社を直すと意気込んだ社員が製鉄所へと戻っていくのを見届けた私達が久遠の病室へと向かうと、既に病室にはガイがやってきていた。

「あれ?どうしてガイがもういるんだ?」

 

「・・・・・」

 

 ここに来るまでガイとはすれ違っていなかった気がするが・・・まぁいいか。

 

 

 

 

~~徹~

 

 久遠の病室へとやってくると、既にそこにはあんちゃんの姿があった。俺は「どの面下げてここに来た」と掴みかかりそうになったが・・・あんちゃんが本当に心配するように久遠の手を握ったことで冷静さを取り戻した。

「久遠・・・ッ」

 

 あんちゃんは久遠を傷つけてしまったことを本気で後悔しているようだ。

「俺は・・・オーブが許せない」

 

 思いがけない言葉があんちゃんの口から洩れた。オーブは・・・ウルトラマンオーブは紛れもないあんちゃんのはずだ。その本人がオーブを否定したんだ。

「私も・・・オーブが許せない。今までオーブのことを信じてきたのに・・・」

 

 俺達の中で一番オーブに憧れを抱いていたはずの乃理までもがオーブを避難してしまう。

「科学と同じだ。強力なパワーを作り出した途端に破壊と暴力に飲み込まれてしまう。そんな闇に制御が効かなくなってしまう。

 

「オーブでさえも・・・なのですか」

 

たぶんあの魔禍々しい黒い姿はあんちゃんが制御しきれないほどの強大な力なんだろう。

「自分の闇ってのはなぁ・・。力づくで消そうとしちゃいけねぇんだ。逆に抱きしめて電球みたいに自分自身が光る。そうすりゃ視方がまるっきり変わるもんだ。どこから見ても闇は生まれねぇ・・」

 

「・・・ッ!」

 

 ゲンさんの話を黙って聞いたあんちゃんは久遠の手を両手で握りしめると・・・久遠の目がゆっくりと開いた。

「が・・・ガイ・・?」

 

「久遠・・」

 

「私・・。何処で何をしてるの・・?」

 

 目覚めたばかりの久遠は自分の状況を理解しきれてはいないようだ。

「病院で・・・俺が手を握ってるんだ」

 

「とても・・温かい」

 

 そう言いながら久遠は再び眠りにつく。

「・・・俺は消える。逃げたと思ってくれて構わない。今の俺は・・・お前らの傍には居られない」

 

 涙目でそう語ったあんちゃんはそのまま静かに病室を後にしてしまった。

 

 

 

 

 

~~乃理~

 

 ガイが私達の前から去っていった後・・・私はしばらくオーブの事を考えていた。

「父さん。・・・私、オーブはきっと正義の味方。私の理想とするヒーローそのものだって思っていたんだ。だけど違った・・・。大きな力を手に入れた途端、闇に呑まれて変わってしまった。オーブもやっぱり宇宙人で・・久遠や私達のことなんて考えてないのかな?」

 

 これまで信じてきた相手に裏切られたような気持ちとなっていた私は我慢しきれずに涙を流してしまう。

「私もう・・・何が正義か分からないよ・・ッ」

 

「正義って言葉の意味はわりと曖昧なんだ。人それぞれにその正義ってのは違う。前に教えただろ、戦うだけがヒーローじゃないってよ。本当の正義ってのは悪者と戦って勝つ奴らじぇねぇ。戦いで壊れた街を直そうと立ち上がる普通の奴らが正義なんだよ。確かに正義の味方ってのはヒーローって言われるもんだろうよ。だがな『正義=ヒーロー』ってわけじゃねぇんだ」

 

 正義がヒーローじゃない?

「ごめん父さん。意味が分からない」

 

「・・・はぁ。お前運動はできたくせに頭の出来は悪かったもんな」

 

 この親、こんな時でも自分の娘のことを悪く言えるのか。

「お前が俺の答えじゃなくてお前の本当の正義を見つけられたら・・・この言葉の意味が分かるだろうよ」

 

 私はいままで父さんの語った『正義』とTVで見た『正義の味方』を信じてきた。だからこそ私は『私の正義』というものの答えが分からなかった。

 

 

 

 

~~ガイ~

 

 病室を後にしてから数時間後、俺は炎が消化された森の中でべリアルのカードの前に立っていた。

「闇を抱きしめる。そんな強さを俺は見つけられるのか?

 

 そう自分に問いかけながらも俺はべリアルのカードを拾い上げ・・・その答えが分からないまま俺はこの地を去っていった。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター
属性・暴(ボウ)属性

 光の国の戦士であるゾフィーさんと闇に魂を委ねたべリアルさんの光と闇の力をお借りした姿、それがサンダーブレスターだ。これまでのフュージョンアップとは一線を越えるこの力は今の俺には使いこなせない。

ギャラクトロン
属性・風属性

 シビルジャッジメンターギャラクトロン。別次元からやってきた謎のロボットで地球にはない未知の物質や物理法則を超えた部品で構成されているんだ。久遠を取り込んだこいつに対してサンダーブレスターを使った結果・・・最悪な結果を招いてしまった。

次回「ガイのいない日」

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