ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 今後のフュージョンファイトによってストリウムギャラクシーの見た目と口上には変更があるかもしれませんが、フュージョンアップ時のコールとオリジナル技はそのままにします。


本当の声

~~久遠~

 

 スラン星人の事件から1週間が経過した。あれから怪獣や宇宙人が暴れたという事件は発生していないけど、ニュースやネットではある怪獣が話題を攫っていた。

「今日もTVに出るのかな?」

 

 TVへと視線を向けると今、話題になっている村がちょうど映っていた。

『只今私は噂の動かない怪獣がいるという坂根村へと来ています。あっ!いました!ホオリンガです!』

 

 噂の怪獣。それはホオリンガと呼ばれる動こうとしない怪獣だ。見た目はなんというか植物っぽくて口にあたる部分は花のようになっている。

『このホオリンガ、研究者たちによると動物というよりは植物に近いようで光合成によって作り上げた栄養を周囲の大地に分け与えていることが判明しています。そして今回入って来た新情報によると・・・なんとこのホオリンガ。栄養をすべて与えきると山に変わってしまうことが判明したのです』

 

「えっ?山に?音々、どういうことかな?」

 

 女性レポーターの発言に驚いた私は音々に尋ねてみる。太平風土記やガイからの情報などで以前よりも怪獣知識が増えたし、もしかしたら知っているかもと思ったからだ。

「太平風土記には『火遠理蛾現す時、其ノ姿山と也大地を豊にせん』と記されてるのです。・・・つまりホオリンガは自身を山にして土地を豊かにする怪獣なのですよ」

 

 ほ、本当に山になる怪獣なんだ。

「ホオリンガは複数の文献に逸話が記されていて、現存する幾つかの文献を照らし合わせて推測するに、おそらくあのホオリンガという怪獣は死期を悟ると自身の栄養を周囲の土壌に与えて、その過程が終了すると身体を山に変えて完全に自然の一部となる怪獣だと思われるのです」

 

「なるほど。つまり土地を豊かにする怪獣なんだね。それにしても怪獣にも色々なのがいるんだね」

 

「そりゃそうだ。地球には870万種類以上の生物がいるように、この宇宙には数え切れないほどの種類の怪獣がいるんだ。怪獣が人間を襲うだけの危険な奴らって考えるのは大間違いだぜ。もしそんな奴らばっかりだったらそもそも人間が地上にいられないだろ?」

 

 カウンター席でホットケーキを食べていたガイは会話に入ってくる。

「じゃあなんで怪獣は普段姿を隠しているの?」

 

「ただ歩いてるだけで攻撃してくる生物がいるところにわざわざ自分から姿を現すか?」

 

「「「・・・・・」」」

 

 ガイの言う通り・・・。確かに人間は怪獣を見るなり『敵』と認識して真っ先に攻撃を仕掛けているかもしれない。私達が怪獣を怖がるように、怪獣も私達を怖がっているんだ。

「この地球には人間や怪獣も含めてたくさんの異なる生物がいる。共に生きるってのは簡単なことじゃないんだ。言葉は通じなくても、想いは通じる時もある。同じ大地で生きてるんだ。自然を守りたい大事にしたいって気持ちは通じ合えるやつもいるってことだ」

 

 気持ちは通じ合える・・か。

「・・・さてと!それじゃホオリンガに会いに行ってみるとするか!!」

 

 徹さんはシリアスめな話題を終了させるようにそう告げてくる。最初から現地に赴く気満々だったようかな。

「そうだね。それじゃSSP、出動!」

 

「「「おぉ~~~!」」」

 

 こうして私達はホオリンガのいる坂根村へと向かうことになった。

 

 

 

~~音々~

 

「来てしまったのです。坂根村」

 

 翌日、私達は新幹線や電車を乗り継いで坂根村へとやってきたのです。私と兄さん。そしてガイさんに久遠さんのメンバーで。乃理さんと扇さんは現地であるここで合流する手はずなのです。それは問題ではありません。問題なのは・・・

「取材経費扱いなので・・・6人分は結構響くのですよ」

 

 ガイさんを説得して1日30個限定ということでプリンを売り出したので以前よりは経営はマシなのですが・・・帰りのことも考えるとキツイのですよ。

「これはシュークリームも売り出すしかないのです」

 

 持ち帰り可能にすればもっと利益が得られるはず。そうと決まればさっそくガイさんを説得するのです!

「ガイさ・・ん?」

 

 後ろを振り返るとさっきまでいたはずのガイさんの姿がなかったのです。

「ガイならさっきあそこの出店のほうに向かったよ」

 

 あの人はいつも気がつけばいなくなってるのです。・・・そして何か食べてるのです。

「そう言えばガイっていつも色々食べてるけど、あのお金ってどうしてるのかな?」

 

「なんでも旅で手に入れた骨董品や古いお金を換金して収入源にしているらしいのです」

 

 どうやらガイさんは『専門家』であっても博士号は持っていないようで、怪獣を研究して収入を稼いでるのではないようなのです。だけどよく質に入れたり換金するだけであちこちを旅できるほどの収入を得られていると思うのですよ。

「それにしてもあれだね・・・。ホオリンガを観にやってきた人が私達以外にも結構いるね」

 

「ですね。村の人達もホオリンガで村おこしをしようと色々グッズを売ったりしてるようなのです」

 

 ホオリンガを模ったクッキーやまんじゅうと言った食べ物の他にも、ぬいぐるみやキーホルダーまで売られている始末。ホオリンガが姿を現してから1~2週間ほどしか経っていないというのに大したものなのです。

「それだけ村おこしに必死ということだ」

 

 声に反応して振り向いてみると、そこには乃理さんと扇さんがいたのです。

「お久しぶりなのです乃理さん。扇さん」

 

「えぇ。お久しぶりですね音々さん、白神さん」

 

「やっぱりお前達のほうが先に着いてたんだな」

 

「えぇ。とは言っても僕達が着いたのも2時間ほど前なのですがね。ホオリンガを幾つかの角度から何枚か撮影しました。これがその撮影データです」

 

 扇さんは兄さんにメモリーカードを手渡したのです。

「ビデオカメラも左右に1つづつ設置してきたのですが・・・あまり期待しないでくださいね」

 

「どうしてかな?」

 

「動かない怪獣と言われるホオリンガですからね。動画を撮りに来た人たちに話を聞いてみたところ、やはりほとんど動きはないようです。はっきり言って映像としてはやや面白味にかけるかと。ですがまるっきり動かないというわけでもなく意思はきちんとあるようで、機嫌が良い時にはこちらが手を振ったりすると触手の部分を動かして反応したりするようですよ」

 

 扇さんは予め映像に面白味がないかもしれないことを報告してきたのです。たしかに基本動かない怪獣の動画を長々と映していても面白味はないですよね。

「だけれど面白味がないとは言っても、貴重な映像資料なのです。それにもうじきホオリンガが栄養を分け与える役目を終えて山へと変わる時期だと思いますし、ここにやってきている研究員の皆さんやカメラマンさん方はその瞬間を収めようとしてる人達ばかりだと思うのですよ」

 

「まぁウチとしてもその瞬間はしっかりと収めたいからな。ビデオカメラはそのままに交代でいつでも撮影可能な体勢は取っておくぞ」

 

 兄さんの指示で兄さん・乃理さん・扇さんが交代でホオリンガの撮影をすることになったのです。私はデータの管理もあるし、久遠さんは正規のメンバーではないので手伝わせることはできない兄さんなりの配慮なのです。

「データといえば・・・そろそろガイさんに戻って来てほしいのです」

 

 歩く怪獣図鑑なガイさんも知識としてホオリンガを知っているだけなようで、直に見るのは初めてだと言っていたのに・・いったいどこに行ってしまったのです?

「はぁ・・。はやく買い食いから戻ってきてほしいのですよ・・」

 

 

~~ガイ~

 

「へっくしゅん!?・・・少し冷えてきたな。そんじゃ次は何を食うかなっと。出来れば温かいものがいいが・・」

 

焼きそばから始まり、さつま芋のスティックやイカ焼きなどを食べた。ホオリンガで村おこしをしているからか出店もそれなりに多く、もはやちょっとした祭り状態だ。出店ってのは同じものでも作る人によって味やデザインが違ったりするから面白いもんだよな。

「ん?」

 

 神社の辺りから青い触手のようなものがウネウネと動いているのが見えた。俺は気になってそこに向かってみた。

「これは・・・ホオリンガの根か」

 

 それは地中から伸びているホオリンガの根にあたる部分だった。こんなところにまで伸びているなんてな。

「ホオリンガ・・・その人なの?」

 

「ん?」

 

 少女の声が聞こえたので振り向いてみると、14~5歳ぐらいだと思う小柄な少女が立っていた。

「・・・貴方がウルトラマンオーブなのね」

 

「なっ・・!?」

 

 何で俺がオーブだなんて分かったんだ?

「ホオリンガが教えてくれた。貴方がウルトラマンだって」

 

「ホオリンガが?・・・どういうことだ?」

 

「私には分かるの。怪獣たちの声が・・」

 

 怪獣の声が分かるだと・・。

「君は?この村の娘か?」

 

「私は睦美(ムツミ)。ホオリンガの声を聞くために3日前にこの村に来たの」

 

 俺は睦美から話を聞いた。どうやら睦美は本人にもよく分からないが怪獣の声・・・正確には怪獣の心の声が分かる能力的なものがあるらしい。それは睦美の家系の女性が一世代に1人と受け継いできたものだとざっくりと説明された。

「まぁ・・・だいたい分かった。でも中学生がわざわざホオリンガの声を聞くために1人でここまでくるとは・・・よく親御さんが許してくれたな」

 

「お父さんもお母さんも声が聞こえることは知ってるから。それにお姉ちゃんだってわりと自由に生きてるし・・・」

 

「ん、お前姉さんがいるのか」

 

「うん。今は1人暮らしをしてて大学に通ってる。お父さんは仕事でパリにいるし、お母さんも仕事で滅多に日本に帰ってこれないから私は叔母さんのところに住んでるの」

 

 何だか踏み入った話になっちまったな。やっぱり寂しいからか誰かに愚痴を言いたいんだろうな。

「叔母さんも怪獣の声が聞こえる人で今回ここにくることはあっさりと許可してくれた。叔母さんは『本当の声を分かってあげて』って言ってた。ねぇ、ウルトラマン・・・本当の声ってどういうこと?心の声とは違うの?」

 

「それは誰かに聞くんじゃなくて、お前自身で見つけないといけない答えだと思うぜ。1つアドバイスをするなら・・・聞こえる声だけが『声』じゃない。ってことだ」

 

「・・・よく分からない」

 

 ちょっと難しかったかもしれないが・・・きっと分かる日がくるだろ。

「何か聞こえる。だんだん近づいてくる。・・・ホオリンガじゃない別の声が・・」

 

「別の声?」

 

「来る・・・っ!」

 

 睦美が空を見上げた途端、紫色の光とともに大地が大きく揺れた。そこにはホオリンガとはまた違った植物型のものが着地していた。

「よりにもよってスペースビーストか・・」

 

 スペースビースト。それは宇宙から飛来し、他の生物を捕食することで進化する危険な怪獣だ。見た目から察するにあれは植物型ビーストのラフレイアってのだろうな。

「何あれ?攻撃と食べる事しか考えていない・・っ」

 

「おっと・・。あいつの声はそれ以上聞かないほうがいいぞ」

 

 ラフレイアの声を聞いてしまった睦美は恐怖で身体を震わせる。心の声が聞こえる睦美にはスペースビーストの声はある意味毒とも言えるな。

「・・・あの怪獣。ホオリンガを食べようとしてる。お願いウルトラマン!ホオリンガを守ってあげて!」

 

「あぁ。ホオリンガもこの村も俺が必ず守る!睦美、ここは危ないから離れてろ」

 

「ホオリンガ。怖がっている。だから私が傍にいてあげないと」

 

 睦美は怖がっているホオリンガを安心させるように両手で根をギュッと握りしめる。ラフレイアの心の声を聞いてしまった睦美もあいつは怖いだろうに強がりやがって。

「・・・分かった。早めに倒してくる」

 

 そう睦美に告げた俺はオーブリングを取り出す。

「タロウさん!」

『ウルトラマンタロウ!』

 

「メビウスさん!」

『ウルトラマンメビウス!』

 

「熱いヤツ、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!バーンマイト!』

 

 オーブ・バーンマイトへと変身した俺はラフレイアとホオリンガの間に割って入った。

 

 

~~久遠~

 

「シャァッ!紅に燃えるぜ!」

 

 ホオリンガの正面に大きな黄色い花を咲かせている植物っぽい怪獣が空から降って来たかと思えば、赤いオーブがホオリンガを守るように現れた。

「ドォラぁっ!!」

 

 右拳に炎を灯したオーブはそのまま振って来た方の植物っぽい怪獣を殴りつけた。するとその植物っぽい怪獣は花弁から花粉のようなものをばら撒き出した。

「ストビュゥゥゥム・・バァァァスト!!!」

 

 オーブはその花粉を火球でその大半を焼き尽くした。

「なんで花粉を燃やしたのかな?」

 

「うおっ!?何だこれは!?」

 

 乃理は微かに落ちてきた花粉を採取しようと落ちた場所を確認すると・・・それが付着した木が炭化していたことに気づいた。

「これは・・・」

 

「姉上、危険なので触ってはいけませんよ」

 

「わ、分かっている!」

 

 乃理。今、触ろうとしてたよね。

「なるほど。付着したものを炭化してしまう花粉ですか。確かに他の何かに触れてしまう前に焼き尽くすのが正解なのです」

 

「確かに正解だとは思うが・・・あれがもっとばら撒かれるとヤバいな」

 

 徹さんの言う通りだ。幸い人には当たってないようだけど、もしこれが人体に触れたら本当に危ないかも・・。

「なんだかいつもより気合いが入ってるように見えるな」

 

「当然なのです。村の人だけじゃなく私達も含めてホオリンガを人目見たいという人やカメラマンさんが大勢いるのです。それに加えてオーブはホオリンガも守ろうとしているのですから!」

 

 植物っぽい怪獣から見て、的が小さい私達はともかく同サイズのホオリンガは狙うには充分な大きさかな。なんだか植物っぽい怪獣は最初からホオリンガ狙いなように見えるし・・・戦闘が長引くのは良くないかな。

「頑張って・・オーブ」

 

 オーブの勝利を信じて声援を送ろうとした途端、オーブは赤い姿から紫の姿へと変わった。

 

 

 

~~ガイ~

 

 さてとどうしたものか。あの花粉を村やホオリンガに触れさせるわけにはいかない。まずは花粉が広がらないようにしないとな。

「お前にホオリンガは食わせやしないぜ。ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

「闇を照らして、悪を撃つ!」

 

 オーブ・スぺシウムゼぺリオンに姿を変えた俺は片手で光線を放ち、それを両手で広げる。

「シャットダウンプロテクト・・」

 

 そしてシャットダウンプロテクトでラフレイアを包み込む。これで花粉が広がることはないはずだ。

「このまま決めるぜ!タロウさん!」

『ウルトラマンタロウ!』

 

「マックスさん!」

『ウルトラマンマックス!』

 

「強さの高み!お願いします!」

『フュージョンアップ!』

『ウルトラマンオーブ!ストリウムギャラクシー!』

 

「未来を掴むは想いの強さ」

 

 

 

~~久遠~

「未来を掴むは想いの強さ」

 

 紫の姿でもう1体の植物っぽい怪獣をバリアで包み込んだオーブは赤と銀の姿に変わると頭の上で両手を×字にし、それを胸の辺りへと下げて虹色に輝く光線を放った。

「マクストリウムカノン!!」

 

 その虹色に輝く光線はバリアを貫いて植物っぽい怪獣に直撃する。バリアの中で爆発した植物っぽい怪獣からはさっきの花粉が飛び散るも、バリアの中でその花粉が焼き尽くされて周囲への被害はなかった。

「・・・シュゥゥワッチ!!」

 

 オーブはホオリンガに怪我がないことを確認すると空へと飛び去っていく。

「ひぇ~~。助かったぁ」

 

 村長っぽい人は助かったことに一安心しているとホオリンガが手を振るように触手を大きく振った。

「あっ!ホオリンガが手を振ってくれてるぞ!お~い!」

 

 乃理はそれに対して手を振り返した次の瞬間・・・その触手は力尽きるように地面に落下した。

 

 

~~ガイ~

 

「ふぅ。お仕事終了っと・・・。大丈夫だったか?」

 

 オーブから人間体に戻った俺は神社へと戻るとホオリンガの根を軽く撫でる。すると睦美が近づいてきた。

「ホオリンガを助けてくれてありがとう。・・・ホオリンガがお礼をしたいって言ってる」

 

 ホオリンガの声を聴いた睦美はその根を両手で握る。するとその手に『光』が集まった。

「これを貴方にって・・ホオリンガが」

 

 俺は睦美からその『光』を受け取るとそれは1枚のカードになる。

「ビクトリーさん・・」

 

 それは地底世界を守護するビクトリアンの勇者。ウルトラマンビクトリーさんのカードだった。いったいどうしてホオリンガがビクトリーさんの力を?

「ホオリンガは前にもウルトラマンに助けられて、その時に大地の力を分けてもらったらしいの。それはその力って言ってる」

 

 大地の勇者ともいえるビクトリーさんだからこそ大地を豊かにするホオリンガを守るのはある意味当然か。

「でもいいのか?この力を俺に渡すって事は・・・ホオリンガは・・」

 

 助けてもらったことから察するに、栄養を分け切った今現在のホオリンガを維持している力はビクトリーさんの力のおかげということになる。そのビクトリーさんの力を俺に託すって事は残っているエネルギーを俺に渡すってことだ。つまりホオリンガはもう山へと変わることを意味する。

「分かってる。山になるんだよね。けれどホオリンガが死んじゃうわけじゃない。山になって生き続ける。1つの命が多くの命に繋がっていくから」

 

 睦美はそう言いながらも俺に顔を見せないように背を向ける。別に見ようとしたわけじゃないが・・目から涙を流しているのが見えた。

「・・・そうだな。共に生きるってのは・・・命を繋げていくことだもんな」

 

 強がっている睦美の意思を尊重した俺は受け取ったビクトリーさんのカードを片手にもう1度ホオリンガを撫でる。

「ありがとな」

 

 ホオリンガにそうお礼を告げると・・・そこにホオリンガの触手は既になく、見上げれば見えた不動怪獣は緑豊かな1つの山へとその姿を変えていた。

「ホオリンガの声・・また聞こえた」

 

「・・・なんて言ってた?」

 

 もう既に『怪獣』ではなく山となったはずなのに、睦美には声が聞こえたらしい。

「一言だけ・・。友達って・・」

 

「そうか・・。きっとそれがホオリンガの本当の声だと思うぜ」

 

「でも一緒だったのはたった3日で・・・私は大したことなんてしてない。ホオリンガの言ってたことを伝えただけだよ。それだけで・・」

 

 こちらを振り向いた睦美は涙を両手で拭う。

「何言ってんだ。お前はホオリンガの心の声を聞くためにこの村にやってきてくれた。そして心の声を言葉にしてくれた。俺にホオリンガを守ってほしいって言ってあげた。そして今、ホオリンガのために涙を流してくれている。あいつにとってはそれが嬉しかったんだろ」

 

 怪獣のために涙を流してやれるやつは決して多くない。ホオリンガはそんな人間に出会えたことが嬉しかったんだと・・・心の声が聞こえない俺にも分かる。

「こういうことだったんだね。本当の声って・・。ようやく私にも分かってきた気がする。ありがとうウルトラマン。それと・・・」

 

 俺にお礼を言った睦美はホオリンガが変化した山を見上げる。

「これからも友達だよ。ホオリンガ」

 

 睦美に『友達』と呼ばれた山はそれに返事をするかのように草木を揺らした。

「さてと・・・そろそろ奴らのところに戻るか」

 

「もう行っちゃうの?」

 

「どうせ地球は丸いんだ。きっとまたいつか会えるだろ。・・・っと、そう言えば言い忘れてた。俺はガイ。白金ガイだ」

 

 ずっと『ウルトラマン』と呼ばれ続けていたので別れの最後に俺の名を名乗る。

「うん、またね。ガイ」

 

「あぁ。また何処かで会おうぜ」

 

 まさかのこ時は怪獣の声が聞こえるという不思議な少女・・睦美が『あいつ』の妹だなんて思いもしていなかった。

 

 




ウルトラヒーロー大研究

ウルトラマンビクトリー
属性・土属性

 地底世界の勇者ウルトラマンビクトリーさん。その最大の特徴はスパークドールズとなっている怪獣の力をお借りして右腕を怪獣の身体の一部に変化させ、自らの武器として戦えることだ。相棒だったシェパードンの力を宿すシェパードンセイバーは彼の切り札とも言える聖剣だ。

ホオリンガ
属性・土属性

 坂根村に現れた不動怪獣ホオリンガ。怪獣というよりは植物に近い存在で、動かないのは自身の栄養を周囲の大地へと与えてるからなんだ。栄養を与え終えたホオリンガはその身体を新しい命となる山へと姿を変える儚い怪獣だ。その性質のため身体の栄養は多く、ラフレイアに狙われてしまった。

次回「ニセモノのブルース」

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