働く細胞見なきゃ……。
今日も今日とてダンジョンだ。
ダンジョンの公開から一ヶ月。
その間、俺はレベル上げに勤しみ、三十階層のボスであるワイバーンをタイマンで始末できるまでにステータスを上げた。
そろそろ次の階層にチャレンジしようかなー?なんて考えてると……。
「やあ」
ソラのデバッグルームに誘拐された。
「何だよ?」
「とりあえず、こちらの映像を見てもらえるかな?」
「おう?」
×××××××××××××××
「撃て!」
「「「「「「了解!!!」」」」」」
『ゲギャガアア!!!』
「ぐわあああ!!!」
「退避!退避ぃー!!!」
×××××××××××××××
自衛隊が十階層のゴブリンチャンピオンにやられてた。
「うそやん」
よ、弱過ぎる……!
親方日の丸、護国の士、天下の自衛隊様じゃねえのか?!
こ、こんなもんなのか?
嘘だろ?
「因みに、地方のダンジョンもほぼ同じで、酷いところでは六階層で止まっているところもあるよ」
「いやいやいや……、いやいやいや!嘘だろ?!自衛隊だぜ?!」
「真実なんだよね」
マジか……。
「え?銃持ってるんでしょ?楽勝じゃない?」
「銃は武器レベルが上がらないからね」
「えっ」
「弓ならば、矢と、弓を引く弦が強化されて威力は上がるね。けど、銃は、弾頭と火薬のレベルが上がっても、それを使い捨ててしまうから……」
あー?
なるほど?
「じゃあ、実質的に、ダンジョンで銃は無力なのか。でも、ゴブリンチャンピオンだぜ?普通に素手でも倒せるだろ?レベルも上がってるだろうし……」
「彼らは、小隊と言って、三十人規模で来ているんだ」
「えっ」
ってことは……。
「ダンジョンは、推奨攻略人数が四人。入手できる経験値は、一人なら150%、四人なら100%、八人なら80%で……、以降、一人追加されるごとに−8%……」
「ってことは、三十人もいれば……?」
「当然、経験値は0%なんだよ……」
「あちゃ〜……」
酷いなこれは……。
「で、どうしろと?」
「君から、自衛隊という戦士団に何かアドバイスをしてもらえないかな?私から直接言うのは『ネタバレ』だから……」
ふーん?
なんかめんどくさそうなやつじゃん。
まあしゃあない。
面倒だが、この面倒を乗り越えた先に、より面白い世界が待っていると考えれば、苦ではない。
自衛隊のホームページを開く。
電話番号を特定。
電話をかける。
『もしもし?自衛隊事務局です』
女性が応答した。
「もしもし?田舎剣士です」
あ、端末のランキング欄だけど、俺は本名じゃなくて『田舎剣士』って言うペンネームにしたぞ。
『はい?』
「ランク1、田舎剣士です。半年前から家の蔵にダンジョンがあるんですが」
『……少々お待ち下さい』
保留音は『エリーゼのために』だった。クラシックは詳しくないんだが、それくらいは知っている。
そして二分後。
『お電話代わりました、防衛省の鴨田です』
「はい」
『ご自宅の蔵に半年前からダンジョンがあるそうですが、ご住所の方、控えさせていただいてもよろしいでしょうか?』
「栃木県日光市の……」
『……はい、分かりました。今日中に自衛隊が向かいますので、在宅のままでお願いします』
「はい」
その三時間後、自衛隊のジープ四台と、黒塗りの公用車……、センチュリーだっけ?それが一台、ウチの家の前に路駐した。
ピンポン。呼び鈴が鳴る。
「はーい」
『防衛省の鴨田です。ダンジョンの確認に来ました』
だってよ。
あ、全く関係ない話だが、俺は普段は甚平を着てるぞ。
髪はかなり長いんで縛ってる。
そろそろ寒くなってくるんで半纏出さなきゃな。
そんなことを考えながら、戸を開く。
「うっす、えー、鴨田さんでしたっけ?蔵はこっちです」
そして、蔵にダンジョン門があることを確認すると、自衛隊が入って検査した。
それも、五分くらい。
すぐに自衛隊員は帰ってきた。
「モンスターを確認しました、ダンジョンです」
「うむ」
敬礼しながら自衛隊が言った。
それを、三十代半ばくらいの自衛隊員が聞いていた。こいつは恐らく隊長的なのだろうな。
その、隊長的なのがこちらに振り向いた。
「では、赤堀君。話を聞かせてくれるかな?」
とのことなので、家に入れる。
「桐枝ー、お茶煎れてー」
『はーい』
とりあえず、桐枝にお茶を頼んだ。
「なっ?!モ、モンスター!!!」
「あっ、そう言うのいいんで」
「なっ?!しかし!」
「マジでいいんで、とっとと座ってもらえる?」
「だが、モンスターは危険な存在で……」
「座れ」
面倒なので、軽く気当たりをする。
「「ひっ……!」」
鴨田と隊長は、気をもろに受けてへたり込んだ。
何だ?気合入ってねえな?ごく軽い気当たりだぞ?
『お茶煎れましたよー』
「ん、どうも」
一服。
「ふう……。で?話とは?」
「あ……、ダ、ダンジョンについてのお話を」
「ダンジョンか」
俺は、もう一口、茶を飲んだ。
「まあ、そうね。明空命から教えられたんだが……、何だあの体たらくは」
「そ、それは……。こちらの方も努力はしているのですが」
「まず、ダンジョンのルールを理解してないよな?マニュアルをちゃんと読んだか?」
「マニュアルは読みました……」
「じゃあ、ダンジョンの推奨人数は四人って文字、読めなかったか?」
「し、しかし、安全マージンを取るためには……」
「良いか?内部数値を教えてやる。ダンジョンは、推奨攻略人数が四人。入手できる経験値は、一人なら150%、四人なら100%、八人なら80%だ。以降、一人追加されるごとに−8%だな」
「で、では、自衛隊はレベルが上がっていないと?」
「そう言ってるんだよ」
「まさか、そんな……」
信じられない!みたいな顔されても……。
端末のマニュアルに、推奨人数四人ってちゃんと書かれてるんだよな?
アホかな?
DDSnetなー。
世界崩壊は決まってるんですけど、そこに至るまで、どうにかして軟着陸させる方向で頑張りたい。
主人公君が全人類デビルサマナー化計画を立ててるから、それである程度デビルサマナーを増やしてから、世界崩壊だな。