ウルトラマンオーブ 天かける星の祈り歌   作:彩花乃茶

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 これまでは仮面ライダーシリーズを投稿していましたが3作目はウルトラマンを投稿していこうと思います。


償いの旅人

~~???~

 

 あの日俺は全てを失った。俺を支えてくれた全てを・・。守りたかった場所を守れず・・。守りたかった人を守れず、俺は自分自身の力をも失った。残されたものは守りたいものと力を失ってしまった『俺』という存在と『力』を宿す2枚のカードのみ。

 

 それでも俺は前へと進むしかなかった。彼女と誓った約束のために。・・・それが彼女を救うことができなかった俺ができる・・・唯一の罪滅ぼしだから・・。

 

 

 

 

~~久遠~

 

「さぁて、今度はどこの店に挑戦しようかな~?」

 

 私の名前は白神久遠(しらかみくおん)。この春から近くの大学へと通い出した18歳。特技はお父様の組織の人達から教わったCQCで好きなものはお風呂というごく普通の少女だ。悔しくも大学デビューに失敗した私はこの6月までに友達と呼べる人が増えることもなく、今日も1人大食い店に挑みかかろうと歩みを進めていた。

「あの長めのポニーテール。あ、あれが噂の禍神・・」

 

 誰が禍々しい神なのかな?誰が言い出したかは分からないけど随分と不名誉なあだ名をつけてくれて。私の苗字は白神なのに・・。

「あの細めの身体、いったいあの身体の何処にあんな量の食べ物が消えているんだ?」

 

「ごちそうさま~!」

 

 数分でメガ盛り炒飯を食べ終えた私は店を後にするとスマホの地図を確認する。

「ここから近いのは駅の近くかぁ。財布は大丈夫。ついでにお腹も余裕があるし、もう1件行こうかな?」

 

「待ちな」

 

 私が次の店へと向かおうとすると焼き鳥屋から出てきた黒いコートを着た男性が私を呼び止めた。

「どうかしたのかな?」

 

「早くここから離れた方がいいぞ。そろそろ悪魔の風が吹く」

 

 焼き鳥を食べながらそう告げてきたその人の視線の先には今にも一雨来そうな黒い雲が立ち込めていた。

「あの雲、確かに一雨来そうね。なんだか今にもまた竜巻が起きちゃいそう・・。教えてくれてありが・・・あれ?」

 

 お礼を言おうと彼に再び振り向くも・・・既に彼はこの場から姿を消していた。

「随分と去っていくのが早いかな」

 

 まぁ、彼も傘を持ってなかったようだし急ぐのは当然かも・・。私も傘を持ってないし、急がないと・・

「っ!」

 

 雨が降る前に家路を急ごうとすると強い光の後に轟音が鳴り響く。雷だ。

「きゃっ!?」

 

 雷だけじゃない。だんだんと風が強くなってきている。いや、これはもう竜巻になってしまってる。

「くぅ・・っ!いきなりすぎるかなっ・・」

 

今にも飛ばされてしまいそうな強風に飛ばされまいと私は近くの標識を両手で掴む。数分前まで快晴だったとは思えない荒れ様。そんなのが連続して巻き起こっている。とてもじゃないけど普通とは思えないかな。

 

 そう考えていた瞬間・・・何か巨大な影が空を横切った。

「えっ?」

 

 鳥のようにも見えた。だけどさっきのが本当に鳥だとしたらあまりにも大きすぎる。できることなら上を見て確認したいけど・・・この強風の中、空を見上げるのはちょっと難しいかな。

「ギャオォォォォォォォォ!!」

 

「えっ・・?」

 

 何処からともなく聞こえてきた鳴き声のような轟音に反応してしまった私は標識を掴んでいる手を緩めてしまい強風に攫われて空へと浮かび上がってしまう。

「~~~~~~っ!?」

 

 思わず声にならない悲鳴を上げていると、同じく強風によって飛ばされた車がこちらへと迫って来た。

「これは本当に・・・大ピンチかな」

 

 車は直撃コース。もし奇跡的に回避できたとしても十数回建てのビルと同じぐらいの高さまで飛ばされているから落下コースは避けられない。

「お父様。お母様・・・。先立つ不孝をお許しください・・」

 

「おいおい。まだ生きることを諦めるなよ」

 

「え・・・?」

 

 吹き荒れる風の中、聞こえてきた声とともに竹串が飛んでくる。その竹串は車のタイヤに突き刺さり、その穴から空気が漏れたことで僅かに車の軌道が変わったようで私は車にぶつかることはなかった。

「っと・・。だからとっとと離れろって言っただろ」

 

「貴方、さっきの・・」

 

 私をお姫様だっこしてくれたのは先ほど忠告をしてくれた焼き鳥を食べていた人だった。

「さてと・・・。下がるから目を瞑ってな」

 

「え?・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 竜巻の外へと出た後、上空へと飛ばされていたものはどうなるのか。答えは簡単。・・・そう、落ちる。地球に重力があるかぎり地上へと落下する。さっき考えていた通り、落下コースだ。それに怯えた私は目を強く閉じた。

「ってあれ?無事?」

 

 数十メートルの高さから落下したはずなのに・・・私と彼は生きていた。怪我も私はともかく彼にも一切ない。つまり怪我なく見事着地したということになる。

「ありが・・」

 

「ギャオォォォォ!!」

 

 お礼を伝えようとするとまたも鳴き声が響き渡る。私達はその鳴き声の聞こえた空を見ると・・・そこには青い巨大な鳥のような怪獣がいた。

「風の魔王獣、マガバッサーか・・」

 

「風の魔王獣?それっていったい?」

 

 それを聞くよりも前に彼が目の前からいなくなったかと思うと・・・マガバッサーと呼ばれていた怪獣に突如として現れた光り輝く巨人が近づいてきた。

「何・・・あれ?」

 

光り輝く巨人はマガバッサーのくちばしを右手で掴みつつも左手で打撃を与える。そしてマガバッサーが怯んだ隙に光の巨人はそれを掴んだまま大空高く飛び上がって、飛び去って行ってしまった。

「な・・。なんだったのかな・・?」

 

 飛び去って行った直後に竜巻は収まり、雲が晴れる。マガバッサーという怪獣にあの光の巨人。私はまるで夢や幻を見たような気分となりかけるも・・・竜巻によって壊されたビルなどの建物が視界に映り、そんなものではないことを受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マガバッサー・・マガバッサー・・っと・・」

 

 竜巻の被害を受けていなかったアパートに帰宅後。私はネットでマガバッサーについて何か情報がないかを調べていた。

「・・・駄目。全然出てこないかな」

 

 『マガバッサー』というキーワードでは全然それらしいものが出てこない。まぁ確かにあんな怪獣が簡単に検索できるようだったら、世界中大混乱だけれど。

「少なくとも私じゃ調べられないかな・・」

 

 となるとお父様の職場の人に調べてもらおうかな。でもお父様の組織の人達もマガバッサーの事態で動いているはずだし。忙しくて頼めないかも。

「・・・そうだ!前に話で聞いたSSPってのを頼ってみようかな!」

 

 サムシングサーチピープル。通称SSP。世界のミステリーや怪奇現象を解明するための活動をする私設の調査チームでその事務所がこのアパートから近いことを以前友人から聞いたことがある。ひとまずはそちらを頼ってみることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思い立ったが吉日ということで翌日の日曜日に私はさっそくSSPの事務所があるという住所へと向かってみると・・・

「あれ?住所はここなはずだよね?」

 

 そこにはSSPという看板はなく、『トリコリ』という喫茶店があった。

「もしかして無くなっちゃったのかな?」

 

 確認するためにも店員さんに話を聞くことを決意して扉を開ける。

「いらっしゃいませなのです。こちらへどうぞです」

 

 中へと入ると15~6歳ぐらいの小柄な少女ウェイトレスが席へと案内してくれた。

「メニューはこちらに・・」

 

「あの、ここって住所だとSSPってところだったはずなんだけど・・・」

 

「え!?まさかそっちの客なのですか!?」

 

 なんか凄い驚かれた。

「そっちのお客だなんて今年初めてなのです。お兄様~~SSPのほうにお客様で~す!」

 

「何だと!!?すぐ行く!!」

 

 店の奥からドタドタと足音が近づいてくると・・・20代半ばぐらいのボサボサとした髪の男性がやってきた。

「悪ぃな。滅多にそっちの客がこないから油断してたぜ」

 

「奥で寝てるのなら喫茶店の方を手伝うのです」

 

 ウェイトレスの少女は兄と呼んだその男性に呆れたような視線を向けるも、その視線を気にする気のない男性は話を続ける。

「俺はSSPリーダーの大石徹(おおいしとおる)。そっちのウェイトレスが妹の音々(ねね)だ」

 

「よろしくです」

 

「私は白神久遠。こちらこそよろしく」

 

 自己紹介されたのでこちらもあいさつをすると音々は店の奥に何かを取りに行った。戻ってきた音々の両腕の間にはノートパソコンが見えた。

「まぁ、このタイミングでSSPの客として来たってことはあの竜巻。正確にはその中にいたっていうドでかい鳥のことだろ?」

 

「お見通しかな・・」

 

 さすがSSPというべきか、どうやら竜巻の中にマガバッサーがいたことを知っていたようだ。私は昨日竜巻に吹き上げられた時にマガバッサーに遭遇し、光の巨人を見たことを2人に話した。

「なるほどなぁ。マガバッサーと戦う光の巨人かぁ・・」

 

「マガバッサーという巨大な鳥の方は目撃者多数でTwitterにも写真がありましたが、光の巨人の方は初耳なのです」

 

 音々は驚いた表情を見せつつもノートパソコンを起動して画像フォルダをクリックする。

「ネットどころか様々な資料を探っても見つからず、偶然開いた太平風土記で見つけたのです」

 

 そう言いながら音々はノートパソコンの画面に古い文献の1ページを写し出す。そのページには確かに私の見たマガバッサーらしい青い鳥らしいものが描かれていた。

「このページにはこう書かれているのです。『空高く翼舞うもの、禍翼来たりて嵐呼び、地上のすべてを滅ぼさん』と・・。事実、先日のマガバッサー出現時には世界で同時に7つもの巨大な竜巻が発生して大きな被害が出ているのです」

 

「知ってるよ!バタフライ効果ってやつだね」

 

 バタフライ効果。地球環境は密接に結びついていて、小さな蝶の羽ばたきが地球の反対側で巨大なハリケーンを起こすという考え方のことだ。

「つまり音々はあのマガバッサーってドでかい鳥が出たのが原因でバタフライ効果が発生して、地球上のあらゆるところで竜巻が発生したって言いたいのか?」

 

「はいです」

 

 徹さんの言葉に音々が頷く。すると徹はフムと右手を顎に当てながら少し考える。

「・・・何処にいても危ないが1人でここに残すよりはマシか。本日の喫茶店の営業は終了だ。音々も一緒に来い」

 

「は、はいです!」

 

 音々が内心怯えていたことを見抜いていた徹さんは音々にも一緒に付いてくるように告げると、音々は安堵した表情で頷いた。

「さてと、木村は今日休みで扇と乃理は里帰り中だから・・・やっぱり俺が撮影か」

 

「撮影は私がやるので運転はよろしくです」

 

「あいよ。・・・とまぁ、俺達2人でマガバッサーの調査に行ってくるが・・・あんたはどうする?」

 

「え?2人?てっきり私も一緒に行くものだと思っていたけど・・」

 

「依頼人を危険なところに連れてくのはさすがにとは思うから念のために聞いておこうと思ったんだが・・・やっぱり同行する気満々だったか」

 

 徹さんはため息をつくと「しょうがない」と言いたげにこちらに視線を向ける。

「まぁ、あんたみたいなのは一緒には連れてけないっていうと1人でも向かうんだろうし・・・1人よかだったら俺達との方が安全だよな」

 

 なんか今日初対面なのにだいぶ見透かされてるなぁ。まぁ、確かに1人でも言ってたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、私達はだんだんと雲行きが怪しくなってきた場所から少し離れた場所へと到着した。

「音々、あれだと思うか?」

 

「目撃情報にあった雲のサイズ的にあそこにマガバッサーがいる可能性は充分にあるのです」

 

 音々はタブレットに写している画像と空の雲を見比べる。すると段々と風が強くなり始めた。

「きゃっ?」

 

「っと・・」

 

 私は強風のせいで倒れそうになってしまうと後ろを通りかかった黒いスーツに黒いワイシャツ、赤いネクタイの少し怖い雰囲気の男性にぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい!」

 

「いえいえ、お怪我はありませんか?」

 

「だ、大丈夫です。きゃっ・・・」

 

 男性は私の方を心配してくれたので大丈夫なことを伝えた瞬間に思わず目を瞑ってしまうほどの強い風が吹き荒れる。

「あれ?」

 

 風のせいで目を瞑った一瞬のうちにその男性はいなくなってしまったと思いきや・・・かわりに空からとんでもないものがやってきた。

「ギャオォォォォォぉ!!!」

 

 空の魔王獣、マガバッサーだ。

「まさか本当にこの目で怪獣を視れることになるとはな・・」

 

 徹さんはビデオカメラをマガバッサーへと向けて撮影を開始する。その背に隠れるようにしている音々も風圧測定器で観測をしている。

「私もなにかできることは・・」

 

 私だけ何もしないのはいけないと思い、何かできることはないかと周囲を見渡してみる。すると風で倒れてきた木がこちらへと倒れてきた。

「おいおい、なんでまた危ないところにいるんだよ」

 

 何処かで聞き覚えのある声が聞こえたかと思った瞬間、倒れてきた木へと何者かが跳び蹴りを決め込んで倒れる位置をずらした。

「貴方は・・昨日の・・」

 

 倒れる位置がずらされたおかげで無事だった私は木に跳び蹴りをしたその人へと視線を向ける。そこには昨日私を助けてくれた黒いコートの彼がいた。

「そろそろここから離れた方がいいぜ。あいつを撮影するのは勝手だが、命あってのもんだろ」

 

「・・・確かにここらが引き時だな。2人とも、そろそろここを離れるぞ。あんちゃんも早く・・・ん?」

 

 徹さんは彼の言う通りここが引き時だと判断してこの場を離れようとすると・・・またも彼は姿を眩ませていた。

「あれ・・・これは?」

 

 その場に1つ、ハーモニカのようなものを残して・・。

 

 

 

 

 

~~???~

「ここら辺ならいいか・・」

 

証明写真機の中へと入った俺はコートの内側から輪のようになっているアイテム、オーブリングを取り出すと俺の周囲に宇宙のような特殊空間が広がる。そして腰のホルダーから取り出したカードをオーブリングにリードして、そのカードに宿る力を解放する。

「ウルトラマンさん!」

『ウルトラマン!』

 

 解放された力が人型の形となる。記録上最初に地球に舞い降りたとされる光の巨人。ウルトラマンさんだ。

「ティガさん!」

『ウルトラマンティガ!』

 

 そして2枚目のカード。古の時代より守護神として人々を守る光の巨人。ウルトラマンティガさん。

「光の力!お借りします!」

『フュージョンアップ!』

 

 両サイドに立つ2人のウルトラマン。その力がオーブリングを空へと掲げると同時に俺へと重なる。

『ウルトラマンオーブ!スぺシウムゼぺリオン!』

 

 その2人の戦士の力をお借りして俺はウルトラマンへと・・・銀と赤。そして紫のカラーをした光の戦士、オーブ・スぺシウムゼぺリオンへと姿を変えた。

「デュァ!」

 

 変身したことで数十メートルへと巨大化した俺は街を破壊するマガバッサーの正面へと向かい立つ。

「俺の名はオーブ。闇を照らして、悪を討つ!」

 

 

 

 

 

~~久遠~

 

「闇を照らして、悪を討つ!」

 

「ギャオォォォォォッ!!」

 

「ッ!!」

 オーブと名乗った光の巨人に対して即座に敵意を見せたマガバッサーは滑空しながら体当たりをすると、オーブは両手でそれを受け止めて右脚で蹴りを決め込む。

「あの巨人はいったい・・・」

 

「あいつはオーブ。ウルトラマンオーブ。輝く銀河の星。光の戦士ってやつさ」

 

 いつの間にか真横に立っていたさっきの黒服の男性はまるでオーブを見定めるかのように戦いの様子を眺めている。この人はどうやらウルトラマンオーブのことを知っているらしい。

「そのウルトラマンって・・・」

 

 まずはウルトラマンと言うのを尋ねようとするも、この人も質問するよりも早く姿を眩ませてしまっていた。

「オオォシュアッ!!」

 

 左脇で右側の翼を押さえたオーブは右手でマガバッサーの首筋にチョップを決め込むと、マガバッサーは低空飛行をしながら足の爪でオーブを何度も突き刺す。

「デュァ・・・っ!?」

 

 その攻撃に怯んだオーブは数歩後ろへと下がってしまうと、マガバッサーは翼で叩くようにオーブを張り倒してのしかかりを決めた。

「グゥ・・・オオォォォ!!ラシャァ!!」

 

 自身の上に乗っているマガバッサーの両足を掴んだオーブは身体の赤い部分を輝かせながら立ち上がる。そしてそのままジャイアントスイングでマガバッサーを投げ飛ばした。

オーブが距離を詰めようとすると起き上がったマガバッサーは翼を羽ばたかせて風を巻き起こした。

「きゃっ!?」

 

「っ!スぺリオン光輪!」

 

 私はその強風にまたも飛ばされそうになっているとオーブは右手で光の輪を作り出してそれをマガバッサーへと投げつける。するとマガバッサーは空へと飛んでその光輪を回避した。

「あぁっ!?惜しい・・」

 

 避けられた。そう思った瞬間、オーブの紫色の部分が輝いて自身が投げた光輪に追いつき、それを掴んでマガバッサーへと再度投げつけた。

「ギャオォォォォォ!!?」

 

 その光輪が左側の翼を掠めたかと思うと、どうやらそれはかなりの斬れ味だったらしく左側の翼の半分ほどが切断されてマガバッサーは地上へと落下してきた。

「っ!?」

 

 戦いが2分を過ぎたタイミングでオーブの胸のO型のランプが赤く点滅し出す。するとオーブからは半透明なオーブとは異なるウルトラマンが2人、苦しむかのようにぶれだしていた。

「デュア!」

 

 オーブが気合いを入れ直すとそのブレも収まる。するとオーブは右腕を空へと掲げて左腕を横に広げて自身の前に円状の輪を出現させる。そしてその両腕を十字に重ねた。

「スぺリオン光線!!」

 

 その十字に重ねた腕から放たれた光線はマガバッサーに直撃すると・・・マガバッサーはその光線に耐えられずに爆発四散した。

「シュワッ!!」

 

 戦いを終えたオーブは両腕を上と掲げて空を飛び去っていく。

「サンキュー!オーブゥゥゥ!!」

 

 徹さんはオーブへと大きく手を振りながらも遠ざかっていくその姿を撮影するのを怠ってはいないのを横目で見ながら感心しつつ私はオーブに何か運命なようなものを感じていた。

 

 

 

 

 

~~???~

「・・・っと。ここでいいか」

 

ウルトラマンさんとティガさんから力をお借りして変身した姿、オーブ・スぺシウムゼぺリオンから人間体へと戻った俺は近くにあったマガバッサーの水晶体にオーブリングをかざす。すると肉片から抜け出てきた光が1枚のカードとなってオーブリングから出てきた。そのカードは宇宙警備隊として地球を守り抜いた戦士の1人、ウルトラマンメビウスさんのカードだった。

「マガバッサーを封印していたのはメビウスさんの力でしたか。お疲れさまです」

 

 メビウスさんのカードに軽く軽く頭を下げた俺はそれをホルダーへとしまう。そしてその場を立ち去ろうとしたところでこの場所に見覚えがあることに気がついた。

「っと・・・!いけね!忘れてた!」

 

 そう、ここはさきほど俺が証明写真機が近くにある場所だ。あの時俺があれの中に入ったタイミングで撮影が始まっていた。つまり俺が変身する瞬間が映されてしまったかもしれないんだ。

「ふぅ、あったあった・・ってあれ?これどう取るんだ?」

 

 証明写真機を見つけたは良かったが取り出し方が分からず苦戦してしまう。まずい、足音が近づいて来たぞ。急いで回収しないと・・・!

「あっ、横にずらすのか」

 

「あっ!焼き鳥の人!」

 

 何とか無事に写真を取り出せたタイミングであの時助けた少女がやってきた。てか仮にも命の恩人に焼き鳥の人ってなんだよ。

「何だよその呼び名は・・」

 

「ご、ごめんなさい。2度も助けてくれてありがとう。私は久遠。白神久遠。貴方は?」

 

「別に名乗るほどのものじゃない。だけど焼き鳥の人はやめてくれ」

 

「待って!これ貴方のでしょ、落とし物!」

 

 久遠と名乗った少女に背を向けた俺は軽く手を振りながら去ろうとすると、久遠は俺に何かを差し出してくる。俺のハーモニカだ。さっき助けたときに落としていたのか。

「・・・ありがとう」

 

 ハーモニカを受け取った俺は久遠に軽く頭を下げる。

「大切なものなんでしょ?」

 

「あぁ。・・・とても・・」

 

 大切な人から貰った・・・形見だからな。

「それじゃあな」

 

 受け取ったハーモニカを奏でながら俺は夕陽が沈む方角へと歩き出す。このハーモニカをくれた彼女のことを想いながら・・彼女に誓ったあの約束を思い出しながら・・。

 




ウルトラヒーロー大研究


ウルトラマンメビウス
属性:剣(ツルギ)属性

ウルトラ警備隊の若い戦士メビウスさん。ウルトラ兄弟とウルトラ10勇士の2つの肩書きを持つ現状唯一のウルトラマンだ。最初こそルーキー扱いだったが数々の戦いを仲間とともに乗り越えてウルトラ兄弟10番目の戦士になったんだ。

マガバッサー
属性:風属性

 風の魔王獣マガバッサー。メビウスによって電離層に封印されていたが外的要因で封印が解かれた。ひとたび羽ばたかせると相乗効果で世界各地に竜巻が発生するという危険な存在だ。

次回「沈む大地」

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