ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 オリジンサーガにあたる物語が5月からなのは未だにタイトルが確定してないせいだったりします。


黒き王の祝福

~~久遠~

 

 

 オーブがマガオロチに完全敗北してから数分後、ウールとサァラ。そしてヤクトワルトの3人が駆けつけてきた。

「あれがオーブの旦那を倒したって怪獣か。随分まぁ暴れまくってくれてるじゃない」

 

「仇は打つ」

 

「参ります」

 

 ウールとサァラはルディアンを出現させてそれに乗り込む。するとヤクトワルトも巨大な鎧武者としての姿へと変わってマガオロチの正面に向かい立った。

「娘の学校が近いんだ。これ以上暴れられるのは迷惑なんで・・・斬らせてもらう」

 

『討伐』

 

『絶対に倒します』

 

 ヤクトワルトとルディアンはマガオロチを倒すために動き出す。まずはヤクトワルトが先手を打った。

「陽炎の太刀!二突!」

 

 2連撃の突きで先制攻撃を仕掛けたヤクトワルトだったけど、オーブの攻撃を物ともしなかったマガオロチの前には神速の突きすらもあっさりと弾かれてしまった。

「むぅ、随分硬いじゃない」

 

『避けて』

 

 サァラの言葉に反応してヤクトワルトが後ろに跳び上がった瞬間、4発のミサイルがマガオロチへと直撃した。ルディアンによる攻撃だ。

「直撃だけど・・・」

 

 攻撃は確かにマガオロチに直撃した。だけどオーブの必殺技やヤクトワルトの刃が通じないそんな相手にルディアンのミサイルが通用するとは思えない。そう思っていると・・・爆炎の中から雷撃が飛んできた。

『えっ!?』

 

 反応しきれなかったルディアンはその雷撃が直撃してしまうとルディアンの顔の装甲が半分ほど吹き飛んだ。

『この・・・』

 

 ルディアンが反撃しようと爆炎に銃口を向けた瞬間、爆炎の中から勢いよく出てきたマガオロチはルディアンの右腕を鷲掴みにしてその関節部に雷撃を浴びせて腕を焼き千切った。

『ダメージが大きいです。これ以上は・・・』

 

 破損が大きく、本来の姿を維持できなくなりつつあるルディアンからは青い粒子が散り始める。

「陽炎の太刀!嵐逆鱗!!」

 

 ヤクトワルトは嵐のような剣戟でマガオロチを斬りつけるも・・・

「ヌンッ!!・・・」

 

マガオロチはその刃を右手で掴むと、それを左手で叩き割ってしまった。

「刀が・・っ!?」

 

 自身の刀が叩き折られてしまった事に驚いたヤクトワルトは次の瞬間にマガオロチの雷撃を間近で受けてしまいその場に倒れてしまう。するとルディアンはスパークドールズの姿となってウールとサァラはルディアンが消えた場所に倒れ込み、ヤクトワルトも鎧武者の姿から普段の姿に戻ってしまった。

「ウール!サァラ!」

 

「ヤクトワルト!」

 

 私達は急いで3人のところへと駆け寄る。

「これほどとは・・。参ったねこりゃ・・」

 

 怪我こそしているが3人共しっかり息をしていて、ヤクトワルトに至ってはまだ軽口をいえるぐらいではあるようだ。

「今はそんなこと言ってないでここを離れるのですよ」

 

「あぁ。・・俺は歩けはするから気を失ってるそっちの2人を頼む」

 

 雷撃を間近で受けてところどころ火傷してしまっているヤクトワルトはそう強がる。本当は肩を貸してあげられればいいんだけど、気を失っているウールとサァラを運ばないといけないからもう少しヤクトワルトには無理をしてもらわないといけないかも。

「すみません。力不足で・・・」

 

 ウールとサァラより身長が高い私と徹さんはともかく、2人より身長が低い音々ではどちらかを背負って移動できないからだ。

「俺のことよか、シノの事が心配だ。ここに来る前に店にいた木村に任せてきたが・・・」

 

 シノの事を心配するヤクトワルトはマガオロチを見上げる。マガオロチはオーブとヤクトワルト、そしてルディアンを相手にしてもなお疲弊した様子は見せなく未だに見境のない破壊をしながら前へと進んでいく。すると樹齢数千年でご神木として祭られてる木がある神社を過ぎた辺りでやっぱり疲れていたのか、マガオロチはうずくまるようにご神木をなぎ倒してそこで眠り始めた。

「寝たな・・。ひとまず一旦安心か」

 

「向きこそトリコリとは真逆ですが・・・再び目を覚ましたらこちらに被害が及ばないとも限りませんからね」

 

 いくら今は逆と言えども目が覚めれば侵攻の向きが変わるかもしれないし、そのまま進んだとしても雷撃の流れ弾や二次災害であそこも安全とは限らない。私達はトリコリに残してきた人達が心配で一旦戻ることにした。

 

 

 

~~ガイ~

 

「くそっ・・・。ジャグラーのやつ、とんでもないもの起こしやがって」

 

意識を取り戻した俺は・・・何故か豪華なベッドの上にいた。

「ここは・・・何処だ?」

 

「私の家だよ」

 

 声の聞こえてきたドアの方へと視線を向けると、ちょうど杏が入って来た。

「ガイがあの背中トゲトゲな怪獣に負けて・・・倒れていたガイを千佳に頼んでここに運んでもらったの」

 

「そうか。ありがとな。うっ・・!?」

 

 既に手当てもしてもらっていた俺は立ち上がろうとするも、痛みで立ち上がることができなかった。

「無理しちゃ駄目!コテンパンにやられたばっかりなんだから!」

 

「負けてとか、コテンパンに・・・とか。前から気になってたんだがお前は何処まで知ってるんだ?」

 

 本人が語るまではと考えていたが・・・マガオロチにコテンパンに負けて気がたっていた俺はついついそう口走ってしまう。

「っ!・・・無理に答えなくてもいいぞ」

 

「ううん。私も何度も話そうとは思ってたけど、中々言う機会がなかったから・・・」

 

 口走ってしまったことに気づいた俺は無理にと伝えると、杏自身引っ張るつもりはないと理由を話すことにしたようだ。

「昔からね・・・何度も同じ夢を見てきたの。夢の中で私はお姫様なの。お城には私を守ってくれる騎士がいたの。騎士は伝説の剣で城にやってくる魔物達から何度も私達の国を守ってくれた英雄で・・・。その騎士の名前が『ガイ』っていうの」

 

 お城に騎士。そして伝説の剣でトドメに俺の名前か。

「ガイと初めてあったあの時、私はガイを見て直感したんだ。この人はきっとみんなのヒーロー『オーブ』で・・私の夢に出てきた騎士なんだって」

 

「つまりあれなのか。お前はそのお姫様の生まれ変わりって言いたいのか?」

 

 前々から似てるとは思っていたがアンジェリカ・・・アンジュの生まれ変わりと言うつもりだったとは。

「え?違うよ。夢はきっとお告げなんだろうなって話。私が後々ガイに出会うからっていう未来予知というか正夢みたいな感じ」

 

「・・・あ、うん・・」

 

 てっきり生まれ変わりだとか壮大なものを予想した俺が恥ずかしい。

「名前も顔も夢と同じ。きっとガイが私の騎士なんだって」

 

 なんというか・・・意外と少女趣味があるんだな。いや事実少女だけど。それにしてもアンジェリカと同じ顔の杏がそんな夢を見るなんて偶然には思えないな。

「っと・・。今はそんなこと考え込んでる場合じゃなかったな。マガオロチはどうなった?」

 

「マガオロチ・・あのトゲトゲのことだね。千佳~!」

 

「こちらに・・」

 

 杏が千佳を呼ぶと、まるでドアの外で待機していたかのように千佳が入って来た。

「・・・なぁ杏。たしか千佳って俺がオーブだって知らないはずだよな?大丈夫なのか?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

 その大丈夫の根拠は何処にあるのだろうか。

「千佳。ガイはオーブとあの怪獣の戦いに巻き込まれて気を失ってたの。あの後何があったか教えてあげて」

 

「承知しました。ガイ殿。あの後オーブは怪獣に敗れ、その仇を討たんとしたウール殿とサァラ殿。そしてヤクトワルト殿が怪獣へと挑んだのですが3人も返り討ちにあってしまい、今はトリコリで手当てを受けて安静にしているのだ」

 

「・・・怪獣。マガオロチは今、どうなってる?」

 

「あの怪獣はマガオロチというのだな。・・・マガオロチは3人を返り討ちにした後、疲れたからかは不明だが睡眠状態に入り10時間が経った」

 

 10時間と聞いて俺はすぐさま部屋の時計を確認する。確かにあれから10時間も過ぎてしまっていた。俺、そんなに寝ちまっていたのか。

「流石に寝すぎだな・・ん?」

 

 俺はそこでようやく違和感に気がつく。いつも付けているもの・・・ホルダーが腰についていなかったことに。

「なぁ、千佳。俺のホルダーを知らないか?」

 

「普段つけているあれのことか?いや、ここに運んだ時には付けていなかったが・・・」

 

 マガオロチに負けた時に何処かに落としたのか。先輩達のカードがないとマガオロチと戦うこともできない。急いで探しに行かないと・・。

「・・・探しに行かないとな。手当てしてくれて助かった」

 

「だから無理しちゃ駄目。・・・って言っても行くんだよね?」

 

 痛みを我慢して無理に立ち上がったことを見抜いていた杏が問いかけてきたので、俺はその言葉に頷く。

「あぁ。行かないといけないんだ」

 

「ねぇ、千佳。なんかいいものない?」

 

 あっさり行くことを了承してくれた杏は千佳に何かをないかと尋ねると、千佳はため息をつく。

「姫山財閥は医療グループもありますのでここにも薬はある程度揃っております。痛み止めの薬ももちろんあるのですが・・・ガイ殿。この薬は即効性のある薬で、その場しのぎにはなりますが数時間ほどで効き目が切れてしまう」

 

「数時間もなら十分だ」

 

「なら・・これを・・・」

 

 杏と俺に対してで口調を変えつつもボディーガードとして万が一のために常備していた様子の薬を手渡してくる。

「ありがとう。それじゃ行ってくる!」

 

 

~~杏~

 

「ありがとう。それじゃ行ってくる!」

 

 そう言ったガイは靴を履くと窓から飛び降りて、探し物を探しにいってしまう。急いでいるのは分かるけど、普通に出ていけばいいのに。

「さてと・・それじゃ千佳。準備して」

 

「マガオロチと呼ばれるあの怪獣はこれまでよりも危険だというのに、それでも行くのですね」

 

 何を今更なこと聞いてきてるんだろう。

「危険なんていつものことじゃん」

 

「そのいつもに付き合わされるこちらの身にもなってほしいですね。まぁ、そう言っても向かう気なのでしょう」

 

「もちろん」

 

 当然今回もオーブの戦いを見届けるつもりだよ。

「分かりました。ではまずSSPの皆さんと合流しましょう」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 こうして私達もトリコリにいるSSPと合流することとなった。

 

 

~~音々~

 

 ヤクトワルトさん達が敗れ、マガオロチが休眠状態になってから半日が経過しました。マガオロチから半径1キロの範囲はBRGによって立ち入り禁止にされてしまったのです。

「そういう訳で私たちは立ち入り禁止エリアより外側からの撮影をしている。・・・どうだ扇、ちゃんと撮れてるか?」

 

「バッチリです姉上」

 

 私達は騒ぎを聞きつけて戻って来た乃理さんと扇さん。それと杏さんと千佳さんの4人と合流し、マガオロチの観測をしていました。

「これは・・・マズイのでず」

 

「ん?どしたの音々」

 

 先日姫山財閥からSSPに提供という形で杏さんから譲り受けた機材でマガオロチについてある事に気がつくと、杏さんが訪ねてきました。

「あっ!それ、この前SSPに提供した機械だよね。えっと・・・」

 

「生体反応観測機なのです。これでマガオロチのバイタルや脳波を確認していたのですが・・・バイタルも脳波も活性化しているのです」

 

「つまり・・・どういうこと?」

 

「いつ目を覚ましてもおかしくないという状態ということなのです」

 

瑠々さんと木村さんも負傷したヤクトワルトさんたちとともに避難所。ガイさんは探し物で睦美さんとエルさんは避難所で怪我をした人達の治療でいない。

「こんな時、ガイならどう判断するかな?」

 

「ガイさんの事ですし・・・まずは私達に逃げるように言ってくると思うのですよ」

 

「だけど何の手がかりも掴めないままここを離れたくはないよな・・」

 

 マガオロチの攻略法を見つけないままこの場を去ることに気が引けた私達は他に何か手はないかを考えていると・・・

「手がかり・・・そうだ!玉響姫だ!」

 

 珍しく頭を使った乃理さんが玉響姫だと言ってきたのです。

「確かに玉響姫のところ・・・マガオロチが封印されていた場所に行けば何か手がかりがあるかもしれないかな」

 

「乃理!扇!お前らはここでマガオロチを見張っててくれ!何かあったら連絡を頼む!」

 

「あぁ!任されたぞ!」

 

 乃理さんと扇さんにマガオロチの観測を任せ、私達は森へと向かいました。

 

 

~~ガイ~

 

「いったいどこに落としたんだ・・」

 

 杏の家を出てから2時間が経った。俺はマガオロチに負けて倒れた辺りを探してみるもホルダーは見つからなく、衝撃で吹き飛んだ可能性を考えて探す範囲を広げて捜索していた。

「探し物は・・・これですか?」

 

 すると正面にジャグラーが現れ、俺のホルダーを見せつけてきた。こいつが奪っていたのか。

「返せ!!」

 

「おっと・・」

 

 俺はホルダーを取り返そうとジャグラーに飛びかかるも、ジャグラーはあっさりそ避けて俺を殴り飛ばした。

「ぐっ!?」

 

 倒れた俺がガードレールに叩きつけられると、ジャグラーは俺を見下すようにしゃがむ。

「なんかお前カッコ悪いよ。・・・カッコ悪いからさぁ、せめて潔く負けを認めて俺の勝ちを称えろよ」

 

「ふざけんな!!」

 

「フフ、負け犬の遠吠えってやつか。ほら・・・また始まったぞ」

 

 ジャグラーがそう言った途端・・・眠っていたマガオロチがこのタイミングで目覚めてしまった。

 

 

~~杏~

 

「玉響姫が目覚める前にマガオロチが目覚めてしまったのですよ!・・あぅ!?」

 

 玉響姫の手がかりを求めて森の探索中、マガオロチの方が先に目を覚まして音々が取り乱していると、石に躓いてしまった。

「おいおい、この辺石の石が多いんだから気をつけろよ」

 

「はいなのです。・・あれ?この石・・」

 

 キャップの手を借りて立ち上がった音々はこの辺りに散らばる石を見て何かに気づいたようだ。

「今度はどったの?」

 

「この石ってもしかして・・・玉響姫のお墓なんじゃないですか?」

 

 そう言った音々は辺りの石を集めて、破片と破片を繋ぎ始めた。確かに文字っぽいのはついてるけどよく気づけたと思う。

「とりあえず文字の部分だけでも・・・」

 

 流石に全部の復元は無理と判断した音々はせめて文字の部分だけでも組もうとしていたけど・・・見つからない部分もあって玉響姫の文字以外がほどんど復元しきれていなかった。

「ここまで復元できたのは凄いとは思うけどさぁ・・」

 

「これで・・・どうするのかな?復活しないよ。・・・玉響姫」

 

 復元したのは良かったけど、玉響姫が復活するような気配はまるでなかった。

「復活してくれるとは思ってなかったですが・・・せめて何かマガオロチ攻略の手がかりが記されていればと思ったのです」

 

 集められた部分にはその手がかりも書かれていなさそうだけどね。

「ねぇ音々。ここには何て書かれているのかな?」

 

 久遠は玉響姫の名前以外にも読めそうな場所を指さす。

「テンゲン・・ソワヤ・・・フルべユラユラ。テンゲンは天の元気を意味して・・ソワヤは祝福。それでフルべが・・・」

 

 音々は呪文のような言葉の意味を解読しようとぶつぶつと呟いている。

「音々、難しい話はいい!その呪文に何か意味があるのか?」

 

「意味があるのかは分からないのですが、天の祝福で魂を鎮めるっぽいことが書かれているのです」

 

 天の祝福。天の祝福と言えば水不足の時は雨だし、雨続きだと晴れのことだよね。

「よくわかんないけど天の祝福っぽいことをすればいいんでしょ!」

 

 仮にも大学生のくせに古文がさっぱりだった久遠はとりあえずそれっぽいことをしてみようとミネラルウォーターを周りの草木に与えてみた。

「何してるの久遠?」

 

「ほら、雨の恵みっぽいことをね・・」

 

「久遠さん。そんな意味では・・・」

 

 音々がそんな意味ではないと言おうとすると・・・久遠が水を与えた草木から無数の光が浮かび上がった。

「えっ!?これで良かったのですか!?」

 

「俺も良く分からんが・・・今はこの光を信じてみるしかないな」

 

 キャップはこの光が何か逆転の一手になることを信じることにすると・・・光は1つに集まってマガオロチが暴れる町へと飛んで行った。

 

 

 

 

~~ガイ~

「ん・・?光?」

 

 カードはなくとも何もしないのは無理だったのでマガオロチのところへと向かっていると、入らずの森の方から光が飛んできた。その光は形を変えて人の形となる。玉響姫だ。

「玉響姫!無事だったのか!」

 

「ガイ・・・」

 

 再び実体化してくれた玉響姫は懐から何かを取り出してくる。

「これをお使いください」

 

玉響姫は取り出したカードを手渡してくる。マガオロチの封印に使われていた勇者の力・・・ウルトラ兄弟№1。宇宙警備隊の隊長として活躍する戦士ゾフィーさんのカードだ。

「それと・・・もう1枚」

 

「これは・・・」

 

 玉響姫はもう1枚カードを取り出す。ジャグラーがゾフィーさんの封印を破るために使った切り札。べリアルのカードだ。

「今はこれが・・・最後の希望です」

 

 ゾフィーさんはともかく・・・べリアルの力が希望だとはな。

「っ!!テンゲンソワヤフルベユラユラ!」

 

 マガオロチが雷撃を放ってくると、玉響姫は自身の霊力で結界を張ってそれを防いでくれた。

「私が防いでているうちに!」

 

「分かりました!・・・ゾフィーさん!!」

『ゾフィー』

 

 べリアルの力・・・闇の力を使う事を決意した俺はまずはゾフィーさんの力を解放する。

「べリアルさん!!」

 

 そしてべリアルの力もオーブリングで解放しようとすると・・・

「ぬぁっ!?」

 

 べリアルのカードはオーブリングに反発するかのように弾かれてしまった。

「べリアルさん!力を貸してください!!」

 

 今はこの手段しかないんだ。選択の余地がない俺は力づくでもべリアルの力を解放しようとオーブリングに押し込むようにカードをリードしようとするも、またも弾かれてしまう。

「急いでガイ!もう長くは持ちません!」

 

「くっ・・お願いしますべリアルさん!!」

 

 3度目の正直・・・になるようなことはなく、俺は弾かれた反動で数メートル後ろへと吹き飛ばされてしまうとマガオロチは雷撃の威力を強める。

「ガイ・・・」

 

 その雷撃を必死に受け止めてくれていた玉響姫だったが・・・強められたマガオロチの雷撃を前に結界が破られた瞬間、玉響姫はこちらへと視線を向けて俺に『ある言葉』を言い残す。そして雷撃が玉響姫を飲み込み、俺もその衝撃で吹き飛ばされると・・・玉響姫は完全に消滅してしまっていた。自身の力を全て使い切り魂まで消耗しきって消えてしまったんだ。

「う、うぅ・・ウオォォォォォォッ!!!」

 

俺は玉響姫が消滅してしまった悲しみと何も出来なかった自身への怒り。そしてマガオロチへの殺意を心に抱きながら再びべリアルのカードをオーブリングへとかざした。

『ウルトラマンべリアル』

 

 ここまでリードできなかったべリアルのカードがようやくリードさせる。

『フハハハハッ!!』

 

 カードに宿るべリアルの残留思念が高笑いをする。

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!サンダーブレスター!』

 

 腕に大きな手甲を装備しているようなフォトンビクトリウムとは違い、全身がマッシブな赤と黒の姿。サンダーブレスターへと姿を変えた俺は地上に降り立つ衝撃波で幾つものビルをなぎ倒しながらもマガオロチの正面に着地した。

 

 

~~ジャグラー~

 

「あいつ、闇のカードを使いやがって・・」

 

 あいつは『光』だったはずだ。なのにその道を捨ててまでマガオロチを倒す気なのか。

「ァぁァァァ!!」

 

 マガオロチへと駆け出したオーブはその頭を押さえ込み、そのままビルへと叩きつける。ビルの破片が周囲に散らばるとオーブはマガオロチのマウントを取って左手で頭を押さえたまま何度も殴りつけた。そして角を掴んで持ち上げると両腕で何度も殴りつける。

「ンハハはハははッ!!」

 

 オーブはまるで戦いを楽しんでいるかのような笑い声を出しながらマガオロチを蹴り倒すと近くのビルを鷲掴みして、マガオロチへと投げつけた。

「っ!!」

 

 マガオロチは反撃と言わんばかりに尻尾でオーブを攻撃しようとするも、オーブはその尻尾を受け止めてガッシリと掴むとそのままマガオロチを振り回してまたもビルへと叩きつけた。

「オオォォォおぉぉ!!」

 

 尻尾を引っ張り上げてマガオロチを無理やり起き上がらせたオーブは右手に赤黒い光輪を作るとそれでマガオロチの尻尾をぶった切りやがった。

「ヴぁァァッ!!」

 

「ギャオォォォォ!?」

 

 切断した尻尾でマガオロチを叩いたオーブに対し、マガオロチは雷撃を放つも・・・オーブは尻尾で雷撃をガードする。

「ムゥン!!」

 

 2撃目の雷撃がオーブへと放たれると、オーブは盾にした尻尾を投げ捨てて素手で充分だと言わんばかりに拳で雷撃を防いだ。そして続く3撃目においては防ぐ必要がないと言わんばかりにノーガードで前へと進んで片手でマガオロチの喉元を掴んで持ち上げ、そのままぶん投げた。

「何でだよガイ!!何なんだよ!!一度ぐらい俺に勝たせろよ!!このやろォォォォ!!!」

「ヴォォォォぉ!!」

 

 俺は勢い余って魔人態になってしまいながらも行き場のない怒りで我を忘れて叫んでしまうと・・・オーブは赤と水色が混ざり合う光線をマガオロチへと向けて放った。その光線はマガオロチの肉をえぐるように食い込んでいくと、その破壊力に耐えかねたマガオロチは爆発してしまった。

「あぁぁぁぁァァぁぁぁぁぁァ!!」

 

 マガオロチが敗れたショックで俺は奇声を上げてしまう。

「あぁ・・。はぁ・・・」

 

 そして戦いを終えたオーブが飛び去っていくと同時に俺はため息をつきながら魔人態から普段の姿に戻って・・・もう何もやる気が起きないままこの場を去って行った。

 

 

~~ガイ~

「・・・・・」

 

 マガオロチを倒してサンダーブレスターの変身を解いた俺は廃墟と化した町を歩いていると・・・瓦礫に腰をかけて座り込んでいたジャグラーがいたことに気がついた。

「俺を笑いに来たのか?・・・カッコよかったよお前。全てを破壊しつくすお前の姿、惚れ惚れしたなぁ。俺は潔く負けを認める・・」

 

 本当に潔く負けを認めたジャグラーは俺にホルダーを投げ返してくる。

「楽しかっただろう・・。強大な力を手に入れて、全てを破壊し尽くすのは・・」

 

「そんなことは・・」

 

「良い子ぶるな!!所詮お前も俺と同類なんだよ・・。楽しめ。ハハっ、ハハハハハッ!」

 

 俺に『同類』と言い残したジャグラーは空虚な笑いをしつつこの場を去っていく。事実強大な力に呑まれていた俺は言い返すことができず・・・しばらくこの場に留まっていた。

 

 

 

~~エル~

 

 黒く禍々しいオーブ。その戦いぶりを見た私は心に迷いが生まれた。「あのウルトラマンを本当に信じても大丈夫なのか」と。オーブであるガイさんの人間性自体は信用に足るものだと思う。だけどその精神は『彼ら』ほどの域には到達していないからこそ、闇の力に呑まれかけていたんだと思う。

「まるで邪悪の光のよう。・・・すみませんアスカさん、春野さん。貴方たちから渡してほしいと任せられた力、時期尚早だと思います」

 

 アスカさんと春野さんからガイさんに渡すように頼まれた力・・ウルトラマンダイナとウルトラマンコスモスのカードを握ったままだった私はそれをしまうと再び手当てが必要な人達が集まる避難所へと戻った。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンべリアル
属性・闇属性

光の国で唯一悪の道に墜ちた黒いウルトラマン。ウルトラマンべリアルさん。ウルトラ戦士唯一のレイオニクスでウルトラの父に勝るとも劣らない実力を秘めているんだ。幾度も光の国を壊滅まで追い込む過程でゼロさんと因縁ができたらしい。


マガオロチ
属性・全(ゼン)属性

 全ての魔王獣の頂点に立つ魔王獣。大魔王獣マガオロチ。星を喰らい尽くすという伝説があり、これまでのフュージョンアップがまるで通用しなかったほど圧倒的な力で蹂躙する姿に俺は闇の力を使わざるを得なかった。

次回「人物紹介part2」

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