ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 ガイアの音声はオーブリング基準です。


ニセモノのブルース

~~ガイ~

 

 ホオリンガと睦美の一件から5日後。俺は訳あって八つ首の青龍の前に立っていた。

「お招き頂き光栄です。ミズノエノリュウ」

 

 数時間前、何かに呼ばれる声がしたので山奥の祠へと足を運んでみると、突如として海底洞窟のような空間に移動させられた。そこにいた青龍こそ地帝大怪獣ミズノエノリュウ。大地を司る守護神と語り継がれている怪獣だ。どうやら俺はミズノエノリュウに招かれたようだ。

「何故自分を・・・?」

 

 招いた理由を尋ねようとするとミズノエノリュウを囲むように青い光が出現する。するとその青い光は一点に集まり赤い球体になった。

「これを・・・俺に・・?」

 

 その赤い球体を手に取ると・・・それは1枚のカードへと変化した。地球が生んだ大地の化身ウルトラマンガイアさん。その力が込められたカードだ。

「・・・・・」

 

 ミズノエノリュウは「この地を任せる」と告げるかのようなまなざしで俺に視線を向けるとゆっくりと蒼い光となって消えていく。

「ありがとうございます!」

 

 俺はその光へと一礼すると・・・頭を上げた頃には元いた祠に戻っていた。

「・・・手持ちが少なくてすみません」

 

 山登りのお菓子程度に持っていたたい焼きをお供えして祠を後にした。まさか下山したらあんなことが起きるなんて・・・この時は想像もしてなかった。

 

 

 

~~ジャグラー~

「ボス!次の作戦は俺に任せてくれよ!」

 

 広間にやってきたナックル星人はリダルホに次の作戦は自分にと立候補してきた。

「何か策があるのか?」

 

「久々にコイツに出てもらおうと思うんだ。おい、入って来いよ!」

 

「失礼します」

 

 ナックル星人に呼ばれて広間へとやってきたのは暗黒宇宙人のババルウ星人だった。ババルウ星人といえば優れた変身能力があったな。・・・なるほど。そういうことか。

「モズーヌか。久しいな」

 

「お久しぶりですリダルホ様」

 

 どうやらナックル星人の部下と思われるこのババルウ星人は侵略作戦で何度かリダルホと顔を合わせているようだ。

「ボス!こいつの能力でいつもの同士討ち作戦といこうぜ!」

 

「待て。私にいい考えがある」

 

 トップ自らいい考えが・・・などと提案するとは。はやくも作戦が失敗する兆しが見え始めたな。

「ボス。その作戦ってのはなんだよ?」

 

「ウルトラマンオーブの強さは人間達との信頼関係。いわば絆の強さだ。しかしそれは同時にオーブの弱点でもある」

 

 予想はついていたが、やはりそういう作戦か。

「ババルウ星人ヒーエン。お前の変身能力でオーブに成りすまして街を破壊し、人間達からの信頼を下げるのだ!」

 

「了解しました。ハァっ!」

 

 ババルウ星人は一礼をするとその姿をウルトラマンとティガの力を借りているオーブへと変化させる。まぁ変化させたといっても円盤の中なので人間サイズだがな。

「それでは・・・行ってきます。トォォウ!」

 

 そしてオーブの姿のままババルウ星人は円盤から飛び降りて地上へと降りていく。

「あのような者で大丈夫なのですか?」

 

「不安になる気持ちも分かる。しかしあいつはかつて幾つもの惑星侵略を陰で支えた立役者の1人なのだぞ」

 

 確かに惑星侵略するにあたって姿を変えて成りすますというのは役に立つだろう。だが姿を偽る相手と星が悪い。そしてなにより・・・時代遅れな戦術すぎる。

 

 

 

~~乃理~

 

「平和だなぁ~」

 

「そうですね姉上」

 

 先日のホオリンガで6人分の交通費がかかったことでしばらく遠出ができなくなり、基本遠出の調査を担当している私たちは特にすることもなく暇を持て余していた。

「そういえば今日は朝からガイを見てないな。扇、知ってるか?」

 

「徹さんから聞いた話によると早朝から山登りに行ったらしいですよ」

 

「なんだ?1人で調査に行ったのか?」

 

暇な私達も誘ってくれればいいものを・・。同じ暇人だろうに・・。

「いえ、調査ではなく『山に呼ばれた気がした』からだそうです」

 

 なんだその登山家のような理由は?そういえばガイはあちこちを旅していたのだったな。旅人としてそういう趣味があってもおかしくはないか。

「暇だなぁ~」

 

「暇なら少しは店を手伝ってほしいのですよ」

 

 音々はジト目でこちらに視線を向けてくる。

「音々。人には適材適所というものがあるのだ」

 

「ハァ・・。分かってるのですよ。乃理さんが喫茶店の仕事が苦手なことぐらい分かってるのですよ」

 

 最近ガイが作ったプリンや一昨日から始めたシュークリーム目当ての客が増え始め、以前よりも忙しくなった。以前は木村か瑠々のどちらかがいれば対処出てきたが、今では最低2人はいないとキツくなってる。・・・と、扇から聞いたな。

「売り上げが良くなるのは嬉しいのですが・・・今後のシフトの組み方が難しくなるのですよ」

 

 木村達の休みだけでなく、音々はSSPの解析担当として出向いてもらうこともあるからな。シフトの調整も難しいだろう。

「今日は瑠々さんが休みなので愛さんに手伝ってもらってようやくピークの時間は過ぎたのです。これでようやく休憩できるので・・・す?」

 

 音々はようやく休憩できると一安心したのもつかの間、外から見えた光に反応した。

「今の光は・・・?」

 

「ちょっと見てくる!」

 

 私はすぐさま店の外へと出てその光の正体を確かめに行くと・・・そこにはウルトラマンオーブの姿があった。

 

 

 

~~ヒーエン~

 

「ダァッ!」

 

 地上に降り立ったオレはすぐさまオーブの姿のまま巨大な姿になった。

『よし、そのまま街を破壊してウルトラマンオーブの信頼を無くすのだ』

 

 円盤にいるボスからテレパシーで指示が届いた。それじゃさっそく・・・

「ぬぉっ!?」

 

 さっそく街を破壊しにかかろうとした途端、足元が大きく揺れた。

「な、何が・・・えっ!?」

 

 状況が把握しきれないでいると足元からは野生のテレスドンが現れた。

「テレスドン!?ボス!これはいったい?」

 

『想定外の事態だ。現場で起きた自体は現場にいる貴様が対処をしろ』

 

「そんなぁ!?」

 

 通信を切られてしまい、結果的にオレはテレスドンと対峙することとなってしまったようだ。だけどどうすればいいんだ?オレは基本的に同士討ちや工作活動が主な仕事で戦闘経験なんてほとんどないってのに・・。

「ガァゥ!」

 

「あだぁっ!!?」

 

 オレを敵・・・というよりも獲物と認識したテレスドンはオレの左肩に噛みついてきた。

「痛い・・痛いっての!!」

 

 テレスドンの頭をビシビシと叩いて怯ませ、噛みつきから逃れながら左肩をさする。

「痛いなぁ~~。ぬわぁっ!!?」

 

 痛みのあまりしゃがみ込もうとすると・・・オレはテレスドンが口から放った光線が直撃してしまった。

 

 

~~乃理~

 

 ウルトラマンオーブがいきなり現れてすぐ、横に平べったい顔をした怪獣が地底から現れた。なるほど、ウルトラマンオーブはあの怪獣の相手をするために姿を現したのだな。

「頑張れぇ!ウルトラマンオーブ!!」

 

 トリコリから少し離れた場所までやってきた私はウルトラマンオーブに声援を送っていると・・・どこからか鳴き声が聞こえた気がした。

「姉上、こちらにいたのですね」

 

 そこに私を探していた様子の扇がやってきた。

「扇、すまないが少し静かにしてくれ。・・・あっちか!」

 

 扇を少し静かにさせた私は鳴き声が聞こえてきた場所に向かってみる。そこには母親とはぐれてしまった様子の5~6歳ぐらいの少女がいた。

「ママぁ・・」

 

「おい!大丈夫か!!」

 

 私はその少女に駆け寄ろうとすると地面から出てきた怪獣は口から光線を放ってきた。

「姉上っ!!」

 

「くっ・・!!」

 

 避けられないと直感した私はせめて少女だけでも助けようと抱きしめるように庇おうとした瞬間・・・

「ぬわぁっ!?」

 

 しゃがみ込んだウルトラマンオーブが私達を庇って光線を受け止めてくれていた。

 

 

 

~~ヒーエン~

 

「痛っ・・よくもやりやがったなぁ!!」

 

 いい加減頭に来たオレはテレスドンに飛びかかってその頭を力いっぱい叩いた。

「とぉぉおぅ!」

 

 少し怯んだ隙を突いて背中に飛びついて、今度は両手でビシバシと叩く。

「ギャォォッ」

 

「っとぉ!?」

 

 しかしテレスドンは身体を左右に揺らして振り払われてしまった。

「まだまだぁ!!」

 

 すぐさま立ち上がったオレはテレスドンの爪を頭を下げることで回避して、懐に入り込んだ。

「どぉりゃぁっ!!!」

 

 そして渾身の頭突きを叩き込んでやると・・・観念した様子のテレスドンは地中に潜ってこの場を去っていった。

「へっ!どんなもんだっ!一昨日来やがれってんだよ!・・・っと」

 

 テレスドンが潜っていった地面にそう言ってやっていると・・・オレの身体が光っていることに気づいた。巨大化は体力を消耗するからここ等がそれを維持する限界のようだ。

「いったん元に戻るか・・」

 

 偽ウルトラマンオーブ作戦はこのままじゃ実行できないと判断したオレは元のサイズに戻ることにした。

 

 

~~乃理~

 

「あっ!ウルトラマンオーブが光になったぞ!」

 

 怪獣が逃げるように地中へと潜っていくとウルトラマンオーブは光の球体になって地上に降りるのが見えた。

「ウルトラマンオーブの正体を知るチャンスだな!扇!その娘を任せたぞ!」

 

「姉上!くれぐれもお気をつけて」

 

 私は少女を扇に任せて光が降り立った場所へと向かってみる。

「あ~。いきなりすぎるんだよアイツは」

 

 何やら愚痴る声が聞こえてきたので曲がり角を曲がってみると、そこには黒い見た目で金髪の人影があった。

「あなたがウルトラマンオーブの正体か?」

 

「げっ!地球人っ!?」

 

 私がやってきたことに驚いた反応をしたその人物は一瞬だけ光に包まれながらもこちらに振り返ってくる。その姿は金髪で黒い前を開けているジャージ姿というガラの悪そうな男の姿だった。

「お、オーブの正体ぃ?し、知らないなぁ?」

 

 ふっ、嘘が下手な奴め。

「分かっている。正体がバレると活動がしにくいのだろう」

 

「あ、あぁ。確かにそりゃそうだが・・」

 

 正体を隠していることを認めたな。やはりこの男がウルトラマンオーブなのだな。

「私は貫葉乃理だ。あなたの名前は?」

 

「オレ?オレはババルウのヒーエン・・・飛影だ」

 

 今、別の名前を言いかけたな。つまり飛影というのは偽名で世を忍ぶ仮の名前というやつなのか。確かにヒーローが正体を隠すのは基本だからな。ならば今は飛影と呼んでやるのが彼のためだろう。

「分かった飛影。あなたの正体は私達の秘密だ」

 

「あ、あぁ!オレとお前の秘密だぞ!」

 

 私が正体を秘密にしておくと告げると飛影は急ぎ足でこの場を立ち去ろうとする。すると子供たちが周囲に集まって来た。

「えっ?なんだこいつ等!?」

 

 突然の事態に飛影は取り乱している様子だが・・・ここは公園なのだから子供が集まってくるのは当然だろう。

「オーブ!ウルトラマンオーブなんだよね?」

 

「え?いや・・オレは・・」

 

 どうやら子供たちは私と同じく光を追いかけてここへとやってきたようだ。うん、私は飛影の正体を誰にも言ってない。約束は破ってないぞ。

「あぁもう!そうだ!オレがオーブだよ!!」

 

 半ばヤケになった様子の飛影は自分がウルトラマンオーブだと告げると、子供たちは歓喜した。

 

 

 

~~ガイ~

 

 山から戻ってきたらオーブの偽物がテレスドンと戦っていたんで、俺に化けていた奴を陰でこっそりと見張っていたんだが・・・何だか予想外の展開になっていた。

「偽物っていえば普通は本物を落とし入れるために活動するってのが鉄板だと思ったんだがなぁ」

 

 今のところそんな動きを見せる気配がないどころか、なんか子供達と戯れてるし。

「ここはまぁ・・・。もう少し見守っててやるか」

 

 きっとあいつの中で心境の変化が起きているタイミングだろうと思い、俺はもうしばらく見守ることを決めた。

 

 

~~ヒ~エン~

 

「はぁ・・・。だる・・」

 

 テレスドンとの戦闘から日付けが変わった。昨日オレは押し寄せてきた子供達に「質問は明日答えてやる」と言ってその場から逃げたが、後味が悪かったので一応昨日の公園に向かってみると・・・本当に昨日の子供たちが集まっていた。

「あっ!飛影さんだ!」

 

「飛影さ~ん!」

 

 どうやら乃理とかいうあの女がオレの名前を子供達に広めていたらしく、オレを見るなり子供達が駆け寄って来た。

「質問に答えてくれるって言ったよね?」

 

「ねぇ、教えて教えて」

 

「・・・・」

 

 乃理は「答えてやってくれ」とでも言いたげにこちらに視線をむけてくる。こうなったら可能なかぎり答えてやるとしよう。

「じゃあまずは・・・アキ!」

 

 何故か乃理が仕切る形でアキと呼ばれた少女が最初の質問者になった。

「どうやったら強くなれますか?」

 

 これは割と簡単な質問だな。

「そりゃまぁ、毎日のトレーニングだろうな」

 

 まぁオレのトレーニングは基本諜報活動のためので、格闘訓練はあまりしてないけどな。

「それじゃ次はハジメ!」

 

「どうやったら好き嫌いがなくなりますか?」

 

 それはオレにする質問じゃないだろ。

「え・・まぁ、うん。苦手なものをすぐ食べれるようになろうってのは難しいだろ。別にそんなのはゆっくりでいいんだよ。なんとなく食べてみたら意外と大丈夫だったって感じに食べれるようになってくもんなんだから」

 

「じゃあ次は・・・ミツル!」

 

「オレ!ウルトラマンオーブみたいなヒーローになりたい!」

 

 ヒーローになりたい・・・か。偽物なオレには難しい質問だな。

「・・・夢を諦めなければ、きっと誰かのヒーローになれる」

 

「ありがとう飛影さん!」

 

 子供からの何気ない一言「ありがとう」という言葉にオレは心が満たされるような不思議な感覚になる。人に喜ばれるって・・・案外悪くないかもな。

「飛影さん。これ、プレゼント!」

 

 子供達は全員で1つの段ボールを手渡してくる。その中にはオーブの似顔絵らしきものや、オレっぽい人物を書いた絵が何枚も入っていた。

「ふっ!ありがとなみんな!」

 

「それじゃあまたね飛影さん!」

 

 すでに夕方なのでプレゼントを渡してくれた子供達はそれぞれの家へと帰っていくと、乃理だけが残る。

「お疲れ飛影」

 

「あぁ。マジで疲れた・・。なぁ、1つ聞いていいか?ヒーローってのはそんなにいいものなのか?」

 

 子供達に囲まれて、喜ばれて・・オレはそんな疑問が湧いていた。

「あぁ。当然だ。私も幼い頃からヒーローに憧れていた。それで父や弟に色々と迷惑をかけてしまったものだ。そんなある日、父に言われたんだ。『ヒーローってのは戦うだけじゃなく、地味なことでも誰かのために一生懸命になれる人のこと』だとな。世界には弱い人や困っている人に手を差し伸べてあげることが必要なんだ。私もそんな立派な人間になれたらと『いい女』になることを目標としている」

 

「そうか」

 

 誰かのために一生懸命に・・。それがヒーローなのか。

 

 

 

 

 

 数時間後。円盤へと戻ったオレは再度貰ったものを眺めていた。

「これ・・。オレのつもりか?」

 

 子供達から貰った絵には赤と紫のオーブらしいものと金色の頭に黒い服を着た男が描かれていたものが何枚も入っていた。

「ははっ。どれも似てねぇなぁ」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

 似てない絵に笑っていると同期であり上司であるナックル星人オリガガがやってきたのでオレは慌てて貰ったものを隠した。

「あっ、いや。何でもない。ただの思いだし笑いだ」

 

「まぁ確かにあの戦い方はオーブと似てなかったよな」

 

「そのことじゃねぇっての」

 

 オリガガはテレスドンとの戦いぶりを似てなかったと笑ってくる。確かにまぁオレは戦闘慣れしてないけど。

「なぁオリガガ。・・・いや、何でもない」

 

 誰かの笑顔のために・・・守るために戦うってのも悪くないかもしれない。そう語ろうとしたが侵略連合の1人としてそんなことは許されないと思い、オレはその想いを心の中だけに留めることにした。

 

 

 

 

 

 

 翌日、今日も今日とて子供達と戯れていると惑星侵略連合の円盤が上空に現れた。

「作戦が進んでないことに痺れを切らしてあらわれたのか」

 

 結局あれからオーブの姿で街を破壊しようとしてないので、催促しに来たんだろうな。

「飛影さん!あの円盤をやっつけて!」

 

「あ、あぁ!任せておけ!」

 

 子供達に「任せておけ」と言ってしまったものの、オレは半ば迷いながら彼らの前へと出て両手を空へと広げるように上げた。そして乱反射する光とともにオレはその姿をウルトラマンオーブへと変えた。

『ようやく変身したか。ならばその子供達を踏みつぶせ!』

 

「そ、それは・・・」

 

 ボスからの命令にオレは後ろにいる子供たちへと視線を向ける。子供たちはオレに「頑張れオーブ」と声援を送ってくれていた。

「・・・できません。そんな事出来ません。オレは今、ウルトラマンオーブなんです」

 

 オレは子供たちを傷つけられないとボスにはっきりと告げた。

『お前はニセモノだ!ババルウ星人だろうが!!』

 

「確かにオレは悪の星に生まれた暗黒星人だと思っていました。だけどこいつ等が教えてくれたんです、運命は変えられる。オレだってヒーローになれるって!」

 

 暗黒星人として悪の運命しか辿れないと思っていた。だけど子供たちと接したことで運命は変えられることを・・・道は1つだけではないことを知ることができた。

『貴様などもういらん』

 

 ボスの声と共に円盤から1体の怪獣がオレの前に転送されてきた。あれはミサイル超獣ベロクロン。確かあのジャグラーとかいうやつは怪獣カードを使って怪獣を召喚できるって聞く。きっとオレを処分するためにベロクロンが召喚されたんだろうな。

「・・・ダァァぁっ!!」

 

 子供達を守るため、惑星侵略連合から離反することを決意したオレはベロクロンに殴り掛かろうとする。だけどベロクロンはオレを近づかせる気すらないと言いたげに背中から数発同時にミサイルを放ってきて、その全弾が直撃した。

「がはっ!?・・・」

 

 オレはダメージで片膝をつくも、すぐに立ち上がった。

「おぉぉぉぉっ!!・・ぬわぁっ!?」

 

 再度ベロクロンへと挑もうとすると口から放たれたミサイルの直撃を受けた。

「あでぇ!?」

 

 ミサイルが直撃して背中から倒れたオレはオーブへの変身が解けてしまい、ババルウ星人としての姿に戻ってしまった。

「飛影・・?」

 

「・・・バレちまったな。そうだよ。オレはウルトラマンじゃねぇ。・・・悪の星に生まれたババルウ星人さ。お前達を騙していたんだ。済まねぇな」

 

 正体がバレてしまったオレはオレを信じてくれていた子供たちに謝る。きっとこれでオレは子供達から幻滅されただろうと考えていると・・・

「立ってババルウ!」

 

「頑張れババルウぅぅ!」

 

 予想外なことにまだオレに声援を送ってくれていた。

「どうして・・・オレはニセモノなんだぞ?」

 

「諦めるな飛影!あんたが誰であろうと関係ない!子供達に言ってくれたじゃないか!『夢を追いかければ、いつかはヒーローになれる』って!あんだが私たちに夢を見せてくれたんじゃないか!」

 

 乃理が叫んだ言葉は・・・先日オレが子供に語った言葉だった。そうだ。そうだった。オレがこんなところで諦めたら・・・あいつ等の夢まで裏切ってしまう。

「そうだ。お前の言う通りだ。ここで諦めてたまるかぁぁぁぁ!!」

 

 ヒーローになるという夢を追いかけるため、何より子供たちの夢を守るためにオレは諦めずベロクロンへと立ち向かう。

「本当の勇気ってのを見せてやんよ!おぉぉぉしゃぁぁ!!」

 

 飛んでくるミサイルをギリギリのところで避けつつも前へ前へと進んだオレはベロクロンの懐までたどり着く。

「これでも喰らえッ!!」

 

 そして渾身の頭突きを叩き込むと、ベロクロンはその場に転倒した。

「「「やったぁぁぁ!!」」」

 

「やったな飛影!」

 

「よ、よしっ・・・」

 

 子供達と乃理の声が聞こえてくる。オレも息を切らしながらガッツポーズを取った瞬間・・・

「うわぁぁぁぁっ!!?」

 

 立ち上がったベロクロンが再びオレにミサイルを撃ってきた。不意打ちのミサイルを受けて立ち上げれなくなったオレに対してベルクロンはトドメのミサイルを放とうとしてくる。

「こりゃいよいよ・・・一巻の終わりってやつか」

 

 諦めないって決めたばっかりなのに・・・だっさいなぁオレ。

「あぁ・・。オレはあいつ等にヒーローの背中ってのを見せることができたのかな?」

 

もう避ける事ができないと思っていたミサイルは・・・オレには飛んでこなかった。

「えっ?」

 

 何故ミサイルが飛んでこないのかとベロクロンの方に視線を向けてみると・・・オレとベロクロンの間にはオーブの背中が・・・本物のヒーローの背中があった。

 

 

 

~~ガイ~

「流石にそろそろ行かないとな」

 

 ここまではあいつや乃理の意思を尊重して出ないでいたが、そろそろ助けてやらないと危なさそうなので俺はオーブリングを取り出した。

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ・スカイタイプ!』

 

「マックスさん!」

『ウルトラマンマックス!』

 

「疾風の速さ!頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スカイダッシュマックス!』

 

「デュァッ!!」」

 

 オーブ・スカイダッシュマックスへと姿を変えた俺はミサイルを放とうとしていたベロクロンの懐に入り込んでマクバルトアタックをお見舞いしてやった。

 

 

~~乃理~

 

「オレ・・ここで終わりかぁ・・」

 

 飛影は怪獣にミサイルを撃たれそうになり諦めかけていると、水色のマフラー姿のウルトラマンオーブが現れた。

「デュァッ!!」

 

 ウルトラマンオーブはすぐさまベロクロンの懐に入り込んで1撃を決め込み、ミサイル攻撃を阻んだ。

「本物の・・オーブ・・」

 

「・・・・!」

 

 飛影と目が合ったウルトラマンオーブは「後は任せろ」とでもいうかのように頷くと白い光に包まれた。

 

 

 

~~ガイ~

 新しい力、使わせてもらおう。

「ガイアさん!」

『ウルトラマンガイアV2!』

 

 一つ目に解放したのはミズノエノリュウから受け取った地球が生んだ大地の化身であるウルトラマンガイアさん。その力だ。

「ビクトリーさん!」

『ウルトラマンビクトリー!』

 

 続けて解放したのはホオリンガから託された地底世界の勇者ウルトラマンビクトリーさんの力だ。

「地球の大地の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!フォトンビクトリウム!』

 

 地球の大地を守護する2人の戦士の力をお借りして赤と黒の頑丈なボディと巨大な剛腕を併せ持つ姿、フォトンビクトリウムになった。

「闇を砕いて光を照らせ!!」

 

 

 

~~乃理~

 

「闇を砕いて光を照らせ!!」

 

 白い光から出てきたウルトラマンオーブは赤と黒の硬そうな体に大きな両腕というこれまでの姿とは一線を画す姿となっていた。飛んでくるミサイルに怯まず前へと進んでいくウルトラマンオーブはその剛腕で怪獣を殴りつける。力こそパワーとでもいうようなパンチが直撃した怪獣はその衝撃で地面をゴロゴロと転がった。

「時間はかけない。この一撃で決める!」

 

 両腕にエネルギーを溜めたウルトラマンオーブはその両腕を地面へと叩きつけた。

「フォトリウムナックル!!」

 

 衝撃波によって地面を離れた怪獣にウルトラマンオーブは両腕でのパンチを叩き込んだ。その一撃に耐えきれなかった怪獣はそのまま爆散すると、戦いを終えたウルトラマンオーブは飛影へと振り返った。

「はっはっ・・。超獣をこうもあっさりと・・・。やっぱ本物はすげぇや」

 

 本物のウルトラマンオーブの戦いが終わると、万代先輩は静かに光となっていく。私は子供達と共に飛影の消えた辺りへと向かってみると、ババルウ星人としての姿で腰を押さえていた万代先輩を視界に捉えた。

「飛影!」

 

「・・・・」

 

 声に気づいてこちらを振り向いた万代先輩だったが・・・飛影は何も言わずに去っていこうとする。

「待って・・」

 

「ヒーローは風のように去っていくんだろ?行かせてやれ。あいつにヒーローを貫かせてやれ」

 

 いつの間にかすぐ横に立っていたガイは万代先輩を呼び止めようとする私にそう告げてくる。

「飛影。・・・ありがとう!」

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

 私に続いて子供たちも飛影にお礼を告げると・・・飛影はゆっくりと透明になってこの場から姿を消した。

 

 

 

~~ガイ~

 

 俺の偽物だというのに子供達を守るため侵略者と戦ったヒーロー、ババルウ星人が姿を眩ませた翌日。俺と乃理は公園でラムネを飲んでいた。

「なぁガイ。飛影は何処に行ったと思う?」

 

「そりゃぁまぁ・・」

 

 この宇宙の何処かにはいるだろうと答えてやろうとすると、公園の清掃員が俺達の方に視線を向けていたことに気がついた。髪のいろこそ黒になっているが、あの顔はあいつが人間に姿を変えていた時の・・・。

「なるほど。そういうことか・・」

 

「ん?何がそういうことなんだ?」

 

「いやまぁ・・。ヒーローってのは、案外近くにいるのかもしれないなって思ってな」

 

 きっとまたいつか会えるだろうよ。自身の運命を変えたあの子供達のヒーローとな。

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンガイアV2
属性・土属性

 地球が生んだ赤き大地の巨人ウルトラマンガイアさん。その姿は海の巨人であるアグルさんから受け取った力でVersion2へと強化されたガイアさんだ。復活したアグルさんや仲間とともに地球の命を守り抜いたんだ。

ミズノエノリュウ
属性・光属性

 地帝大怪獣ミズノエノリュウ。大地の守護神として祀られている龍で地球を守るためガイアさんと共に戦ったこともあるんだ。この宇宙にはいない存在で、ガイアさんの力を渡してくれるためにわざわざ別の宇宙にある地球から来てくださったんだ。

次回「ジャグラー死す」

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