~~音々~
オーブが少し怖い姿でマガオロチを撃破してから数週間が過ぎて、クリスマスイブがいよいよ明日まで迫ってきたのです。
「ガイさん。次はそっちをお願いするのです!」
「あいよ~」
そんなわけで店内をクリスマス使用に飾りつけをするため、ガイさんにも手伝ってもらうことにしたのです。
「それにしても・・・」
ここ数週間、オーブがマガオロチを倒した後からガイさんがまるで心ここにあらずと言わんばかりに元気がないのです。いったい何かあったのでしょうか・・。
「考えられる可能性は・・・3つなのです」
1つはマガオロチの事件でガイさんの知り合いがお亡くなりになられた可能性なのです。マガオロチと戦ったオーブやヤクトワルトさん達。そしてBRGの迅速な避難誘導のおかげで被害はある程度抑えられたはずなのですが・・・未だ行方不明者が20人ほどいて、死者も出てしまっているのです。もしかしたらガイさんの知り合いもその中に・・・という可能性なのです。
「2つ目・・・これも会ってほしくない可能性ですね」
2つ目はガイさんがマガオロチを復活させた張本人で、それがオーブに敗れたことで落ち込んでいる可能性なのです。ガイさんはこれまで1人で何処かへ消えたりと怪しげな行動があったりしたのです。もしかすると・・・とも考えてはみたのですが、惑星侵略連合の件を考えて見ればむしろガイさんは狙われている側だったのでその線はなさそうなのです。
「となると・・・3つ目は・・」
3つ目。ガイさんがウルトラマンオーブ本人という可能性なのです。もしガイさんがウルトラマンオーブだとすれば『怪獣の専門家』として怪獣に詳しい理由も、宇宙人に理解があることも納得できます。当初は質量保存の法則的にオーブが人間であることは不可能だと思っていましたが・・・宇宙にはスパークドールズなどという法則をガン無視しているようなものもあるのでオーブが人間の姿になっている。あるいはその逆の可能性もあるという考えなのです。
「ふぅ・・。とりあえず一段落したな。飯にしようぜ」
「そ、そうですね」
でもまぁ・・・。こんな食べてばっかりの人がオーブなわけないですよね。
「きったよぉ~!」
1人そんな真面目な事を考え込んでいると・・・そんなシリアスをぶち壊すテンションの高い人・・杏さんがやってきたのです。
「どうしたのですか杏さん。今日は休業日ですよ」
「いやまぁそうだけどさぁ~。おぉ~飾りつけ進んでるねぇ~」
まぁ、いつも通り珈琲を飲みに来てるわけじゃないはずなのでこういう反応ですよね。
「それで、今日はどういった御用で?」
どうせ用なくここに来たに決まってますけど。
「うん。ガイに用があったんだ!」
「ん?俺にか?」
「ねぇガイ!明日って何か予定がある?」
杏さんがガイさんに好意があるのは分かっていましたが・・・まさか久遠さんよりも『後に』仕掛けてくるなんて・・。
「なんか昨日久遠にも似たようなこと聞かれたな」
「えっ?久遠にも・・・。それじゃクリスマスは久遠と・・」
「いや。俺明日は用事があるから久遠の誘いは断ったな」
そうなのです。普段用事がなさそうなガイさんが何故かクリスマスに限って用事があるらしいのです。
「え・・。あぁ!そういうこと!そうだよね!ガイは私のために予定を開けておいてくれたんでしょ!」
ポジティブシンキングな杏さんはガイさんが『自分のために予定を開けておいてくれた』と勝手な解釈をしますが・・・
「悪いな。他に予定があるんだ」
その考えをあっさりと否定したのです。
「ち・・ちなみにその予定って・・・」
「あ~~。秘密?」
久遠さんが断られた時もそうでしたが、何故かガイさんはクリスマスの予定のことを教えてくれないのです。
「えぇ~!教えてよぉ~!」
「悪いな。秘密にしてくれって頼まれてるんだ」
頼まれてる?つまり誰かと会う約束ということなのですね。
「お嬢様。それ以上ガイ殿を困らせてはいけませんよ」
「ちぇ~」
千佳さんから注意された杏さんは渋々ガイさんから予定を問いただすのを諦めました。問いただすのはですが・・。
そして翌日。クリスマスイブの朝。
「それじゃ、ガイを尾行しようかな!SSP!出動!」
「「おぉ~!」」
「・・・はぁ。どうしてこうなったのです」
杏さんは同じく断られた久遠さんと興味本位で同行することにした様子の愛さん。そしてクリスマスイブでトリコリが忙しくなるかもしれないにも関わらず私を巻き込んでガイさんの追跡をすることになってしまったのです。
~~久遠~
12月24日午前9時20分。ガイは朝食を食べ終えたガイはいつも通りの黒いコートでトリコリを後にしたかな。
「追いかけるえ!」
ノリノリな愛は真っ先にガイを追いかける。一応尾行なのにあんな大声出しちゃバレちゃうかな。
「ちょっと愛、これ尾行・・」
「そうやったえ・・ごめんなぁ」
とはいえ・・・この人数で尾行はバレやすいかもしれないかな。
「ここは二手に分かれた方がいいのでは・・」
音々の提案に賛成してジャンケンで相方を決めてみると・・・私の相方は杏だった。
「それじゃうちらは先回りして前の方からお兄さんを監視するえ」
愛と音々は回り込むつもりからか人混みを走っていき・・・あっと言う間に二人の姿が見えなくなってしまった。
「ねぇ久遠。先回りするのって尾行っていうと思う?」
「う~ん・・・。微妙かな。そういえば杏、今日は千佳さんが一緒じゃないんだね」
いつもなら杏のボディーガードとして一緒にいるはずの千佳さんが今日は一緒じゃなかったの・・・朝からずっと気になってたかな。
「千佳は今日、お父さんに呼ばれていないんだ」
杏のお父様ってことは・・・姫山財閥の総帥ってことだよね。そんな人に千佳さんが呼び出されたってことは・・・。
「もしかして杏がやんちゃし過ぎたから解任させられるとか?」
「えぇ!?そんなヤンチャなんて・・・してるかも・・」
SSPに同行するかたちで怪獣に近づくなんて危険なことばかりしてるんだから・・・それがお父様に知られたとしたらまぁ、監督をしてるはずの千佳さんが呼び出されちゃうよね。
「まぁ、私を止められるのは千佳ぐらいだし、即解雇にされないとは思うけど・・・」
他の人の時も止まってあげなよ。・・・いや、私も人のことは言えないけどさ。
「一応杏はお嬢様なんだから大人しくするって事を覚えた方がいいんじゃない?」
「それは久遠もでしょ」
「えっ?」
「千佳に前調べてもらったんだ。だから知ってるよ。久遠のお父さんとお母さんのこと」
迂闊だった。お母様のことはこの前の事があったから仕方ないとは思っていたけど、お父様の事まで調べられていたなんて。
「まぁ、自分のお父さんとお母さんを『様』付けしてたからそれなりに偉い人だとは思ってたけどさ。そりゃ周りに親の事言えないよね」
どうやら杏は同情してか周りに私のお父様の事をバラす気はないようだ。いやまぁ・・・実際公にはしにくい人だけどさ。
「私もお父さんが忙しくて2~3カ月に一回ぐらいしか会えないけど・・・久遠の方が酷いはずだよね?」
「うん。モニター越しならたまに話せてるんだけど・・・直接はもう5年ぐらい会ってないかな」
寂しくない。と言えば嘘になるけれど・・・お父様はそれだけ大切な仕事をしてるんだもん。睦美も我慢してるんだし、私も我慢しないと。
「・・・あれ?お姉ちゃん?」
お父様の事を考えて少し寂しい気持ちになっていると・・・何故かまだ日本にいた睦美と遭遇した。
~~睦美~
「・・・あれ?お姉ちゃん?」
せっかくのクリスマスということで大学を休んでガイに会うためトリコリへと向かっていると偶然にもお姉ちゃんと出会った。
「あっ、紹介するね杏。私の妹の睦美」
「睦美です」
お姉ちゃんは一緒にいた私と同じぐらいの娘に、私のことを紹介したので軽くお辞儀をすると杏と私の目が合った。
「「・・・・っ!」」
その瞬間、私は体に電流が走るように確信した。この杏って娘も私と同じように何か不思議な力を持っていると・・。
~~杏~
「睦美です」
「「・・・・っ!」」
睦美が軽くお辞儀をしてきて目が合い・・・私はある事を確信した。この娘・・・久遠や私と違って天才系のタイプだと。しかもあの表情、向こうも私を見て気づいてしまったようだ。私が貴方のお姉さんと同じお嬢様系残念キャラだという事を。
「杏さん。・・・写真で見た事があります。姫山財閥の御方ですよね。姉がお世話になっております」
このお嬢様感溢れるヒロイン力は本当に久遠の妹なの?
「睦美はまだ14歳だけど飛び級で海外の大学に通ってるんだ」
ほらやっぱり天才系だった。
「ところでお姉ちゃん達は何をしてるの?」
「それがね・・・」
久遠はガイがクリスマスの誘いを断って何処かへと向かっているので尾行していることを教えると・・・
「私も行く」
何となく予想できてたけどパーティーメンバーが追加された。
~~ガイ~
「さてと・・どうしたものかな」
前の方から2人と背後から3人。久遠たちが俺を付けているな。大方断った理由を知るためだと思うが・・・まさか睦美まで参戦してくるとはな。
「あいつ大人しいわりに行動力あるっぽいからな」
5人の中で一番厄介なのは間違いなく睦美だろうな。さて、どうやって振り切るか。光の速度で走って一気にあいつ等を撒く。・・・いや、俺がオーブだって知ってる杏と睦美はともかく他の奴らにこれ以上怪しまれるのは面倒だ。第一目的地まであと少しなのに、全力ダッシュするのもな。
「目的地にあいつ等を連れてくわけにもいかないし・・・仕方ない」
ここは逆にあいつ等に話しかけてそれっぽく逸れちまおう。
「どうしたのだ?ガイ」
「あっ、すみません。ちょっとトラブってて・・・」
俺が久遠たちをどう振り切るか考えていると、今日会う予定だった相手の声が聞こえたので振り返ると・・・
「ほっほっほっ!面白そうなことになっとるのう」
その人は今年もサンタクロースのような恰好をしていた。
「クジリさん。今年もその恰好ですか?」
「クリスマスイブなのじゃから当然じゃろう」
このサンタの恰好をしているのはミラクル星人のクジリさん。俺よりもかなり前にこの地球にやって来ていて、毎年この時期となるとサンタクロースの恰好をしてトナカイとソリの形をした小型の飛行ユニットで子供達にプレゼントを届けるために各地を飛び回ってるんだ。
「近頃は何かと物騒でのぉ、空を飛んでたら撃ち落されそうになってしまうんじゃわい」
まぁ昔よりこの星の技術が上がって警備体勢も強化されてるしな。人同士の争いで放たれたミサイルとか怪獣って勘違いされて攻撃されたりもするって話も聞くし。
「なので今年もよろしく頼むわい」
「えぇ。こちらこそ」
俺はここ数年クリスマスイブとなるとクジリさんの護衛として各地を飛び回っていて、今年も頼まれていたというわけだ。とはいえ変身したら目立つので基本的には一緒にソリに乗って、万が一のときにオーブになって守る程度だが。
「さて、今年の儂の担当は日本なのじゃが・・・いかんせんもう年でのぉ。相棒もだいぶガタが来とるわい。もう何度も整備しとるが、もう長くはないの」
クジリさんは腰をさすりながらも相棒のソリ型飛行ユニットも限界が近づいてることを告げてくる。
「まずはプレゼントを詰め込むとするかの」
「えっ?まだ詰め込んでなかったんですか?」
てっきりもう詰め込んでて、後は届けるだけだと思ってたのに。
「老人一人にろれだけの体力があると思うな」
「分かりましたよ・・」
俺はクジリさんの詰め込みを手伝うべく本来の待ち合わせ場所である店へと向かった。
~~音々~
ガイさんがサンタクロースの恰好をしたお爺さんと既に閉店しているおもちゃ屋に入ってから20分後、大きな白い袋を2つ持ったガイさんがお爺さんと一緒に出てきたのです。
「さて、準備もできたしそろそろ向かうとするかのぉ」
「思ったより少ないですね」
「それはこの近くの孤児院に届けるぶんだけじゃからの。親がいない子供たちに夢を届けるのが儂らの仕事じゃ」
どうやらあのお爺さんは孤児院にプレゼントを贈る元おもちゃ屋の店主さんのようなのです。
「もしかしてお兄さんが久遠はんと杏はんのお誘いを断ったのって・・」
「サンタクロースのようにプレゼントを届けるお爺さんのお手伝いのためだったのですか?」
てっきり誰かとデートをするものだと勝手に決めつけていた愛さんは「それはそれでガッカリやわ」とため息をつきました。
「ここからその孤児院はさほど遠くないのでの。歩いて向かうぞ」
「マジですか・・」
ガイさんとお爺さんは袋を持ったまま近くの孤児院まで歩いていくと、そこの孤児院の子供達にプレゼントを配ったのです。
「・・・確かに今日の予定は埋まっていたようですね」
後ろのほうにいる久遠さん達もこれなら仕方ないと納得してくれているはずなのです。
「さて次に向かうぞい」
「私達はそろそろ引き上げることにしましょうか」
ガイさん達は次の場所に向かうようなのですが、これ以上追いかけまわすのは迷惑になりそうなのでこの辺で引き揚げようとすると・・・
「ねぇ音々やん。あれ、何やろ?」
愛さんが何かに気がつき、空を指さしました。私も気になって空を見上げてみるとそこにはトナカイが轢くソリに乗ったサンタクロースが空を飛んでいる姿があったのです。
「・・・まさかサンタクロースが本当に飛ぶなんて・・」
怪獣や宇宙人、果ては幽霊まで科学では説明しきれないものをいくつも見てきたのでサンタクロースももしかしたら本当にいるかもしれない程度には思っていましたが・・・まさか迷信通り本当に飛んでるものだとは思ってなかったのです。
「真昼間から空飛ぶサンタクロースなんて・・・シュールな光景なのです」
「なぁ音々やん。あれもしかしたらさっきのお爺さんちゃう?」
「・・・・」
私は持っていた望遠鏡でサンタクロースの顔を確認してみると、確かに先ほどまでガイさんと一緒にいたお爺さんでした。その後ろにはガイさんらしき人影も見えます。
「ガイさんの知り合いですし・・・また宇宙人だと思うのです」
ヤクトワルトさんやウールさんやサァラさん。ガイさんの周りには宇宙人が集まりやすく、トナカイが飛んでいることを考えると・・・高い確率でその可能性が高いのです。
「お兄さんは何だかんだいって面倒見もいいし、他の星から来た人にようこそ地球へって手助けしてるんやないかな?」
確かに愛さんの言う通りかもしれないのです。そう思いながらもう一度見上げた瞬間…宇宙から飛んできた翼竜のような怪獣がサンタクロースを攻撃してきたのです。
~~ガイ~
「おぉっ!?」
いきなり襲ってきた怪獣の翼がぶつかり、ソリの一部が破損してしまう。
「あれは・・・ザンドリアスか」
基本的に親子で生活するザンドリアスだが、年頃なザンドリアスは早く一人前になりたいからか親と喧嘩しやすいって話は聞いた事あるが・・・まさかそれでサンタとして活動するミラクル星人に八つ当たりをしてくるとはな。
「このままじゃ墜落するのぉ」
「やれやれ。クリスマスイブだってのにゆっくりさせてくれないとはな」
さてと、子供に絡まれて困ってるサンタさんを助けに行かないとな。
「ウルトラマンさん!」
『ウルトラマン!』
「ティガさん!」
『ウルトラマンティガ!』
「光の力!お借りします!」
『フュージョンアップ!』
『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』
「シュゥゥワッ!」
オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと変身した俺はクジリさんを助けるため空へと飛び上がった。
~~久遠~
「あぁっ!落ちちゃう!」
トナカイに乗って空を飛ぶサンタが撃ち落されそうになった瞬間、大きな紫色の光がサンタを庇うように現れた。紫のオーブだ。
「オーブ!!」
サンタを右手に乗せたオーブは地上へと着地するとゆっくりとサンタを手から降ろすと未だに空を飛んでいる翼竜のような怪獣を見上げた。
「オォォォォ・・・セイっ!!」
紫色に身体を輝かせながら凄い速さで再び空へと飛び上がったオーブは左拳を握ると怪獣にゲンコツを叩き込んだ。
「闇を砕いて光を照らせ!」
怪獣が地上へと墜落するよりも先に地上へと着地したオーブはゴツイ腕をしてる黒い姿に変わると片手で怪獣を受け止める。
「デュァ・・」
どうやらオーブはあの黒い怪獣を倒す意思がないらしく、その怪獣を降ろした。すると翼竜のような怪獣は講義するかのように大きく吠えて、翼でオーブをビシバシと叩き始めた。まぁあのゴツくて硬いオーブにはまるで効いていないけど。
「ねぇ睦美。あの怪獣がなんて言ってるのか分かる?」
なんであの怪獣がサンタを襲っていたのか気になったので怪獣の声が分かる力がある睦美に尋ねてみると・・・睦美は何故か呆れるような目線を怪獣に向けていた。
「睦美・・・どうしたの?」
「あ・・・うん。なんというか、しょうもない理由で襲って来たんだなぁって思って」
「しょうもない理由ですか?」
「うん。あの怪獣。お母さんと喧嘩して地球にやってきて、飛び方がそのお母さんに似てる気がするってだけであのサンタさんを狙ってたっぽい」
何その理由。というかあの怪獣の親トナカイと飛び方似てるの?
「光を超えて闇を斬る!」
青い姿に変わったオーブは怪獣を両手で掴むと突風を巻き起こすほどの勢いで回転して、怪獣を空へと投げ飛ばすと紫の姿に戻った。
「シャットダウンプロテクト!」
そして動きを封じ込めるためのバリアで怪獣を包み込むと・・・オーブは親元に送り届けるためにバリアで包んでいる怪獣を押して宇宙に飛び去って行った。
「睦美、何か怪獣が鳴いてるけどなんて言ってるの?」
「狭いよママぁ~!ってお母さんに助けを求めてる」
母親と喧嘩して地球に来たのに、結局最後は母親に助けを求めるんだね。
「何はともあれ・・・仲直り自体はできるんじゃないかな。そういえばあのサンタは・・?」
親と喧嘩してやってきた怪獣のせいで忘れかかってたけど、あのサンタはどうなったんだろう。そう思ってサンタが降ろされた場所に再び視線を向けてみたけれど・・・もうそこにサンタの姿はなくなっていた。
「あ~あ。ガイだけじゃなくサンタも見失っちゃった」
「二兎追うもの一兎も得ずとはこの事なのです」
結局私達はガイの追跡にも謎の空飛ぶサンタの手がかりも掴めないままトリコリへと戻ることにいた。
~~ガイ~
大気圏を抜けて宇宙空間に出た途端、親鳥ならぬマザーザンドリアスがこっちに迫って来た。
「ほら、お前の母さんじゃないのか?」
俺がシャットダウンプロテクトを解除するとザンドリアスはマザーザンドリアスの元へと飛んでいく。やっぱりあいつが母親だったようだ。
「デュァ・・」
マザーの方がこっちを睨みつけてきたので子供の仇討ちでもしてくるんじゃないかと少し警戒したが・・・別にそんなことはなく親子揃って何処かへと飛び去っていった。
「・・・っ」
迷子を親御さんに送り届けたところで俺も地球へと帰ろうと後ろを振り返る。そういえばこうして宇宙から地球を眺めるのはいつぶりだろうか。マガパンドンの時も宇宙にこそ来てたが・・・あの時は見る余裕なんかなかったからな。
「大空より愛をこめて・・・メリークリスマス」
そう呟いた俺はこの愛する青い星を守るため、地上へと戻っていった。
「あ~。疲れた」
ザンドリアスをマザーに送り届けてからだいたい10時間ほど過ぎた頃、ようやくクジリさんの手伝いも終わってトリコリへと戻ってくると・・・
「「お疲れガイ!」」
久遠と杏が出迎えてくれた。店内を見渡すと皆揃っている。
「え?なんでみんないるんだ?」
「なんでって・・・今日はクリスマスイブだろ」
「今日も通常営業をしていたんですからパーティーをするなら営業時間終了後になるに決まってるじゃないですか」
確かに営業終了後ならできるよな。見ると俺を別に待っていた訳でもなく、パーティーを始めてすぐのタイミングで俺が帰って来たって感じだし。
「ハッハッハっ!細かいことはいいじゃない!」
ヤクトワルトは細かいことは気にするなとチキンを持ちながら腕を肩にかけてくる。お前、もう酒飲んでるだろ。
「信仰は違うのに祝いはする・・」
「地球の宗教観は曖昧なところがあって難しいですね」
「そ、それはこの日本が曖昧過ぎるだけで、他の国が同じというわけでもないんですよ」
ウールとサァラが日本の曖昧な宗教観を気にすると、それはこの国だけと瑠々がフォローを入れていた。
「姉上、チキンをお持ちしました」
「ありがとう扇!」
扇のやつ、相変わらず乃理を甘やかしてるな。
「はい、シノちゃん。ケーキを持ってきたよ」
「おぉ!さんきゅーなキイ!」
そして木村は木村ですっかりシノにこき使われてるな。
「どうガイ?今年のクリスマスイブは・・・」
久遠は盛り上がれそうかと尋ねてきたので、俺は頷く。
「まぁ・・・。こんな賑やかなのは久しぶりだな」
こんなふうに集まって祭り事を楽しむなんて・・・100年ぶりぐらいだ。そう思いながら俺はこいつ等と賑やかな時間を過ごした。
~~千佳~
「それは・・・本当なのですか?」
お嬢様のお父上。姫山財閥総帥の姫山光圀様に呼び出された私はお嬢様についての『真実』を聞かせて頂いた。確かにお嬢様が若くして亡くなった娘の代わりに養子にされたということは前から知ってはいたが・・・まさかお嬢様にそのような秘密があろうとは。
「あぁ。本当じゃ。・・長らく杏と時間を共にしているお主には伝えておこうと思っての」
「は、はぁ・・・」
あまりにも突然に語られた真実に頭が追いつかずにいると、光圀様は次なる話題を出してくる。
「ところで千佳。確かSSPには白金ガイという男がいるんじゃよな?」
「はい。素性は不明ですが信頼に足る男ではあります」
「・・・ガイか。千佳、近いうちにガイという男と会えるよう話をつけておいてくれ」
ウルトラヒーロー大研究
ウルトラマンティガ・スカイタイプ
属性・速(ソク)属性
ティガさんがタイプチェンジをした姿の1つティガ・スカイタイプ。スピードやテクニックに優れた形態で俊敏さを活かした格闘戦と空中戦が得意なんだ。必殺技は手裏剣のように素早く光弾を放つランバルト光弾だ。
ザンドリアス
属性 光属性
だだっ子怪獣のザンドリアス。マザーザンドリアスの子供で人間で言えば中学生ぐらいの年齢の時期なんだ。そんな年頃なせいで些細なことでマザーと喧嘩しやすくて、今回も家出をして地球にやってきちまったんだ。
次回「杏の秘密」