ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 5月下旬から始める外伝のタイトルは『ULTRAMISSION ORB』に確定しました。


杏の秘密

~~ガイ~

 

 惑星エスメラルダ。かつて大きな争いに巻き込まれ、人が住める星ではなくなってしまい・・・生き残ったエスメラルダの国民は地球のルサールカという土地に移り住んだ。基本的には結界を張っているため外界から国が認識されないようにされていていた。

「ガイよ。これからも聖剣の勇者としてこの地を・・我が娘を守ってくれ」

 

「この剣に誓って・・」

 

 だいたい100年ぐらい前、俺はミッションでルサールカに移り住んでいたエスメラルダの人々を守るために戦っていた。エスメラルダの王族には既にこの宇宙には存在しないエメラル鉱石のエネルギーを宿していて、そのエネルギーを狙ってこの地に怪獣や宇宙人がやってくるからだ。あくまで外界の人々・・つまり地球人からここが認識されないだけで怪獣や宇宙人はエネルギーの気配を頼りにこれるからな。

「ところで先日のバルタンとの傷は癒えたか?」

 

「はい。もうこの通りです」

 

 国王に傷のことを尋ねられた俺は右腕をグルグルと回してみせる。傷と言ってもたった1発受けただけだったので大したことはなかったのだが・・・国王は心配性なためその1発でも気にしていた。

「バルタンの科学力はエスメラルダを遥かに上回る。たった1発とはいえども油断してはならぬぞ」

 

「国王ももう50を過ぎてるんですからあまり無理はなさらないでくださいよ」

 

「ガイぃ~~!」

 

 俺と国王が話をしているとアンジュがこちらへと走って来た。

「あれ?お父様と話してたの?」

 

「いや、ちょうど終わったところじゃよ。それではガイ、娘を頼むぞ」

 

 まだやることがある国王はこの日もアンジュの相手を任せてこの場を去っていく。

「ねぇガイ。今日は何して遊ぼっか?」

 

「お前なぁ、遊んでばっかりいないでちゃんと勉強しないとダメだぞ」

 

「うぅ~~。ガイもお母様みたいなこと言うぅ~」

 

こんな平穏はある時まで保たれていた。そう・・・あの光の魔王獣マガゼットンが現れるまでは。

 

 

 

 

 

「ガイさん!ガイさん!」

 

「ん?・・・あぁ、悪い。寝ていたな」

 

「またうなされていたのですよ。大丈夫なのですか?」

 

 俺はまたあの日の夢を見ていたようだ。

「あぁ、大丈夫だ。それより大掃除のほうはどうなったんだ?」

 

 クリスマスから数日が経過していよいよ大晦日となった。俺はトリコリの大掃除を手伝っている最中に居眠りをしていたようだ。

「もう一通り終わったのですよ」

 

「そうか・・」

 

 何だか最近・・・あの時の夢をよく見ちまうな。闇のカード・・・べリアルさんの力に呑みこまれるのに恐れてたせいで、気が滅入ってるからか。

「失礼する。ガイ殿はいるか?」

 

 俺が夢のことを気にしていると千佳がトリコリへとやってきた。

「ん?珍しいな。今日はアンタ1人で来たのか」

 

 徹は珍しく千佳がここに1人で来たことに驚いた反応をする。この前のようによっぽどのことがない限りは必ず杏とセットで来ているはずの千佳がここに1人で来ているから、驚く気持ちも分かるが・・。

「それで・・・俺に何か用か?」

 

「あぁ、旦那様がぜひともガイ殿と会ってみたいとおっしゃっていてな」

 

「総帥ってことは・・・杏の親父さんってことか」

 

 でも何で俺に会いたいって言ってるんだろうな。やっぱり杏が危険な場所に行くようになったのは俺のせいだって言うためか?・・・いや、そうだとしたらわざわざ招くようなことはしないか。

「別に会うこと自体は問題ないが・・・いつだ?」

 

 有名な財閥の総帥ってんだからそうそう予定に空きがないだろ。

「いきなりですまないのだが・・・今日の午後で頼む」

 

 今日の午後ときたか。随分と急な話だな。まぁ、俺は別に予定があるわけでもないし会いにいってみるとするか。

「分かった。そんじゃちょっと行ってくるから」

 

「おう、なんかTVで季節外れの台風が来てるっぽいから気を付けろよ。もしかしたらまた怪獣事件かもしれねぇから」

 

 へぇ、確かにこの時期に台風が起きるなんて珍しいな。だけどそうそう自然災害を起こすような怪獣なんて現れないだろ。

 

 

 

 

~~杏~

 

 

「なるほどねぇ。だから午前中は千佳がいなかったんだ」

 

午後13時を回った頃。お父さんのいる本社に向かうべく自家用ジェット機に乗っている私はガイが一緒に向かおうとしていた理由を聞いた。

「お父さんはどうしてガイを呼ぶことにしたんだろう?千佳は何か理由をしってる?」

 

「やここ最近のお嬢様が旦那様とのお電話でガイ殿の話題ばかりだからかと・・・」

 

「えっ?そんなにガイの話ばっかりだっけ?」

 

「えぇ。学校でのことなど一切語らず、ガイ殿かSSPでのこと。怪獣とオーブの戦いしかしておりませんでした」

 

 流石にそんなことはないと思って私は最近のお父さんとの通話を思い返してみる。ガイに助けられたり、怪獣のことを教えて貰ったり・・・SSPでのことも話したね。ヤクトワルトとかウールとサァラは宇宙人なんだってことは流石に話さなかったけどSSPで知りあった人達のことは話したはず。

「・・・うん。確かに学校のことは全然話してなかった」

 

 まぁ通ってる学校はいわゆるお嬢様学校的な場所でいつも猫被ってるから疲れるし面白くないもんなぁ。

「なんだ?学校嫌いなのか?」

 

「嫌いってわけでもないけど・・・特別好きな場所でもないよ」

 

 うちトップクラスの財閥のせいですり寄ってくる感じの娘たちが多くて、友達っていうより取り巻きみたいで・・・そんなのは友達って言えないよ。友達っていうのはもっとこう・・・普通に話せる関係。トリコリのみんなみたいに財閥の娘ってことを気にせずに話しかけてくれる関係だと思う。

「お前も友達作るのが難しいのか・・」

 

「別にそんなことはないよ」

 

 確かに学校には友達はいないと思うけど、久遠とか瑠々・・トリコリのみんなは友達だと思ってるし。

「というか『お前も』ってどういうこと?」

 

 久遠も大学に友達がいないらしいけど・・・お嬢様キャラは友達できなさそうってでも思ってるの?それは偏見だよ。

「いや・・まぁ、お前と似たような奴が中々生活環境の問題で友達を作りにくくてな」

 

 やっぱり久遠のことだよね。

「別に久遠と違ってデビューに失敗して友達が作れてないわけじゃないよ~」

 

「・・・久遠のことじゃないんだがなぁ。まぁ・・・いいか」

 

 てっきり久遠のことだと思っていたけど、違ったようだ。もしかしてガイが寝てる時に寝言で言ってる『アンジュ』って娘のことかな。

「ねぇガイ。気になっていたんだけどアンジュって・・・」

 

『まもなく着陸態勢に入ります』

 

 ガイにアンジュのことを聞いてみようとしたタイミングでジェット機が着陸の準備に入るっていうアナウンスが聞こえてきた。私はもう1度アンジュのことを聞いてみようとすると・・・ガイは窓から外の建物を眺めていた。

「あれが姫山財閥の本部なのか?」

 

 たぶんガイはオフィスビルのような建物をイメージしていたんだと思う。だけどうちのはちょっと個性的なんだよね。

「し・・・城かぁ」

 

 お父さんがいる本部の外見はオフィスビルのようなのじゃなくて西洋のお城みたいなデザインをしているし、驚いてもしょうがないね。

 

 

 

~~ガイ~

 

城っぽいカンジの建物に入ってみると・・・内装は思ったよりも普通のオフィスビルのようだった。いや、外側が城なのに内装がこんな風になってる時点でツッコミどころがありまくりなんだが・・。

「それで杏の親父さんはどこにいるんだ?」

 

「お父さんは基本的に会長室にいるんだ」

 

 まぁ親父さんは姫山財閥の代表なんだし、そりゃ会長室にいるよな。そう思っていると、千佳は誰かと電話をしていた。

「・・・はい。承知致しました」

 

「どうしたの千佳?」

 

「お嬢様、旦那様はガイ殿と1対1で話したいそうなので別室でお待ちになっていてください」

 

 えっ?俺だけ?

「・・・分かった。それじゃ適当に待ってるね」

 

 親父さんの頼みだから思っていたより聞き分けが良かった杏は素直に別室へと去っていった。

「お嬢様は嬉しいのだろう」

 

「嬉しい?」

 

「これまでお嬢様は『友』と呼べる親しい仲のものがいなかった。しかしガイ殿に助けられ、SSPで初めて『友』と呼べる者たちができた。そのキッカケを作ってくれたガイ殿を旦那様に紹介できることが嬉しいのだろう」

 

 いい話をしているようだが・・・しれっとそのお嬢様のことを『友達がいなかった』ってぶっちゃけてるよな。

「ホント・・似てるよ」

 

 杏とアンジュ・・・顔や性格だけじゃなく、お嬢様って理由で友達を作りにくいってところまで本当にそっくりだ。

「失礼します。白金ガイ殿をお連れ致しました」

 

「・・・通してくれ」

 

 会長室の中から老人の声が聞こえてくると、千佳はその扉を開く。

「ど、どうも・・」

 

「それでは私はこれで・・・」

 

 俺が会長室へと入っていくと千佳は扉を閉じながら去っていく。すると窓の方を向いていた70代後半ほどの爺さんがこちらに振り返った。

「久しいの・・ガイ」

 

俺はその爺さんに見覚えがあった。シワだらけにこそなっているが・・・俺がかつて守れなかったアンジェリカの父さん・・国王その人だった。

「国王・・・」

 

 俺はマガゼットンとの戦いの後・・・アンジュを守り切れなかったことを国王に謝罪して国を去った。罪悪感もありそれ以降会うことはおろか連絡すら取り合ってなかったので・・・まさかあれから100年が過ぎた今でも生きてらっしゃるとは思ってなかった。

「確かにエスメラルダの民は地球人よりは長いですが・・・」

 

「ワシらの科学力はこの星の科学力よりは少しだけ上じゃからの。不老不死は無理でも4~50年の延命程度なら可能じゃわい」

 

 だとしても今の国王は170歳近く・・・。充分長生きだ。

「俺を・・・恨んではいないのですか?」

 

 俺は国を・・・アンジュを守ると約束しておいて、守り切れなかったんだ。恨まれて当然なはずだ。

「・・・恨まなかった時間はない。と言えば嘘になる。じゃがお主のおかげでワシや家臣たち、民の命が守られたのは事実。何よりワシらの力が及ばずお主1人に全てを任せておったのにお主だけを責めようなどはせんわ」

 

 国王はアンジュを守れなかったことを責めるつもりはないようだが・・・。

「その事を話すためだけに俺をここに招いたわけではないのですよね」

 

「うむ。我が娘・・・杏の真実をお主に伝えるべき頃合いだと思っての」

 

 杏は何故かアンジュの記憶を夢に見たりして俺のことを知っていたりと・・・何かあることには気づいていた。本人は俺のことを運命の騎士みたいに思ってるようだが。

「杏はワシが作った・・・アンジェリカのクローンじゃ」

 

 アンジュのクローン。そう聞いた瞬間『アンジュがあのとき、本当に死んでしまった』んだとはっきり告げられた気がして、喜び以上に悲しみの感情が湧き上がった。

「アンジュの・・・クローン。だから夢でアンジュの記憶を見ていたと言っていたりしたんですね」

 

 僅かながらにアンジュがあの後も生きててくれると信じたかった気持ちがあったが・・・その可能性はなくなったんだな。

「あの爆発のあとワシもしばらくアンジェリカを探したが・・・見つかりはせんかった。失意に囚われたワシは国民達とともに1つの企業を作り上げ、表向きは財閥として様々なものに貢献しつつ裏ではクローン研究を続けてきた。そして十数年前にようやく成功したのが杏なのじゃよ」

 

 地球では人間のクローンを作ることは禁止されている。だから表立って研究を発表できなかったんだな。

「御覧の通りワシは既にこれほどまでに老けきったジジイじゃ。杏を実の娘として育てるには社会的にも体力的にも無理があってのぉ・・。跡継ぎがいないジジイの養子として招くかたちにしたんじゃ。未練がましいと思っても構わん。それほど娘とのぬくもりの記憶が忘れられなかったんじゃよ」

 

 クローンとはいえ実の娘なのにか。

「国王!」

 

 俺は国王にそれでいいのかと尋ねようとすると・・・

「また国王か・・・。ガイよ。既にワシらの国はなくなったのじゃよ。今のワシは老いぼれたジジイじゃ。社長や総帥でも構わんがの」

 

 もう国王ではないので呼び方を変更するように告げてきた。社長とか総帥って呼ぶのは何か違う気がするんだよな。

「えと・・じゃあ杏の親父さんなんかは・・」

 

「悪くはないが親父と言われるほど若くないのぉ」

 

 難しいな。爺さんって呼ぶのは気が引けるし。

「そういえばどうして光圀って名乗ってるんです?」

 

「日本の偉人にそのような名前の爺さんがおっての、何かカッコいいのでせっかくだからそれから取ってみたわい」

 

 光圀ってことはあれか。何度も時代劇にされてるアレか。

「じゃあ光圀公なんてのはどうです?」

 

「ふむ。良い響きじゃのぉ。それで決まりじゃ」

 

 この大雑把なところ・・・100年経っても相変わらずだな。アンジュにも杏にもその大雑把さが受け継がれてるけど。

「っ!」

 

 俺が光圀公の大雑把さを気にしているといきなり警報が鳴り響いた。

「ふむ。何かあったのかのう」

 

 光圀公が杖で足元をコツンと叩くと上の方からモニターが降りてきて、海から迫ってくる台風を映し出した。

「台風・・?」

 

確かに大きな台風だが・・・ここの施設ならあのぐらいの台風ぐらいなら問題なく耐えられると思うが・・。

「ガイよ。あの中には何やら大きな金属反応があるぞ」

 

「金属反応ですか?」

 

 モニターには台風の中にある金属の何かが映し出された。確かになんかの機械のように見えるが・・・見た事ない機械だな。なんだあれ?

「これは・・・」

 

「テンカイじゃな」

 

「テンカイ?」

 

 どうやら光圀公はこの機械のことを何か知っているらしい。

「自然コントロールマシーン・テンカイ。風速80メートルほどの台風を巻き起こして地上にあるものを一掃した後、空気洗浄をする。平たく言えば巨大な掃除機と空気洗浄機を兼ね備えたルンバじゃな」

 

 いやルンバ言うなよ。

「ワシらがこの地球に移住する前からこの星にあった機械でのぉ、念のため一度調べたことはあったんじゃがこの星に人類が誕生してから動いたような痕跡がなかったので壊れているもんだと思って放置しとったんじゃよ」

 

 一度調べたんなら厳重管理とか処分とか何か対策はしとこうぜ。

「大丈夫じゃ。再び動き出すとしたらこの時期じゃろうと思って対策は取っておるわい」

 

「な、なんだ。対策はしてたんですね」

 

 俺が対策をしていたと聞いて一安心すると、光圀公は俺の肩をポンと叩いてくる。

「お主がここにいるということがアレに対しての最大の対策法じゃよ」

 

「・・・まぁ、そんな気がしてました」

 

 何か懐かしいな。昔もこうやって頼られて国を守っていた時期があったな。

「はぁ・・・いくら年末だからって地球ごと掃除ってのはやりすぎだと思うぜ。・・・レオさん!」

『ウルトラマンレオ!』

 

「ゼロさん!」

『ウルトラマンゼロ!』

 

「燃える魂!お願いします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!レオゼロナックル!』

 

 拳法戦士のオーブ・レオゼロナックルへと変身した俺は自然コントロールマシーンの前に着地して拳を構えた。

 

 

~~杏~

 

「ガイとお父さんの話、まだ終わらないのかなぁ」

 

 ガイとお父さんが会長室で話をしている頃、二人きりにさせてほしいというお父さんの要望で私すらも中に入ることが許されず見飽きた最上階からの景色を眺めていた。

「・・なんかあれ竜巻っぽいなぁ」

 

 何だか竜巻っぽいのがこっちに近づいてくる。まぁ、怪獣対策に備えてそれなりに丈夫な建築にしてるって聞いてるし竜巻ぐらいなら大丈夫だよね。

「って!?ちょ、あれ竜巻じゃないじゃん!?台風じゃん!!」

 

 しかもなんかすっごいデカい!あんなデカいのマガバッサーの時以来だよ!・・・おっと、テンションを上げてる場合じゃない。私の感が告げている。あれは自然に発生したものじゃなく、あの台風の中に『何か』があると。

「すっごい気になるけど・・・」

 

 台風相手だと流石にどうしよもないんだよなぁ。

『防衛システム・作動シマス』

 

「えっ?」

 

 聞きなれないアナウンスが聞こえてきたかと思うと、黄緑色のバリアが建物を包み込んだ。ここ、こんな設備整ってたなんて知らなかったなぁ。

「というかあの台風が防衛システムに反応したってことは・・・」

 

 あの台風の中、やっぱり何かあるんだ。そう確信しながらも台風を眺めていると・・・台風がバリアとぶつかった。どうやらあの台風よりもうちのバリアの方が勝っていたようで、台風が消えていくと・・・その中からは土器みたいな見た目をした大きな機械が出てきた。

「台風を巻き起こしてたのってあの機械なんだ」

 

「宇宙拳法ビッグバン!」

 

 まるで大きな掃除機みたいだなぁと考えてると、拳法家スタイルのオーブが掃除機の前に現れた。

「ダァッ!!」

 

 オーブの正拳突きが大きな掃除機に炸裂すると・・・大きな掃除機は横に倒れる。

「オォォォォ・・・デァッ!!」

 

 大きな掃除機は起き上がると同時に再び高速回転して台風を巻き起こそうとすると、オーブは空中に飛び上がって炎を纏ったキックで竜巻に蹴り込んだ。

「いっけぇぇぇ!そのまま決めちゃえオーブ!」

 

「ヌァ!?」

 

 私がそう声援を送るも・・・オーブは竜巻に押し負けて弾かれてしまった。

「ナックルクロスビーム!」

 

 オーブは負けじと額から光線を撃ったけれど、それすらも竜巻に弾かれちゃっていた。

 

 

~~ガイ~

 

あの自然コントロールマシーンが巻き起こしている台風はナックルクロスビームも弾いちまう勢いがあるのか。ならここは技で勝負するんじゃなく、純粋な力で叩きつぶした方がいいかもな。俺は一瞬『あの力』を使おうとべリアルさんのカードを手に取ろうとしたが・・・純粋な力ならもう1つあると考えてガイアさんのカードを手に取った。

「ガイアさん!」

『ウルトラマンガイアV2!』

 

「ビクトリーさん!」

『ウルトラマンビクトリー!』

 

「地球の大地の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!フォトンビクトリウム!』

 

「闇を砕いて光を照らせ!」

 

 オーブ・フォトンビクトリウムへと姿を変えた俺は自然コントロールマシーンを叩き潰すべく拳を強く握った。

 

 

 

~~杏~

「闇を砕いて光を照らせ!」

 

 腕のゴツい姿になったオーブは台風の中に片手を突っ込むと、大きな掃除機の回転を鷲掴みにする形で力づくで止めた。

「ゼェァ!!」

 

 そしてそのまま握る力を強めると大きな掃除機からはメキメキときしむ音が聞こえてきた。

「フォトリウム・・・ナックル!!」

 

  大きな掃除機を上へと放り投げたオーブは落ちてくるそれに対してエネルギーを込めた渾身の拳を叩き込むと・・・そのパワーまでは吸い込みきれなかった掃除機は粉々に砕けた。

「どんなにデカい掃除機でも変わらない吸引力ってわけではなかったようだね。・・・あれ?」

 

 いつもなら戦いを終えるとすぐに飛び去っていくはずのオーブが、何故か今日はすぐに飛び去ろうとせずにこちらに視線を向けていた。

「どうしたのかな?・・・はっ!まさかようやく私の魅力に気づいたとか!」

 

 ならここは愛から教わった女豹のポーズをしてあげよう。

「どう?」

 

「・・・・」

 

 あれ?なんか残念なものを見るような目で見られてる気がする。

「シュァ・・」

 

 ため息つくような動作をしたオーブは空を飛んで去らずにゆっくりと透明になって消えていった。

 

 

 

 

~~ガイ~

 

「まったく・・何やってんだかあいつは・・」

 

 元の姿に戻った俺は先ほどの杏の行動を思い出してため息をつく。そういえばアンジュもそういう残念なところがあったな。

「はぁ・・・。ホント、似すぎなんだよ」

 

 いくらクローンとはいえ・・・似すぎなんだよ。見た目も性格も。光圀公は90年以上かけてアンジュのクローンである杏を生み出した。それほどの間あの人はアンジュを失った苦しみと戦ってきたんだ。確かに杏はアンジュのクローンで色んなろころがそっくりだが・・・千佳という護衛を付けながらも離れて暮らしているあたり、以前のような過保護ではなくなっている。杏をアンジュのかわりとしてはなく1人の娘として育てているんだ。

「少しづつだがアンジュの死を乗り越えつつあるってことか・・」

 

 果たして俺にできるのだろうか?アンジュを守り切れなかった本人であるこの俺に・・。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンオーブ・レオゼロナックル
属性・闘(トウ)属性

 宇宙拳法の使い手であるレオさんとその弟子であるゼロさん。2人の師弟の熱い魂の力をお借りしたのがこのレオゼロナックルだ。その肩書きの通り拳法による格闘戦が得意な姿でどんな逆境でも決して諦めずに魂を燃やして戦い抜くファイターだ。

テンカイ
属性・風属性

 自然コントロールマシーンの一機テンカイ。青銅でできた銅鐸型のマシーンで強烈な台風を巻き起こす厄介な機械なんだ。こいつが通過した後はフロンや硫化物が浄化されるせいででっかい掃除機やら空気洗浄機果てはルンバ呼ばわりされていたな。

次回「捨てられた正義」

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