ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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国際情勢フェイズです。



52話 揺れ動く国際社会 前編

正月、新年を迎えた世界。

 

だが、年末年始でも休めない人々がいる。

 

インフラ関係、医療関係様々あるが……。

 

政治家達も休めない。

 

激動の最中にある昨今の地球では……。

 

 

 

中国。

 

広大な中華を支配するのは、今や、偉大な中華皇帝ではなく、共産党という組織であった。

 

その共産党の本部では、今日も怒鳴り声が響いている……。

 

「クソッ!日本め!」

 

怒りに震えるは、共産党主席……。

 

実質的な、中華の支配者である。

 

日本以外とも領土問題などを抱えつつも、近年は日本を追い越すほどの経済的発展を見せる中国であるが、ここ最近は各方面からの大打撃を受けていた。

 

「何が、ブランチダンジョンだ!我が国の優れた製品を購入せず、自弁するだと?!あの何もない小さな島国の日本が?!あり得ん!」

 

大きなものとして、経済的な問題……。

 

これは、どこの国でも言えることだが、GDP上位層の国は沢山の輸出入する品目があり、何千何万億ドルという貿易が行われている。

 

例えば、中国においては、総輸出量の6%が日本へのものだった。

 

それがいきなり、ブランチダンジョンのお陰で殆どの原材料や食料を自弁できるようになったので、貿易はしません!ときたのだから、経済面への打撃は計り知れない。

 

……まあ、中国側も、ダンジョン騒ぎで世界から見捨てられた日本の足元を見て、限りなく輸出品の値段を釣り上げたのだが。

 

しかしそれは、隙を見せたら奈落へと叩き落とすのが国際関係と言うもの。

 

この国際化が叫ばれる現代社会において、ここまで怒り狂って鎖国宣言をする方が大人気ないと言えばその通りだ。

 

「こんなことなら、魚釣島を手放さなければ良かった!」

 

そう、もう一つの問題。

 

領土問題の根源たる魚釣島だが……。

 

中国は、ダンジョンの中のモンスターを見て恐れ、島の所有権を放棄すると声明を出してしまっていた。

 

確かに、魚釣島には、戦術的価値やら、排他的経済水域の増加やら、ガスやら、様々な理由から日本と争いをしていた。

 

しかし、あの時。

 

日本でダンジョンが確認された時。

 

中国は日本を恐れたのだ。

 

日本そのものに恐れを抱くことはないが、謎の超越者が日本を支配していると、中国はそう考えた。

 

明空命……、神の存在を認めない中国共産党からすればエイリアンの類いという認識。

 

そして、当時の認識からすれば、ダンジョンはフロンティアではなく地獄だった。

 

神を僭称する謎のエイリアンが、日本に災害を続々とばら撒いて、日本人を殺して遊んでいると、そう囁かれていたのが当時の世界の世論。

 

実際の話、ダンジョンができた!フロンティアだ!攻め入ろう!……などと頭の悪いことを言う国があるだろうか?

 

中国も、平和な社会情勢にて帝国主義を掲げているからして、愚か者扱いされはする。

 

だが、彼らは、馬鹿にしている連中が思うよりよほど賢いし、何より強かだ。

 

平和な二十一世紀の地球において、未だに侵略活動ができる国家は伊達ではない。

 

そんな中国は、常識的に考えて、日本はもう駄目だと結論付けた。

 

一部、ダンジョンには無限のフロンティアが〜などと言い出す頭の悪い底辺オタクもいたが、国家がそんな連中の意見を聞く訳がない。

 

エイリアンとの関わりを断つために、魚釣島のことはなかったことにした。

 

国家間の境界線が曖昧だから、のような理由で、中国にまでダンジョンなどという化け物の巣窟を作られてはたまったものではないから。

 

その結果が今なのだ。

 

「ダンジョンはフロンティアだった、だと?!予想できるか、そんなこと!」

 

現在、日本は、ダンジョンによる内需の爆発的な高まりにより、内側に向かって膨張。下向いていたGDPも高まり、このままの様子ならば、数年後には世界一位になりかねないほどだった。

 

中国からすれば、まつろわぬ民であり、侵略予定地である日本が調子付くのは、非常に面白くない。

 

何より、自国より金持ちで強い国が隣にできたら、それは悪夢だ。

 

「クソ、クソ、クソ!魚釣島だ!エイリアンに魚釣島にダンジョンとやらを作らせろ!その為に魚釣島の領有権を主張するのだ!」

 

狂乱とも言える様子で部下に指示する主席。

 

しばらく、中国はこの有様だった……。

 

 

 

一方で、世界一位の大国、アメリカはどうだろうか?

 

「はあ〜〜〜っ……」

 

大統領たるジョンソン・ローデンは、重さにすれば数トンはあるような、重苦しい溜息を吐いていた。

 

「私は……、ここまであの国を追い詰めるつもりはなかったのだ……。いつものように、従順な友好国でいて欲しかっただけなのに……!」

 

万感の思いが篭る言葉を吐きつつ、両手で顔を覆う彼。

 

民主党のジョンソン大統領。

 

彼の内心には、「どうしてこうなった?」と言う言葉が、雷雨を伴う嵐となって荒れ狂っていた。

 

「ニホンバンザイなどと叫びながらカミカゼしてくる気狂い共が、本気で怒ってしまった!そんなつもりはなかったのに、あの国は、ハルノートを突きつけられた時のように怒り狂ってしまった!」

 

机を叩く大統領。

 

アメリカは、日本にダンジョンができた時、在日米軍の半分以上を日本から撤退させたのだ。

 

日米間には安全保障条約があったのだが、アメリカ側は、「あくまでも原義的には反共の為の防衛戦力である」として……。

 

中国の魚釣島からの撤退宣言を受けて、「共産党勢力が弱まった」と宣言。余剰戦力の撤退という体で……、実質的には、米軍とダンジョンのモンスターとの戦いを回避する為に、過半数を日本から撤退させたのだ。

 

酷い話のように思えるが、国際社会では弱い国は見捨てられるのは当たり前のこと。

 

落ち目の日本が見捨てられたのも、当然だった。

 

逆の立場なら、日本もそうしただろう。

 

だが、そうはならなかった。ただそれだけの話だ。

 

「フロンティアだぞ?!無限に広がるダンジョンフロンティアが……、日本だけの手に!」

 

頭を抱える大統領。

 

本音はこちらかもしれない。

 

フロンティア。

 

アメリカにはなくなって久しい、それでいて、アメリカ人が求めてやまないもの。

 

開拓者の国であるアメリカからすれば、日本にあるダンジョンは現代のフロンティア。

 

正しく、垂涎の的であった。

 

だから、例の『ダンジョンショック』の後、大統領は即座に日本へとホットラインを繋げた。

 

要約すると、「昔のことは水に流そう、協力してやろうじゃないか!」と。

 

侮辱のように聞こえるかもしれないが、事実、この時の日本にフロンティアを開拓するような体力はもう残っていなかった。故に、大統領としては、WIN-WINの提案をしていると、そう思っていたのだが……。

 

追い詰められた日本は、国家の唯一の生命線となったダンジョン利権を取られてたまるか!と意固地になり、激怒して拒絶したのだった……。

 

「国際関係の話だぞ?!あの外交音痴共め!せめて交渉くらいしてくれればっ……!」

 

交渉とは本来、お互いの要望を伝え合い、折衷案を作るために話を擦り合わせるものである。

 

ところが日本という国は、相手の要求を制限なしに呑んでしまう。

 

そして、相手側が調子に乗ってどんどん要求していくと、いきなり激怒するのだ。

 

日本には、『本音と建前』という考え方が強く、お互いに遠慮し合うのが基本であるから、海外の人間との間によく起きるディスコミュニケーションである。

 

アメリカ側としては、ダンジョンフロンティアの利益を日本と折半するくらいの譲歩は考えていた。

 

だが、頭の茹った日本はそれを拒否した……。

 

そして……。

 

今、大統領は、自国の議会からの突き上げを食らっていた。

 

曰く、「貴方が日本を追い詰め過ぎたせいで、ダンジョンフロンティアの権益が得られなかった」と……。

 

……議員達も、ダンジョン黎明期の頃は、日本との国交の断絶を訴えかけていた者すらいるのに、だ。

 

大統領も所詮は、衆愚によって選ばれた貧乏籤でしかない。共産圏の支配者のように、なんでも自由にできるなどそんなことはなく、むしろ、自由の国の人間とは思えないほどの数多の制約の中で生きている。

 

ジョンソン大統領もまた、単なる責任者に過ぎないだけだという話だ……。

 




うごごごご……。

ちょい前に書いた近世ロボものを読み返したのだが、やっぱりおもしれー……。自画自賛だけど、自分が読みたい要素がオールインワンで最高なんだわ……。

他も読み返すとやっぱり面白え……。


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