ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ああっ、ストックしてあるガムがもうない!


29話 オダ

次の日。

 

俺達がいつも通りに商売したり勉強したりしていると……。

 

「お?」

 

二十人くらいの集団が、列をなして現れた。

 

全員、革ズボンに革製の着物らしきものを着込み、刀や槍、そして拳銃を装備したサムライだ。それも、皆若い。

 

年齢は十代半ばから後半の、若武者だ。

 

そして、その真ん中には……。

 

「よう!商人!」

 

昨日の、オダアオイちゃんがいた。

 

「やあ、ユリコちゃん。逢引の約束を果たしにきたのかい?」

 

俺は、軽い調子でそう返した。名前も、あえて偽名の方で呼んでやる。

 

偽名を名乗ったことに対する意趣返しだ。

 

「貴様っ!姫に無礼であるぞ!!!」

 

アオイちゃんの隣にいる、顔の濃い槍を持ったガキがキレた。

 

「よい、退がれ」

 

「しかし姫っ!!」

 

「退がれと言うておる!ワシの言葉が聞けんのか、マタザ!!!」

 

「は、ははーっ!」

 

さて……、それで?

 

「まずは、市井のものであると語り、お主に近づいたことを詫びる。すまなかった」

 

と、頭を下げるアオイ。

 

「いや、別に謝るほどのことじゃあないさ」

 

「気付いておったか?」

 

「全然気付いてなかったよ?セクシーなお尻をしてるなぁ、とは思ったけどね」

 

「貴様ぁっ!!!」

 

若武者達がお怒りになっている。

 

「ふふ、ははははは!ワシの尻に見惚れたのか!そうかそうか!ははははははは!」

 

だが、アオイちゃんと言えば、俺のその言葉を聞くと、本当に心の底から、といった感じで大笑いした。

 

「ははは、お主!お主は、いい尻をした女になら、数千億円にも達するロボットをタダでくれてやるのか?」

 

「尻だけじゃないぞ?顔も可愛い。胸は控えめだが、腰回りがセクシーだ。足も長くて艶かしい」

 

「ははははは!そうか、そうか!うむうむ!気に入ったぞ!お主、名はなんと言う?」

 

「グレンだ。カグラザカグレン」

 

「そうか!では、グレンよ!我が父上のダンジョーに会うがよい!」

 

「それまた、何で?」

 

「んん?商人なのであろう?ダイミョウと取引できれば、儲かるぞ?」

 

ああ、なるほど。

 

まあ、良いんじゃない?

 

稼げるなら稼いでおこうか。

 

 

 

俺は、部下を全員引き連れて、名古屋城に入城した。

 

「殿の、おなーりー!」

 

お、来たな。

 

「ははーっ」

 

適当に平伏しておこうか。

 

「よい、頭を下げるな」

 

そう言って、手を前に出して制したのは、四十手前くらいの男。

 

「お主には敬意がまるで見えぬ。儂を敬ってなどおらぬだろう」

 

口髭、長髪、三白眼。身長は170前後だが、統治者としての大きなカリスマで、実際の身長よりも大きく見える。

 

そんな男、オダダンジョーが、俺のことを睥睨して、不敵に微笑んだ。

 

ああ、なるほど。

 

こう言うタイプの男か。

 

異世界で何人か会ったことがある。

 

俺は、正座の足を崩して胡座をかいて、笑い返す。

 

「分かってるじゃないか。俺は基本的に他人を尊敬しないんだ」

 

俺がそう返すと、周囲のサムライ達は刀に手をかけた。

 

「かかか……、面白いのう。中々のクソ度胸よ!儂を敬わぬのは良い、知らぬ人間に頭を下げろと命じられてそうする奴などおらぬからな」

 

ふむ、そうだな。

 

「だが、ここで、表側では儂に頭を下げ、媚び諂い、しかして内心にて儂を嗤っておるような奴であれば、ここで無礼打ちしておったわ。面従腹背というものよ」

 

そうだね。

 

「ならば、最初から敬ってなどおらぬと正直に答えるものの方が、信を置けると言うもの」

 

ふむ。

 

「で?何をお求めで?うちは金さえ払ってくれりゃ何でも売りますよ」

 

「何でもと申したか?」

 

「ああ、何でもだ」

 

「ほう?貴様は、金さえ払えば家臣すら売るか」

 

「おう、但しその場合は、家臣一人につき、世界の王の座をお代に請求するがな」

 

「なるほど?儂の知る商人共は、金のためなら己の餓鬼すら売り飛ばすものであるが……」

 

「そりゃ酷いな。俺に子供がいたとして、それを売るなら、世界の全ての財宝を対価に要求する」

 

「まあ、良い。で?商人であらば、何を売る?」

 

「何でもだ。見合ったものを対価に出せるなら、何でも」

 

「武器は?」

 

「ある」

 

「ロボットは?」

 

「ある」

 

「エクステンダーは?」

 

「ある」

 

「ならば、食料は?」

 

「ある」

 

「では、布は?木材は?古書は?戦前の遺物は?」

 

「だから、何でもあるよ、何でも」

 

「ううむ……」

 

悩むダンジョー。

 

「では、雨を売って見せよ」

 

「雨?」

 

「何でもと申したであろう」

 

「いや、良いけどさ。えーと、綺麗な水って、1リットルで何円だ?」

 

俺は、隣のフミナに訊ね、こっそり耳打ちしてもらう。その結果。

 

「ええと、1リットルの綺麗な水は一万円くらい。この街は大体……、そうだな、40平方キロメートルくらいか。降水量5ミリの雨を一時間降らせるとして……、二億円だ」

 

と、俺が言った。

 

俺は優しいから原価で売ってやる。

 

「ほう!一度口に出したこと、男子であるならば、翻すことは叶わぬぞ」

 

「良いとも。二億円で、一時間の雨を売ろう」

 

「よし、では、やって見せよ!」

 




帰還勇者も書きたい感あるのよなあ。

帰還勇者の続きは、各国の魔法大学の亜人の一番弟子の視点でしばらく書きます。

その後、魔法大学の生徒が一か所に集まって交流会という名のバトル展開を始めたりします。

それと、軍隊の魔法教育についてちらほらと。

魔法名はもう厨二病大爆発だから楽しい。

例えば、シスコン王子の流派である『牙流』ってあるじゃないですか。あれ、きばりゅう、ではなく、『ガーロード』と読みます。

狐獣人のゾラが使う『払暁』。あれ、払暁じゃなくて、『アルザリオン』って読みます。

厨二病は楽しい。

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