ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 ウルトラマンジードがべリアルの息子という情報を耳にして半信半疑な自分がいます。


捨てられた正義

~~乃理~

 

「父さん!お昼を持って来たぞ!」

 

「おう、すまねぇな!」

 

 新年を迎えて2日目。私と扇は実家へと里帰りをしていた。父さんは機械のバネを作る製鉄所の経営者・・・つまり工場長をしていてまだ1月2日だというのに休まず仕事をしている。

「はっはっ!お前が弁当を持ってきてくれるなんていつ以来だかな!」

 

「たぶん中学以来だろう」

 

「ちなみにこれは乃理が作ったのか?」

 

「私が作れるはずないだろう。扇だ!」

 

 私と扇の母は私が7歳ぐらいのときに事故で亡くなった。その頃BRGのエースパイロットとして活躍していた父さんは、できるかぎり私達との時間を作るために当時住んでいた家からさほど遠くない場所の製鉄所で働き始め・・・今では工場長になるまでとなった。

「お前よぉ、いい加減に飯ぐらい作れるようになれよ。そんなんじゃいつまで経っても自立できねぇぞ」

 

「自立できないとはなんだ!ここは『嫁の貰い手がいないぞ』と言うところじゃないのか?」

 

「お前にそんなん期待してねぇよ」

 

 この親、自分の娘になんてことを言うんだ。

「つうか扇も扇でこの残念な奴を甘やかしすぎなんだよな。これじゃこいつがいつまで経っても自立しようとしねぇじゃんか」

 

「失礼な!第一ちゃんと東京で働いてるじゃないか」

 

「弟と一緒に住んでいて、家事は全部弟に任せてるのは自立できてるって言わねぇ。せめて飯ぐらい作れるようになってから反論しやがれ」

 

 弁当を作り忘れて『弁当を作って会社に届けてくれ』って電話してきたのはそっちじゃないか。なのになんだその態度は。

「そういや扇はどうした?てっきり昔みたいに一緒に来るもんだと思ってたが・・・」

 

「流石に未だ常に一緒というわけではないさ。あいつは今、父さんが暮らしてるアパートを掃除している」

 

「へぇ、あいつも一応少しは姉離れできてきてるってことか。・・・なぁ乃理。お前、あっちでの暮らしは楽しいか?」

 

「あぁ、楽しいぞ仕事で色んなところに行って、最近は色んな出会いがある。トリコリの常連の久遠やトリコリでバイトをし始めた瑠々。怪獣の専門家のガイ。他にも仲間が増えたんだぞ」

 

 流石にウールとサァラやたまにトリコリで見かけるヤクトワルトという男が宇宙人だとは言えないが・・・この半年ぐらいで本当に色々な出会いがあった。

「出会いねぇ・・・」

 

「なんだ?『運命的な出会いはあったか?』とは聞かないのか?」

 

「だからお前にそんなの期待してねぇって」

 

 チクショウ。この親、娘はどうせ結婚はおろか彼氏もできないと考えている。

「それよかあっちには最近頻繁に怪獣が現れてるらしいじゃんか。危ないんじゃないのか?」

 

「SSPは現地に行って怪獣たちを撮影し、それをネットに配信して注意を促すのが仕事だからな。東京に限らず怪獣のいる地に赴くのだからそれなりに危険は伴うがやりがいはある仕事だぞ」

 

「やりがいねぇ・・。中々やりたいことを見つけられずに高校卒業しても中々就職先が見つからなかったお前がそんなふうにやりたいことを見つけてるってのは悪かねぇよ。だが正直なところ、俺としては怪獣を撮影したりだなんて危険な真似はして欲しくないんだ。自分より子が先に死んで欲しくない。それが親ってもんだ」

 

 父さんの反応は親として当然のものだ。しかも父さんは既に母さんという一番大切な人を失っている。だからこそ残された家族である私と扇に先立たれてほしくないのだ。

「・・・まぁ、俺がこんなことを言ってもお前はSSPを辞めようとしないんだろう。俺が今言ったことを他の人達に抱かせたくないってな」

 

「よく分かったな」

 

「へっ!伊達にお前らの親を20年以上やってねぇよ。そういやSSPによく姫山のとこの娘が来るって昨日晩飯のときに話してたよな」

 

「あぁ、杏のことだな。それがどうしたんだ?」

 

「姫山財閥が作ってる車とか飛行機あるだろ。あれにはうちのバネが使われてるんだぜ」

 

 それは知らなかった。

「バネも人間と同じだ。どんな逆境でもそれを跳ね除ける力がある。先代の工場長が言っていたこの言葉があったから物が売れない時期、色んな場所に売り込んでようやく姫山と契約することができたんだぜ。その契約がなかったらうちの工場なんか今頃更地になっていただろうよ」

 

 この工場にもそんな時期があったのか。

「そういやお前の仲間が明日近くまで来るんだってな」

 

「あぁ!この辺りの空に魔法陣のようなものが現れては消えたりしているという情報が入ったらしく魔法使いがいるのではないかということで徹達が調べに来るんだ」

 

 年末からこっちに戻ってきた私はまだ目撃してはいないのだが・・・最近この辺りの空にまるで何かを探るかのように魔法陣が浮かんでは消えたりしていると情報が入ったらしく、確認にくるようだ。

「本当なら今日到着予定だったのだが、Uターンラッシュに巻き込まれてしまったらしくてな」

 

「ふむ・・・。せっかくだ。娘たちが世話になってるし、顔を合わせるぐらいはしとかないとな。明日の昼あたりでも会えるよう話をつけといてくれ」

 

 へぇ・・。さっきSSPを辞めて欲しいと言っていた父さんがSSPに昼食の誘いをとはな・・。父さんのことだから私の意見など聞かずに『娘をSSPから脱退させてくれ』だなんていうような性格はしてないし、そこのところは大丈夫だと思うが・・・目的が分からんな。

 

 

 

~~久遠~

 

 1月3日。私は乃理が以前住んでいて、乃理の父親が働いているという群馬県に調査に向かうという徹さんたちに無理を言って同行させてもらうことにして徹さんと音々、私とガイの4人のメンバーで目的地である町へと到着した。

「ふぅ、長い車の旅だったかな・・」

 

「Uターンラッシュに巻き込まれてしまって10時間も予定していた時間からズレてしまったのです」

 

 本当なら昨日の夕方ごろには到着してホテルに到着する予定だったけど・・・それは叶わなかったかな。

「あ~。首いてぇ・・」

 

 長時間の運転に疲れていた様子の徹さんはあくびをしながら自身の肩を揉んでいるとガイは何やら周囲を見渡していた。

「どうしたのガイ?」

 

「いや・・・何だかどっかから見られてる気がしてな」

 

「見られてるってことは俺達を知ってるってことだろ。つまりSSPのサイトを見てくれている人ってこった!」

 

 ポジティブに捉えた徹さんはガイが感じているという視線をSSPのサイトを見てくれている人たちだと言い張った。

「兄さん。1つの閲覧数が多くて2000程度のサイトを見てくれている人がいたとしてもせいぜい『何だか何処かで見覚えがあるけど、何処だっけ?』程度なのです」

 

「私もそう思うかな」

 

第一あのサイトって徹さんと乃理ぐらいしか顔を出してないから、見られてるのはおかしい気がするかな。

「可能性があるとすればまたガイさんが狙われていたか・・・この前スパークドールズを取り戻すために盗んだ宇宙人のアジトに乗り込んだじゃないですか。もしかしたらその時に私たちがマークされたんじゃないでしょうか?」

 

 徹さんとは逆にネガティブな捉え方をした音々はマロのスパークドールズが盗まれたときにアジトに乗り込んで・・・私達がターゲットにされた可能性を心配していたようだ。

「いや・・。なんというか俺らを見てるっていうよりこの土地を見てるような感覚なんだよな」

 

 この場所を見てる?

「もしかして噂の魔法陣と関係があるのか?」

 

「そこまで断定はできないな。そもそも見られてる感じがするってだけで気配を感じてるってわけでもないし、まぁ注意しとくに越したことはないな」

 

「つまりここは狙われた街かもしれないってことか」

 

 

 

 

 私達は乃理たちと待ち合わせをしている工場へとやってくると、そこの工場長に徹が挨拶をする。

「初めまして。サムシングサーチピープルの責任者をしてる大石徹です」

 

「おう、娘達から話は聞いてるよ。俺は貫葉玄(いずるはげん)。すぐそこの工場で働いてる」

 

 乃理と扇のお父さんであるゲンさん。以前扇から聞いた話だとどうやらすぐ近くの工場で工場長をしているらしい。私も人のことは言えないけど杏は財閥の令嬢で乃理と扇は工場長の娘。ルルも市長の娘らしいし、トリコリ集まる人たちってそれなりの立場の親が多いかな。

「・・・なんかすみません。うちは普通の親で・・」

 

 私の顔を見て考えてることを察した音々は自分達の親が普通なことを気にして謝ってくる。お父様のことは話してないけどお母様がBRG医療チームのトップってことはこの前のお母様来店の流れで話しちゃったからなぁ。

「そういえば徹さんと音々の両親って2人にお店を預けて何をしてるの?」

 

「お母さんが数年前に体調を崩してしまい兄さんにトリコリを任せてからフードコーディネーターをしていたお父さんと一緒に湯治という名目であちこちの温泉を巡る旅に出てしまったのですよ。もうお母さんの病気も治ってるはずなのにすっかり温泉巡りにはまってしまって・・・」

 

 なるほど。だから見た事なかったんだ。

「今年はお父さんの仕事の都合で帰ってこれませんでしたが、普段は年末年始は帰ってきてるのです」

 

 羨ましいな。・・・両親と揃って会えるの。

「ん?・・・あれは何かな?」

 

 何やら空が光ったような気がしたので空を見上げてみると・・・赤く光る魔法陣のようなものが空に広がっていた。

「あれって噂になってる魔法陣だよね。・・・ガイは何か知ってる?」

 

「悪いがオカルトはさっぱりだ」

 

 怪獣の知識はかなりあるのに、オカルト系の知識はないんだ。というかこの前のガンQなんてもろにオカルトだったじゃん。めっちゃ妖怪っぽかったじゃん。

「・・・俺が感じていた視線はあの魔法陣からだと思う」

 

「え?それってどういうことですか?」

 

「あの魔法陣の向こうに何かいるってことだ。たぶん消えたり現れたりしてた魔法陣は何度もコンタクトしようとしてチャレンジしてたからだろうよ」

 

「つまりあれはゲームでいう転移魔法ということですね。ですがこの地域で転移魔法を何度も広げているということは・・・この地域に魔法使いが実在するということでしょうか」

 

 扇は魔法陣をゲームに例えた上でこの町に魔法使いがいる可能性を提示するとガイは首を横に振った。

「確かに魔法陣っぽく見えるだろうが・・・あれはたぶん魔法なんかじゃないぞ。魔法ってのはなんていうかこう・・生命のオーラみたいなのを感じるがあれはそんなものを感じないんだ」

 

 魔法じゃない?というかガイ、オカルトはさっぱりっていうわりにはまるで魔法を間近で見た事があるような口ぶりかな。

「お、おい!何か出てくるぞ!」

 

 乃理が魔法陣のようなものから何かが出てこようとしていたことに気づき、指を刺していたので私達ももう1度見上げてみると・・・

「っ!」

 

「きゃぁっ!?」

 

 魔法陣のようなものから何かが落ちてきた。これは・・・ロボット?

「ガイさん!あれは何なのです?」

 

 音々は落ちてきたドラゴンの形をした白いロボットを指さしながらガイに尋ねてみた。オカルトは専門外でもキングジョーブラックとかいうロボットとかガメロットとかいうロボットの名前も知ってたらしいし、あれの名前も知ってるかも。

「・・・俺だってなんでも知ってるってわけじゃないんだぞ」

 

「つまり・・・」

 

「俺にもわからん」

 

 珍しい・・。ガイにも分からない怪獣がいるなんて・・。

「名付けるならそうだな。ギャラクシードラゴンってところか」

 

「いえ、ここはサルヴァトロン。イタリア語で救世主というのがいいと思うのです」

 

 このロボットのドラゴンの名前で揉めているとロボットは穏やかな音楽を奏で始めた。

「ほら、ロボットが喧嘩はするなって言ってるぞ。このロボット、良いヤツだな。きっとこいつは正義のロボットだ!」

 

 ロボットが穏やかな音楽で言い争いを止めたことで、乃理はロボットが『正義のロボット』だと決めつけていた。まだそんなこと分からないのに・・。

「ギャラクシードラゴンとサルヴァトロンを合わせて『ギャラクトロン』で決定だな!」

 

 さらに乃理は先ほどの徹さんと音々の案をまとめて『ギャラクトロン』という名前を決めた。

 

 

 

 

~~乃理~

 

 私が魔法陣から出てきたロボットにギャラクトロンと名付けた翌日、BRG監修で父さんの製鉄所の職員総出でギャラクトロンの解析をさせてもらうことになった。

「悪いな。無理を言っちまって」

 

「貫葉さんのとこにはうちのマシンのバネも作ってもらってるし、むしろ怪獣の事後処理で手が回りきらないこっちとしては助かるよ」

 

 父さんは知り合いのBRG隊員の会話が聞こえてくる。どうやら父さんの製鉄所で作るバネはBRGのマシンにも使われているようだ。

「ゲンさん!これを見てください!」

 

「ん?どうした?この関節部分なんですけど・・・」

 

「バネ・・なのか?なんでスライムみたいなんだ?」

 

「ゲル状の物質で構成されたものがバネの役割を果たしているんだと思います」

 

「バネの部分だけでなく、地球上の物質ではないもので作られていることは確かなようですね」

 

 聞き耳を立てていると何やら気になる話が聞こえてきた。地球上のロボットでないとするとキングジョーやガメロットのような宇宙のロボットだということか。

「ところで・・・久遠はいつになったら出てくるんだ?」

 

 BRGに知り合いがいるのか後ろめたい気持ちがあるのかは分からないが・・・久遠はBRG隊員の人達から隠れるようにSSPの車に引きこもっていた。

「久遠さんのお母さんが医療チームのトップとは聞いていますが、だからといって現場の人に久遠さんの顔が知れているということはないはずですしね」

 

 どうやら音々も事情が分からないらしい。

「まぁ何か事情があるようだし、そっとしといてやろうや」

 

「そうですね。ギャラクトロンの方を・・」

 

 事情が分からないながらも今はそっとしておいてやることを決めた私達はギャラクトロンを見上げた瞬間、ギャラクトロンの目がいきなり光り出した。

「おぉ!なんか目が光ったぞ!?」

 

 ギャラクトロンの目が輝いたかと思うと・・・ギャラクトロンはBRGが押さえつけるために地面に繋げたワイヤーなどものともせずに立ち上がった。

「えっ・・・きゃぁぁぁぁっ!?」

 

 そしてギャラクトロンは車ごと久遠を結晶体の部分から車ごと取り込んだ。

「久遠ッ!?」

 

「久遠さん!?」

 

 いきなりの出来事だったので私達は驚きのあまり固まっていると・・・

『この世界の解析は完了した』

 

 ギャラクトロンは久遠の声で語り出した。

『各地で起きている紛争、差別、残虐さを理解した。この世界のために争い全てを停止させる』

 

「争いを止める。やっぱり正義のロボットだったじゃないか!」

 

 私がやっぱり正義のロボットだと思うと・・・次に発せられた言葉でその希望は撃ち砕かれた。

『地球人は紛争は差別などの問題が絶えず、争いの火種を生む危険な存在である』

 

 ギャラクトロンは人間を危険な存在だと判断したのだ。

『別の世界でもそうしてきたように、全ての争いを止める。即ちこの世界をリセットする。それが我が使命。我が正義』

 

 そう告げたギャラクトロンは目から光線を放つと着弾地点に赤い魔法陣のようなものが広がった後に爆発を巻き起こした。

「あぁ・・・工場が・・」

 

 爆発によって父さんの経営する工場や昔住んでいた家の辺りが吹き飛ばされてしまいショックを受けていると・・・ギャラクトロンは町の方へと向けて歩き出した。

「お前ら!無事か?」

 

「「「「はいッ!」」」」

 

「・・・良かったぜ。社員総出であいつのことを調べていて工場のほうに誰も社員がいなくてよ」

 

父さんは社員全員の無事を確認してひとまず安心する。

「で、でも父さん。工場が・・・」

 

「命さえあれば工場はなんとかなる。おいSSPのリーダー。お前さんの車、あいつに飲み込まれちまっただろ。あれを追うのなら俺の車を使え」

 

 そう言った父さんは徹に自分の車の鍵を投げ渡した。

「ありがとうございます。お借りします!」

 

「駐車場の入り口近くの黒いのだ!」

 

「ウッス!」

 

 父さんから車の鍵を預けられた徹は車へと走っていったので私達もその後を追って走り出した。

「ところでガイさん。結局のところあれはいったいなんなのですか?」

 

「たぶんあれは作った本人たちも手に負えなくなって捨てることにしたんだろうな」

 

「次元を超えた不法投棄ということですね」

 

 なんともはた迷惑な話だ。

「お前ら!早く乗れ!」

 

 私達は急いで車に乗り込んで町へと向かう。すると音々はスマホで生中継を確認していた。

『皆さん!この町から数百メートル先の工場近くに飛来したというこの白いロボットが突如として起動して、この町へと歩いてきました。道行く人たちは足を止めてこのロボットを見上げたり、撮影をしたりしています!』

 

 仲間とともにギャラクトロンを撮影しつつ、実況をしている男がカメラのほうへと視線を向けようとした瞬間・・・ギャラクトロンの目から光線が放たれてた。

『えっ?』

 

 動画を撮影する仲間のすぐ目の前に画面に収まりきらないほどの魔法陣が広がったかと思うと・・・発光とともに車の外から爆発音が鳴り響いて映像が終了した。おそらく映像を取っていた人たちや、あの場にいた大勢は今の光線で・・・。

「くそっ!!」

 

「お、おいガイ!何処に行くんだ!?」

 

 爆発音が響くと同時に車が急停止をしていたのでガイは車の扉から出て町の方へと走っていってしまった。

 

 

 

~~ガイ~

 

 車から降りた俺はギャラクトロンのところへと走りながらオーブリングとカードを取り出す。

「お前は考えを急ぎ過ぎなんだよ!ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと変身した俺がギャラクトロンの前に着地すると、ちょうど到着した乃理が車からこちらに向けて叫んできた。

「オーブ!ギャラクトロンの中には久遠がいるんだ!助け出してくれ!」

 

「・・・ッ!」

 

 ギャラクトロンに吸い込まれる瞬間の久遠を見ていたので知ってはいたが、俺は乃理の言葉に頷く。するとギャラクトロンはこちらを振り向くと何やら俺をスキャニングし始めた。

『・・・・・』

 

 スキャンを終えたギャラクトロンは何故か俺を無視して再び人間を滅ぼすために歩き出した。

「っ!!」

 

目を光らせてギャラクトロンの中を透視して、久遠の居場所を探す。

「っ!」

 

 見つけた。あの赤い結晶体の奥のほうだな。

「ダァッ!」

 

 俺は久遠を救い出すために結晶体の部分を引き剥がそうとするも・・・まるで剥がれそうにない。パワーファイターのフォトンビクトリウムなら剥がせるかもしれないが、あのデカい腕だと細かい作業がしにくいから久遠を助け出すには不向きだ。

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ・スカイタイプ!』

 

「マックスさん!」

『ウルトラマンマックス!』

 

「疾風の速さ、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スカイダッシュマックス!』

 

「シャァッ!!」

 

 スカイダッシュマックスに変わった俺はギャラクトロンの周りを高速で駆け回ってかく乱しつつ、威力を抑えたマクバルトアタックで少しづつ結晶体を削っていく作戦で攻めてみるも・・・削るどころかまるで傷を与えられていなかった。

「ダァッ!」

 

 ならばと思い威力を抑えていない通常のマクバルトアタックで結晶体を攻撃をしかけるも、それでも結晶体は傷一つ付いていなかった。

「セブンさん!」

『ウルトラセブン』

 

「エースさん!」

『ウルトラマンエース!』

 

「切り裂く刃!お借りします!」

『ウルトラマンオーブ!スラッガーエース!』

 

 結晶体の周りを斬ってからそれを引っこ抜く作戦に切り替えてみるも・・・バーチカルスラッガーの刃すらもギャラクトロンの装甲には通用せずに弾かれてしまった。

 

 

 

~~乃理~

 

 オーブが久遠を助け出すために必死になってくれてはいるが・・・ギャラクトロンの装甲にはオーブの攻撃がまるで通用していなかった。

「オォォォ・・・シャァッ!!」

 

 武器を投げ捨てたオーブはギャラクトロンを両手でがっしりと掴んで空へと飛び上がった。

「えっ?何でだ?」

 

「ここが町中だからなのですよ。あんな硬い相手じゃオーブが全力で戦いにくいのです」

 

 確かにこれ以上あいつの無差別攻撃で町に被害を与えさせるわけにはいかないからな。移動させるのが最善の手だろう。

「よし!追うぞ!」

 

 徹の運転する車に乗った私達はオーブが飛んで行った山の方へと向かう。トンネルを抜けるとオーブは青い姿となって槍を振るっていた姿が見えた。

「オォォォォォ!!」

 

 オーブの連続斬りは胸の結晶部分を避けている。久遠を傷つけないためだろう。しかし槍による連続斬りの最中、その槍はギャラクトロンの後頭部から伸びる尻尾のような鉤爪によって挟まれ、捨てられてしまう。

「ダァッ!」

 

 武器がなくともとオーブはキレのあるキックで蹴り込むもギャラクトロンはまるで怯まない。それどころか尻尾のような鉤爪でオーブの首を挟んで持ち上げた。

「デュァ・・・っ!」

 

 オーブはそれを振りほどこうと必死にもがくも振りほどけずにいると・・・ギャラクトロンは左腕を半回転させてブレードを展開すると、そのブレードでオーブの腹部を貫いた。

 




ウルトラヒーロー大研究

カイザーべリアル
属性・闇属性

 超銀河皇帝カイザーべリアル。ゼロさん達によって一度は敗れたべリアルさんが別次元の宇宙へと流れつき、銀河帝国を築き上げた時の姿だ。大軍団を率いて宇宙を支配しようとしていたが人々の光が集まったウルティメイトイージスの力を得たゼロさんに敗れたんだ。

カオスヘッダー0
属性・光属性

 コスモスさんの宿敵であったカオスヘッダーが怒りや憎しみから解放されて優しさや慈しみを学び変化した姿だ。光の化身のような姿へと変化したカオスヘッダーは惑星ジュランへと移り住み、怪獣たちとともに平和に暮らしているぞ。


次回「君の正義僕の悪意」

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