さて、暫定的にだが、女二人を手に入れた俺。
交渉するまでもなく、俺が圧倒的に有利な立場であるから、こちらの欲求を叩きつけてやろう。
「とりあえず、リリーベル様の祖国とやらに向かおうか。道案内を頼みたいんだが?」
「はい、分かりました。ですが、かなり遠いので……」
お付きのドミニクがそう答える。
遠い?
「どれくらい?」
「馬車で一ヶ月程は……」
そんなもんか。
じゃあ、到着は六月頭だな。
いや、このゴールデンウィーク中はずっと移動するから、もっと早いかな?
「俺は学生だから忙しくてな。あまり移動に時間はかけられん。だから、移動できるのは夕方と、七日のうち二日のみだ」
「そ、そんな……!それでは、どれほどの時間が……!」
ドミニクがなんか言ってるが……。
「すまないが、君達は俺に何かを要求できる立場じゃない。俺に従え、良いな?」
俺は黙らせた。
「は、はい……」
さて、ではそろそろ昼なので……。
「飯食いに行くぞ。セシル、どこが良い?」
「では、ここの食い倒れ横丁というところを見に行きたいのだが」
「バリバリ観光する気じゃん。ウケる」
まあ良いや、なら観光するっかぁー。
はい転移。
『こ、ここは……?!』
『大阪だぞ。ほら、リリーベルはこっち、ドミニクはこっち。手を繋げ、異世界で迷子になったら戻ってこれないぞ』
『『は、はい!』』
さて、何食おうかなー。
お、たこ焼き。
「すいませーん」
「はーい」
「あ、お前、食う?」
「たこ焼き……、大阪という地に来るならば食べるべきだと聞く」
セシルがそう言った。
「んじゃ、たこ焼き10パックお願いします」
「味はどないするんや?」
店員がそう言ったので、俺は、ベーシックにソースとマヨと答えた。それと、ネギ塩と明太子マヨも頼む。
『賢者様、これは……?そもそもここは……?』
『これはたこ焼き。ここは日本国の大阪の、食い倒れ横丁って言うアミューズメントパークだ』
『はあ……。あっ!凄い速さでくるくるしてます!』
たこ焼きを作るオバちゃんのことを称賛するリリーベル様を横目に、俺はセシルと今後の予定を話し合った。
「はいどうぞ!」
「はいどうも」
受け取って、食べる。
おー、流石は本場のたこ焼きだ。
美味いわー。
「ふむ……!外側はよく焼かれてスナック状になっているのに対し、内側はスライム状になっているのか。面白い感触だ」
スライム状って表現やめてくんないかな????
『た、食べて良いですかっ?!』
『お、お待ち下さいリリーベル様!まずは毒味を……!』
なんか言ってるな。
『この世界にお前らを狙う刺客なんていねーよ。早よ食えや』
『はいっ!もぐ、あちゅいでしゅ!はふ、はふ……、おいひい!美味しいです!』
リリーベル様は順応が早いなあ。
あちらの世界でもさぞおてんばな姫様だったんだろう。
『ああ、リリーベル様!』
お付きのドミニクが慌てているが……。
『お前も食えよなー、冷めると粉物は美味しくないんだよ』
『わ、分かりました……。はむ、熱っ、はふ……!美味しい、ですね……!』
へー、異世界人的にたこ焼きってアリなんだ。
セシルは、長い旅の間に色んなものを食っているから、何でも食う変わり者らしいんだけど、普通の異世界人は好き嫌い激しいだろうなーって思ったんだけどな。
「じゃあ次は串カツ食おうぜ」
串カツ屋に入店。
『わあ!凄いわドミニク!あれは何かしら?!』
『さ、さあ……?』
「あれ?揚げ物って概念がない感じ?」
俺はセシルに聞いた。
「フリッターは、南方の油がよくとれる地方でのみ食べられる高級品だからな。こいつら……、確かキマリシアと言ったか?キマリシアには存在しないはずだ」
ほへー、そうなんだ。
じゃあ解説しとくか。
『あれはフリッター。砕いたパンの粉を付けて油で茹でる料理だ』
『まあ……!あれが全部油なのですか?!油は、南方からしか得られない高級品なんだそうですよ?』
『そうか。この国じゃ銅貨数枚で鍋一杯の油が買えるぞ』
俺がリリーベル様と適当な話をしていると……。
『そ、そんな馬鹿な……?!ここは、相当な高級店なのではないのですか?!』
と、ドミニクが言った。
『一品につき銅貨二枚の、庶民が来るような店だぞ』
『……この国の庶民は、我々の国の貴族よりも良いものを食べているのですか』
『そうだね』
そんな話をしていると、勝手に注文していたセシルから串カツを渡される。
それと、ビールも。
リリーベル様にはオレンジジュースだ。
『これは何ですか?』
『果物の搾り汁』
『んくっ……?!!!お、美味しいですーーーっ!!!』
そう、良かったね。
『う……、エールですか……』
ん?
『どうしたドミニク?』
『エールは不味いので……』
へえ、ビール嫌いな人なのかね?
『まあ、これしかないならこれを飲みますが……。えっ?!な、何ですかこれは?!』
はい?
『ビールだよ。ここのはキリンさんの一番搾りらしいぞ』
『何を言っているのかはよく分かりませんが、これは……、非常に美味しいですよ?!』
『そりゃそうだ。俺もそっちの酒を飲んだが、クソマズかったもんよ』
『冷えていて、喉越しが良く、ほのかな苦味に穀物の甘味……。エールとは全く違う……』
ふーん。
おっ、牛カツ美味いわー。
あとやっぱり、俺が好きなのは玉ねぎだな!
ハンバーガー屋とか行くと、必ずオニオンリング頼むもん俺。
『さくっ!……んぅ〜!美味しいです!これは何のお肉なのですか?』
鳥カツを食うリリーベル様。
『それは鶏』
『ニワトリ?』
『鳥だ、鳥の肉』
『ああ、鳥の肉なのですね!これは、さぞ若い鳥なのでしょうね!柔らかで、それでいて、全く臭くないんですもの!』
へえ、そうなの。
確かに、あっちの世界の肉はかなり硬くて臭かった。
多分、年老いて動けなくなった家畜を肉にしているのと、血抜きが雑なのと両方あるだろうな。
だから、くたくたに煮込まないと食えないんですね。
新鮮な肉といえばモンスターの肉になるだろうけど、モンスターの肉はやっぱり、食べるために品種改良されてきた日本の家畜には遠く及ばないな。
そんな感じで、串カツをさくさくして次の店へ……。
書き溜めがー!!!