ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 本作の隠れサブタイトルはウルトラシリーズに限定していません。


沈む大地

~~徹~

 

「さてと、この間の特ダネの反響はどうだかな・・と・・」

 

「あまり期待しない方がいいのですよ」

 

 マガバッサー騒動から一週間が経過した。SSPのリーダー兼喫茶店トリコリのオーナーである俺、大石徹は事件直後にサイトに書き込んだウルトラマンオーブとマガバッサーの激闘の記事の閲覧数が伸びているかを確認しようと、SSPホームページを開いてみるも・・・

「全然・・・伸びてないだと・・」

 

 普段よりかは確かに多めだがせいぜい100程度で、ほとんど伸びてないに等しかった。

「当然なのですよ。色々なサイトで写真や動画がUPされてるんですから」

 

「ぬぅ・・」

 

 この間は命あってのものだと離脱したが、あの場には俺達以外にも命知らずな連中がちらほらといたらしくオーブの写真や動画が色々なサイトにまとめられていた。せっかくウチだけの特ダネだと思ったのに・・。

「もっと誰も掴んでいないような世紀の大ネタをゲットしないとな」

 

「いつになく兄さんが本気なのです。その本気を喫茶店の方にも回してほしいのですよ」

 

「さ、さて・・・取材に行ってくる!店番は任せたぞ!」

 

「え?て、店長またですか!?」

 

 音々から目を逸らした俺は店を音々と木村に任せて取材のために外へと出て行くことにした。

 

 

 

~~???~

「この町の風景も随分と変わっちまったなぁ・・」

 

 定食屋の窓から見える景色。そこから大きなマンションが建っているのが見えた。

「昔はあの場所から綺麗な夕焼けが見えたってのに・・。これが時の流れってやつか」

 

 俺はこの店のとんかつ定食を食べながらそう愚痴ると、この店の主人であるおっちゃんも口を開いた。

「何だ?兄ちゃんこの町に戻って来たクチかい?」

 

「まぁな。15年ぶりぐらいか?ここの店の味は覚えてるぞ。サクサクの衣に肉汁あふれるこのカツ。そして継ぎ足しで作られてる秘伝のソース。ここは前と変わってなくて嬉しいぜ」

 

「兄ちゃんよくオレの親父の味を覚えてるなぁ」

 

「あぁ!ここのとんかつは地球一だからな!」

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃんか!親父は豚やキャベツが育つ土地にまでこだわってたからな。土選びから違うってこった!」

 

 おっちゃんは嬉しそうにとんかつのこだわりを自慢しながらも窓から見えるマンションへと視線を向ける。

「まあ実際・・。色んなものが変わっちまった。跡継ぎの問題だったり、経営難だったりでこの周りにあった蕎麦屋や和菓子屋もなくなっちまったもんなぁ。まぁそういう場所に新しいものが作られたりして今の街並みに変わってったんだがよぉ」

 

「本当に・・。地球の奴らは凄いよな。たった数十年で街並みがまるで違うものに変化しちまうんだから」

 

 とんかつ定食を食べ終えた俺は少し干渉に浸ってしまう。他の星の連中よりも寿命が短いぶん・・。文明が進化するときは爆発的に進化する。俺達ウルトラマンは寿命がかなりあるから、年数的にはそれほど文明の進化はそれほど早いわけじゃないからな。

「・・ん?」

 

 足元がふらつく感覚がする。地震か?だけど東京で地震だなんて珍しいな。まぁ、そんなに大きくはないと思うしたぶん大丈夫な・・・

「えっ・・?」

 

 大丈夫だと思った矢先、正面に見える大きなマンションが崩れ去ってしまった。

 

 

 

 

~~久遠~

『本日発生した地盤沈下が大規模な被害をもたらしました。私は今その現場前へと来ております。規制線の先にある東側オフィスで午前10時22分・・・』

 

「はぁ・・はぁ・・・ついた・・かな・・」

 

「あ、久遠さん。いらっしゃいませです」

 

ニュースを見て「これは何かある」と確信した私はSSPへと急いで向かい、あれ以来毎日来ている喫茶店トリコリのドアを開く。すると丁度音々と彼女の同級生で同じくここでバイトをしているらしい木村貴以(きむらきい)君がTVに映るニュースを見ていた。

「あれ?今回のこの事件を依頼しに来たんだけど・・・徹さんは?」

 

「取材に出かけてるのです。どうせ今頃この事件のことを調べてるですよ」

 

「早くもネットにも色んな噂が飛び交っていますね。都市開発に反発する勢力の陰謀だとか地底人の仕業とか・・」

 

「そう。神秘性にしても社会性にしても話題にできる内容だ。これなら閲覧数が伸びるに間違いない」

 

 丁度戻って来た徹さんは依頼する前からこの件に乗り気なようだ。

「だったらこの件のこと・・」

 

「音々!お前も来てくれ!木村!店よろしく!」

 

「え、店長ぉ~」

 

 今回の件のことも教えてほしいと言う前に音々を連れて再び調査へと行ってしまった。

「・・・えと、とりあえずアイスカフェラテをお願いね」

 

「はい。ただいま~」

 

 付いていこうと思っていたのに置いて行かれてしまったので、とりあえず私は残された木村君に注文をお願いした。

 

 

 

~~瑠々~

 

「はい、分かりました。店長もお気をつけて」

 

私、照井瑠々(てるいるる)はバイト先であるオフィス街にあるファミレスへと向かおうとしていると、バイト先の店長から「店が物理的につぶれたので仕事はないよ」と言われてしまいました。

「・・・・」

 

 普段通っていたオフィス近くは規制線で封鎖されていて通ろうとすることはできません。それほど危ないと思われる場所にも関わらず、黒いコートを着た1人の男性が規制線の向こうにいました。見たところ防衛隊の方ではないようですが・・・。

「土の魔王獣か・・」

 

 その人が発した言葉がわずかながらに聞こえてきました。土の魔王獣?いったいなんのことでしょうか?

「きゃっ!?」

 

 また揺れを感じたかと思えばここからさほど遠くない別のオフィスビルが崩れてしまいました。

「さてと、次は・・・あの辺にするか・・」

 

 崩れたオフィスビルの方から歩いてきた黒いスーツを着た少し怖い雰囲気の人が周囲の建物を見渡したと思えば赤黒い光とともに一瞬で姿を消してしまいました。

「まさかあの人、地盤沈下に関わっているの?」

 

 ネットでも反対派勢力の陰謀という説もありました。けれどさっきの赤黒い光とその間にいなくなってしまうほどの速さ。まるで普通の人だとは思えません。

「・・・確か、さっきの人はあっちを見ていましたよね・・」

 

 嫌な予感はしますが・・・私はいても立ってもいられずに黒いスーツの人が向かったと思われる方向へと走り出しました。

 

 

 

 

 

 

 何処となく怪しい雰囲気漂うオフィスの地下駐車場に入ってみると、そこには偶然にも先ほどの黒スーツの男性がいました。

「・・・・・」

 

 近寄りがたい雰囲気だったので私は柱の後ろに身を潜めながらもその人の様子を伺ってみることにしました。するとその男性は足元を見ながら・・・正確には足元にいる『何か』を見ながら赤黒く輝くリングを取り出しました。

「テレスドン・・」

 

 男性はそのリングに1枚のカードをかざすと、そのカードは黒い靄のようなものに包まれながら地面へと突き刺さり、そのまま地中深くへと潜っていってしまいました。男性はそれを見ながらニタリと笑うと・・・地下駐車場にハーモニカの音色が響き渡りました。

「・・・相変わらず、嫌な音色だなぁ。せっかくのいいムードが台無しだ」

 

 音色が聞こえてきた方向へと視線を向けてみると・・・さっきの黒いコートの男性がゆっくりとその男性に近づいてきました。

「ジャグラー。お前と良いムードになろうなんてサラサラないな」

 

 この黒コートの男性と、ジャグラーという黒いスーツの男性・・・いったいどういった関係なのでしょうか?

「デャッ!」

 

「っと・・」

 

 黒コートの男性が殴り掛かろうとすると、ジャグラーさんは左手でそれを受け流しながらその背に回り込みました。

「釣れないなぁ。運命の再開じゃないか」

 

 2人は互いに拳を振るっては防ぎあい互角の勝負が続くと、一度互いに距離を取りました。

「まったく・・随分と荒っぽいご挨拶だな」

 

「お前の目的は分かってる。土の魔王獣だろ」

 

 スーツの乱れを直すジャグラーさんに黒コートの男性は睨みつけるように問いかけると、ジャグラーさんは不敵な笑い顔をしました。

「この星の生命など全て土塊に還してやる」

 

「どんなに魔王獣を復活させようと・・・この俺がぶっ倒す!」

 

「アハハハハ!・・・カッコいいねぇ」

 

 高笑いをしたジャグラーさんはすぐに冷徹な表情へと切り替えてまたリング1枚のカードをかざしました。そのカードも地中深くへと沈んでしまいます。

「ま、せいぜい頑張れよ」

 

 そのせいか再び強い揺れが発生すると、ジャグラーさんはこの場を立ち去っていきました。確かにこの場にいたままだと危ない気がしますが・・・あの黒コートの人に気づかれないようにここを出るのは難しい気が・・。

「おい、そこの嬢ちゃん!ここももうすぐ崩れるからとっとと出るぞ!」

 

「は、はい!」

 

 どうやら最初から気づかれていたようです。

「急ぐぞ!」

 

「きゃっ・・!?」

 

 その人に手を引かれて地下駐車場から出た途端、先ほどまで中にいたそのオフィスが沈み、崩れ去ってしまいました。

「・・・危なかったぁ」

 

 すぐ後ろが地盤沈下でなくなっていることに恐怖した私は思わずその場にへたれ込んでしまいます。すると私の手を離した黒コートの男性はこちらに振り返らないまま去ろうとすると・・・

「さっきのことは忘れろ」

 

 その一言を言い残して去って行ってしまいました。

 

 

 

~~徹~

「FMR数値が最大値に達したのです」

 

「つまりどういうことだ?」

 

「もうすぐこの辺りのビルが沈むということなのです」

 

 そう音々が言った途端、本当に目に見える範囲のオフィスビルが沈んで崩れ去った。

「・・・あれ?思っていた場所よりも遠いのです。もしかして・・・」

 

 思っていた場所と違うと判断した音々はタブレットを操作して断層図や地図を見比べる。

「断層のズレが問題ではないとすると・・・」

 

 タブレットの地図に何か川の流れのようなものが表示された。

「音々、これは?」

 

「東京は世界屈指の風水都市なのです。地底には様々な龍脈が走ってるのです」

 

 龍脈。確か気の流れるルートだったな。そんでそれが乱れると災いが起こるってのも聞いたことがある。

「太平風土記にこのようなものが記載されていたのです。『角持ちし赤き巨人が土を禍々しく乱せし巨大な魔物を龍脈を以て地の底へと封印ス』」

 

 巨大な魔物・・・か。如何にもヤバそうなのだな。

「まさかその魔物と沈んだ場所の関係ってのは・・・」

 

「えぇ、あと一か所。この龍脈が沈んでしまうとその封印が解除されてしまうのですよ」

 

 音々がタブレットで見せてくれた地図にはその最後となるポイントが写し出されていた。しかしそれは俺達が今いる場所からはまるで正反対。今から行くと数十分はかかりそうな場所だった。

「間に合えよ!!」

 

 車に急いで乗った俺はそのポイント目指して車を走らせた。動画のためだけじゃない。その場にいるであろう人々に1人でも多くその危険を伝えて、逃がすことができるようにと思いながら。

 

 

 

 

~~瑠々~

 先ほどは黒コートの男性に「忘れろ」と言われましたが、やはり気になりながらも少し長めのトンネルを歩いていると・・・何の因果なのかまた黒いスーツの男性に遭遇してしまいました。

「ゴモラ・・・」

 

 黒スーツの男性はここでもリングにカードをかざして何か怪しげな行動をしています。先ほどは2枚カードをかざすことで地盤沈下が発生していました。おそらくもう1枚でここも・・・。

「はやく・・・ここから・・」

 

 ここにいては危ないと判断した私は来た道を戻ろうとした途端・・

「やぁお嬢さん。このようなところでどうなされたのですか?」

 

 真後ろにまで迫っていたジャグラーさんに左肩を掴まれました。

「あ、貴方はここで一体何を・・・?」

 

 私は恐る恐る尋ねてみると、ジャグラーさんはクスクスと笑いながら私の髪に手をあててきます。

「恋とは矛盾に満ちている。謎が多いほど、危険が多いほど強く惹かれて虜になっていく。そうは思いませんか?」

 

 それはまさか、あの黒コートの人とBとLということなのでしょうか?私は少しワクワクしているとジャグラーさんは髪から喉へとゆっくりと指先を移動させ、そのまま首を絞めつけてきました。

「うぅ・・・」

 

 だんだんと締め付けが強くなりこのままではと思ったその時・・。

「おい!そいつを離せ!」

 

 黒コートのあの人が現れました。

 

 

~~???~

 禍々しい気配を辿ってトンネルへとやってくると、さっき俺達のことを陰から見ていた女がジャグラーに捕まっていた。

「貴方は・・・どうしてここに?」

 

「それはこっちの台詞だ。なんでお前がここにいるんだよ・・」

 

 もうすぐ土の魔王獣が目覚めるかもしれないってのにこんな危険な場所で・・・。

「私はその・・帰り道でトンネルを通ったら偶然・・・」

 

「ははっ。まさに運命の出会いというわけだ!」

 

 とんだ運命の出会いがあったもんだ。

「もうすぐここで土の魔王獣が復活するかもしれない。・・・土の魔王獣が目覚めると地上のものが全て土に飲み込まれちまう」

 

「土の魔王獣?貴方達は・・・いったい何者なんですか?」

 

「・・・この世には知らないことが幸せなこともある」

 

 下手に話すと絶対何度も関わってくるからな。知らないままの方が安全だ。

「お嬢さん。続きは夜明けのコーヒーにでも」

 

「きゃぁぁぁっ!?」

 

「っ!」

 

 女の耳元でそうささやいたジャグラーはその女をこちらへと投げてきたので俺はそれを受け止める。どうやら投げられたショックで気を失ったようだ。

「さぁ怪獣の笛がなるぞ。かつてウルトラ戦士に封印された土の魔王獣。この怪獣たちの力を喰らい、長き眠りから目覚めようとする魔物が奏でる滅びの音色がな!」

 

 そういったジャグラーは俺のオーブリングの色違いであるダークリングにラストのカードをリードして、その力が大地へと注がれる。

「さぁお出ましだ!土の魔王獣!マガグランドキングのなぁ!!」

 

 大地が激しく揺れ、頭上のコンクリートが少しずつ崩れ始める。俺は問題ないが、この女はこのままじゃ危ないな。

「フンっ!」

 

「っと、危ない危ない」

 

ジャグラーへ向けて右手から光弾を放つと、ジャグラーはダークリングでそれを弾く。俺はジャグラーがそれに気を取られている隙に女を抱えてトンネルの外へと出る。すると何処かで見た覚えのある車がこちらへと向かって来てるのが見えた。あの車はたしかマガバッサーの時にいた連中の車だったはず。

「この女はあいつ等にでも任せればいいか」

 

 女を下ろした俺は連中に見つからないように瓦礫の影に隠れる。

「兄さん!あそこに倒れている人が!」

 

「何だと!!」

 

 車を停車させると、そこからは撮影や観測をしていた兄妹が降りてきた。どうやらこの前のあの女はいないようだ。

「あれ?私は・・・」

 

「ひとまずあいつはこれで・・・」

 

 さっきの女の意識が戻り一安心したのもつかの間、地盤沈下で沈んでしまった4か所の大地が赤く輝いてマガグランドキングを封印していた龍脈の力が完全に壊れてしまう。すると地中からは左腕に巨大な鉤爪、右腕に大鋏となっている鋼鉄の魔物が現れた。

「あ、あれが・・・」

 

「禍蔵鬼・・」

 

マガぐらき?古い文献にはそんなふうに伝えられてるのか。

「っと、そんなこと考えてる場合じゃないな!」

 

 奴らから見えない辺りへと移動した俺はオーブリングを取り出した。

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

 2枚のカードで2人のウルトラマンの力を解放する。そしてすぐさまオーブリングを空へと掲げる。

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと変身した俺はマガグランドキングの前に立って戦闘の構えを取る。

「俺の名はオーブ。闇を照らして、悪を討つ!」

 

 

 

 

~~瑠々~

「オォォリャァァァ!!」

 

 土の魔王獣マガグランドキングが地上へと現れてすぐにウルトラマンオーブが現れ、名乗りの後に跳び膝蹴りを決め込みました。しかしその鋼の装甲と重量からか、マガグランドキングはまるでビクともせずに前へと進んできます。

「ダァッ!」

 

 続けて回し蹴りをしてみるも、強固な装甲にオーブは弾かれてしまいました。

「デュアッ!!」

 

 身体の赤い部分を発光させたオーブは渾身の力で殴ってみるも・・・その一撃すらも効かず逆にその手を痛めたようで、拳を押さえながら数歩後ろへと下がってしまいました。

「デュアッ!デュアァ!」

 

 ならばと言わんばかりに今度はムエタイのようなキックを2~3回繰り出してみますが、それでも傷一つ付いているようには見えません。

「っ!!」

 

 ここでようやくオーブを意識し出したのかマガグランドキングは右の大鋏を振るうと、オーブは紫の部分を発光させ素早い動きでそれを回避しました。そしてそのままマガグランドキングの背後へと回り込みました。

「よし!後ろを取れた!これなら!」

 

 私を助けてくれたSSPの徹さんもオーブが背後を取れたことで「勝てる」とガッツポーズをします。

「スぺリオン光線!!」

 

 オーブの光線が振り返ったマガグランドキングの胸部へと直撃します。これでオーブの勝利だとこの戦闘を見守る人たちみんなが思っていたはずです。しかし・・・

「えっ・・・」

 

 先日マガバッサーを撃ち破ったあの光線すらもマガグランドキングには通用していなかったのです。

「・・・ッ!?」

 

 流石のオーブもそれには驚いた反応をしながら数歩後ろへと下がると、マガグランドキングは胸部から赤い光線を放ってきました。

「っ!!」

 

 オーブは咄嗟に紫色に発光して光線を避けると、真後ろのビルにその光線が当たってしまいます。光線が当たった箇所は完全に溶けてしまい、ビルに大きな風穴ができてしまっていました。

「ドァ・・・デァッ!・・」

 

 次々と放たれる光線をオーブはギリギリのところで回避をしますが、その光線で崩れたビルが私達へと倒れて来ました。

「音々!?」

 

 介抱してくていた男性は妹さんを庇うようにした瞬間・・・ビルとは別の影が私達を覆いました。

「オーブ・・」

 

 オーブが崩れてきそうになっていたビルを受け止めてくれていたのです。

「サンキュー!オーブ!」

 

「あ、ありがとうなのです!」

 

「ありがとうございます!」

 

 私達のお礼に頷いたオーブはビルをゆっくり下ろすとその隙を突かれて光線が直撃してしまいました。

「ァダ!?」

 

 光線が直撃したオーブは胸のランプが赤く点滅してしまい、身体から2人の半透明な巨人が抜け出そうになってしまいます。

「また胸のランプが赤くなってやがる」

 

「やはりあれがオーブの活動限界を知らせる役目を持っているのだと思うのです」

 

「ィデァ・・」

 

 活動の限界で動きが鈍っているオーブは続けて放たれた光線も直撃して、その場に倒れ込みます。

「・・・!」

 

 そこに先ほどまでよりも強めの『トドメ』といわんばかりの光線が放たれるとオーブは横に転がって辛うじてそれを回避しました。するとその光線は太陽の光を反射しているピカピカな窓ガラスのビルにあたり、光線が空へと反射しました。

「光線が反射した?いったいどうして・・・」

 

 光線は光・・。光は鏡で反射して・・・っ!!そうです!鏡です!

「オーブ!あの光線は鏡で反射します!鏡を使ってください!」

 

 オーブに向かって私はそう叫ぶと、オーブは正面に光で作られた鏡のバリアを作り出してマガグランドキングの光線を空へと逸らします。

「デュ・・・アァァ!!」

 

 そしてその鏡のバリアの角度を少しづつずらして光線をマガグランドキングに反射させました。すると自身の光線が直撃したマガグランドキングの胸部は大きくえぐられました。

「なるほど。最強の矛と最強の盾は両立できない。まさに矛盾ってやつだな。考えたじゃないか嬢ちゃん」

 

「い、いえ・・・跳ね返せるまでは考えましたけど、あそこまでダメージが通るのは考えていませんでした」

 

 もしマガグランドキングが自分の光線にも耐えられる強度だったら駄目だったかもしれません。

「スぺリオン光線!!」

 

 オーブはマガグランドキングのえぐられている部分に光線を狙い撃つと、内側から膨張するようにマガグランドキングは爆散しました。

「シュワッ!」

 

 戦いを終えたオーブは空へと飛び上がり何処かへと去っていきます。私達はその姿が見えなくなるまで彼を見続けていました。

 

 

 

 

~~???~

「ふぅ・・。疲れた・・」

 

 スぺシウムゼぺリオンから人間体へと戻った俺はマガグランドキングの残骸であるマガクリスタルにオーブリングをかざす。するとクリスタルが砕けてエネルギーと化し、そのエネルギーがオーブリングへと集まって1枚のカードになった。

「おっ!やっぱりマガグランドキングを封印していたのはタロウさんでしたか。お疲れ様です!」

 

 グランドキングとなるとタロウさんだと思ってたけど、やっぱりだったな。

「さてと・・・銭湯にでもいくか」

 

 マガバッサーの時以上に汗をかいたな。シャツの替えどうすっかな?

「あっ!貴方は・・」

 

 銭湯へと歩き出そうとすると偶然にもさっき助けた女とあの兄妹と遭遇してしまった。

「お願いです!魔王獣というのは何なのですか?あのスーツの人はいったい・・」

 

 一度関わってしまうとこんなふうに真相を知りたがっちまうんだよな。

「はぁ・・。1つだけ教えてやるよ。俺はガイ。白金ガイ(しろがねガイ)だ」

 

 白金ガイ。そう名乗った俺は彼女たちに背を向けてその場を後にした。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンタロウ
属性:火属性

 ウルトラマン№6ことウルトラマンタロウさん。ウルトラ兄弟で唯一ウルトラの父とウルトラの母の実の息子で光の国の教官として活動する頼もしい戦士だ。


マガグランドキング
属性:土属性

 土を司る魔王獣マガグランドキング。かつてウルトラ6兄弟を苦しめたグランドキングの魔王獣版ですべてを貫く光線とスぺリオン光線でも傷つかないボディを併せ持つ攻守ともに隙のない恐ろしい怪獣だ。

次回「うどんが食べたい」

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